第55話
「ならなんだ?」
「どうして戦う事が前提なんですか? 魔法式を合わせられるんなら解除はできないんですか!!」
「効率が悪いからパスだ」
ティアナは戦わない方法はないのかとフィルとジオに詰め寄るがフィルは効率が悪いと一言で済ませようとする。
「多少、効率が悪くても安全な方法を選ぶべきです!?」
「ま、まぁ、ティアナも落ち着いて、一応は戦う意味もあるわけだし」
「戦う意味? どんな理由ですか?」
ジオは自分達にも考えがあるため、ティアナに落ち着くように言うがティアナは戦闘自体に反対のためかジト目で2人を見る。
「フィル、説明」
「……面倒だな。戦闘を行う理由は簡単だ。今回の依頼で集めたデータは各地の同じ被害に遭っている場所に送られる。もしくはうちの学生か王都の騎士団が対処に動く。ここはわかるな?」
「はい。今回の依頼は調査ですから、それはわかります」
「それなら、その時に召喚の魔法式を書き換えて無効化できる人間がどれだけいる? それなりの魔術師が2人いればトラップの発動条件である2つの魔法式の解除はできる」
「魔法式の書き換えってかなり上位の魔術師にしかできないんだ。なら、その依頼を受けた人間達は召喚された魔獣を力で排除しなければいけない。召喚の魔法式からわかる事を調べ上げて次に繋ぐ。それが俺達が受けた依頼だよ」
フィルとジオはティアナが思っている以上に先の事を考えており、2人の依頼を受ける姿勢にティアナは息を飲む。
「魔法式から召喚される魔獣のレベル。魔法式を重ねる事で起きる魔法式の変化、調べる事はいくつもあるんだ」
「それをこいつは一発で終わらせるとか言って、ティアナ考えろよ。魔法式を重ねた事でレベルの高い魔獣が何十匹も徘徊して、それ以外にもいろんなレベルの魔獣が平原を闊歩する姿を地獄絵図だぞ。ティアナからも考え直すように言ってくれ」
「フィルさん、何回かに分けましょう。絶対に対処できないし、調査をしているヒマもないですから!!」
ジオは苦笑いを浮かべてフィルが無茶な事をしようとしているため、ティアナにも説得を頼むとティアナはジオの言葉で平原を見た事のない魔獣達が歩きまわっている様子を思い浮かべたようでジオの意見に賛成をする。
「そうか? 面倒だな」
「お前は簡単に言うけどな。今回はティアナもいるんだ。無茶はできないだろ」
「そうですよ。魔獣達が一斉に襲いかかってきたら、考えただけでもゾッとしますよ」
「一斉に襲いかかってくる? それがわからん。魔獣は所詮、魔獣だ。知能も低いんだ。大量に召喚して魔法で認識をずらしてやれば勝手に同志討ちを始める」
「そ、それでもです!! 多数決です。民主主義です。私とジオさんの2票、フィルさんは1票。私達の勝ちです」
フィルは安全に戦う方法も考えているようであるがティアナは声をあげてフィルの考えを否定すると、
「フィル、今回は引いてくれ。ティアナもだけど、もう1人戦術とか理解できない奴もいるわけだからな」
「……そうだな。勝手に戦闘を始めて勝手に窮地に陥りそうだからな」
ジオはフィリアがいるため、先に立てた戦術は意味がなくなると言うとフィルはその言葉に眉間にしわを寄せて頷く。