第53話
「それじゃあ、任せたぞ」
「ちょ、ちょっと、フィルさん、ジオさん、本当に私1人ですか!?」
ティアナが落ち着くとフィルとジオはティアナを置いてフィリアと距離を取ろうとするとティアナは冗談だと思っていたようで驚きの声をあげる。
「俺は殴られる義理はない。それより、やるなら、早くしろ。飯が覚める」
「ティアナが自分から言った事だし、意見は尊重しないといけないだろ」
「あ、あの。元はと言えばジオさんがフィアさんをからかったからじゃないですか?」
フィルは関係ないと夕飯の準備に戻りだし、ジオもそれに続こうとするがティアナがフィリアが怒っている原因を思い出してジオの手をつかむ。
「……思い出したか」
「ジオさん!?」
「……結局、お前達は何をしたいんだ?」
ティアナは舌打ちをするジオを見て声をあげるとフィルは2人の様子にため息を吐いた時、
「……それは私が聞きたいわ」
「フィ、フィリアさん!?」
眠れる獅子が怒りの形相で目を覚まし、フィリアの様子にティアナは顔を引きつらせてフィルの後ろに隠れる。
「ジオ、覚悟は良いわね」
「できれば遠慮したいかな?」
「フィア、死なない程度で殺れ」
「……自信はないから、フィル、ティアナ、治癒魔法は任せるわ」
フィリアはジオの肩をつかむとフィルはすでにどうでも良いようであり、準備をした夕飯を口に運ぶとティアナは目はすでに獲物をつかまえた捕食者の目である。
「……フィル、補助魔法は? 魔法障壁でも可だ」
「そうか。フィア、ジオがお前に攻撃補助をかけて欲しいと言っているが」
「もちろん、飛ばして」
「おい!? 逆だ!?」
フィルはすでにジオを助ける気はないようでフィリアに補助魔法をかけると言い始め、ジオは声をあげるが、
「死ね!!」
「ごふっ!?」
「少し、気分が晴れたわ」
「最初から、こうすれば早かったんだな」
フィリアの拳はジオの腹に奇麗にねじ込まれ、ジオは前のめりに倒れ込み、フィリアは爽やかな笑顔を見せるとフィルはこれで終わりだと言い、
「あ、あの。ジオさん? だ、大丈夫ですか?」
「……む、無理かも知れない」
ティアナは目の前で起きた惨劇に顔を引きつらせて、声をかけるとジオの声は力はなく、声が出ないようでかすれている。
「フィ、フィルさん、フィアさん、な、何をしているんですか!?」
「ティアナ、気にしないの。自業自得よ。こいつが私をからかわなければ最初から何もなく、平和だったんだから」
「……どっちもどっちだろ。ジオの言い分も正しい部分もあるからな。ティアナ、この流れはいつもの事だから気にするな。それより、飯を食え。俺はそろそろ寝るぞ」
ティアナは慌てて、ジオを1撃で沈めたフィリアと補助魔法を使ったフィルを責めるように言うが2人は気にする事はなく、フィリアはフィルが用意した夕飯の前に座ると、
「い、いつもの事なんですか?」
「あぁ。いつもの事だ。死ぬほどの1撃でもないしな」
「そうよ。打撃の基本は生かさず、殺さずよ」
「そ、それは違う気がします」
ティアナは昔から続いている幼なじみのやり取りについて行けないようで呆然とする。