第52話
「さてと、とりあえず、縛りつけておくか?」
「あ、あの。それはあんまりじゃないでしょうか?」
フィルはどこからか縄を取り出してフィリアを縛りつけようとするとその姿を見たティアナは慌ててフィルを止める。
「いや、ティアナ、目が覚めて暴れ回ってもなんだし、これで良いんじゃないか?」
「で、ですけど……フィ、フィルさん、あれを使いましょう。昨日、私が呪歌を使う時に私を落ち着かせてくれた呪歌です。あれを使えばフィアさんも落ち着くはずです」
「……無理だな。さっきの行動を見ただろ。目を覚ました瞬間に襲いかかってくるような奴だぞ」
ティアナはフィリアを縛りつけておく事に反対して、呪歌で彼女の精神を落ち着かせようと提案するがフィルは眉間にしわを寄せて無駄な行為でしかないと言い切り、その言葉にティアナは納得してしまったようで顔を引きつらせる。
「そ、それなら、一時的に縛って、呪歌で落ち着かせてから、縄を解くとか」
「縄で縛られている事に怒り狂って仕掛けてくるな」
「それじゃあ、どうしたら良いんですか!?」
「……あれだ。最初に魔光石を掘った穴に埋めとくとか?」
「それって、さらに怒りに油を注いでますよね!?」
ティアナは何とかしてフィリアを落ち着かせたいようだがジオはティアナの反応を見るのが面白いようで彼女をからかい始め、
「……まったく、ジオもあまりティアナをからかうな」
「いや、何か、楽しいだろ。表情がころころ変わるから」
「私でも遊んでたんですか!?」
「悪い、悪い」
フィルはジオの様子にため息を吐くとフィリアを一先ず抱きかかえてテントの中に運ぼうとするとティアナはジオにからかわれている事に気づき声をあげる。
「で、実際はどうするつもりだ? このままだとエンドレスだろ?」
「まぁ、それは否定できない」
「……あ、あの。私がお話をしてみたいんですけど、男の子のフィルさんやジオさん相手だとフィアさんは意地になっているだけだと思うんです。で、ですから、私にお話しさせてください」
「「……」」
フィルとジオは幼なじみゆえにフィリアの性格を熟知しているため、既に諦めが入っているがティアナは彼女を説得してみると言うがフィルとジオから見るとその言葉は無謀であり、顔を見合せてため息を吐く。
「ど、どうして、そんな反応なんですか!?」
「……ティアナ、やるのはかまわないが首飾りを必ず装備するんだ」
「フィル、他にもティアナに補助魔法をかけておけ」
「そうだな。効果の拡大は必須だな」
ティアナは2人の反応に驚きの声をあげるがフィルとジオはティアナを守るためにいろいろと準備を始め出し、
「あ、あの。そんな事をされるともの凄く不安になるんですけど」
「大丈夫だ。死ななければ治療は完璧にしてやる」
「キズが残ったらフィルが責任とってくれるらしいから安心しな」
「ふぇっ!? な、何を言ってるんですか!? ジオさん!!!!」
ティアナは自分の言いだした事に凄く不安になってきているようだがフィルは後の事は任せろと言い切り、ジオはティアナをからかうように笑うと彼女の顔は真っ赤に染まって行く。