第51話
「当たれ!!」
「……いい加減に諦めろ」
ティアナは自分の攻撃がフィルに当たるまで殴り続けようとしており、フィルは彼女の行動に呆れたようなため息を吐く。
「あ、あの。フィルさんはこの間、ティアナさんに思いっきり吹っ飛ばされていましたけど、あの時はどうして魔法を使わなかったんですか?」
「ん? フィルの意地かな? 基本的に学園の練習場では魔法は使わないよ。練習にならないからね。あの時は剣士としてのフィルであって、今は魔術師のフィルだから」
「で、でも、それって意味があるんですか?」
「ないかもね。でも、フィル自身が魔術師って事を嫌っているから、学園の練習場にいる時はどんなに弱くて惨めでも剣士としてその場所に立つ。あいつのこだわりみたいなものだよ」
ティアナはフィルの行動が理解できないようだがジオはフィルには彼の考えがあると苦笑いを浮かべる。
「まぁ、向上心があると言う事で納得してくれたら良いなぁ」
「良いなぁって、フィルさん、魔術師ですよね? そんな必要性がないじゃないですか? ……あれ? でも、私の村にきた時って双剣を持ってた気も」
「双剣で戦ってたね。魔術師として戦うほどの数でも強さでもない魔物だったし」
ティアナはジオの説明では納得ができないと言うがその途中で自分の村が魔物に襲われていた時に現れたフィルとジオの様子を思い出したようで首を傾げる。
「ま、待ってください。その言い方だとあの魔物の大群と魔術師のフィルさんが戦ったら、どうなるんですか?」
「どうなるって瞬殺? と言うか、あの村まま蒸発?」
「ど、どんな魔法を使うんですか!?」
「えーと、俺もあんまり難しい事はわからないんだけど、魔物や草木にある水分の温度を一気に上げて」
「そ、そんな話は聞きたくないです!?」
ジオは平然と魔術師として本気を出したフィルの魔法を説明するとあまりの破壊力にティアナは顔を真っ青にする。
「まぁ、村の人の命もかかっていたから、その分を身体にスピードを上げたりする補助魔法をいくつもかけて、魔法障壁で攻撃を防ぎながら戦ってたんだ」
「補助魔法ですか?」
「あぁ。あいつ自身が1番、力を入れている魔法かな。戦場に出るために……死に場所を求めるために」
ジオは村を助けた時にフィルの使っていた魔法を説明にティアナはフィルに視線を向けるとジオはフィルの心境を理解しているためかティアナに聞こえないように小さな声でつぶやいた時、
「……もう付き合うのも疲れたな」
「は? 何、大物気取ってるのよ!!」
フィルはため息を吐くがそれがフィリアの怒りにさらに油を注ぎ、彼女の拳は大気の渦をまとい始め、強力な1撃がフィルの顔面に向かい放たれ、
「フィ、フィルさん!?」
「心配ないって」
ティアナはフィリアの攻撃の様子に驚きの声をあげるが対称的にジオは落ち着いており、
「まったく、攻撃が単調すぎるんだ」
「な、何で避けるのよ!?」
「……普通は避けるだろ」
「き、汚いわよ」
フィルはフィリアの渾身の1撃を交わすと彼女に向かい眠りの魔法を使い、フィリアは膝から崩れ落ちて行く。