第45話
「……それで、始めて良いのか?」
「は、はい。お願いします」
「……なんか、納得がいかないわ」
「まぁ、そう言うな」
フィルは不機嫌そうな表情のまま、魔光石から精霊達を解放する手順の説明に移って良いかと聞くとティアナは自分は必要とされているために気合いを入れているのか拳を握り締めて返事をする隣でフィリアは納得がいかなさそうな表情をしており、ジオは彼女の様子に苦笑いを浮かべると、
「まず、最初にやらなければいけないのは魔光石の選別、爆発をする魔法式が組み込まれたものとそれ以外のものに分ける」
「……それって、膨大な量でしょ? この人数でできるの?」
「……誰が1つずつやると言った。それなら、俺1人でやる」
「……」
「ティアナ、昨日の夜に使って見せた呪歌はわかるな?」
フィルが話し始めると直ぐにフィリアは膨大すぎると言い、大きなため息を吐くが直ぐにフィルは説明の邪魔をするなと言いたげにため息を吐き、フィリアはフィルの様子にこめかみに浮かんだ青筋がぴくぴくと動くがフィルは気にする事なく、ティアナに呪歌の事を聞く。
「えーと、確か……魔光石の魔力を活性化させた呪歌ですよね? あの光景は凄く素敵でした」
「……素敵かどうかは一先ず、置いておいてくれ。それに特定の魔法式を乗せて爆発の魔法式が組み込まれたものにマーキングする」
ティアナはフィルと一緒に呪歌を使い、夜空の下で魔光石が輝きだした幻想的な光景を思い出したようで目を輝かせるがフィルはその言葉を斬り捨てると呪歌を使用して魔光石の選別を行うと言い、
「ずいぶんと大掛かりだな」
「あぁ、俺の呪歌だけではたいした範囲では使えないがティアナの呪歌と併せればかなりの範囲を1度で済ませられる。一先ずはそれで選別ができるかを試す。ダメだった場合は次の手を考える」
ジオは規模の大きい魔法を使う事になったため、大変そうだとため息を吐くがフィルはまだ実験段階でしかないと言い切ると、
「わ、わかりました。わ、私、頑張ります。フィルさんの迷惑にならないように」
「……頑張るのはかまわないが気負いすぎだ。落ち着くと言う事を覚えろ。呪歌も魔法も魔術師の精神状態に大きく作用するんだ。魔術師にとって必要なのは冷静でいる事、どんな状況になっても平静を保ち、冷静に状況の分析をする事、冷静な分析のできない魔術師が居れば、仲間の足を引っ張る事になる。1人でできないと思ったら、仲間に助けを求めろ」
ティアナは先ほどフィルのケガの治療で役に立たなかった事で気負いがあるようであり、やけに気合いが入っているように見え、フィルはそんな彼女に魔術師としての心構えを教え、
「……フィルが気を使っているわ。珍しい」
「……フィア、茶化すな。ティアナ、フィルの言う通りだ。俺とフィアはフィルを信頼してここにいる」
「まぁ、口と性格は悪いけど、実力は認めてるわよ」
フィリアはフィルの言葉に驚いたような表情をするとジオはため息を吐いて彼女を止めると真っすぐとティアナを見て、自分とフィリアはフィルを信頼していると言うとフィリアは照れ臭いのか悪態を吐くが、
「同じようにティアナにも俺達を信じて欲しい。呪歌の使用中は無防備になると思う。その間は何があっても俺とフィアが必ず、ティアナとフィルを守るから」
「は、はい。お願いします」
ジオは魔術師2人を守るのは戦士である自分とフィリアの仕事だと言い、ティアナはジオの言葉に大きく頷き、
「俺とティアナの魔力量から考えると今日は選別だけで終わりになると思うがこっちの動きは見られている可能性もあるからな」
「わかってるわよ。これを企んだ本人が出てきてくれるなら、そっちの方が都合がいいでしょ。フルぼっこにして解決方法を吐かせてやれば良いんだから」
「……男らしいな」
「そうだな」
「えーと?」
フィルはこの事件を起こしている人間が現れる可能性を示唆するとフィリアはそっちの方が都合が良いと言い、彼女の言葉にフィルとジオはため息を吐き、ティアナは苦笑いを浮かべる。