第37話
「えーと、この葉と……この植物の根は食べられるし、後、この実も甘くて美味しいから一手間加えればデザートになるよね。フィルさんは考え事して疲れてるだろうから、甘いデザートでも食べれば考えもまとまるかも知れないし」
「ティアナ、詳しいのね」
食料になる植物を採取しているティアナの姿は楽しそうであり、フィリアは出会ってから初めて見る彼女の生き生きとした様子に苦笑いを浮かべると、
「す、すいません!? 私1人ではしゃいでしまって」
「いや、別にかまわないわよ。ティアナも知らないところにきて気を張っていたんだろうし、楽しんでくれてるなら……ん? フィル、実はティアナが不安なのに気づいててティアナを連れてきた? ないわ。あり得ないわ。あいつにそんな気づかいは存在しない。そんな事があったら季節が反転するわ」
ティアナは慌ててフィリアに謝るが、フィリアは故郷を出て知り合いがいないところで生活を始めたティアナのなかにある不安が解消できれば良いと思ったようだがフィルがティアナを依頼のメンバーに入れたのは彼女を元気づけるためと言う考えが頭をよぎるが直ぐにその考えはあり得ないと首を振り、
「フィアさん、どうかしたんですか?」
「何でもない。それより、これくらいにしない? あまり放れるとフィルからの魔法の援護もなくなるだろうし、日も高くなってきたからそろそろお昼も近いしね」
「そうですね。戻りましょうか。お昼ご飯の準備もありますし……えーと、フィアさん、そんなに遠くまでは来てないですよね?」
「何、どうかしたの? ……あれ? テントは?」
ティアナはフィリアが首を振っている様子に首を傾げると彼女は何もないと言い、2人はテントに戻ろうとするがティアナが振り返ると先ほどまであったはずのテントがなくなっており、2人は状況が理解できないようで顔を引きつらせる。
「フィ、フィアさん、どう言う事ですか?」
「わ、私だってわからないわよ。だってさっきまで、テントは見えてたでしょ。それなのに少し話をしている間に無くなる? そんなわけがないでしょ? ……そ、そうよ。あの2人がいたずらを」
「ジオさんはまだしも、フィルさんがそんな事をすると思いますか?」
「……絶対にあり得ないわね」
ティアナはフィリアに何があったのかと聞くが、当然、フィリアもわかるわけはなく、残っていたフィルとジオの2人が何か悪戯をしていると思ったようだがティアナはフィルがそんな事はしないと言うとフィリアも彼女と同じ答えに行きついたようで頷くと、
「だとしたら、これはどう言う状況なの? フィルの魔法? だとしてもなんの意味があって?」
「あれ? ちょっと待ってください。昨日、何か聞いたような? ……あ? フィルさんが使っている結界は同時に幻術で視界から認識できなくするって? あの狼さんが私達に襲い掛かってこなかったのもそのためだと思います」
「えーと、それって、幻術を破れなければテントにたどり着けないって意味?」
「た、たぶんですけど」
フィリアはフィルの魔法に原因があるのではないかと言うとティアナは昨日の夜に現れたフードの男がフィルの魔法について話していた事を思い出し、フィリアはティアナの言葉に顔を引きつらせ、ティアナは苦笑いを浮かべる。