第31話
「あ、あの。フィルさん」
「寝ていろ。いろいろとあり過ぎたからな……フィア、付いていてやれ。俺は戻る」
「あ……」
フィルはテントの中にティアナを下ろすとフィリアに彼女を任せて自分は魔光石の分析に戻ろうとするがティアナは不安なのか出て行こうとするフィルの服をつかむと、
「フィル、あんたに付いていて欲しいみたいだよ。私とジオは少し、外を見張ってるからあんたも少し休みなよ」
「……あのなぁ。時間がないと言っているだろ」
「そう言うな。時間はないと言ったってお前以外にこいつの分析をできる人間はいないんだ。無理をしてぶっ倒れられたら何も進まないんだ。ティアナが落ち着くまで一緒にいてやれ」
ジオとフィリアはティアナの様子にニヤニヤと笑い、フィルとティアナを残してテントから出て行き、
「……あいつらは何がしたいんだ?」
「あう……」
フィルは2人の行動の意味がわからないようで眉間にしわを寄せて言うがティアナは少し前にジオとフィリアにからかわれた事を思い出して顔を赤くしてうつむく。
「まぁ、ジオの言う事も一理あるが……別に話すような事もないしな」
「そ、そうですね。あ、あの。さっきの人に心当たりはないんですか? あの人はフィルさんとジオさんの事を知っていましたけど」
「知らんが……今回の件には関係ないだろうな」
フィルはこれと言って話す事もないと言うと目を閉じて自分の疲労度の確認を始め、ティアナはフィルの言葉に少しだけ残念そうにうつむいた後に先ほど現れたフードの男の事を聞くとフィルは男は魔光石を生成している人間ではないと言い、
「ど、どうしてですか? あんなフードをかぶって怪しさ全開じゃないですか」
「……だからだ。普通に頭が回る人間なら、あんな目立つ、明らかに不審な格好をするか。どちらかと言えば愉快犯の類だ」
「ま、待ってくださいよ。愉快犯の類って何の目的があるんですか? あんな風に攻撃……してませんね?」
ティアナは明らかに不審者だと言ってフィルの言葉を否定しようとするが男は口ではフィルを挑発したが攻撃らしい攻撃は何もしていない事に気づき首を傾げると、
「去り際の言葉の通り、顔見せのつもりだったんだろ。魔光石にも興味はないと言っていたしな。それに……」
「それにって他にも何かあったんですか?」
フィルは男の行動にいくつかの疑問があるようで眉間にしわを寄せているとティアナはフィルに聞き返し、
「……ジオの攻撃を防いだ魔法障壁に心当たりがある。少なくともあの魔法障壁を使う人間がわざわざこんなくだらない事をするんだ。厄介な事になる事は確かだ。こんなものよりもっと厄介な事が起きる気がする」
「厄介な事ですか?」
「あぁ。敵だろうと味方だろうがな……まぁ、わざわざ、こんな悪趣味な事をしてくるんだ。持ってくる事は厄介な事以外にないだろ」
フィルの眉間のしわはさらに深くなって行き、面倒な事になりそうだと言うがティアナには見当もつかないため、首を傾げたまま聞くとフィルは面倒だと言いながらも口元は小さく緩んでおり、
「落ち着いたな。俺は戻るぞ」
「え? で、でも、休憩をしなくても良いんですか?」
「充分に休んだ。ジオ、フィア、何を期待していたか知らんが邪魔だ。後はお前達が付いていてやれ」
目を開くとティアナが話をした事で落ち着いたと判断したようでテントの出入り口まで移動すると中の様子をうかがっていた2人に声をかけた後、外に戻って行き、
「ジ、ジオさん、フィアさん? な、何をしているんですか!!」
「……まったく、騒がしいな」
ティアナはジオとフィリアの顔を見て顔を真っ赤にして声をあげるとテントの中から聞こえるティアナの声にフィルは彼にしては珍しく優しげな笑みを浮かべる。