第30問
「……満足するものか」
「フィ、フィルさん、どうするんですか?」
「そうだな。一先ずは時間でも稼ぐか?」
フィルは男の言葉に挑発される事はないが、ティアナはどうしたか良いかわからないようで不安そうな表情でフィルの服をつかんでいる手に力を込めるとフィルはあまり深く考える事なく『時間を稼ぐ』と言った時、
「ほう。そうきますか? 面白いですね。流石はジオ=ブリッツ。フィル=ユークリッドの相棒と言われるだけありますね」
「いやいや、まさか、こっちも防がれるとは思っていなかったよ。多少時間がかかってもフィルに魔法障壁を破壊できる支援魔法を受けとけば良かったよ」
「ジ、ジオさん!?」
男の背後の空間が割れると同時にジオが男に斬りかかるがジオの剣は男には届く事はなく剣は魔法障壁に弾かれ、男はジオの登場にわざとらしく驚いたような声をあげるとジオは自分の剣を弾くほどの魔法障壁を用意していたであろう男の警戒心を誉めるように口元を緩ませるがティアナは何もなかった空間からジオが現れた事に驚きの声をあげるなか、
「フィル、ジオ、いったい何なんのよ!! 人がせっかく良い気持ちで寝てたのに!!」
「「「……」」」
この騒ぎのなか気にする事なく眠っていたフィリアがテントの入口を開けて吠えるとこの状況にまったく気づいていなかった彼女の様子にフィルとジオだけではなく男まで呆気に取られたようで一瞬、時間が止まり、
「……恐ろしい仲間がいますね」
「……言うな」
男はこのシリアスな空気を完全に破壊したフィリアの登場に苦笑いを浮かべると先ほどまで張りつめていたピリピリとした空気は吹き飛んでしまい、フィルはフィリアの事が恥でしかないと思ったようで大きく肩を落とす。
「あ、あの。フィルさん、今はどんな空気なんですか? さっきまでの張りついたような」
「……気にするな。あっちもやる気がなくなったみたいだからな」
「フィア、お前、天才だよ」
「何、ふざけた事を言ってるのよ? ……誰?」
ティアナはフィルと男の様子に言いづらそうにフィルに今の状況を聞くとフィルは眉間にしわを寄せて男も自分達もすでに戦う気はないと言うとジオはフィリアを小バカにした時、フィリアは初めてフードを被った見知らぬ男がいる事に気づき、男を指差して首を傾げると、
「通りすがりのフードの男で良いだろ」
「そう? って、待ちなさいよ!! めちゃくちゃ、怪しいでしょ!!」
「そ、そうですよ。さっきまで本気でころ……」
フィルは興味がなさそうに答え、フィリアは流れで納得しかけるが直ぐに声を上げ、ティアナはフィリアに同調しようとするが先ほどまで、フィルとジオが男を殺そうとしていた事に気づき、顔を真っ青にすると腰が抜けたようで地面にへたり込んでしまい、
「可愛いお嬢さんですね。私はこれで失礼しますよ。フィル、ジオ、また『いつか』」
「き、消えた!? フィ、フィル、ジオ、あいつは何なのよ!! 説明しなさいよ!!」
「……知るか。それより、ティアナ、立てるか?」
「は、はい……あれ?」
「まったく」
「あ……」
男は最初からフィルとジオへの顔見せ程度に現れたのか2人に向かい、再会を約束するかのように言うと男の立っていた空間は歪み始め、男の姿は消えて行き、フィリアは何があったかわからないようで声をあげるがフィルは答える気はないようでティアナに声をかけるが彼女の腰は抜けたままであり、フィルはティアナの様子にため息を吐くと彼女を抱きかかえてテントの中に運ぶ。