第2話
「……あ、あの。フィルさん」
「……何だ?」
「さ、さっきのはやり過ぎじゃないでしょうか」
フィルは不機嫌そうな表情のまま、それでもティアナに学園の施設の説明をしていると不意にティアナがフィルの名前を呼び、先ほどの彼の行動を少しだけ責めるように言うが、
「……そう思うのは勝手だが、お前もそのうち、同じ事を言われる事になる。あいつらにとって戦場は前線であり、剣や槍で敵と戦う事なんだ。俺やお前の能力はあいつらにとっては飾りであり、卑怯者でしかない。そう……昔からな」
「で、ですけど、フィルさんの魔法は素晴らしいものじゃないですか。それにそれが無ければ私や私の村の人達は」
「全滅していたな。自分達の勝手なプライドで助けを請う事もなく策もなく魔物に突っ込むだけの剣士達。それを援護し、魔法により魔物を退けた魔術師達のが多くいたが、手柄は全部、村人の前で命を賭けて戦った奴らのものだ。別に感謝をされたいとも思わないがな。たいした役にも立っていないバカどもにでかい面をされるのは気に入らない。あのバカどもは自分達が盾になったおかげで俺達魔術師が魔法を唱えられたとでも言いたげだったがな。俺達から見れば目の前を飛びまわる羽虫でしかない」
「そんな事はありません。フィルさん達も前で戦ってくれた人達がいたから私は生きていられるんですから」
「……違うな。お前に関しては俺もあいつらも何もしていない。くだらない事を言っていないで先に進むぞ。少なくとも今日中にお前が所属する学部を決めなければいけないんだからな」
フィルはティアナの言葉に自分やティアナの能力は疎まれるものだと言うと少しだけ寂しそうに笑うがティアナはフィルの表情の変化に気づく事はなく、フィルの力が自分の命を含めた多くの村人の命を救ったと言うが世間はそうは見ないと言うと村人の感謝の声を受け、英雄気取りのバカどもが気に入らないと言い切るとティアナがこの学園でティアナが所属する学部を決めないと行けないと言うと、
「魔法学科ではないんですか? 私はこの力でこの学園に特待生として呼ばれたはずじゃ」
「……お前は誰かを守りたいんだろ。それなら、選ぶべきは魔法学科ではない」
「一緒です。どこの学科でも私はフィルさんのように守る力を手に入れたいです。私の力は守るための力じゃないですから、フィルさん達に守られてこそ使える力。フィルさんのように強くあろうとする人とともにある事で使える力ですから、私は剣を持つ力も弓を引く力もありません。自慢じゃないですけど私、運動神経はないんです」
「……胸を張るな」
ティアナは自分の能力から魔法学科に進むものだと思っていたようで首を傾げるとフィルは自分達魔法学科生の置かれている立場から選択するべきではないと言うとティアナはフィルの顔を見てにっこりと笑うと自分には先陣を駆ける才能はないと胸を張り、そんな彼女の様子にフィルは眉間にしわを寄せてため息を吐いた後、自分と同じく才能のないにも関わらず、笑顔を見せる姿に小さく口元を緩ませ、
「そう言うなら、後は勝手にしろ。俺は忙しいからな。せいぜい、守ってくれる仲間でも探せ」
「な、何でそうなるんですか!? 待ってください。同じ魔法学科になるんですから、アドバイスをしてください」
「悪いな。魔法学科と言っても俺にはすでに学園で学ぶ事はない。俺は自分の研究室に戻る」
「け、研究室? って、ひょ、ひょっとして、フィルさんはすでに先生なんですか?」
「……何だ? 知らなかったのか」
「そ、それなら、私をそこの研究室に置いてください。知らない人しかいないところに1人でいるのは不安です!!」
「悪いな。俺の研究室は人を受け入れてない。邪魔でしかないからな」
「そ、そんな事を言わずにお願いします」
ティアナに向かい、付き合うのはここまでだと言うと自分の研究室に戻ると言い歩きだすとティアナはこの学園に知り合いがいないため、唯一の知り合いであるフィルに泣きつき、フィルはティアナを引きずりながら研究室に向かい歩き出す。