第25話
「……で、フィル、あんたは何がしたいの?」
「治癒の呪歌はティアナしか使えないんだろ?」
ティアナが落ち着いたのを見てフィルが歌うのを止めるとフィリアはフィルの考えがわからないようでフィルの腕を指で突くとジオもフィルがティアナと呪歌を合わせた理由を聞くと、
「……前にも言ったが、治癒の呪歌はティアナだけだ。俺には使えない」
「でも、同じ曲でしょ」
「曲はな。だけど、効果が出るまでの過程が違う。俺や一般的に使われる呪歌は曲や音階に魔力を込めるんだ。だから、呪歌はいくつか種類があるんだが、ティアナの場合はそうじゃない。本人は無自覚、曲もバラバラだが呪歌になる」
「それって歌うまで効果がわからないんじゃないの?」
フィルは自分は治癒の魔法を使っていないと言うと現状ではフィルにもティアナの呪歌の原理はわかっていないようであり、フィリアはその中でティアナが治癒の呪歌を使える事に首を傾げる。
「あの曲だけは確立させただけだ」
「……そんなものなの?」
「今のところ他の呪歌は効果がわからんからな」
「……それはそれで危ないわね」
フィルはティアナがまともに使える呪歌は限られていると言うとフィリアは顔を引きつらせると、
「まぁ、基本的に呪歌には攻撃系があるわけじゃないからな。時間をかけてパターンを見つけさせれば良いだろ。それで、あの曲は俺が使う呪歌では精神を落ち着かせる呪歌に近いものがあったからな。最初に合わせただけだ」
「ティアナがやけに落ち着いているように見えるのはそのせいか」
「あぁ。あのままだといつまでたっても先に進まないからな」
フィルはティアナの歌に集中するように目を閉じると彼女を落ち着かせるために自分も呪歌を使ったと言うとジオは苦笑いを浮かべ、フィルは目を閉じたまま頷くと、
「……フィル、あんた、ただ、ティアナの歌が聞きたいだけだったりしない?」
「そんなわけがあるか……もう少し時間がいるか。無駄に魔力を使ったからな」
「無駄ね? あんたが最初に説明をしてから動けば、私やティアナだって安全な場所にいるわよ」
「まぁ、近くに居なければ、狼に斬りかかって魔法の効果を破壊していた可能性も高いけどな」
「……ジオ、余計な事を言わないで」
フィリアはフィルの様子にフィルがティアナの歌を聞きたいだけじゃないかと言うとフィルは呆れたようなため息を吐くと自分の中の魔力の残量を確認しているようで小さな声でつぶやくとフィリアは原因はフィルにあると言うがジオはフィリアの行動が予測できたようで苦笑いを浮かべるとフィリアもジオの言葉に自分でも同意できる部分があるようで気まずそうに視線を逸らし、
「それで、フィル、これには何の意味があるんだ?」
「……ティアナの治癒の呪歌は体力だけではなく、魔力も癒す効果がある。これは他の魔法にもない効果だ。お前らは普段、魔力を使わないから実感がないだろうけどな」
「ティアナの呪歌ってかなり凄いって事?」
「……最初からそう言ってるだろ。一先ずはここまで戻れば充分か」
ジオは苦笑いを浮かべたまま、ティアナに呪歌を使わせた理由を聞くとフィルはティアナの呪歌には体力以外にも魔力を回復する事が出来ると言うと必要な魔力が戻ったようで目を開く。