第24話
「実際はわからないがな……」
「なら、どうして、そんな風に脅しをかけるのよ? そんな風に言われると不安になるでしょ?」
フィリアとティアナが戦争が起きてしまうと心配そうな表情をする隣でフィルは興味などなさそうに魔光石を眺めているとフィリアはフィルの様子が不愉快なようで彼を睨みつけるが、
「……最悪の状況を見据えて何が悪い。最悪を見据える事はそれを回避する道を模索する事につながる。勝手に自分の都合の良い答えを選ぶよりはマシだ」
「だとしても、あんたにはその後のフォローってものはないの?」
「……知るか。少なくともそんなものよりは今はこれをどうにかする方が先だ……植物の枯れている場所の土を確認した限りではこの中に精霊達が引き寄せられ、捕えられているはず、なら、その原因の魔法式の分析、解析が先決だな。ティアナ」
「は、はい!?」
フィルはフィリアの言葉をくだらないと切り捨てると事前に立ててきた予想から次の行動に移るようでティアナの名前を呼ぶとティアナは先ほどからほとんどの事をフィルが1人でやっていたためか自分のやる事など何もないと思っていた部分もあったようで声を裏返すと、
「……ティアナ」
「い、いえ、すっかり、自分が付いて来た理由を忘れていたわけじゃないですよ!? え、えと、大丈夫です。問題ないです!?」
「それは忘れたと言っているようなものだよ」
フィルは眉間にしわを寄せ、ティアナは慌てて弁明しようとするが次の言葉が出てこなくジオは苦笑いを浮かべる。
「……とりあえず、役目をある事は思い出したか?」
「は、はい」
「そうか。それなら、呪歌を頼む。治癒の効果のある奴だ」
「そ、それで良いんですか? もっと凄い事とか」
フィルは呆れているのか眉間にしわを寄せたまま、ティアナに彼女の異質の能力でもある『治癒の呪歌』を使うように言うとティアナはもっと難問を指示されると思っていたようで少し間の抜けた表情で聞き返し、
「……お前にやれる事などたかが知れてるだろ。だいたい、他の事なら俺1人で事足りる」
「そ、そうですね。それでは……」
フィルはため息を吐くとティアナはフィルの機嫌を損ねるのはいけないと思ったようで緊張した面持ちで大きく深呼吸をすると、
「……あまり気を使うな。呪歌は使用者の精神状態に作用するからな」
「は、はい!?」
「……逆効果っぽいぞ」
「そうね」
フィルはティアナの様子に今の状況ではまともな呪歌を使えないと判断したようでフィリアの先ほどの言葉もあるのかティアナに声をかけるがその声にティアナは驚きの声を上げて声を裏返すため、ジオとフィリアは彼女の様子に苦笑いを浮かべ、
「す、すいません。すぐに」
「……まったく、曲はこの間、学園に初めて着た日の曲で良いな」
「あれ? フィル、あんたも歌う気?」
「仕方ないだろ。魔力の無駄使いではあるがこうでもしないと先に進まない。ティアナ、最初だけだからな。ある程度、したら、1人で歌え」
「は、はい。あれ? で、でも、フィルさんは治癒の呪歌は使えないはずじゃ」
「……良いから、早くしろ」
「は、はい」
ティアナはジオとフィリアの表情にさらに追い込まれて行くため、フィルはティアナを落ち着かせるために先行して呪歌を歌うと言うとティアナは治癒の呪歌は自分だけの能力だと言う事を思い出すがジオからフィルの魔法の実力も聞かされているため、フィルなら使えると思ったようで大きく頷き、陽が落ちたグラン大平原には2人の声がキレイに合わさった呪歌が響く。