追放された錬金術師、辺境で神扱いされる〜今さら国が滅びそうだから戻れと言われても、もう遅いです〜
最後まで読んでくださると嬉しいです!
最後には主人公ロイドの正体が明かされます!
「お前のようなガラクタしか作れない無能は、我が宮廷には不要だ!」
ロイドは優秀な宮廷錬金術師。
しかし、ある日宮廷錬金術師長であるバルト伯爵に宮廷を追放されてしまう。
「な、なぜでしょうか?!僕は何も悪いことをしておりません!心当たりもございません」
師長室で、ロイドは机の前に立つバルド伯爵に向かって叫んだ。
ロイドは人一倍仕事も頑張っていたし、なにも悪いことなどしていない。
「口答えをするな!これだかは、平民は…お前は私達の仕事を奪ったばかりか、その手柄を自分自身のものとし、普段は怠けていて職務放棄をしていたそうじゃないか!」
バルド伯爵の息が乱れ、肩が激しく上下に動く。
その顔には青筋が浮かび上がっていた。
バサッッッッ!!!!
机の上に置かれていた書類とインク、羽ペンが払い落とされる。
床にはインクが溢れ、絨毯を黒く染め上げた。
「そんなことはありません!それは、ジャックとデイビットの方です!僕とあの2人では立場が真逆です!」
ロイドは、激しく反論をした。
実はロイドの意見が正しいのだ。
「様をなぜつけない!ジャックは子爵家、デイビッドは侯爵家の子息ではないか!身分が上のものには敬意を払え!もう、そんな常識も知らんバカは宮廷には必要ない!もう、国外に追放してやる!」
ロイドはバルド伯爵にとてつもなく理不尽なことを言われてしまう。
バルド伯爵はもう感情的になりすぎて話が全く通用しない。
「申し訳ありません。バルド伯爵様…貴方様の命に従い、僕…いえ私は国外へと向かいます。現在、作成しているのも含めすべて荷物として持ってゆきます。二度と戻ってきません!今までおせわになりました」
ロイドはバルド伯爵を相手にする時間が無駄で気力と体力をつかうだけだと判断した。
ロイドが命に従うと、重い空気で部屋中が満たされた。
「ふっん!最初っからしおらしくしておればよいのだ」
バルド伯爵は腕を胸元で組む。
その顔はとっても嫌な笑顔である。
ーバッタン!!!
ロイドは扉をいつも以上に丁寧に閉める。
「ふ~よっし!荷造りするか」
ロイドはそのまま自室へと向かった。
「こちら、離職届です!昨日国外追放だとおっしゃっていたのでお渡しいたします。まさか、出まかせなんかではありませんよね?」
ロイドはバルド伯爵が出廷してきた瞬間に離職届を手渡した。
ロイドの背には大きなリュックサック。片手には大きなカバン。
「誰が出まかせだ!確かに受け取った。即刻このベリーブ王国を立ち去れ!」
バルド伯爵は大声で言った。
そして、ロイドから受け取るよりは奪うという表現が適切かのような受け取り方をした。
「あら、みじめですわね~」
「なんだか悪いことをしたんだってよ......」
「まぁ、ひどい!」
「貴族に敬語を使わないからだな!」
「これだから平民は嫌ですわ」
周囲の若い使用人から声が上がる。その声の大きさはロイドに丸聞こえだった。
「では、今から即刻国外に立ち去りますね!」
ロイドは笑顔で荷物を持っていないほうの手を大きく振った。
その瞬間周囲のは静まり返った。
「ロイド!待ってくれ…国外追放は本当なのか?」
ロイドは宮廷の裏口から出ようとしていたところにロイドの唯一の親友であるコールだ。
コールはロイドと同じ宮廷錬金術師で平民だ。それゆえにとても仲がいい。
「あぁ、本当さ!いつか会おう?」
ロイドは涙を隠すために笑顔でコールに向かって振り返った。
しかし、その声はコールにもわかるほどに震えている。
「そうだね!うん、いつか会おう!」
コールはロイドの意図を汲み取り、笑顔で返した。
その声もまた震えていた。
ロイドはそのまま馬に乗り、隣国に向け出発した。
「よし!この辺でいいか」
しばらく馬を走らせ、少し広くなっている道に馬を止め、手綱を木につないだ。
「え~っとどこにあったけ?」
ロイドは背負っていたリュックサックをごそごそとあさる。
「あ、あった!これだ」
その手にはリンゴ3つが入るくらいの麻袋がある。
「全部入れちゃおう!」
ロイドは麻袋にリュックサックとカバンを放り込んだ。
「作っておいてよかった!この『何でも無限に入る袋』を!」
実は、これはロイドが作ったものの中でも10本の指に入るほどの傑作なのだ。
容量は無限でなんでも入る。
でも、ひとつだけ入らないものがあってそれは、命がある生き物だけ。
そして、何よりも素晴らしい機能が内部が入れた瞬間から時が止まっており、そのまま入れた時のままの状態で取り出せるのだ。
つまりは生鮮食品を入れても腐らないのである。
永久に保存が可能なのだ。
「入れたよね?行こう!隣国レガリア帝国へ」
そのままロイドは馬を走らせて隣国の国境へと向かった。
「入国申請証は?」
休憩を繰り返しながら丸5日。ついに帝国と王国の国境へと到着した。
「これですか?どうぞ」
ロイドはバルド伯爵がくれなかったので、自身で外交部に交渉しもらっていたのだ。
帝国は不法侵入者の取り締まりが厳しいことで有名なので、ロイドは事前に準備することにしたのだ。
「お前ベリーブ王国の宮廷錬金術師だったのか?!」
門番が驚き叫ぶ。
入国申請書には当然理由も明記せねばならないのである。
そして、その理由は外交部の立会いのもと記載する。
「はい」
ロイドは門番があまりにもゆっくり丁寧に確認をするのでだめだったのではないかと焦っていた。
「旅とは立派だな!材料を探しにだと?お前さんいくつだ?」
門番は最後まで読むと、笑顔で顔を上げて聞いてきた。
「僕ですか?僕は今年で23です!」
ロイドはどんな個人情報だろうと、国外追放されたということ以外ならすべてを正直に答える気でいた。
「なんだ!俺の20下だなぁ~いやぁ関心だ!入国を許可するぞ!あと、聞きたいことがあったら聞けばいい。今のうちだぞ?」
ロイドは門番のその言葉を聞き、心の中で安堵していた。
この申請書は外交部というベリーブ王国の専門機関が発行している偽造が不可能なものであり、普通なら数日かかるところを内容を読み矛盾や気になる点がなければ即日入国が可能という優れものなのだ。
「あの~それなら、僕にお勧めの職と貴方のお名前を知りたいです」
ロイドは何でもいいと言われたので職を聞いた。
職がなければ食べていけないし、材料を集めるお金も旅をする路銀も足りない。
今は、職を探しお金を貯めるのが最優先だと判断したからだ。
「俺はフルシュだ!職か~技術が高いと有名のベリーブ王国で宮廷錬金術師だったんだろう?なら腕はそこら辺の奴より確かだな......」
門番の男はフルシュというらしい。
「あ、ここはなレガリア帝国ブリュッセリア領っていう辺境だ。それは知ってるな?」
フルシュは何か確認したいみたいだ。
「大丈夫です!」
ロイドはここがブリュッセリア領であるということはもちろん知っている。
なぜなら、ロイドは国外追放だと言われた時からこのレガリア帝国に来ると決めていたからだ。
なぜかというと、ロイドは幼き日に母と約束したからだ。
「お前さんは、ランプを作ったりくず鉄から金や魔晶石に変えることはできるか?」
フルシュが今言った内容は実は、ロイドが以前宮廷錬金術師だった時に行っていた業務そのままなのだ。
「出来ると思います」
ロイドは大きくうなずいた。
当然である。今まで行っていた業務をそのままするだけなのに。
「知ってるとは思うが、魔物は光に弱い。だから、一晩中明かり......街頭をともさなくてはならないのだ。だから、ランプとその燃料の魔晶石は必須なのだが、実は今まで作っていた方が9日前に腰をやっちまってできなくなってしまってな。今はぎりぎりで回しているのだ。だから、急募を実施している。するか?」
それは、ベリーブ王国も同じなのだ。
なんなら、レガリア帝国よりもベリーブ王国の方が魔物は多いかもしれない。
「もちろんです!それはどこにありますか?」
ロイドは食い気味に答えた。
実はロイドは地味でコツコツする作業が大好きなのだ。
「あ~すまない。それは俺の担当ではなくてな、実はブリュッセリア辺境伯直属の商業ギルドにあるぞ。そこに行ってくれ。まぁ、お前さんの経歴なら不合格はまずないだろうな!ここをずっとまっすぐ行って、途中の大きな噴水がある十字路があるからそこを右だ。で、左側にあるぞ!看板があるからわかるだろう」
フルシュは丁寧に教えてくれた。
「ご丁寧にありがとうございます!」
ロイドは満面の笑みで答える。
あの麻袋を持ち馬の手綱を握り言われた場所に向かった。
「何かあったら『国境門副師団長フルシュ』って言え!」
フルシュはロイドが馬に乗ると、そう言った。
「え~フルシュさんそんな立場だったんですか!あ、でもじゃないと即日入国許可とか出せないか…」
ロイドは馬から落ちそうになるほどに驚いた。
しかし、自分で勝手に納得していた。
「ま、そういうことだ!」
フルシュはニカっと歯を見せて笑った。
それにつられるかのようにロイドも笑う。
「まっすぐで、あ!噴水だこれを右で左側にわかりやすい看板…え~っと!あった!『商業ギルド』ここだね」
ロイドは馬を降り、手綱を繋げる。
「すみません!ランプ作成の求人があると聞いたんですけど......?」
中に入るとたくさんの人がいた。
どうやら酒場と受付そして取引の場が同居しているようだ。
「は~い!ランプの求人ですか?!ありがとうございます。こちらに記載お願いします!」
奥から出てきたのは10代後半から20代前半くらいの女性だった。
「こちらには、氏名・出身地・得意なこと・あれば前職・自由記入欄がございますよ!きちんと記入してくださいね。でなければ罰を受けてしまいますから!」
女の人は求人の紙と応募の紙を出してくれた。
◇◇◇◇◇◇
氏名 ロイド
出身地 ベリーブ王国・王都
得意なこと 錬金術と鑑定
前職 ベリーブ王国宮廷錬金術師
自由記載欄 研究の許可と衣食住の保証。
◇◇◇◇◇◇
ロイドはさらさらと紙に目を通し、記入をした。
「はい!確かに......ってえ?!宮廷錬金術師様だったんですか?!」
受付の女の人はひどく驚いていた。
バサッ、バッツサァァァァアアア!!
横にあった書類の山が崩れ落ちる。
「へ?うっわ!すみません!お騒がせしました。」
受付の女の人は、書類を後で片付けることにしたようだ。
「ちょっと自由研究欄の確認を致しますね~!しばらく呼ばれるまでそちらのソファでお待ちください!」
ソファはベンチ型のものだった。
まだ新しいようで木のいい匂いかする。
「ロイド様~!お待たせしました。危険なことを研究しない限りは大丈夫だと辺境伯様が。そして、衣食住を保証するにあたって、こちらの商業ギルドで住み込みでの職員としてランプの制作と、魔晶石の交換をお願いします。」
女性は紙1枚を勝手に戻ってきた。
その言葉を聞いてロイドは今にも飛び上がりたくなった。
「ランプ関連の費用はこちらに請求してください。そして、辺境伯様が特別に働いた分と出来栄えに応じて基本給金に加え研究費を出してくださるそうです!」
「え?」
ロイドは言葉を失い固まってしまう。
好待遇すぎるのだ。
しかし、それだけ大切な仕事ということなのだろう。
「では、施設はこの私リサーナがご案内しますね!」
その女性はリサーナという名らしい。
とても花があり可愛らしい人だ。
先ほどからロイドは男性陣からただならぬ視線を感じているが、それはこのリサーナのせいなのだろう。
「こちらが、肝心のランプ工場ですね~!では、お願いします!今日からでも構いませんよ?」
一番最後がランプ工場だった。
そこには前任者が使っていたであろう錬金術用の窯と大量の材料、そして魔晶石切れの街頭の上部分が山になっている。
「今からします!ありがとうございます!」
ロイドのその声はいつもよりも高く目は輝いていた。
「誰じゃ?リサーナその男は」
奥から杖を突いた老人が現れた。
「セバスさん!腰は大丈夫ですか?こちらはロイドさん。今日から働いてくれることになりました!前職は宮廷錬金術師様なんですよ!」
リサーナはロイドの紹介をそのセバスという老人に言った。
話しぶりから、この老人が9日前に腰を痛めた方なのだろう。
「おぉ!そうか。これでようやく儂も引退できるのぅ!」
セバスという人はとっても喜んでいた。
ただ、杖を振り回すのはやめてほしい。怖いし危ない。
「ロイド、陛下の若い頃にどこか似ておるな......?気のせいじゃろう!」
陛下とはこのレガリア帝国の皇帝だろう。なぜロイドは似ているのだろうか。
ロイドは緑の髪に茶色の瞳というありふれた色だ。
実は、ロイドの母親も同じである。
それが、陛下も同じだったということなのだろうか。
「ありふれた髪と瞳の色ですよ!」
ロイドは笑い飛ばす。
その後、しばらく雑談が続いた。
セバスはおしゃべりが好きなようで、一度話し出したら止まらない。
さすがにこれは疲れる。
結局今日は作れず、いつの間にか翌朝になっていた。
「さてと、はじめるか!場所を確認してっと!よし!略式でいいか」
ロイドは窯にくず鉄をあふれんばかりに入れた。
「我が希求の極み、かの黒鉄を魔力を秘めたる晶石へと変ぜん。微たる魔力よ、此の黒鉄の髄に融け融め。器よ、等しき分量の魔晶へと、その位を斉えよ。」
ロイドは混ぜる特殊な棒伝いに少量の魔力を注ぎ込んだ。
すると、一気に明るくなる。
「できた!これを、街頭に入れて、よし!出来た!この調子でいこう」
ロイドは慣れた手つきで進めていく。
「にしてもノルマ無いのいいなぁ~追われなくていい!以前は一日のノルマ5000個だったからな~!」
独り言を言いながら手も動かす。
ロイドは様々な人に魔晶石作成を押し付けられていたので、作成するスピードが桁違いなのだ。普通の宮廷錬金術師でも一日500~1000個だ。つまり、ロイドは頭何個分も抜けている。
「ロイドさん~!本日分の回収に来ました」
リサーナが扉を開ける。
「あれ?もうそんな時間なの?一日が終わるの早いね」
ロイドは窓の外が薄暗くなっているのを見た。
「はい!本日のはどちらに?」
リサーナも帰る時間のようで、早く回収したいようだ。
「え?そこの木箱13個全部だけど?あ、そうそう材料がもうあんまりないんだよ......届けてほしいって、リサーナさん?」
ロイドは横でうつむいて肩を震わせているリサーナを見て驚く。
「ロイドさん!すごすぎますよ!男衆に回収してもらうので、そのまま今日はもういいですよ!明日の朝には材料を置いておきますね!この部屋に入らなくなるくらいに!念のために」
リサーナはそういうと、ものすごい勢いで部屋を出て行った。
「え?って、僕の手鉄くさいな~!洗おう!」
ロイドもそのまま部屋を出た。
「ロイドさん!どうやったら魔晶石1か月も消えないんですか!」
今日もいつも通りリサーナがロイドのもとへとやってきた。
最近言われるのはこればかりだ。今日でここに来て1ヶ月が経過した。
「え?普通に1ヶ月半はそのままでしょ?」
ロイドはきょとんと作業の手を止め、首を傾げた。
「そんなことないんですよ!」
リサーナは前のめりになって力いっぱい叫んだ。
「で、辺境伯様と陛下のところに呼ばれました!辺境伯様は今日で陛下は半月後です!」
リサーナが言った言葉に驚きすぎて、ロイドは手に持っていた魔晶石を落とす。
その口はぽっかりと空いたままだ。
「うっそぉおぉぉぉぉぉ!!!!えぇぇぇぇぇぇx!!!!!!!!!!」
ロイドは叫んだ。
「うるさいです!ついさっき私に叫ぶなっていったばかりではありませんか!」
リサーナは耳をふさぎながら答えた。
その顔は頬っぺたがパンパンだ。
「あ、ごめんって!」
ロイドは手を口に当てて動揺を隠しきれていない。
「ロイドさん!きちんとした服を着ましたよね?もう辺境伯様いらっしゃってますよ!」
翌日の朝、ロイドは少しこぎれいな服を着た。
ロイドはリサーナの言葉を聞いて目を疑った。
この商業ギルドに辺境伯がわざわざ来ているというのだ。
ロイドは、てっきりこちらが出向くものと思っていたが、辺境伯がわざわざ来てくれたようだ。
「おぉ!其方がロイドか!本当にありがとう。ランプを作ってくれて。それでだな、陛下がお会いしたいとおっしゃっておられる。」
座っていたのはフルシュと同じくらいの男の人だった。
身なりのみでなく、その雰囲気から上品さが伝わってくる。
「身に余る光栄でございます。承りました。」
ロイドは辺境伯の横で膝をついた。
「かしこまらなくていいから、前に座りなさい」
辺境伯は目の前にある椅子を指さした。
「ありがとうございます。ブリュッセリア辺境伯様」
ロイドは丁寧に座った。
「ロイド、君はどうして宮廷錬金術師という職から離れたのだ。平民でありながら若くしてその職などとても名誉なことではないか。よっぽどの腕前なのだろう?」
辺境伯は初めから本題を出して来たようだ。
これは、誰しもが疑問に思っている。
実は入国申請書にも書いていないし、ベリーブ王国はこのことを徹底的に隠蔽しているようで、調べても何も情報が出てこないらしい。
「実は、ありもしない罪をかけられて国外追放されここに流れ着き門番であったフルシュ様にこの職を紹介していただきました」
ロイドは伝わりやすいように完結にまとめた。
「ほぅ......もっと詳しく聞かせろ!」
辺境伯の言葉で空気が震える。
表には出さないようにしているようだが、相当怒っている。
ロイドと辺境伯の会談というよりは事情聴取が始まった。
ロイドは聞かれたことに対して真実を返していく。
「ロイドでは、作ったランプを見せてもらうぞ」
辺境伯はランプを手に取り、じっくりと見ていた。
「あの噂は......ふふふ、あはははっ!」
辺境伯が大声で笑いだした。
側近やリサーナそしてロイド皆が肩を上にはね上げて驚いた。
「神の職人か、伝説級か!ロイド、お前本当に頭のねじ吹き飛んでるだろ!いい意味でな......」
実は、ロイドの作ったものは伝説級の品質となっていたのだ。
そのため、やたら長持ちする。
あまりにも長持ちするため領民からの噂で神の職人と言われているのだ。
「あ、ありがとうございます?」
ロイドは辺境伯のその言葉が何を意味しているのか理解できず、首をかしげながら、とにかくお礼を言った。
「アッシュ!ベリーブ王国に対し我が領から輸出している武具の数を3分の1に変更しとけ。理由は領地で必要数が増えたからだ。いいな?」
辺境伯は背後に控えていた側近に言った。
側近は一瞬戸惑っていたが、頷き部屋を出る。
おそらくあの人がこのブリュッセリア辺境伯領の文官なのだろう。
ロイドは話についていけない。
「まぁ、とにかく半月後だな......その時私とセバスが感じた違和感の正体もわかるだろうさ!」
違和感とは何だろうか。
ロイドは検討すらもつかない。
ー半月後の早朝
半月前に告げられた“王城へ向かう日”が、とうとうやってきた。
「ロイド、王城に向かうぞ!馬で4日だ。もう宿は取ってある」
辺境伯とロイドを含めた馬8騎は、王城へ向けて出発した。
そのちょうど同じころベリーブ王国では、王国中のランプの交換が間に合わず、現在王国の中で明かりが灯っているのは王都だけとなっていた。
王都以外からは明かりが消え、魔物の巣窟と化してしまう。
ブリュッセリア辺境伯からの武具がほぼ途絶えたことにより、深刻な武器不足も併発している。
「陛下!大変です、魔王軍がすぐそこまで来てます!魔物の進行を止めるほどの魔晶石ランプがありません!」
「錬金術師の責任者はバルド伯爵だろう!何とかしろ!」
王城の中はひっ迫していた。
「えぇい!だれか、ロイドを連れ戻せ!」
バルド伯爵は発狂する。
「誰かではないだろう!責任者であるバルド伯爵が連れ戻せ!場所はレガリア帝国のブリュッセリア辺境伯領だと情報がつかめておる!」
ベリーブ王国の国王がバルド伯爵に命じた。
「か、かしこまりました。」
さすがのバルド伯爵もこれには逆らえず、了承する。
そして、共にはコールを連れていくことになった。
コールは親友を心配して、自らついていくことを志願した。
命の危険があるにもかかわらず。
数日後・レガリア帝国王都では、ロイドたちが到着していた。
「護衛の方は謁見の間には入れませんので、ブリュッセリア辺境伯様とロイド様のみでお願いいたします。」
そして、その先にある謁見の間の重厚な扉が開かれた。
「ロイド、ブリュッセリア辺境伯良く来たな。前にある椅子に座れ」
陛下はぱっと見70代前半くらいの貫禄がある人だった。
ロイドはセバスの言葉を思い出して少し納得してしまう。
確かに、どこか似ている。雰囲気ももちろん見た目もだ。
髪は白髪に少し緑が混ざっており、瞳も茶色だ。
「はい」
ロイドと辺境伯は腰かけた。
「ロイド、其方もいろいろと大変だったなぁ」
陛下は辺境伯に事情を聴いているようだ。
「お気遣いありがとうございます」
ロイドははきはきとお礼を言い、頭を深く下げる。
「ロイド、1日に魔晶石をいくつほどつくれるのだ?」
陛下はロイドに素朴な疑問を投げかけた。
「多い時で5000ほどでございます」
ロイドは正直に答えた。
ここで嘘をついても何の得にもならない。
「そうか。そんなに魔力量が多いのか......やはり?」
陛下は手を顎に当ててひげを撫でた。
なにか思うところがあるのだろうか。
「ロイド、其方の母と父の名はわかるか?」
陛下はなぜか聞いてくる。
これはロイドも想定外だったようで、目を丸くする。
「私は、幼き頃に落馬事故で両親を亡くしており、私だけ奇跡的に両親に守られ生きております。近所の人から聞いた話だと、父はロバート。母はセリーヌだそうです。私の名前は父から文字をもらい母がつけたそうです」
ロイドが言ったとたんに、陛下は泣き出した。
「ベルアン公爵、外で聞いていただろう?入ってきなさい」
陛下に言われ、入ってきたのは陛下と同じく70代前半くらいの男性だった。
その人も目に涙を浮かべている。
「陛下......思った通りですか?」
ベルアン公爵は陛下の背後に立った。
「あぁ、そうだろうな......」
なんだか、二人は悲しみのどん底にいるようだ。
バンッッッツ!!!
その時、いきなり謁見の間の扉が勢いよく開かれた。
「ベリーブ王国の使者が2名今しがた来ました。『ロイドを渡せ!陛下に謁見を』と申しております。どうされますか?」
近衛兵らしきロイドと同年代ほどの人が来た。
「会おうじゃないか。ここに通してくれ」
陛下はロイドのほうを一瞬見ると、近衛兵に指示を出した。
「かしこまりました」
近衛兵はそのまま走って立ち去る。
ーしばらくして
「レガリア帝国の皇帝陛下にご挨拶申し上げます。私はバルド伯爵家のものです。こちらはコール」
そこには、ロイドの親友コールの姿があった。
二人はアイコンタクトを取り、笑いあう。
バルド伯爵とコールは休息なしで走り続けたのだろう。
でなければこんな短期間ではつかない。
「ロイド!ここにおったか!戻ろう?王国へ!今大変なことになっているんだ!」
バルド伯爵はロイドの姿を見た瞬間、笑顔を見せた。
「今さら国が滅びそうだから戻れと言われても、もう遅いです。ご勝手にどうぞ!それに、僕は今の仕事が気に入っているんです!」
ロイドはきっぱりと断った。
「近衛兵!この2人をつまみ出せ。あと、王国への支援は打ち切りとし、一切手だしするな!国境はブリュッセリア辺境伯領だが、ロイドのランプがあるから問題なかろう」
陛下は椅子から立ち上がり、目の前に立った。
そして、すごい威圧感で怒りを含んだ声だ。
「待ってください!陛下!コールは僕の親友なんです!」
ロイドはコールまでもがつまみ出され二度と会いないと思い、反論した。
しかし、帝国の皇帝に逆らったことを言った後になり分かったようで、顔から血の気が引いて真っ青になる。
「そうなのか。では、バルド伯爵とやらだけにしよう。コールとやらにはベルアン公爵其方の邸宅の部屋を貸してやれ」
陛下はロイドの意見を聞いてくれた。
そのことで、ロイドはある一つの疑問が浮上した。
なぜこんなにも平民ごときによくしてくれるのかと。
「はい」
ベルアン公爵は頷く。
「やっと静かになったな......ロイド其方の生まれの秘密を教えてやろう。ブリュッセリア辺境伯は退出せよ」
陛下はロイドの生まれの秘密といった。
ロイドは自身が孤児ということしか知らない。
「かしこまりました」
そのままブリュッセリア辺境伯は退出した。
「ロイドの母セリーヌは儂の娘でロバートはベルアン公爵の息子だ。だから、つい先ほど子供の死を聞き泣いてしまったのだ。」
その衝撃的は真実はロイドにとっては信じがたく、受け入れきれないほどのものだった。
「実はなセリーヌは他国に嫁ぐことが決まったのだ。するとロバートと共に駆け落ちしてな。ベリーブ王国に行ったということ以外情報が長年つかめなかったが、まさかなくなっていたとは思わなかった」
陛下とベルアン公爵は再び泣き出した。
「私たち2人は子供を探してから引退すると決めていました。なので、いまだに現役なのです。ロイド、お願いが一つあります錬金術師を続けていてもかまいません。ベルアン公爵を継いでほしいのです。私には3人子がおりますが2人は女の子で爵位を継げません。もうロイドしかいないのです。コールさんと一緒にランプを作ってくれてかまいませんから......」
それは、あまりにも突然のことだった。
ベルアン公爵から泣きながら頼み込まれてしまった。
ロイドは固まってしまう。
そのまま部屋は沈黙状態になってしまった。
「ロイド......安心せい!儂の息子は王太子だ。だから、息子やベルアン公爵に執務は教えてもらえばいい。それに、ロイドが慣れるまでまだまだわしらは現役じゃよ!」
陛下は張り切って言った。
「お願いです......ロイド…私の次で今後継ぎ問題が発生して大変なのです。それに、爵位さえつげば錬金術師の材料は買い放題というわけではありませんが、今よりは手に入ると思います。」
ベルアン公爵からの提案は魅力的だった。
実はロイドは錬金術師バカである。
「わかりました。ベルアン公爵を継ぎますが、時間を1年ほどください」
ロイドは二人の目を見ていった。
「あぁ、かまわないよ。私が生きている間は時間があるからね」
ベルアン公爵は泣き笑いのような顔になってしまっていた。
「はい!」
ロイドは2人を安心させようと笑顔で返事をした。
最後までお読みいただきありがとうございます。
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〈誤字の修正について〉
「半月後」が「半年後」になっておりました。
ご指摘いただき、修正いたしました。




