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第十一章  亜種

 サーヤの魔術で、崖の下にいる黒鱗狼目掛けて大きな岩を幾つも飛ばす。


「もうちょい右だな」


「みぎ!」


「あ、当たった」


「やった!」


 遊びのような感覚で黒鱗狼に攻撃を仕掛けていると、リョウが羨ましそうに口を尖らせる。


「ぼくもやりたい」


「リョウはもう少し魔術を勉強してからな」


「むぅ」


 不満そうに唸るリョウに笑いながら、黒鱗狼を誘き寄せる為に魔術を行使し続ける。リョウも魔術は使えるのだが、サーヤの方が専門的に練習してきただけに差が大きく開いている。リョウも中級の魔術くらいは使えるが、その魔力操作はサーヤよりも劣っていた。反対に、剣や槍の扱いはリョウの方が圧倒的に上である。


「まぁ、今度一緒に練習するか。的当てが上手くなったら実践でも使って良いぞ」


「う、うん! やりたい!」


 提案すると、リョウはパッと晴れやかな笑顔になって頷いた。どうも遊びと勘違いしているような気がするが、本人が嬉しそうなので良いとしよう。


「……なんか、気が抜けるな」


「リョウとサーヤがいるしな」


「そういう問題か」


 カクタス達も若干呆れ気味でそんな会話をしていたが、すぐに気を引き締めることとなる。なにせ、激しい咆哮と同時に巨大な影が崖を駆け上がってきたからだ。


 地を伝う振動と、隠す気も無い腹に響くような咆哮だ。これには全員が顔色を変える。リョウとサーヤも慌てて俺の後ろに隠れるくらいの迫力だ。


「まずいって、レン!」


 その時、ディッキーが大声で怒鳴った。


「なんだ?」


 もう討伐対象はすぐ傍である。それでも話す必要がある何か、ということか。そう思ってディッキーに振り返ると、涙目でわたわたするディッキーの姿があった。


「い、一体じゃないよ! こりゃマズイね!? 多分、三十体は中型魔獣が向かってくる!」


「え? 崖の下にはいなかったぞ?」


 気配で察知は出来ないが、それでもそれだけの数がいたなら崖の上からでも見えた筈だ。そう思っての発言だったが、ディッキーは両手を広げて引き攣った笑みを浮かべた。


「全方位敵だらけだね! こりゃあ参った!」


「へぇ? じゃあ、黒鱗狼が部下を呼び寄せたってことか? しかし、単体行動の魔獣って話だったが、どうなってる?」


「ディッキーには分かんないね!」


 そう言ってディッキーが自暴自棄になったように笑っていると、それを合図にしたように魔獣たちは姿を見せた。薄暗くなった状況で各方面から唸り声が聞こえ、リョウとサーヤが震え上がる。


 そして、ついに崖の上に黒鱗狼の亜種が現れた。大きな角が頭や背に生えた黒い鱗狼。問題はその巨体だろう。馬車を一撃で叩き潰せるほどの大きさだ。体長は十メートルはありそうだ。人など丸のみに出来るに違いない。


 対して、馬車を取り囲む他の魔獣たちは中型の鱗狼だった。しかし、どれも本来なら群れを率いることが出来るほどの巨体だ。体長は鱗狼としては大型の五メートルほど。数はディッキーの言う通りなら三十だが、今は五体ほどしか視界に入らない。


「どうする、兄貴!?」


 カクタスが剣を構えて叫ぶ。


「仕方がない! 獲物を奪うようで悪いが、黒鱗狼の亜種は俺が担当する! 悪いが、リョウとサーヤを連れてフィズ達の警護をしてくれ!」


「分かった!」


 カクタス達は返事をすると同時に走り出した。その後ろから黒鱗狼が飛び込んでくるが、間に合う距離だ。


「あ、兄貴!」


「おう!」


 慌てるカクタスの隣を通り過ぎ、剣を取り出す。


宝具召喚アルミス


 魔術名を行使した瞬間、空間に黒い線が走って亀裂となる。そこから現れたのは長さ百五十センチほどの長刀だ。切れ味ならば最上級の逸品である。


「時間が無いからな。速攻で終わらせるぞ」






【ディッキー】


 やばいとは思っていた。


 斥候として十年生きてきたのだ。修羅場を幾つも潜ったし、命がけで大型魔獣と相対することもあった。そうやって必死に研ぎ澄ませてきた気配察知は、距離が近ければ近いほど高い精度で対象の戦闘力も把握することが出来るまでになっていた。


 離れればどこにいるか程度しか分からずとも、近ければ相手の強さも分かるということだ。


 その能力が、目の前の存在に対して全力で警報を鳴らしていた。


「ディキ・ディキ! Cランク冒険者でソロ活動もしてるよ! ディッキーって呼んでね!」


 ふざけた調子で自己紹介をしながら、隠した片方の手で力いっぱい拳を作り、緊張を誤魔化す。気づいているのか、いないのか。目の前に立つレンという冒険者は苦笑しながら普通に会話をしてくれた。


 ドラゴンと真正面から向き合った時に近いくらいの緊張感を感じていたのだが、徐々にその気配にも慣れてくる。他の人たちはレンの実力に気が付いていないのか普通に接している為、何とかそれに合わせていつものディッキーを心掛ける。


 しかし、それは極限に差し迫って不可能となった。


 今は、ドラゴン級にヤバい気配が物凄い勢いで迫ってきている上に、普通ならばCランクの冒険者パーティーで一体ずつ相手をするような存在が三十以上迫っているのだ。


 逃げるしかない。そう思ってレンの下へ走ったが、警戒心を強めたレンの気配は予想を超えた。


 僅かな会話をして、レンはすぐに魔獣撃退……いや、魔獣殲滅の為に動き出した。レンが本気になったのだ。ならば、我々は邪魔をしないように防衛に徹するのみ。


「カクタスー」


「なんだ、ディッキーっ!」


 馬車の傍で周囲に歩み寄る魔獣に警戒を向けているカクタスを呼ぶと、剣を構えた格好のまま返事があった。珍しく焦っているが、それも仕方がないだろう。


「崖側は無視して良いよ! 戦いやすい街道の正面と後方はリョウ、サーヤ。そして私兵さん達にお願いしよっか! カクタス達は一番面積が多いこっち側!」


「おお、珍しくまともなこと言いやがって!」


「分かった!」


「リョウとサーヤは大丈夫か!?」


「私が一緒にやるよ!」


「了解!」


 簡単に打ち合わせを終わらせて、すぐに配置に着く。


「リョウ、サーヤ! 時間を稼ぐよ! パパが来るまで我慢! 分かったかな!?」


「はい!」


「わかりました!」


 意外にも二人は冷静だった。正面方向の街道側には二体の鱗狼がいるが、リョウとサーヤが睨みを利かせて動かないでいる。野生の勘というべきか。幼い子供とはいえ、リョウとサーヤの実力は侮れない。狼の気持ちは痛いほど分かった。


「私が二体を翻弄するから、攻撃をよろしくねーっ!」


「は、はい!」


 既に二人の実力は疑っていない。すぐに攻撃を任せると伝えて走り出した。


 突撃すると同時に横に跳ぶ。すると、反射的に攻撃してきた鱗狼の牙が横を掠めた。読み間違えたら大怪我だ。リョウとサーヤが攻撃出来るように隙を作る為、攻撃を避けると同時に狼の目に向かって短剣を投げつける。


 狙い通り、一体の狼の右目に短剣が突き刺さった。痛みと驚きに顔を上げてくぐもった悲鳴を上げる狼を横目に、もう片方の狼に向かって走り込む。その直後、後方でリョウが動きを止めた狼に向かって飛び込む気配を感じた。


 更に、サーヤが魔術を発動しようとしている。


「……こりゃ、すぐに抜かれちゃうね!」


 不思議と悔しさも何もなかった。二人の戦闘の才は圧倒的だ。その上、レンが傍に付いているのだ。実力だけでなく冒険者としてのランクも常人の数倍の速さで駆けあがって行くことだろう。


 そう思って、もう片方の狼に軽くちょっかいを掛けつつ通り過ぎ、振り返った。


 そして、一刀両断される狼の姿を見た。


「……ひぇ!?」


 自分の口から甲高い声が悲鳴が出る。なにせ、鱗狼は剣で斬ることが難しい。魔力を帯びた剣か何かでないと簡単には斬れないのだ。


 だが、リョウは一撃であっさりと狼を真っ二つにしたのだ。いったい、どんな伝説級の剣を使っているというのか。あまりの衝撃に足を止めてしまった。その時、背後から新たな狼が姿を見せた。


 気配は察知していたのに、新人の冒険者のようなミスだ。


「まっずい!」


 慌てて地を蹴って一足飛びに横へ移動する。だが、鱗狼が腕を振るうだけで潰せる程度の距離しか稼げなかった。


 一撃を受けるしかない。足は駄目だ。腕の一本で何とか……。


氷槍アイススピア


 魔術名が聞こえた瞬間、狼の口や腹に氷の槍が突き刺さった。


「お、おぉ……っ!?」


 自分の口から低い驚きの声が出た。


「だ、だいじょうぶですか!?」


 サーヤの声が聞こえて振り返ると、離れた場所で杖を構えているサーヤの姿があった。驚くべきは先ほどちょっかいをかけた二体目の狼の姿だ。そこには同じく氷の槍に貫かれ、さらにリョウにとどめを刺された後の狼の姿があった。


 まさか、今の間に三体の魔獣を仕留めたのか。


「あ、あははは……こりゃ、もう抜かれてるね。ディッキーさんは困っちゃうよ」


 自分なら簡単には討伐できない筈の鱗狼三体の死体を眺めて、乾いた笑いと共にそう呟いた。


 先輩としての立場が無い。


「……よし! すぐに斥候として活躍するよ! 見ててね、二人とも!」


「は、はい!」


「おねがいします!」


 何とか冒険者として良いところを見せないといけない。そう思って即座に自信のある斥候としての技術を見せつける。


「右側に一体! 正面からも一体!」


「わかりました!」


「はい!」


 二人の返事を聞きながら、二体の動き方を探る。


「先に右側から来る一体が早いね! 私が動きを止めるから、リョウが斬るんだよ! サーヤは正面から来る一体を足止めしてね!」


 それだけ言って、返事も聞かずに走る。


 さぁ、このディッキー様の気配察知能力を見るのだ。






【フィズ】


 レンは凄い冒険者であると聞いてはいた。子供を連れてはいたが、それでもギルドマスターから教えてもらった実績を聞く限り、問題ないと感じた。それに、何よりも時間が無かったから、縋るような気持ちでレン達に依頼をしたのだ。


 しかし、目の前で起きている光景は予想外だった。


 山岳地帯の街道を通行できないようにしてしまった凶暴な大型魔獣一体だけではなく、明らかに危険度が高い中型の魔獣が何十体も現れたのだ。一体ならば、レンの力でどうにかなったかもしれない。でも、この数は素人の私でも絶望的だと分かった。


「フィザエル様! 後ろへ!」


「全力で守れ!」


「我らはこの場を守れればそれで良い!」


 ガリアーノが前に立ち、他の騎士達が剣と盾を構えて私と馬車を守る。傍には他のローブを着た皆がおり、その内の二人は宮廷魔術師だ。


「鱗狼に剣は効き難い! 我々が足止めしたら魔術を放て!」


 ガリアーノがそう指示すると、魔術師二名がフードを抜いで杖を構える。


「フィザエル様をお守りするぞ!」


「おお!」


 迫り来る魔獣はすぐ目の前に一体。奥に二体だ。騎士達五人がいれば十分足止めをすることが出来るはずである。


 目の前にいた鱗狼はその巨大な口をひろげ、身が竦むような咆哮をあげた。そして、一気に距離を詰めて牙を剥く。


「ぬぅおおおっ!」


 剣と盾を駆使して、五人の騎士が総出で狼の牙を防いだ。更に斬撃を連続で放ち、狼の顔に一撃いれることが出来た。魔術の詠唱時間はまだかかる。


「次が来る!」


「はっ!」


 一体の動きを止めることは出来た。しかし、すぐに奥にいた二体の内の一体が迫ってきている。騎士達は即座に三人と二人に別れ、新たに迫り来る一体に対して三人で足止めを開始した。


「早く、魔術を……」


 祈るような気持ちで詠唱する魔術師二人を見る。鱗狼を相手にするなら下級ではなく中級以上の魔術を使うしかない。詠唱の時間はどうしても必要となる。


「……風刃舞ウェントス!」


 ようやく詠唱が終わって魔術が発動した。風の刃が広範囲に乱れ飛び、魔獣たちに飛来する。魔術は確かに効果を発揮したが、鱗狼に致命傷を与えるには至らなかった。大小様々な傷を与えてはいるが、せいぜいが足止めである。


「次の魔術を早くしろ! 鱗を斬るよりも質量で圧し潰せ!」


 ガリアーノが苛立った様子で次の指示を出す。それに魔術師二人が頷いて詠唱を開始した。それでも、僅か七人で三体もの大型の鱗狼を足止めしている。これは十分な成果だ。


 しかし、ディッキーの報告が確かなら魔獣は三十を超える。いくらレンでも大型魔獣を一人で相手をしているのだから、こちらを助けに来ることはできない。


 どれほどの時間が掛かるかは分からないが、どうにかして防衛を続けなくてはならないのだ。


 覚悟を決めて、護身用の剣を手に取った。見上げるような魔獣を見た後では頼りない、軽くて細い短剣だ。それでも、無いよりは良いだろう。


 震える手で剣の柄を握ってガリアーノ達が押さえ込んでいる魔獣たちを睨む。


 その時、黒い影が魔獣たちの隙間を縫うように走った。


 何が起きたのかは理解できなかった。だが、影が方向転換する度に白銀の線が空中に走ったことだけは理解出来た。そして、その度に魔獣の脚や首が斬り落とされていく。


「な、なんと……っ!」


 目の前でその光景を見たガリアーノが驚愕して声を発する。僅か数秒の出来事だ。それだけの時間で、鱗狼三体が死んだ。


「悪いな。遅くなった」


 気が付けば、隣から聞きなれた声が聞こえて肩が跳ねるほど驚く。


「きゃあ!?」


 思わず悲鳴が出た。すると、隣に現れたレンも驚いて目を瞬かせる。


「お、おお。申し訳ない。驚かせたか」


「あ、い、いえ! あ、ありがとうございます。しかし、それよりも我々の護衛に来てもらって大丈夫なのですか!? 黒鱗狼が……っ!」


「ああ、そっちはもう討伐したぞ」


「え?」


 レンの言葉に首を傾げ、馬車の陰から崖の方を覗き込む。そこには、首を斬り落とされた巨大な黒鱗狼の亜種の姿があった。どう考えても、生きてはいまい。


「……え?」


 その光景をすぐに理解することは出来なかった。恐らく、中型か。もしくは大型のドラゴンに相当する強力な魔獣だった筈である。それを、長くとも数分で討伐したというのか。


 驚愕していると、周囲で戦うカクタス達の姿が目に入る。そこには三体の魔獣の死体が倒れており、さらに二体の魔獣を相手に戦っている。十分過ぎるほどの実力だが、それでもレンを見た後では見劣りしてしまうだろう。


 では、そのレンの子供たちはどうなのか。


「あ、あの、リョウさんとサーヤさんは?」


 そう言ってレンを振り返ると、苦笑して前方を指差された。二歩、三歩移動して前方の馬車の奥を確認する。


 パッと見ただけで、すでに魔獣が何体も倒れていると分かった。


「ど、どうなっているの……?」


 自身の中にある魔獣の脅威度の知識に疑いを持ってしまいそうになる。騎士五人で鱗狼一体と対等といった手強い魔獣の筈だ。決して、あんな幼い子供たちが戦える相手ではない。しかし、倒れた魔獣の中には氷の槍が突き刺さっているものもいた。この集団の中に魔術で戦えるものは少ない。最前列にはリョウとサーヤ、そしてディッキーの三人だけだったはずだ。


 では、あの魔術はサーヤが? 宮廷魔術師の風の魔術で仕留めることが出来なかった鱗狼に、致命傷と思われる傷を与えている魔術を?


「……信じられない」


 そう呟くと、レンが嬉しそうに頷いた。


「そうだろ? リョウの剣は特別だが、それを活かすのも本人の能力次第だ。今のまま成長すれば後十年もすれば世界最強の剣士になってもおかしくないぞ。それに、サーヤも相当だな。多分、十年以内にイリヤを抜くぞ。そうなったら悔しがるだろうな」


 と、レンは声を出して笑った。


 この人は、家族を本当に愛している。それがすぐに伝わった。思わず温かい気持ちになるが、今はそれどころではないと思い直す。


「あ、あの、ここで話していて大丈夫でしょうか? その、鱗狼はまだまだ……」


 心配になってそう尋ねると、レンは戦っている最中のカクタス達を見た。


「それなら大丈夫だろう。苦労はしているようだが、カクタス達も実力はあるからな。馬車を守りながら戦っているから時間はかかるが、それでも残り二体なら問題ない」


「……残り、二体? まだまだ、十数体の魔獣がいるのでは……」


 言いながら、周囲の状況に気が付く。一番先頭にいたリョウ達は周りを警戒しつつこちらに向かっている。そして、後方を守るガリアーノ達も周囲の警戒はしているが、戦闘が始まる気配はなった。


「……もしかして、他の魔獣たちは?」


 恐る恐る尋ねると、レンはなんでもないことのように答える。


「ん? とりあえず、周辺は一回りしたからな。もうそこの二体で最後だと思うぞ」


「一回りって……」


 レンの言葉に半ば呆れながら呟く。


 いや、常識で考えることは止めよう。レンはギルドマスターが認めた最高の冒険者だという。ならば、その実力は想像を絶するものなのだろう。そう考えるしかない。


「パパーっ!」


「おおかみ、たおしたーっ!」


 リョウとサーヤが走って来る。それにレンは目を細めて頷いた。


「おお! 見ていたぞ! よくやったな!」


 二人と接する時、レンは優しい父親の姿を見せる。そして、リョウとサーヤも驚嘆すべき実力など感じさせない、子供らしい姿を見せてレンに甘えていた。


「パパ! けんをもうすこしながくして!」


「剣を? まぁ、身体強化が出来るからもう少し長くても良いか」


 リョウの要望に笑顔で頷いていると、今度はサーヤがレンにお願いをし始める。


「ぱぱ、ろーぶがもっとうごきやすいほうがすき」


 それを聞き、確かにとレンが頷く。


「今回みたいに動きが早い魔獣が多いと大変だな。よし、前に行った店で新しいローブを作ってもらうか」


「やったぁ!」


 レンが了承すると、サーヤが嬉しそうに歓声を上げた。笑顔で抱き着くリョウとサーヤの頭を撫でるレンの表情を見て、緊張の糸がすっかり解けてしまった。


「……私にも、こんな方との出会いがあるのでしょうか」


「ん、何か言ったか?」


「あ、い、いえ! なんでもありません!」


 無意識に余計なことを口走ってしまったようだ。


 慌てて誤魔化し、ガリアーノ達の下へ向かう。ガリアーノ達も異変に気が付いており、呆れた様子で倒れた魔獣達を眺めていた。


「……これが、最高位の冒険者の力か」


「正直、我が国の騎士団長よりも……」


「待て。冒険者達は魔獣の専門家だ。騎士団は軍を相手にする為に訓練をしているのだ」


 と、レンの実力について討論する余裕があるくらいだ。


「皆さん。もう危険はないとのことです。出発の準備をしましょう」


 自分と同じようにレンの実力に驚愕している様子を見て苦笑しながら声を掛ける。


「なんと……」


「一流の冒険者とは、確かに驚異的な力を持っていますね」


 ガリアーノ達は冒険者への認識を改めたようだった。


「はい。私も同じ思いです。今後も彼らとは縁を繋いでおきたいところです」


 そう答え、我々は出立の準備を整える。


 危険は無くなり、後は王都を目指すだけだ。だが、どうしてもレンの言っていた言葉が頭の片隅に残り、消せないでいた。





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