1/14
はじまり
大陸に乾いた風が吹いていた。
中原にある大国・翠魏、その都・堂陽の空には雲ひとつなく、遠くで楽音が雅やかに響き、祝砲が数十発放たれた。この祝砲は、翠魏丞相張家の末子・張梨鳳と冀燕公主・穆惠玲の為に鳴り響く筈だった。
張梨鳳は、太子に皇位争いの駒として殺されそうになったが、死ななかった。
太子に仕えながらも、太子の手によって命を奪われる事になった。
政争と血風に巻き込まれ、気づけば愛した女は太子妃になってしまった。
「まだ君を愛しているのに、どうして君が太子なんかに嫁ぐんだ……」
梨鳳は若く血気盛んゆえに執念も強かった。
だが力が無い執念は、つまり無力。
自分を利用した太子にも、国の為と利用を認めた祖父にも、失望と怨みを抱いたが、何も手に入れられないこの国で、どう生きるか。
愛する人を取り戻す為にも、この国を、たとえ憎みながらでも動かなくてはならなかった。
物語は、ここから始まった――。




