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時は流れ過ぎて


 滅多に無いラビリンスの発見、そして、攻略。

 まあ、はっきり言ってしまうと、これまでに複数ダンジョンを攻略しているので難易度的には低くてボス戦も新鮮さは薄かったですね。巨大なだけで、厄介な能力等も無いモンスター(・・・・・)でしたから。ええ、モンスターなんですよね、ラビリンスのボスって。

 詳しい事は判りません。そういう事なだけです。


 ラビリンスでは“影スラ”が一番の脅威でした。2度目の遭遇時に【森淵の狩弓】で矢を射ったら、擦り抜けたし、シエルさんが【天蒼の聖杖】で斬り付けても同様。他の装備品や装備品以外の物理攻撃でも同じでした。

 ええ、【清浄の聖帯】が無かったら逃げる事しか出来無かったと思います。つまり、ボス以上!

 だからなのか、影スラが残した石ですが、戻って調べてみて驚愕の事実が判明。

 【魔源の素石】という物で、ダンジョンのパワーアップに用いる事が出来る物でした。

 運が良いのか、悪いのか。厄介な秘密が増えた事だけは間違い有りませんけどね。


 御義姉さんに頼まれた窯造りや、勇者の動向調査を御願いして、日課の仕事や冒険者の依頼を熟し、イチャイチャしていたら、あっと言う間に1ヶ月。昨日、調査結果を受け取り、シエルさんと島の外に仲良く御出掛けしています。

 はい、ラビリンス探索の時に話していた通りに、ダンジョンを探して攻略する為です。


 さて、その勇者達(クラスメイト)なんですが。

 召喚されてから2ヶ月程はクルモワクヨモ王国のダンジョンに潜って鍛える日々。彼等彼女等の中で突出した実力者であった10名──2パーティーが先ずは北のキノナン王国に向かって旅立ち、到着後キノナンのダンジョンを攻略し始める。

 因みに、その2組が用いている【同志の証輪(パーティーリング)】はクルモワクヨモが所蔵していた品で、ダンジョンで勇者達が入手した物では有りません。


 一方、残った面子は更に1ヶ月間、ダンジョンで鍛えてから──攻略。海路にてキノナンの東北東に位置する半島のタシダッキ国に向かった。

 タシダッキはクルモワクヨモと同盟国である為、所蔵している【同志の証輪】を2組借りて、新たに2パーティーを編成。

 半月後、キノナンの北、タシダッキの北西に有るゾマイテッタ王国にて4パーティーは合流。同国のダンジョンを協力して攻略開始。現在進行形で。


 残った9名は海路で東の、ロドカイヒィナ王国に渡り、北のダタリィア公国に向かった。この国では勇者召喚が行われる度に、同じ場所にダンジョンが出現する事で知られており、そのダンジョンからは毎回【同志の証輪】が入手されている為です。

 実際に今、大半の国の所蔵する【同志の証輪】はダタリィアのダンジョンで見付かった物だそうで。個人的には、ある種の救済措置の様にも見えます。苦戦する勇者(プレイヤー)が多かったとかでね。

 まあ、そんな訳で【同志の証輪】を獲たら合流、という事だそうでダンジョンを攻略中との事。


 取り敢えず、今の所は死亡者等(脱落者)は無し。

 彼等彼女等が生きていようと、死んでいようと、どうでもいいんですけど。まあ、頑張っている様で悪い気はしません。


 ただ、こうして知ってみて判った事は、俺の方がダンジョン攻略自体は先で、多分、強いという事。対人戦闘の技術ではシエルさんや、この世界の人達には敵わないとは思いますが、それとこれとは別。単純な強さでは、という話です。

 まあ、だからどうという事では有りませんけど。客観的に見たら、というだけの話です。


 ──とまあ、そんな訳で今の所、西側に来る様な動きは無いので一安心。今の内に動く事にします。万が一の遭遇(事故)は避けたいので。


 現在、俺達が居るのはテッネタショケ国の北側のボイケヘワ公国。その西南西の無人島──正確には海に突き出している大岩が目的地。

 これまでの経験からして海岸線の可能性が高いと思っているので。人目に付かず、人が簡単には踏み入れる事の出来無い場所。そういう場所に有るから未発見のままな訳ですから。


 ──で、その大岩も周囲が岩礁地帯で船で近寄る事は有りませんし、当然、漁をする人も居ません。冒険者が訪れる様な価値も、観光客が来る様な事も有りませんからね。手付かずの自然が広がります。だから、余計に誰も近付かないんですけど。


 その大岩に向かって断崖の上から転移(・・)


 これは解放された【真絆の愛環】の能力の1つに装備者の装備品の効果拡張(・・・・)というものが有ります。それにより【空渡の天翼】は視認している場所への転移が可能になりました。

 冒険者として実に嬉しい恩恵だと言えます。


 尚、全ての装備品の効果が拡張される訳ではなく一部の物に限られる事は検証済みです。

 それでも十分に大きな違いなんですけどね。


 大岩に移動し、調べますが──何も無し。

 シエルさんと顔を見合せ──海中に飛び込む。


 そして、此処でも愛の力が発揮されます。

 俺だけではなくて、シエルさんも海中──水中(・・)で何の問題も無く活動出来ています。


 これも【真絆の愛環】の隠された能力で御互いが装備──身体へと同化している特殊装飾品の効果の共有というものが有ります。

 判明したのは偶然。シエルさんが初めて島の湖に潜った時に、妙に動き易いと感じた事が切っ掛けで検証してみた結果です。

 俺の聖痕(スティグマ)【水生の福音】の効果が指環を介して、シエルさんにも適用されている訳です。

 ──という事は同様にシエルさんが特殊装飾品を装備すれば、俺にも効果が適用されるという事に。まあ、特殊装飾品を入手していなければ無意味な訳ですけどね。想像するだけなら自由ですから。


 事前に予想していた通り、海中──大岩の中央にダンジョンの出入口が有りました。

 ゆっくりと近付き、シエルさんが緊張した表情で深呼吸。ジョブを得た今なら、勇者ではないけれどシエルさんが1人でも入れるのか、否か。その事を確かめる為に触れてみようとしています。

 勿論、何か有れば直ぐにシエルさんの逆側の腕を掴む事が出来る距離で。触れない様にしながら。


 …………どうやら、ダンジョンが勇者専用という基本的な条件設定は絶対みたいです。

 シエルさんが手を伸ばすと見えない壁が有る様に阻まれている感じなので。


 確認は出来たので、切り替えてダンジョンに。

 改めて、緊張した様子のシエルさんの手を握り、先行して中へと入ります。

 入ってしまえば、先のラビリンスの時と同じ様にシエルさんも意識が切り替わり、探索モードに。

 ただ、モンスターとクリーチャーは違いますから注意を怠らない様にしなくては。



「──なんて心配は余計な御世話だったかな……」



 そう呟く俺の視線の先では、美しく舞う様に戦うシエルさんの姿が。本当、惚れ惚れします。

 まあ、少しばかり現実逃避も含みますけど。

 俺が初めてダンジョンに入り、戦闘した時の事を考えれば、1人ではないとは言え、シエルさんとの明らかな実力差──否、冒険者としての経験の差を思い知らされた気がしますから。

 別に凹んだり落ち込んだりはしていませんから。ちょっとだけ、「ですよねー……」な気分になったというだけなので。夫婦仲に問題は有りません。



「正直、もっと強い存在だと想像していたけれど、クリーチャーにも色々と有るみたいだし、装備品が充実している事も大きいのでしょうね」


「それも有りますけど、一番はシエルさんの魔法の力量が高い事が大きいと思いますよ」


「そうなの?」


「他の勇者の事は判りませんけど、俺達の場合には元から魔法を使える訳では有りません。ですから、その実力──適性やマナの量とかは実際に学んで、使える様になってみないと不明でしたから。魔法の実力が高いシエルさんと比べると、それだけで差が明確に出ます。実際、俺は魔法の適性が有ったから単独で遣れていた訳ですから」



 そう、この世界の人達にとっても大きな力ですが勇者にとっても魔法は大きな力。だから、勇者達はパーティーに魔法に長けた、この世界の人を仲間に入れる事が多いんだと思います。

 そう考えると、魔法の適性が高い勇者は珍しいのかもしれません。或いは、本来は異物であるマナに対して高い適性が有るが故に悪影響が出る可能性も考えられます。まあ、例えばの話ですけどね。




 ダンジョンの攻略は順調。1人だった時と比べて気持ちの面で誰かと一緒なのは大きな違いですね。会話は勿論、相談や意見交換や議論が出来る事で、自分だけでは見えない可能性も見えてきますから。まあ、1人だと絶対に衝突したりはしませんから、何方等が良いのかは人各々でしょうね。


 それはそれとして。発見・出現を問わず、宝箱は全てシエルさんに開けて貰う事にしています。

 【真絆の愛環】が有るのでシエルさんの専用品になっても問題は有りません。寧ろ、シエルさん用の装飾品を幾つか揃えたいので。武器・防具よりも。装飾品は普段使いが出来ますから。


 しかし、今までは割りと確率が高かったんですが今回のダンジョンは思っていたよりも渋い(・・)

 まあ、ボスからしか獲られなかった事も有る為、仕方が無いでしょう。逆に言えば、最低1つだけは何かしらを入手する事は出来る筈です。






「……はぁ~……正直、残念でした……」


「んー……装備品としては優れている訳だけれど、期待通りではないものね。まあ、贅沢な悩みよね」


「それは判っていますし、望む物が必ず手に入ると判っている訳では有りませんから仕方が無い事だと頭では理解しているんですけどね。シエルさんとの初めてのダンジョン攻略でしたからね。思い出にも残る物が欲しかったんです」


「もぉ……そんな事を言われたら、私の方が我慢が出来無くなっちゃうわ……」






 ボイケヘワのダンジョン攻略から10日後。

 ボイケヘワの東に位置するリクォモノ国で新しいダンジョン探し。ある程度の候補地は有りましたが何処も微妙な為、空振りも。

 しかし、ちゃんと見付けて──攻略。

 今回は宝箱が複数で、装飾品も三つも入手。

 特に特殊装飾品の聖痕【魔天の祝音】は嬉しい。これにはマナの省エネ効果が有り、今までの1割で同じ様に魔法が使用可能に。破格の効果です。


 ただ、意外とジョブ【魔法剣士】は重く(・・)、成長は思っていた程では有りません。

 まあ、戦闘職ですし、明らかに稀少職ですから、当然と言えば当然なのかもしれませんけど。

 因みに、現在のレベルは78。次のダンジョンを攻略すれば最大になる気はしますが、単独攻略では有りませんから、エクストラスキルは獲得出来無いかもしれません。


 ──なんて、思ったのがフラグだったのか。

 大陸の西北端となるレブンサダンタ王国の北西の大雪山で発見したダンジョン。其処を攻略したら、シエルさんがエクストラスキルの【付与】を獲得。ジョブも【魔剣聖】にクラスチェンジしました。


 シエルさんの得たスキル【付与】ですが、簡単に言えば魔法を物に付与──封じ込めるというもの。

 その対象となる物なんですが、自然物や素材等をそのまま使えるという訳ではないし、シエルさんが作製するという事も出来ません。まあ、それは俺が作製出来るんですけどね。はい、所謂、夫婦による共同作業・合作という形です。

 【付与】によって封じ込める事が出来る魔法は、シエルさん自身が使用可能な物のみ。装備品により使用可能になる様な魔法は含まれません。飽く迄も自力で使用出来る魔法だけです。


 そうして作製されるのが“魔法玉(スフィア)”。

 手にして正しい起動呪文(スペル)を唱えると魔法玉に封じ込められている魔法が発動します。

 正確には即時発動ではなく、タイムラグが有り、魔法によって手元で発動させる場合と、対象に向け投げてから発動させる場合とに分かれます。

 そう、魔法玉は使い捨て(・・・・)なんです。

 ですが、魔法を扱えない者でも魔法と同じ効果を使う事が出来るし、使用も難しくは有りません。

 ですが、シエルさん──人が使う魔法と比べると威力は落ちますし、威力等が強くなる様に作製するという事は不可能です。

 誰でも使え、誰が使っても同じ、という意味では正しく汎用性を持っているんですけどね。


 ただ、同時に悩みもします。

 この手の物を世に出す事には正直に言って多少の抵抗が有ります。その辺りの自分の考えや価値観をシエルさんに話し、シエルさんの意見も聞いた上で公表はしない事にしました。

 簡単に真似は出来ませんけど、魔法技術としてはスキルに頼らずとも再現出来る可能性が有る事から人々の危機管理能力が相応の水準に至るまでは。

 過ぎた力は人を狂わせ、命を安価にします。

 便利というのは甘い致死毒にも等しいものです。少なくとも、自分が生まれ育った世界では、技術に人の知性や危機管理能力が伴わず兵器や犯罪に多く利用・転用されていましたからね。知っているから安易な真似は避けます。


 知らなければ、欲しも求めもしないもの。

 態々言わなければ、ダンジョンで獲た物という事で勝手に納得して、疑われもしませんから。

 ただまあ、護身用としてですけど、身内(・・)にだけは幾つか渡しました。内緒でね。


 それから装飾品と普段使い出来る防具の装備品も入手する事が出来ました。どうしても、武器だけは目立ちますからね。だから普段はカモフラージュの武器を身に付けています。勿論、時と場所と状況を考えて、です。常に身に付けてはいませんから。


 そんな訳で、取り敢えずは目標は達成しました。まだレベルは上げられますが……どうします?

 そうシエルさんに相談した所、恥ずかしそうに。でも、嬉しそうに。妊娠した事を告げられました。はい、頭が真っ白になりましたよ。理解した途端に嬉しさが大爆発しましたけどね。

 映画やミュージカルの1シーンみたいに、思わずシエルさんを抱き上げて回りましたから。

 嬉しい時とか、楽しい時とかに回ってしまうのは何故なんでしょうね~。あはははは~。






「どの様な事でも致しますので、どうか御側に!」



 そう言って俺に向かって土下座をしている3人の女性──否、美少女達。

 ああ、別に彼女達が何か遣らかしたとかいう様な事では有りません。寧ろ、遣らかしたのは俺です。浮気した訳では有りませんからね?


 事の発端は10日前。レブンサダンタに通う中で用事で1日だけボイケヘワに1人で行く事が有り、其処で小さな女の子を助けました。

 その娘の話を聞いて、帰って来ない母親の行方を探した結果、とある人身売買組織を潰す事に。

 犯罪者の奴隷ではなく、非合法に奴隷に落とした人達を売り物にしていた連中に女の子の母親を含め捕まった人達を救出。

 悪目立ちはしたくなかったので秘密裏に処理して貰えたのは強力な伝手の御陰です。

 ──で、その救出した中の3人が身寄りも無く、頼る先も無かった為、取り敢えず連れて戻ってから屋敷を管理をして貰っている関係で、御義姉さんの方に丸な──任せました。その結果がコレです。

 全く話の流れが判りませんよね? 俺もです。


 彼女達に対して「何がどうしてそうなるの?」と訊いてしまいそうになるのを堪えて、御義姉さんを見ます。ちゃんと説明して下さい。意味不明です。この世界の文化・常識という面では俺は一般人以下なんですから。


 そう視線で訴えると、御義姉さんは然も当たり前だという感じで淡々と話してくれました。

 通常なら、彼女達の様な立場の者は冒険者ギルドだったり、各国が保護するんだそうです。しかし、今回は俺が関わり秘密裏に処理して貰った事なので彼女達の事をボイケヘワに任せる事は難しい。

 まあ、だから連れて来た訳ですが。

 そうなると彼女達は俺の所有(・・)扱いになるそうで。屋敷の管理を委託している形の御義姉さんの方では彼女達を引き受けられない。

 それなら、彼女達を自由にするから、雇い入れてあげて下さい──というのが難しいそうです。

 今の彼女達は奴隷扱いなので。

 …………あれ? 俺、勇者ですけど? 奴隷って所有出来無かったんじゃなかったのでは?

 ……もしかして、勇者じゃなくなっ──てない。ああ、良かった。マジで焦った。

 …………え? それじゃあ、どういう事?


 ──と混乱する俺に声を掛けてくれたのは妊娠の報告の為に一緒に来ているシエルさん。



「彼是考えずに受け入れてあげればいいのよ」


「…………え? ……あの………………ええ?」


「シエル、アイクくんが困っているわよ?」


「ですが、姉様、他の解決方法は有りません」


「そういう事ではないわ。私達には普通の事でも、アイクくんにとっては馴染みの無い事なのだから、戸惑ってしまうのは当然でしょう? 彼女達の事を決める前に、先ずは其処を考えてあげないと」



 そう御義姉さんに言われて、シエルさんが謝る。ああいえ、俺の方も言葉が足りませんでしたから。大丈夫です。気にしてませんから。


 少し話は逸れましたが、御互いにズレが有って、認識と解釈の齟齬が生じていた事を理解しました。それと御義姉さんが格好良かったです。でも其処でドヤ顔は勿体無いです。可愛いですけどね。


 この世界の奴隷とは犯罪者が主に成る訳ですが。借金等の利用で奴隷に成る──つまりは身売りするという場合も全体の1割程は有るんだそうです。

 そして、一度奴隷に成ると勇者が勇者である様に奴隷も奴隷として縛られ(・・・)ます。

 ただ、奴隷である為、所有者によって、奴隷から解放して貰う事も可能です──が、此処が問題。


 今、俺が彼女達を奴隷から解放すると、彼女達は俺が受け取る筈だった報酬額を背負う事に。

 はい、「……え? 何で?」ですよね~。


 御義姉さんの話では秘密裏に処理済みである為、彼女達が報酬としての代価なんだそうです。そして確定済みなので無かった事には出来ません。

 面倒なのが、此処で俺が「報酬は要らない」とか言ってしまうと犯罪者に関わる報酬──懸賞金等の必要性を問題視する前例を作ってしまう事に為り、治安や防犯といった面では大きな影響が出る事に。その責任は流石に負えません。

 「それなら解放すれば……」と思う訳ですけど、解放された場合、彼女達が返済義務を背負う事に。その場合、再度奴隷となる可能性が高く、その際の身請け先は働きながら返済する娼館が最有力。

 相手を選べないよりは、俺1人に、と。そういう風に言われると納得も出来ます。


 因みに、具体的には聞いていませんでしたけど、つい、「俺への報酬額って、そんなになの?」って考えたら、姉妹揃って真顔で首肯されました。

 視線で「シエルさんが返済をするとしたら?」と訊いてみたら、「以前の私でなら10年」との事。はい、これは軽く考えていた俺が悪いです。


 あと、そんなにも大物だったという事にも吃驚。シエルさんとの鍛練以外では実は初めての対人戦闘だったので……はい、三下だと思っていました。

 う~ん……世の中、判らないものですね。


 ──とまあ、そんな訳で3人を身請けする事に。シエルさんとしては自分が妊娠した事も有るから、俺の手伝いや相手を、と考えたみたいです。

 その辺りは文化・社会の違いという事ですから。慣れるなり、割り切るなりは必要なんでしょうね。違う世界で生きている訳なので。


 ただ、それはそれとして気になる事が。

 彼女達が一緒に生活する準備の為に外出中の間に幾つか確認して置きます。

 先ずはシエルさんとの子供の事から。



「シエルさんが王位継承権を放棄していても血筋は変わりませんよね? その事で問題に為ったりする様な事はないんですか?」


「それは大丈夫よ。シエルの子供達は準王族として扱われるけれど直子だけで、貴男の方の血筋という訳ではないから。貴男が他の女性達との間に子供を成しても問題にも為らないわ」


「貴族ではないしね」


「あ、確かに」



 多くを語らずとも、俺が気にしているだろう事を察して質問する前に答えてくれる御義姉さん。

 そういった所は人の上に立つ立場が故に培われた人を見る目や雰囲気を読む洞察力なんでしょうね。少なくとも俺には真似出来る気はしません。



「それと、王族は一夫一妻で側室は取らないけど、他の貴族は妾──側室は普通に居るものだから」


「そうなんですか?」


「ええ。ああ、勿論、必ず、という訳でもないわ。その辺りは夫婦──正妻次第という所ね」


「へぇ~……それなら御義姉さんの所も?」


「姉様は父の妹(叔母様)の公爵家に嫁いでいるから準王族で側室は居ないわ」


「公爵家は基本的に王の兄弟姉妹の為の一代爵位で子供は次の王の兄弟姉妹を迎え入れるか、別の家に入るというのが普通になるのよ」


「ああ、成る程。だから、御義姉さんだけ、と」



 旦那さんの血筋よりも御義姉さんの血筋が優位。だから、貴族としての地位は御義姉さんの産む子供だけにしか生じない、と。

 御家騒動を避ける為には良い制度ですね。



「アイクくんの場合、シエル以外に奥さんが居ても子供が多くても困らないと思うわよ」


「え~と……その理由は?」


「ちゃんと責任を持てるし、子供達は引く手数多に為るでしょうからね」



 御義姉さんの言葉にシエルさんを見ると、御腹を軽く叩いて「沢山産むわね」と笑顔で子沢山大家族アピールをされました。

 成る程、俺が考え過ぎなんですね。

 …………いや、それでいいの? ……いいんだ。そういう所にも慣れていかないとなぁ……。

 この世界の常識や社会秩序、価値観を俺の勝手で壊したり崩したりすれば必ず歪みが生じますから。そう為った時の責任は大き過ぎて背負えません。



「それから彼女達の事ですけど……まあ、手を出す以上は責任を持ちますが、その場合でも奴隷からの解放はしない方が良いんですか?」


「そうね。解放してしまうと返済義務が生じるから子供にも背負わせる可能性も出てしまうのよ」


「逆に彼女達が貴男の所有奴隷のままなら、代価の支払いが成立しているから子供達には及ばないわ」



 姉妹の話を聞き、納得。自分が居た世界の感覚で考えると何でもかんでも人権という事でしたけど、この世界では責任や債務という事の方が重視され、それを果たす事が出来る者にだけ人権が認められるといった感じみたいです。


 個人的には「犯罪者に人権って無いだろ。他人の人権を害した時点で犯罪なんだから。犯罪と同時に自身の人権を放棄したのも同然なんだから」という考え方を持っていましたから受け入れ易い。


 彼女達の件に関しては、その辺りを知らないまま事後処理を御願いした俺の責任ですからね。それが判れば責任を背負う覚悟は出来ます。

 寧ろ、申し訳無く思いますが、其処は順番が逆と二人に言われました。

 俺が助けなければ、もっと酷い目に遇っているし人として正面に扱われもしない。だから、彼女達は俺に救われ、代価には関係無く、恩返しはしたいと思っている、と。

 そう、彼女達から相談されたんだそうです。

 「この話は内緒よ?」と御義姉さん。

 判っています。口は軽くは有りませんから。






「御早う御座います、御主人様(・・・・)


「おはよう、アンナ」



 目を開けると、優しく抱き締められ、柔らかさと温かさの中で穏やかに目覚めを迎える。

 意識がはっきりとするのを見計らった様に両腕の力を抜き、顔を見て挨拶。そして、朝一番のキス。まあ、それだけで終わらないのは言うまでも無し。若いからではなく、愛しいからです。


 新しい生活が始まって既に半月が経過。

 変化に戸惑うのは仕方有りませんが、暮らす内に慣れるのも思っていたよりも早かったりします。


 色々有ってインパクトが薄れてしまっていますがシエルさんの妊娠を陛下達は喜んで下さり、彼是と気を使って下さいました。世話役のメイドさん達の紹介とか人材面が多かったのは王公貴族らしいなと思ったのは内緒ですけどね。

 ……それから、正直に言うと「過保護だな~」と思っていましたが、初孫(・・)だからだそうです。

 驚きましたが、話を聞くと納得。

 御義兄さんは今19歳ですが、奥さんは18歳。結婚して3年が経つそうですが、奥さんは結婚前に体調を崩し、結婚後も療養。城内で普通に過ごせる程度には回復しているので子供は焦らずに、と。

 その話を聞いて思わず、シエルさんを見ました。はい、「聞いてませんけど?」と。

 シエルさんは話すのを忘れていた訳ではなくて、遠慮等でもなくて。ただ単純に可能性として無いと思っていたそうです。

 はい、エリクサー、有ります。

 その場で取り出し、奥さんが飲んで──全快。

 数日様子を見てから問題無しと判断。久し振りに外出も出来る様になって御義兄さんと彼方等此方等に出掛けているそうです。


 因みに、御義姉さんは17歳同士で結婚1年目。子供の前に自分達の将来的な事を考えて事業方面で精力的に動いているんだそうです。

 ええ、農作物や食パン関連で手応えが有るそうで仕事が楽しいそうです。


 さて、話を我が家の事に戻して。

 身請けした3人の事ですが、アンナが一番歳上で13歳。先輩後輩という関係に置き換えて考えれば違和感は少ないです。身長は150センチ程で細身ですが意外と力持ち。緩いウェーブの栗色の長髪に丸く大きな目は少女漫画の様な可愛らしさですし、明るく元気で家庭的と王道系。小柄ですが、立派に実っています。


 その次に12歳のポーチェ。170センチ前後と3人の中では一番長身で手足もスラリと長いから、モデルみたいで可愛いよりも綺麗なクール美少女。濃灰のショートヘアと切れ長の目が更に引き立て、ポーズを取ると絵になります。大人し目で物静か。でも、実際には甘えん坊だし、寂しがり屋だからかスキンシップが多目です。実りは十分に有ります。比較する相手が悪いだけです。


 最後に11歳のユーヴェス。身長は160前後。しかし、発育具合が3人の中では一番。並んだら、絶対に長女だと言われると思います。……言われたみたいです。納得。いや、大きさが全てじゃないからね。アンナもポーチェも十分魅力的だから──




 ゴホンッ……えー…………ああ、そうでした。

 そんなユーヴェス──宅ではユーと呼びますが、彼女は見た目はエロ──大人びていますけど、まだ子供なので何事も焦らずにと言っています。素直で頑張り屋なので我慢し過ぎには要注意。モコモコな赤茶色の髪を気にしていますが、それも個性です。可笑しくなんて有りません。


 年齢だけ見ると、問題が有りそうですが、此処は異世界ですし、社会常識も違いますからね。自分の価値観や常識に囚われ過ぎない様にします。3人が心から笑っていてくれるのだから。


 それはそれとして。

 島で生活をする上で色々と遣る事が有りますが、3人増えただけで作業の効率時間等が激変します。だからと言って増やそうとは思いませんけどね。

 それでも彼女達が居てくれる事は大きい。


 妊娠したからとは言っても、シエルさんも直ぐに安静な生活に移行する訳では有りません。妊娠中も適度な運動は必要だといいますし、初期は体調面と精神的なケアが大事だと聞いた気もします。

 まあ、何もかもが初めてなのでシエルさんの事を見ながら合わせていければと思います。


 ──で、動ける内に冒険者としての活動を熟し、ダンジョン探索・攻略も継続。シエルさんの希望で出産後は育児に集中する為です。俺も時々は依頼を熟す程度にしようと考えています。

 だから、島の外に出ている間も家にはアンナ達が居てくれている事で留守を任せられます。家事等も頼める為、外出中の時間を増やせるのも大きい。



「まだ三ヶ月位は大丈夫だと思うけれど……」


「流石に御腹が目立つ様になるとダンジョン探索は無理ですよ。まだ冒険者としての依頼の方が安全に思えますから。本当はそれも駄目ですけど」


「ふふっ、貴男に染められちゃったわね」



 そんな風に揶揄う様に微笑んで言うシエルさん。それは点火スイッチですよ。

 少しばかりの寄り道も楽しい思い出です。


 今のシエルさんの実力であれば、そうそう危険な状況には為らないとは思えますけど、ダンジョンは勇者を鍛え上げる為の存在ですからね。魔王に近いダンジョンである程、難易度は上がります。

 これまでに攻略してきたダンジョンの中で言えば島のダンジョンが例外的に難易度が可笑しかったと思います。魔法の適性が無かったら攻略は出来てはいなかったでしょう。


 そういう意味では、大陸の西側で残る国々は全て魔王領と隣接している最前線ばかり。

 最前線の国々にはダンジョンが複数出現する事も知られているので期待は有りますが、ダンジョンを把握済みの場合、勇者が来てはいないのに、何故か消失してしまうと怪しまれます。そう為らない様に事前の情報収集をしたいんですが、最前線の冒険者ギルドというのは過敏に反応するそうですからね。何が切っ掛けで怪しまれるか判りません。

 その為、人が来ない様な場所でだけダンジョンを探索して、見付からなければ諦めます。

 大陸の南側に魔王領から遠い国が3つ有りますがクルモワクヨモから近いので……悩んでいます。

 聞いた限り、ダンジョンが見付かったという話は出てはいないみたいですから。俺達が先に見付けて攻略してしまえば疑われもしません。

 ……其方の方が安全策かな?






「確かにクリーチャーも強くなっているわね」


「広さや階層数も増えていますしね。偶々、という事ではない、という訳ですか」



 ユノジョウヒ王国の西に有る、南のリクォモノと西のレブンサダンタとの間に横たわるブジキタマサ山脈の中央に有るナフタゥ湖。その湖底で見付けたダンジョンを攻略しながら話す。

 どうしようかと考えている内に見付けてしまえば仕方有りません。しかも、普通には見付けられない場所に有るので攻略しても知られはしませんから。一旦持ち帰って検討してから、という事には為らず。即断即決で攻略開始、という訳です。


 そんな最前線の国のダンジョンですが、話す様に難易度は確実に高くなっています。


 ただ、今の俺達にとっては何度も出入りしながら攻略するという事には為りません。

 ──と言うか、今まで一度も出直した事は無し。そう考えると、戦闘職と生産職という分け方の方が間違っている気もしてきました。寧ろ、前例の無い激レアなジョブという付加価値の有る方が優秀なのかもしれないとすら思えてきます。

 まあ、結果論ですけどね。


 如何にダンジョンの中と外では時間の経過が違うとは言っても、通常は日数が掛かるもの。

 俺みたいに食料や物資等を無制限に所持して挑むという事は出来ません。その為、少しずつ探索し、何度も出入りを繰り返して攻略していく事に。

 それが普通です。ダンジョンを見付けても直ぐに攻略が出来る訳ではないので。

 実際、勇者達(クラスメイト)はダンジョンを1つ攻略するだけで1ヶ月以上も掛かっていますから。


 ……あー……でも、そういう意味でなら、普通は召喚されたばかりの勇者達というのは、パーティーではなく、個人(ソロ)の集団。そんな状態でダンジョンに入っていたら、ダンジョン側も基準(・・)を定め難い筈。それが結果的に効率を悪くしているのだとすれば。ダンジョンには単独(ソロ)で挑むべき、と。

 そうですよね。勇者が数で挑むって格好悪いし、その名に反しますよね。勇ましき者(・・・・・)な訳ですから。

 偶然ですけど、俺の置かれた状況こそが勇者的な意味では正解だった、という事なんでしょうね。

 当事者としては複雑ですけどね。


 こうして色々と状況が変わり、情報が増えてから改めて考えてみると、気付く事が有ります。

 そして、知れば知る程、勇者と魔王、この世界の人々の在り方というのが複雑に思えます。

 各々の役割を担うのは確かですが、それだけでは説明の難しい事も多々有りますから。尤も、それに気付く事も、どう考えるのかも、何を成すのかも。結局は自分次第、という事なんですけどね。






「噂には聞いていましたが……賑やかな所ですね」


「そうね。私も初めてきたけれど、人気が有るのも判る気がするわ」


「奥様でも初めてなのですか?」


「此処では冒険者の仕事は少ないから。冒険者でも此処に来るのは護衛の依頼等が有る場合に限られる事が殆どなのよ。だけど、大体は御抱えの冒険者に依頼をするから滅多に他には回らないの。だから、依頼で訪れる冒険者は極僅かになるわ」



 そう言ってから小声で「ヨノゥマキッコを含めて西側諸国とは不仲で有名なのよ」と付け加える。

 俺は事前に聞いていましたが、それをアンナ達は聞いて少しだけ緊張し、警戒しています。

 「気付かれたら、どうしよう……」と不安になる気持ちが手に取る様に判ります。

 実際には、そんな理由で扱いが悪くなったりも、捕まったりする様な事にも為りません。

 シエルさんが言っているのは政治上の話なので。民間レベルでは無関係です。


 ユノジョウヒのダンジョンを攻略してから5日。俺達は最前線の1つであるユギィウセチ国に渡り、小島を領地とするサィチィ公国に来ています。

 小島とは言っても各国の王都3つ分程度の広さは有るので、それなりに大きいです。

 シエルさんだけではなく、今日はアンナ達も同行しているので観光も兼ねてです。サィチィは保養地として有名ですし、賑わっていますから。



「でも、名物の温泉は少し残念でした」


「宅の御風呂の方が良いです」



 そう言うユーとポーチェ。それは俺が原因です。魔竜討伐で【領主】の権限が拡張され、領地内なら地質とかまで弄れる様になったので……ええまあ、調子に乗って自宅の風呂を温泉にしたので。

 だから、口にしないだけで俺達も同じ感想です。あと、宅ではないので入浴は別々になりますから。流石に混浴ではなく、男女別が普通なので。

 他にもサウナとか砂風呂とかも造りましたけど、飽く迄も自宅の事なので。他意は有りません。


 ただまあ、それはそれ。実際は楽しめているので問題は有りません。

 ……嘘です。食事関係でも俺達の舌が肥えているという事から、色々と物足り無い気がします。

 料理を学ぶ、と考えると有りなんですけどね~。宅で作るとなると食材や調味料に違いが出来る事は仕方が無いと思います。美味しい方が良いので。


 そんな感じで和気藹々と楽しんだ後は目的地へ。ダンジョンを探しに来た訳なので。

 ただ、正直な事を言えば、場所が場所という事で人目に付かないとなると海中だと思っていました。

 だから、散歩中にアンナが南南西の崖上の草原。其処に有る幾つもの窪みの中の一つにダンジョンの出入口を見付けた時には驚きました。

 だって、普通に人が来れる所に出現しているのに噂にも為っていない訳ですから。

 まあ、俺達以外に散歩している人は居ませんし、これと言って特徴も無い場所ですからね。態々来る人なんて居ないんでしょう。だから未発見なので。俺達にとっては好都合ですけどね。


 アンナ達を残し、シエルさんとダンジョンに。

 さくっと攻略して戻って来たら、外で待っていたアンナ達が「……え? 今、入ったばかりで?」と驚いていました。こうしてみないと判りませんが、やはり、時間の流れの違いというのは不思議です。慣れてしまうと気にならなくなるので。


 ただ、客観的に見ていたら、ダンジョンに対する認識がズレて変な勘違いしてしまいそうですけど、アンナ達に限っては、その心配は有りません。

 ダンジョンに入る事は勿論、冒険者として依頼を受ける様な事は無いですが護身術や魔法に関しては指導しています。自衛と共に狩猟の手段なので。

 その過程で俺達の実力は理解していますからね。同じ様に出来るとは思う事は有りません。

 それでもシエルさんの話によると彼女達の魔法の素質は高いらしく、俺との子供は御義姉さんが前に言っていた様に将来有望なんだそうです。

 俺が勇者だからではなく、俺の魔法の実力が高いからなんだとか。魔法関係の素質は遺伝による所が強いので、優秀な人材は重用されるそうです。

 女性なら貴族の側室になれたり、場合によっては正室の可能性も有るそうです。

 男性は家臣等として御抱えとなり、その子供にも素質が受け継がれれば、子供は貴族に婿や嫁として迎え入れられる事も有るんだそうです。

 この世界の王公貴族は魔法の力で国を、民を守るそうですから、重要視されるのも納得です。




 サィチィのダンジョンを攻略後、サィチィの東、ユギィウセチの南南東に位置するケェマダナ王国に移動してダンジョンを探索・攻略。

 その南に有り、クルモワクヨモ、キノナンの西に位置するツスプキ王国でも。

 これで大陸の西側と南側で魔王領と接していない国々のダンジョンは、勇者達が攻略した物を含めて全て攻略した事になります。

 ……そう考えると、あの海底のダンジョンは一体何処に属していたのか?

 まあ、考えても判らないんですけどね。


 楽しく充実した毎日を送っている間の事ですが。魔王に向かう勇者達も頑張っているみたいです。

 ゾマイテッタに有ったダンジョンに挑戦していた4パーティーは攻略し、北のゼインセサン王国へと移動して初めて魔王軍──インベーダーと戦った。だが、辛勝だった為、同国のダンジョンに挑戦し、レベルを上げる事にした。

 そう考えるのは仕方が無いのかもしれない。

 ただ、その結果、1パーティーと2人、計7人が死亡する事になった。

 その結果は順調に進んでいた彼等彼女等にとって異世界に来てからの初めての挫折となった。


 しかし、勇者として歩みは止められない。


 それでも、精神的に無理だと拒絶した2人は勇者としての責務放棄で力を消失。民として支払うべき税金を支払う事が出来ず、奴隷になった。

 世知辛いが、専用装備であっても勇者だからこそ装備出来るのであり、勇者でなくれば装備不可能。因って装備品は消失。汎用品は勇者に所有権が有り勇者でなくなった者には何の権利も無し。

 当然、貯金も全く無い為、奴隷になるのは必然。考え無しに自らの責務から逃げた結果だった。


 ダタリィアに向かった別動隊は無事にダンジョンを攻略して【同志の証輪】を1つ入手。海路を使いリカトノゲ内海を渡り、タシダッキに戻ってから、ゾマイテッタからゼインセサンで合流。

 仲間の死亡と奴隷落ちを聞いてショックを受ける事になるのは仕方が無いが、それを教訓に前進。

 全員で話し合い、最有力なエースパーティーと、残りの戦力を均等に分けた3パーティーで再編成。新たな4パーティーでダンジョン攻略に挑む。


 尚、死亡して不要となった【同志の証輪】一組は貸与していたタシダッキに返還されたそうだ。

 皮肉な話だが、勇者以外がダンジョンに入っても劇的に強くなる事は不可能に近い為、使用しないのであれば、何処の国も自国の番に備えるのも当然。勇者は代え(・・)が利くのだから。



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