新戦力
スィン達が村の一員となって、三日後。
ダンジョン探索隊として出ていたエメが、全裸の美少女を連れて帰って来た。
──ああいや、正解にはエメからの連絡を受けて俺とアルビナスが出向き、確認してから、俺が村に連れて帰った、となる。
はい、例の巨大蜘蛛が、その美少女さんです。
「ももも申し訳御座いませんなのですぅ~……」
「ここ此方等こそ申し訳有りませんですも!」
その美少女とスィンが御互いに土下座し合う。
うん、あの巨大蜘蛛、滅茶苦茶腰が低い。正直に言うとアルビナスみたいな感じだと思ってました。だって蜘蛛って捕食者だから。
美少女の名は“ジステラ”。
種族は“タラテア族”。当然、始祖です。
身長150センチと小柄ながらサイズとしてならローザさんと同格。物理的には当然ながら小柄な分小さいのだが……恐ろしい娘……
エメの様に濃淡の有る紫色のストレートロング。紫水晶を思わせる瞳は気弱な垂れ目が儚さを纏って一層綺麗に思えてしまう。耳はヒュームと大差無く少し尖っているだけ。
種族的な特徴としては額に有る紫の四つの複眼。髪に隠れているが耳の後ろ──後側頭部にも二つ。独立した視神経を持っている。
また、前髪中央に二本の触角が有り、耳の後ろに隠れる様に長い副触角が有る。副触角は触手の様に扱う事が出来るそうだ。
──と、有った時に鑑定して知ったので、率直に訊いたら顔を青くして絶対服従を誓われた。
満足そうなアルビナスが羨ましかったな。
──で、そのジステラ。巨大蜘蛛だった時の話に戻ると、本当に冬眠中だった。冬じゃないけど。
目覚まし機能ではないけど、魔法で起きる時期を報せる様に設定していたのに、光が入ってきたから吃驚してパニクって暴れていたらしい。スィン達を自分を狙う敵だと勘違いもして。
はい、滅っ茶事故ってた訳です。
まだ起きる時が来てないから寝惚けてもいたし、それで殺されたらねぇ……普通は憎みますよ?
何故か、殺した俺にベタ惚れなんですけどね~。これも弱肉強食だからでしょうか?
尚、ジステラは滅茶苦茶尽くしたがり屋さんで、俺の身の回りの世話を常に遣りたがります。はい、御風呂も食事もトイレも一人で出来ますから!
だからジステラには直ぐにでも妊娠して貰おうと本気で思います。そしてジステラ自身が産む子供を含めて子供達の世話を頑張って貰おう。俺の精神の安定を守る為にも。かなり真面目に。
さて、そんなジステラですが、蜘蛛だった為か、糸を生み出して扱う事が出来ます。とても上手い。糸も多種多様で便利!
はい、彼女は村の裁縫関連の総責任者に決定!
既に俺の要望で幾つか仕事をして貰いましたが、滅茶苦茶仕事が早い。精密だし綺麗だし丈夫だから皆からの評価も爆上がりしています。
ツンシコートから取れた綿を【加工】で糸にして布を織る必要が有る為、布は作れていなかったのでジステラの加入は滅茶苦茶大きい。
更に、ジステラは綿から作った糸も扱える事から素材や用途に合わせた使い分けも出来る。
滅っ茶仕事が出来る訳です。だから、俺の世話はしなくても大丈夫。尽くすのも限定的にね?
……はい、判ってます。その尽くしたい気持ちを受け止める為にも子作りですよね。
──とまあ、ジステラが早々に即戦力になって、焦ったのがスィン達、モーラ族。
焦る必要は無いし、適材適所なんだけど……その気持ちが理解出来るから言い難い。無理をしてれば注意もしますけど、ちゃんと俺の言いたい事を理解した上での焦りなので……難しい。
余談ですが、俺の妻になったスィン達を除くと、モーラ族の内訳は夫婦十五組と子供十三人。子供も双子や兄弟姉妹も居る為、全ての夫婦に子供が居る訳ではなかった為、昂っていた訳です。納得。
ただ、例のサングラスは効果覿面だったらしく、スィン達は日中でも問題無く活動出来る様に。
土弄りが上手なので俺としては大助かりです。
また、例の地下貯蔵庫も完成。山から切り出した岩石を使って部屋を組んでいる。まあ、一つ一つの大きさ等は以前の世界では難しい事も、此処でなら容易く出来たりしますから……深くは考えない。
【空蔵の鍵環】とは違い、地下貯蔵庫に収めると時間経過が伴う為、管理技術や知識が問われる事で俺自身を含めた村人全員の財産となります。
便利なだけが正解とは限りませんから。
そんなモーラ族。見た目は小学生の低学年以下。スィン達が成人していると判っていても、日常では無意識に子供の様に扱ってしまう。
頭が撫で易い高さに有るから。サラサラ、ショリショリとした毛質の手触りも癖になるので。
だから、ついうっかり妻以外の女性の頭を撫でてしまった時が大変。俺に求められていると勘違い。夫の男性に助けを求めて事無きを得ました。
まさか、人妻だろうが、俺が相手なら、何人でも子供を産む気が有るとは……それは違うから。
種族的、社会的、世界的な価値観の違いです。
「モーラ族に限らず、ヒューム以外の多くの種族は国を失えば数が減り続けますので。そうなると強い子供を成したいと思うのは当然の事です」
そう話すのはマリアナさんの母親のファナさん。御義母さんです。
あ、御義母さん達とは何も有りませんからね?
御義母さん達は既に妊娠しなくなっているので。快楽の為だけに村の規律を乱す真似はしません。
見た目にはまだまだ美人ですが、性欲自体も殆ど無いんだそうです。助かった。
「夫婦としての夫への愛と、種族としての危機感は別物ですので。まだ子供を産めるのであれば私達もアイク様に御情けを頂きたいですから」
「そっかぁ…………因みに、それは勇者だから?」
「アイク様だからです。勇者というだけでは流石に其処までは求めません。勇者としての力ではなく、アイク様御自身の強さが魅力なのです」
「…………俺には判り難いなぁ……」
悩んだ末に、そう言えば御義母さんは笑いながら目を細める。「判る必要は有りませんから」と。
まあ、裏を返せば「アイク様の事を求める女達の気持ちだけは御理解を」と。そういう事かな。
妻以外に手を出す気は有りませんが、気を付ける事にしましょう。
ジステラの加入により数日で村の女性達の服装に大きな変化が現れた。
各種族特有の衣装は残りながらも、村の統一型の服装というのが出来上がった為だ。
下は自由だが、上のデザインを統一した事により村に一体感が生まれたのは良い事だと思う。
そして、個人的な服装にも好みが現れる。まあ、それは女性であれば当然なのかもしれない。
ただ、俺の妻達に限れば少し困った。ジステラと下着関係の話をした事が原因だが……妻達の下着がエロ過ぎる。可愛いとか綺麗とかではなくてです。俺を誘惑する為の下着。効果は抜群ですが何か?
皆、若いし、可愛いし、綺麗だし、エロい。
男として欲情しなかったら終わってます。
まあ、思い出せば自分の絶倫さには驚きますね。鍬を振って、新しい畑を耕しながら。
「村長ー!、御昼の準備が出来ましたー!」
モーラ族の男性が声を掛けてくれたので畑を見て切りが良かったので終わりにする。
「最近どう?」と他愛の無い話をしながら帰宅。妻達と一緒に昼食を取り──昼の子作りタイム。
うん、最近は時間さえ有れば時と場所を選ばずに妻達に求められるので応えています。爛れていると自覚はしていますが、拒否は不可能です。妻とした以上は俺にも責任が有りますからね。
はい、休憩は終わりね。頑張りますとも。
「知ってはいるが、改めて考えると凄まじいな」
そう言うローザさん。ファナさん達を始めとして妊娠・出産・育児経験の有る女性達から色々と話を聞いて学び、判ったからでしょう。俺の絶倫さには感心しつつも頬を赤らめる。聞こえてましたよね。
この世界に俺が召喚されてから、ローザさん達と出逢ってから三ヶ月半近くが経ちます。
そして、今では沢山の奥さんが居て、半分近くが妊娠しているという……当初の家族計画は破綻した状況ですが、幸せです。社交辞令ではなくて。
「ローザさん、此方等が頼まれていた物ですぅ」
「有難う、ジステラ、助かる」
ジステラから何かを受け取ったローザさんが俺の視線に気付いて見せてくれた。ああ、マタニティードレス的な服だったんですね。
「ああ、御腹が大きくなってきたんでな」
そう言いながら撫でる御腹を見て──固まる。
……え? 待って待って。ローザさんって、まだ二ヶ月過ぎた所ですよね? 御腹、大き過ぎない?
妊娠二ヶ月で、こんなに御腹が膨らんだっけ?
当然ながら高校生だった俺に妻はいなかったし、妊娠した経験も無い。だが、従姉という実例が俺の身近には存在していた。それを思い出す。
………………うん、確か妊娠したって聞いてから最初に会ったのが三ヶ月過ぎ。御腹は出てないし、元の体型を知らないけど違和感は無かった。
はっきりと判る様になったのは五ヶ月を過ぎて。一目で妊娠していると判ったのを覚えている。
……よし、俺が考えても判らないな。
軽くパニックにはなったが、緊急家族会議!
ファナさん達にも来て貰うと……うん、やっぱり驚きますよね。俺が可笑しい訳じゃないよね。
ただ、そんな周囲の反応にはローザさんは勿論、ラシアさん達も不安そうにする。長引くと母子共に影響が出そうだから早く解決したいと思う。
「主様が鑑定してみればよいのではないかのぉ?」
話し合う中で、そうアルビナスに言われて、場が静かになった。そして、気付いた。そんな事も思い付かない位に動揺していたんだとも。
──で、ローザさんを鑑定すると──
[妊娠五ヶ月相当]と。
………………え? “相当”って何?
取り敢えず、得た情報を皆に伝えた。
うん、まあ……俺と同じ様に思うよねぇ……
ただ、ローザさんの健康状態に問題は無いので、皆も一先ずは安心。疑問だけが残った。
まあ、情報が正しいのなら、現在、ローザさんは妊娠五ヶ月になる、という事。二ヶ月ちょっとで。つまり、約2倍。ネーレイア族もモーラ族も妊娠の期間は十ヶ月だそうだからオルガナ族もヒュームも同じだとは思う。
そうなると……半分の五ヶ月で出産? マジ?
──いやいや、気にするのは其処じゃないよね。うん、多分、そんな常識外れな事になってはいても母子共に無事に出産出来る気がする。何故か。
問題なのは、それが本当なら妻達が絶対に一族と子供を増やす為に動く。下手をすると……年二回の妊娠と出産を画策するかも…………あ、手遅れだ。もう話し合いが始まってる。
………………よし、ちゃんと謎を解明しよう! これは現実逃避じゃないから!
──とは言え、何故、こんな事に?
いやまあ、俺が関係してはいるんだろうし、俺の妻だからなんだろうけどね。言いたくはない。
「ふむ……妾達が主様の妻で、主様の子供じゃからじゃろうな」
そうそう──って、アルビナスウゥゥーーッ!?
「主様、隠せると思うたのか?」
「……無理だと思う……けどぉ……」
「抑じゃな、妾達の様に存在を人に転じ一つの種の始祖と成った身からすれば、伴侶に求めるのは力。故に、最も大事なのは魔力。その質と量なのじゃ。その点、主様は最高じゃのぉ。良い子を望めるし、その上、精自体も活力に満ち溢れておる。其方等も感じるのであろう? 主様の精は一舐めするだけで身体の芯から熱を生む程に素晴らしいと」
「…………え? そうなの?」
「まっさかぁ……」と思いつつも訊いたら、顔を赤くしながらも全員が肯定する。
そっかぁ……だから時々飲みたがるのか……
正直、子作りは理解が出来るけど、何で飲む事も多いのかが不思議だった。男としては、その仕草や姿に興奮して滾るんですけどね。
まさか、そんな媚薬みたいな効果が有ったとは。でも、美味しくないんじゃ……大丈夫? 出来れば毎日一回は飲みたい?
いやまあ、希望するなら応えますけど……え? ローザさん達も? ……母子共に効くから?
そう言われると……ねぇ……
──という訳で、何やら可笑しな日課が増えた。うん、流石にね、それだけ独立して遣るのは無理。だから、殆どは子作り中に。ローザさん達だけ別でという形で話は纏まりました。
纏まってしまったんです。意味不明!
考え過ぎると精神的に堪えるので考えませんが。何と無く、空を見上げてしまいます。
……どうして、こうなったんだろ?




