そして、伝説に
衝撃の事実が発覚し、予想外の頼み事をされて、それを引き受けて、という超展開。
意味不明だから理解しようと努めた結果、自分で自分の首を絞める事に。そんな特殊な性癖の趣味は無いんですけどねぇ……何処で間違った?
彼是と自分の中で葛藤やら何やらが有りましたが逃げられなくなれば開き直るしか有りません。
何より、どんな理由だろうと、我が子は我が子。自分の子供に対する責任を投げ出したりはしない。勿論、その母親であり、妻となる女性達に対しても責任を負います。
……まあ、子供達には少し特殊な家庭環境になる事だけは申し訳無いんですが。それは俺達が原因な訳では無いので、大きく成ったら理解して欲しいと思ってはいます。ええ、不可抗力でしたから。
それでまあ、御義姉さん達と……あー……励んだ訳ですが、もう激しいのなんの。いやまあ、2人も美人で魅力的で淫靡で可愛いものですから、自分も頑張ってしまったのは仕方が無いと思うんです。
…………はい、はっきり言いますね。10日間、朝から晩まで求め続けられました。
自分の絶倫さと、御義姉さん達の貪欲さに驚愕。もしかして御義兄さん達の不能は【魔王の呪怨】が原因ではないのでは? そう思った位ですから。
ああでも、ずっと王都の屋敷に居た訳ではなく、1回戦目が終わった後に、俺とシエルさんは一旦、帰宅しています。
皆にも説明しないといけませんから。
ただ、理解が早くて驚きました。
誰か質問とか無いんですか?
そう言ったら、メイドさんからは、「他の皆様の御出産は何方等で?」「私達も関われますか?」と遣る気に満ちた質問が。
執事さん達からは、「将来的な事を考えて増員を御願いしても?」「王都の屋敷とも連携出来る様に定期的に情報交換をするべきですね」と。
もうね、あっと言う間も無く、外堀が埋められてしまいましたとさ。どうしてこうなったっ!?
……ああ、それと、ポーチェ達も激しくなって、御義姉さん達に負けじと張り合ってきます。
何か違うよね? ……違わない? そうですか。はい、ちゃんと頑張ります。
話を戻して、御義姉さん達なんですが。俺的には数日に一晩を一緒にする、程度に考えていたので。まさか10日間も続くとは思っていませんでした。ただ、流石に王都の屋敷に居続ける訳にはいかない事も有って、2日目には島の自宅に2人も移動して励む事になったので、一日中という訳ではないし、仕事をする時間も確保出来ます。
……別に仕事を言い訳に逃げてはいませんよ? それ以外の時間は頑張っていますから。恋人や夫婦としての語らいや一緒に何かをしたりしています。ちゃんとした関係を大事にしていますので。
…………で、シエルさんの言葉が現実に。
御義姉さん達が来ている間に王都では王公貴族が一堂に会して話し合いが行われ、其処で俺を相手に御義姉さん達の妊活が始まっている事が伝えられ、陛下達──特に王妃様からは各家の女性への後押しとして体験談が語られました。
はい、1回戦目後に帰宅してから御義姉さん達を迎えに行ったら、王妃様──御義母さんが居まして一緒に自宅の方に来られました。最初は大事な話が有るという事でしたので──油断していました。
御義母さんは現在39歳。御義姉さん達に比べて妊娠欲は無いに等しいそうですが、全く無いという訳ではないそうです。ですが、子供を作る為というよりも御自身が俺と関係を持つ事で御義姉さん達と子供達──孫達を守る為の既成事実作りだそうで。そう言われては俺も断れません。
……そして、三児の母とは思えない御美しさと、経験に因って磨き上げられた技術。激しさも有り、しっとりとした艶かしさとのギャップは狡いです。気を抜くと夢中にされそうな程なので。
ただ、他の皆に指導をするのは勘弁して下さい。特にミーネ達に対しては。将来は妻になるとは言え今は幼い訳ですから……だから、必要? ちゃんと学んで準備しておくべきと。そうかもしれません。
…………ハッ!? ち、違う! 今のは無しっ! 無しだから実践して経験を積もうとか言わない!
──という様な事が有りましたので。
……御義母さん、子供を作る事が目的じゃないと言っていたのに何度も来られているのは? いや、嫌な事は有りませんよ? 一線を越えてしまったら何度でも同じですから。拒否したりはしません。
ただ、子供が出来たら、ややこしい話になる様な気がするんですけど……え? その辺りは何とでも出来るから大丈夫? 私の弟妹を宜しく?
……俺の奥さん、マジで子供100人計画を達成しようとしてます。誰か止められませんか?
「それは無理だと思います」
「もう、アイク様無しでは生きられませんもの」
「アイク様、次は私に下さいませ……」
小休止の間に愚痴る相手は以前助けた伯爵令嬢と御友人の御令嬢達。
既にシエルさんと夫婦である事は公然の秘密に。勇者である事は隠していますけど。
はい、ヨノゥマキッコ王国の全ての王公貴族家に俺の血が入る事が決まっていました。俺に発言権は有りませんでした。話し合いに参加すらしていない間に決まったので。可笑しいよね?
でも、幼い子供──男の子も居る家もなんです。その子の母親達が御相手なんですよ? 倫理観とか何処に行ったんでしょうね。
……まあ、その子が成長してから子供が出来無いという事になったら困る訳で。そうなる前に1人は子供を作っておけば、という考えは……判ります。血統を繋ぐという意味でも。
それに、その子の魔法の才能も何れ位のものかも計り切れる訳では有りませんから。確実に受け継ぐ方法が有るのなら、王公貴族として選ぶのは当然。力を有してこそ、その責任を果たせるのだから。
そう言われたら……ねぇ……断れませんて。
そんな訳で、王都の屋敷は子作り屋敷に。
俺は今、昼と夜は此方等で過ごす事が殆どです。朝は必ず自宅に帰り、シエルさん達と朝食を取り、仕事も熟しています。でも、爛れた生活です。
だから、もう少し休憩しない? ……終わりね。了解、頑張ります。だから、順番にね?
「ふふふっ、早く会いたいでちゅね~」
「嗚呼……こんなにも嬉しいものなのですね……」
御腹を撫でながら、デレデレ、うっとり、とする御義姉さん達。
狂宴にも等しい日常が始まった、あの日から既に2ヶ月が経ちました。はい、そうです。しっかりと御義姉さん達は妊娠しました。俺との子供です。
まあ、こうして喜んでくれている事自体は素直に嬉しいですし、頑張った甲斐が有ります。ですが、まだ1人目が産まれてもいないのに2人目の予定を組もうとするのは止めて下さい。ちゃんと2人目も出来る様に頑張ります。だから妊娠は自然の流れで御願いします。予定を組まれると生産工場みたいな気分に為りますから。
「気持ちは判りますが、浮かれていると、注意力が散漫になりますよ? 転んだりしない様にね?」
「はぁ~い」
「判りました、御義母様」
そして、同じく自分の御腹を撫でる御義母さん。言い訳など有りません。当然、俺の子供です。
ただ、これだけは言わせて下さい。御義母さん、絶対に最初の1回で火が点きましたよね? 笑顔で誤魔化そうとしても駄目です……可愛いですけど!
伊達に貴女の娘2人を相手にしていませんから。ええ、母娘してそっくりです。子供を成そうとする欲求に正直に為っている時の表情や反応が。何より口実作りにしては頻繁に来られていましたし、大変積極的でしたからね。判ります。判った上で応えた訳ですから合意の上の子供なので安心して下さい。ちゃんと俺も父親として……え? いや、ですから子供の事は……切りが悪いからもう1人欲しい? それは流石に……もう1人なら、大丈夫そうだからという問題では…………ぜ、善処するという事で。だから、今襲おうとするのは止めて下さい。
「出来れば、妹と弟が良いわね」
他人事みたいに言うシエルさんですが、その子は俺の子供だから、貴女の義子にも成りますよ?
……細かい事は気にしないから、どんどん作って大家族にしましょうって…………これは、男として喜ぶべきなのか、嘆くべきなのか……難しい。
そう、シエルさんが御機嫌なのは、3人の妊娠に止まらず、伯爵令嬢達も妊娠したからです。
優先順位の高かった15人。その全員がですからシエルさんの目論見通りと言うか……見立て通りの結果に成ったと言うか……まあ、そういう事です。自分でも呆れますけどね。
未婚の方は問題は無いですが、結婚はしていても子供の居なかった方とは……多少なりとも葛藤する部分は有りましたけど……まあ、受け入れられた。いや、開き直れた、が正しいかな?
ただね、やはり、夫子の居る方が相手となると、どうしても倫理的に……女性側が積極的過ぎたので悩む暇が無かったんですけどね。
でも、実際に妊娠すると今更ですが、悩みます。当事者も、その家族も喜んでいましから、俺の方が気にし過ぎるのもねぇ……何が正解なのか……。
そして、その成果によって、次の妊娠を希望する女性20人が既に決定しています。
──否、正確には既に始まっています。そして、第三陣・第四陣・第五陣と……止めましょう。
え~と……話を変えて………………え? あれ? 思い浮かぶ話題が全部同じなんですけど?
…………これ、ヤバくない? ……大丈夫?
気にするな、と。そうですか……無理だよっ?!
以前、シエルさんが言っていましたが、冒険者の中でも実力の有る女性達も参加者です。
ああ、先の15人には含まれてはいませんから。はい、別です。別で15人。次からは20人ずつに増員されるのは考えない様にします。
──で、冒険者の女性ですが、王公貴族とは違い責任や役目の様なものは有りません。だから無理に子供を成す必要は無いと思っていました。欲しいと考えるのなら兎も角として。
価値観──と言うか、これは先入観でしょうね。それ故に、そう勝手に思い込んでいた訳です。
冒険者は自力で身を立てています。
つまり、自身の力は誇りであり、その力を次代に繋ぎたい、残したいと思うのは必然。
だから、子供を望む。ええ、判ります。
ただ、王公貴族の様に考えてはいない筈なので、結婚していたり、恋人が居れば、愛に生きる。
そんな風に思っていましたが──王公貴族よりも現実的な価値観だったので吃驚しました。
まあ、既に子供が居る方は対象外なのが、救いと言えば救いでしょうか。
……ああいや、何事にも例外は有ります。子供が居ても突出した実力者に限り、希望すれば、俺との子作りに参加出来るという事に。
「まあ、居ないだろうけどね~」と。楽観視して承諾したのが大間違いでした。
冒険者は実力主義です。だから、女性からすると優秀な男との子供を望むのは自然な事で。少しでも優秀な子供を成したい。そう考える人は多いらしく未婚のままで複数の男性との間に子供を設ける様な動物的な感覚の方も居るんだそうです。
はい、ガッツリと貪られましたとも。肉体的にも鍛え上げられている為、王公貴族の女性達と違った魅力や個性が有りますし、捕食者なので獰猛です。可愛らしさも備えた肉食獣。そんな感じです。
当然、冒険者の女性15人も妊娠しました。
そんな無双状態だからなんでしょうね。
陛下達や冒険者ギルド長達、更に国内の有力者が集まって話し合われた結果、一般人からも参加者を募ってみようという意味不明な展開に。
……判っています。魔法の才能を基準にした上で母親となる女性を選出すると子供が偏りますから。国民──平民の数も増やす必要が有ります。
子供は作れるとは言え、生殖能力が低下している状況には変わり有りませんから、このままで行けば人口や出生率が先細る未来は容易に想像出来ます。それを避ける為にも、という事です。
そう言ってシエルさんを味方に引き入れて説得を任せた陛下達には文句を言いたい。立場上は必要な事だとは判りますけどね!
そんな訳で、次の──もう始まっていますけど、子作りには一般の女性達も参加しています。
此方等は未婚であり、恋人も居ない事が大前提。その為、気持ち的には少し楽なんですが……あの、この娘、12歳だそうですよ? ちょっと妊娠するのには早くない? ……彼女の母親も13歳の時に出産してるから大丈夫? そういう……うん、大丈夫。だから泣かないで? うん、気持ちは判ったから。
「パァ~パ?」
「アレクシルよ、男には逃げられない戦いが有る。その時、信じられるのは己の不屈の意志だけだ」
「ぅ~?」
「大丈夫、今は判らなくてもいい。だけど、心奥に深く刻み込んで置いて欲しい。強く生きる為に」
「アイク、そろそろ時間よ」
来月には1歳を迎えようというアレクシルの目を見ながら男としての生き様を語る俺は父親としては威厳を保てているのだろうか?
娘が生まれたら、「お父さん、最低……」なんてゴミを見る様な視線を向けられないだろうか?
そんな懊悩と不安に苛まれています。
「貴男は最高の父親よ。自信を持って」
「いや、だけどさぁ……」
「姉様達は勿論、御母様とも次子を成すのよね?」
「…………まあ、そういう約束だし……」
「求められ、望まれ、それが人々の、国の、世界の未来に繋がっていく。これ以上は無い父親だわ」
詭弁だとは思うけど、正論では有るし、何よりも覆せない確固たる事実。だから、納得してしまう。でも、「それでいいのか?」とも思う。
「それでいいのよ」と囁きながら抱き締めてくるシエルさんですけど……それは狡いです。
心底惚れているし、愛しているからこそ。彼女の言動というのは俺にとっては特別ですからね。
う~ん……娘が出来たら、軽々と転がされている甘々な自分の姿が思い浮かんでしまいます。
そんな風に。いつも通りに。送り出される。
会社勤めって訳ではないのに……何か、同じ様な感じがするのは気のせいですかね?
【空渡の天翼】で転移した先は王都の屋敷。
但し、ヨノゥマキッコの王都ギシャールではなくテッネタショケ国の王都メイランスンに用意された俺の為の屋敷にです。
……はい、そうですよ。違いますよ。この屋敷もギシャールの屋敷と同じく子作り屋敷です。
御義姉さん達との子作り中に、テッネタショケに御義兄さんが赴き、政治的な交渉が行われました。当然ですが、そんな話は聞いていません。俺はね。シエルさんが受諾していました。俺の権利は?
文句を言っても成立した国同士の密約ですから、反故になんて出来ません。遣ったら即戦争になると判りますから、俺は事後承諾するしか有りません。戦争しても勝てますが、その後の責任を負わないといけませんから面倒なだけです。
その事を思えば…………まあ、大人しく子作りに協力した方が負担は少ないと思います。大変なのは俺だけですからね。ええ、俺だけですよ。
そんな訳で、メイランスンの屋敷に来ました。
…………あれ? あの~……自分の記憶違いではなければ、王妃様ですよね? ああ、そうですよ。御久し振りです。今日は代表としての御挨拶に? 違う? では、御息女の付き添いで? 子供は4人全員が息子? …………え~と、それでは、つまり王妃様も……その、含まれると? ああいえ、何も問題は有りません。いや、済みません、有ります。其方等の王位継承権等は……あ、ああー……陛下が婿入りで……王妃様の子供なら問題無しと。
………………どう考えても問題有るでしょっ!?
言っても仕方が有りませんが。一言だけ叫ばせて貰いました。勿論、聞こえない様にしてです。
飲み込む・溜め込むは精神衛生上悪いので。
密約で俺の事を詮索するのは禁止されています。破ったら、即終了です。勇猛果敢で恐い物知らずな無謀な挑戦者は居ませんか? ……居ませんか。
取り敢えず、今回の参加者のリストを王妃様から受け取ります。一応、俺の方は相手の事を把握する権利を貰っていますので。この辺りもシエルさんが御義兄さんにアドバイスをしたんでしょうね。俺の性格等を理解していればこその妙手なので。
…………? あの、王妃様? 此方等の4人って御子息の奥さんや婚約者と有りますが? ……元? 離婚・婚約解消しているので問題無い? いや、それは流石にどうかと…………皆様も構わないと? ……判りました。
この5人を除けば、他は可愛いものです。ええ、これまでの延長線上・拡大範囲内ですから。
……あれ? 其方等の方、前に何処かで……あ、冒険者ギルドの……って、貴女、Cランク冒険者の方ですよね? え? 貴女も? ……あー……似た様な事情の人って意外と何処にでも居るんですね。不思議と親近感が湧きます。
はい、判っています。こうして話して時間稼ぎをしている訳では有りませんよ。ちゃんと皆様の事を知って向き合う為です。必要な事だとは言っても、作業的なのは嫌でしょう?
……え? 一列に並んで? あー……そんな風に思われても仕方有りませんが、ちゃんと愛します。そうしないと俺の方が嫌ですから。
「本当、貴男って絶倫よね」
「シエルが今更それを言うかな?」
「改めて感心しているのよ。普通の男性だったら、疾うに枯れ果てている所なのよね?」
「それはまあ……そうだとは思うけど……」
「しかも、単に種付けするだけじゃないもの」
「種付けって……いやまあ、事実だけど……」
「そうはせずに、ちゃんと愛してくれているから、皆も貴男を心から求めているのよ。子作りが嫌なら作業的にすれば次は無くなるのに」
「……生まれてくる子供達に罪は無いんだ。だから母親になる以上は、ちゃんと愛情を注いで欲しい。その為には俺自身が彼女達を愛さないと……」
「貴男のそういう所が私達を惹き付けるのよ」
そう言って甘やかしてくれる。
家庭的には俺が一家の大黒柱であり、俺の存在で生活が成り立っていますが、精神的にはシエルさん無しでは成り立たってはいないでしょうね。
自分でも引く位、シエルさんに依存しているのが判りますから。シエルさんという絶対の支柱であり帰る場所、拠り所が有ればこそ。今の可笑しな性活にも耐えられている訳ですから。普通は精神を病み疾うに不能に為っているでしょうからね。精神的な支えって大きいと思います。
アレクシル、お前も良い女性を見付ける様にな。その絆が、その存在が、お前自身を強くする。
そう言ったら、シエルさんに襲われました。
安定期に入ってるからって、激し過ぎですって。嬉しいですし、何だかんだで俺も頑張りますけど。だって、愛しているんですから。
──という事が有っても現実は変わりません。
アレクシルが1歳を迎え、御目出度い筈ですが、俺の日常は改善する気配は全く無く悪化する一方。まあ、先数年間は繰り返しになるのは判ってます。各々の母親と子供を複数成す訳なので。
普通は妊娠・出産・育児の負担を考えて間を置くものだと思いますが、様々な理由から可能な限り、連続するそうです。
ただ、俺としても気にしない事は無理ですから、初産の場合は産後半年は間を置く事で合意。
2度以上の出産経験が有る場合は、要相談です。御義母さんや王妃様の様な場合も有るので。
そんな俺の日常にも変化が。
テッネタショケでの1ヶ月の御勤めが終わったら次はルィーヤンク王国に。王都レンディマーリャに用意された屋敷に通います。
はい、前回と同じ流れでした。テッネタショケで俺が頑張っている内に御義兄さんがルィーヤンクに赴いて交渉しました。テッネタショケの王妃様から推薦状というオマケ付きでね。
推薦状の内容は…………まあ、読まなくても大体予想が出来ます。ルィーヤンクの女王様の肉食獣を彷彿とさせる姿を見せられれば。王妃様、推薦状は自分の経験や感想を書くものでは有りませんよ?
「女王というのは大体が堅苦しいわ、面倒臭いわ、事有る毎に煩わしく思う事ばかりで、楽しみという楽しみは食事位しか無かったが……其方という男に出逢えたのだから、全てが報われた気がするわ」
「貴女に、そう言って頂けると光栄です」
仰向けになった俺の上に跨がり、見下ろしながら少女の様な初々しい笑顔を見せる女王様。
……いや、つい先程まで穢れ無き乙女でしたから強ち間違ってはいないんですけどね。
ええ、あんなにエロ──魅惑的なのに、まだ未婚という事実にも驚きました。それと、20歳という事実にもです。ユーという前例が傍に居るので直ぐ納得出来ましたが。そうでなかったら、何かしらの禁断の秘術とかを用いている可能性を疑っていたと思います。何しろ、魔法の有る世界ですから。
──で、そんな女王様には3人の妹さんが居て、負けず劣らずのエ──艶かしさです。末の妹さん、本当に13歳なんですよね? パッと見は20歳と言われたら信じますよ。血筋ですか?
そう聞いたら女王様達の母親である先代の王妃様を紹介されました。吃驚です。どう見ても10歳位なんですが……娘が4人? 女性の神秘です。
──なんて思ったのがフラグだったんでしょう。はい、そのまま襲われました。いや、押し切られたというのが正しいですね。食われたという事実には変わり有りませんが。女性を前に余計な事を考えた俺が愚かだったんです。
そして…………はい、エグい位に凄かったです。もし、俺が女王様達の誰かと結婚して、今の状況に為っていたとしたら、骨抜きにされていた可能性が高いと言い切れます。耐えられたのは愛と絆と経験が有ればこそです。特に異常な経験値がね。
マジで、先にテッネタショケで良かったです。
そんな訳で、ルィーヤンクにも1ヶ月の通勤中。それが終わったらヨノゥマキッコに戻ります。
はい、1ヶ月サイクルのスケジュールです。
少なくとも3巡──3度目の妊娠までは順番通りという事で決まっているそうです。俺は話し合いに不参加がデフォルトみたいですけどね。ええ、もう諦めましたよ、流石にね。
一応、個々の体調や育児・生活の状態・環境等の様子を見ながら、問題が有れば改善したり、予定を変更するなど、臨機応変に遣るんだそうです。
ただ、最低でも3年間は3国だけにするそうで、それ以外の国々とは、どんなに早く考えても1年後からの交渉になるんだそうです。
……まあ、これは世界規模の大問題ですからね。独占し続ける訳にはいかないのは判ります。
ですが、子供達に期待するのも有りでは?
そう言ったら、「子供達だと確実とは限らないし普通の遺伝と同じ様になる可能性が高いと思える。そうなると子供達の相手が魔法の才能に乏しいと、孫世代で一気に落ち込む事になる。だから、問題が生じる前に可能性を潰す。その為には確実に才能を遺伝させられる者が子供を成すべきなんだよ」と。御義兄さんに力説されました。
アレクシル達に苦労を背負わせたくはないのが、俺としては正直な所ですが、それは難しい事なのは判っています。人類の危機なので。
しかし、その子供達は異母兄弟姉妹で結婚する事になるでしょう。力を確実に伝える為に。
母親同士の血縁関係が薄い相手が最優先ですが、本人達の感情──気持ちや想いも大事にしたいので今から考えていかなければなりません。
普通の育児でも大変なのに……こんな状況だから考えれば考える程、頭が可笑しくなりそうです。
…………ああ、だから、何も考えずに、と。
いや、それだと目の前の状況だけしか見てない、その場凌ぎでしか有りませんからね。それは駄目。ちゃんと考えて親としての責任は果たさないと。
…………え? 娘達が俺との子供を望んだら? ちょっと、不吉な事を言わないで下さい。そんなの聞き入れる訳には…………え? そういった事って数が少ないけど実例が有るの? ……ああ、血筋が薄まるのを懸念して、父娘や母子、兄弟姉妹でと。一応、理由と理屈としては判ります。但し、それを俺が許容出来るかは別にしてです。普通に考えたら無しです。有り得ません。
そんな話をしているアンナの御腹も大きくなり、出産予定までは2ヶ月を切りました。
その3ヶ月後にはシエルさんも2人目を。
更に2ヶ月後には御義姉さん達が続々と……あ、何か違う意味で身震いがします。
あと、ポーチェ達も妊娠しました。もう少し先で考えていたんですけどね……押し負けました。
まあ、ベテランのメイドさん達からも大丈夫だと後押しされたのも有ります。経験者の見解や判断は無視出来ませんからね。
2人にしても、他の女性達ばかり妊娠する状況は面白くないでしょうし、不満から更に激しくなったという実情が有った事も一因なんですけどね。
「ふぅ~……何か、久し振りな気がするなぁ……」
島の中とは言え、滅多に1人では居ない今。
シエルさんやアレクシルも居ない状況は、本当に久し振りだと思う。誰かと一緒に居るのが嫌だって訳では有りませんが、当初は1人暮らしでしたし、家族が一気に増えるという事は想像してもいませんでしたからね。今の自分の状況なんて、想像の枠を突き抜け過ぎていますから予想なんて出来ません。こんなん判るかーいっ!!
──と愚痴って、ストレス発散。スッキリ。
……うん、冷静になり、1人になっている理由を思い出します。ゆっくり考える為です。
流石にね、百人以上の女性と関係を持ち、全員を妊娠させてしまうと気付きます。可笑しいって。
幾ら、独立した勇者だからって言っても、それが必ずしも男だとは限らない筈。
それはまあ、神様からしたら予測していた通りの結果なのかもしれませんけど。
兎に角、偶然の可能性を考えれば不自然です。
そうなると何かしらの要因が有るのではないか。そう考えるのが必然だと言えます。
考えてみました。
思い当たりました。
だから、気持ちの整理も兼ねて、1人に。
誰かに──シエルさんにも話せません。
全ての元凶は、この世界に召喚された時から俺と共に在り続けていた。そう、犯人は御前だ!
スキル【種蒔き】っ!!
下ネタなら笑えますが、流石に笑えません。
ですが、子種も間違い無く種です。そう確実に。それを蒔けば──当然、効果適用。
通りで全員が妊娠する筈です。
そして、共犯者も居ます。
それは、アビリティ【耕す】! 御前だっ!
俺は効果対象は土──地面だけだと思っていたし実際に土にしか種を蒔いてはいません。
だから、気付かなかった。
だから、無自覚だったんです。
土や地面は種を育てる為の苗床。それを最適化し育成を促すのが【耕す】の効果であるならば。
子種を育む為の女性の子宮──広く言えば身体を最高の状態にする。
それも【耕す】の効果の範疇だという事です。
はい、そういう事です。俺との子作りで女性達が激しくなる理由も、より本能と妊娠欲が刺激され、子供を成そうと全身全霊を尽くそうとするから。
それは妊娠しますって……という事です。
よくよく考えるとね、心当たりが多数。
御義母さん達の様に、最後に子供を出産してから10年以上経っているのに、子供が出来た事。
結婚して5年以上経つし、子作りも頑張っていたけれど恵まれなかった女性が俺と子作りをしたら、あっさりと妊娠した事。
まあ、これには別の要因も考えられますけど。
アンナ達も含め、まだ若い娘達が、健康を害さず妊娠し、安定している事。
実力・才能は確かだけれど病弱という事で結婚もしていなかった女性が俺と子作りを始めたら健康になったし、妊娠もした。その後も健康。
こういった事を考えて──全てが繋がった。
はい、真相解明。真実は俺の手の中にっ!!
…………こんなの、言える訳ないでしょうがっ!! 確実に参加者が増やされますっ!
しかも、アンナとしていた話が、“たられば”で済まなくなります。
多分、俺の子供達は同腹でなければ、健康障害や奇形形成といった悪影響が一切出ない筈です。
だから、俺の場合は実の娘、孫娘とかが相手でも普通に健康で優秀な子供が生まれます。
代重ねした分、色濃くなる筈のにです。
普通に考えたら意味不明・理解不能です。
ですが、これが現実なんです。
ええ、競走馬を育成するゲームでは不可能な事をリアルで人の俺は可能にするんです。
もう、種馬ならぬ種人、種田種男です。
…………自分で考えておいて笑えず、自爆です。黒歴史──いや、闇伝説の爆誕だと言えます。
しかし、問題なのは其処ではないんです。
今はまだ、誰にも知られていません。俺が自分で口を滑らせなければ、バレません。
ですが、人は考える生き物です。
本の少し、何かが引っ掛かり、不自然に思えば、考えを巡らせ──可能性を見出だします。
細かい事は判らなくても、俺が原因だとはね。
そうなれば、波及する事態は防げません。
口止め料では足りません、間に合いません。
だからと言って、逃げ道も思い付きません。
いや、島の中に引き籠れば【領主】としての力で何とでも出来ますが……全ての母子、その家族まで抱え込む事は不可能………………ん? 不可能? あれ? もしかして出来る? 遣って遣れちゃう?
…………どうしよう、可能性が見えちゃった。
自分が手に入れた力とかコネとか、まだ有る筈の未攻略のダンジョンとか。あらゆる事を駆使すれば島の周辺に海上都市を造る事は出来る筈。
取り敢えず、王都1つ分も有れば……行ける筈。流石に国や民を切り捨てる真似は出来ませんから、其処は考慮しますが。
船で往復可能な……島の北側、陸地との中間点に建造すれば、領地範囲内だし、問題は無し。
子供達も成人するまでは迂闊に外に出さなければ安全面も確実。勿論、無知は恐いから、外の世界を学ぶ為、知る為にも機会は考えるとして。
取り敢えず、誰にも知られない様に建造を進め、情報収集をしながら、その時が来たら強行。
正直な話、後の事を考えれば面倒過ぎて遣る気になれませんが──もう、考えるのは止めます。
折角の異世界での人生ですからね。自分に正直に気ままに生きて行こうと思います。
後世で何と評されようが死人には無関係ですから好きな様に遣るだけです。
ええ、愛妻の野望の10倍叶えで子供2000人孫10000人を目指して生きましょう!。
……ああいや、やっぱり、子供は1000人で。増え過ぎても困りますしね。
……困るかな? 止め止め、考えない考えない。そう決めたばかりなんだから。
見上げた空は青く、あの日を思い出させる。
いつでも始まりは唐突で、自分次第なんだから。