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逆トラメイカー!

作者: A-10

見た目と雰囲気が、やんちゃな二人の高校生・男子。


なぜか早朝から駅構内をウロウロしていた。

何やらメモまでとっている。

そして、電車に乗ったりと、その不思議な行動は深夜まで続いた。


1日中のその奇妙な行動で疲れた彼らは、深夜の電車内で、これまた奇妙な集団に出くわす。


1・トラブルの始まり





「だぁーーっ! くそっ、こんなハズじゃなかったんだけどな !!」


お婆さんをおんぶして、吠えながら全速力で走るエグチ。


「こういうのは、お呼びじゃないのにーーっ! どうなってんだよ!」


エグチが走りやすいように、人混みをかき分けて道をつくるタロウ。






・・・



人混みを掻き分け、お婆さんを背負い爆走する。

この行動、そこに至るまでに一体、彼らに何があったのか?

まずは始まりまで遡ろう…。





早朝、静かな街を歩く二人。


時刻は5時30分。


ゆっくりとした足取りで歩く。



『エグチ トシキ』▼

…あだ名はえぐっさん。

 今日の服装は…おでこと眉毛が隠れる位の幅広のヘアバンドをつけている。

 上はタンクトップで、ビーズと革の首飾りをしており、

 手首にはリストバンド、ハーフパンツにサンダル履きだ。

 体格はガッチリタイプ。



『アラワカ タロウ』▼

…あだ名はタロウさん

 今日の服装は…いつもつけている透明タイプのスポーツサングラスに、

 髪はブラウン系の金髪でエグチより毛は短い。

 左耳に穴が3、右に2つあいている。

 上はきりかえしにメッシュの入った夏用ジャケットで、

 チノパンにスリッポン。

 体格は中肉中背。





・・・



二人は今、高校の夏休み中だ。



その足で駅へと入る。


そして、何やら相談しながらメモを取っている。


電光掲示板の前に立っていると、一人の派手なマダムに声をかけられた。


このセレブリティなご婦人は、電車に乗ったことがないそうで、料金表、切符の買い方、路線図の見方などを親切丁寧に教えてあげる二人。


すると、気を良くした婦人は、現ナマ・札束をポンとよこして姿を消した。


唖然とする男二人。


そして我にかえると、


「お、おぉ! えっえぐっさん! 今ってバブルでしたっけ !? 」


「いいいいえ! 今は崩壊中ですよ、タロウさん!」


「つか、早く隠せって! 高校生が現ナマ持ってたら怪しまれんぞ!」


急いで隠すタロウ。


早朝の出来事なので、人が少なくて助かった。



その後二人は終電まで電車内をウロついたり、駅を降りたり、とにかく電車関係を調べ、メモをとったりして過ごした。




*  *  *




ガタン…ガタン…。…ガタン…ガタン…。



規則正しく揺れる車内。



電車内の窓は、外の風景ではなく、車内の様子を映し出す。



外が暗くなり、窓が鏡のようになっていた。



一日中歩きまわっていた二人は、心地良い揺れと疲れから、いつの間にか眠ってしまっていた。


先に目を覚ましたタロウは、エグチに慌てて声をかける。



「えぐっさん、えぐっさん! 起きて!」


「………ん?」


「なんか、アレ様子おかしくね?」


見ると、白い杖を携えた明らかに目が不自由そうな女性が男に絡まれていた。


エグチは少し寝ぼけながら、

「…あぁ…本当だ…。 ぅんっ…車掌呼びに行くか」

と、冷房で乾いた喉を整えながら、ダラっとしていた体を起こす。



車掌がいるはずの車両の最後尾へと動いた瞬間、目の前に分厚い壁が……。


…あれ…??

…まだ…ちょっと寝ぼけてるかも…。



ガタン…ゴトン…、ガタン…。


少し揺れる車内。

倒れないように無意識に体のバランスをとるエグチ。

体幹にはかなりの自信があり、他の立っている乗客?

よりも寝ぼけているにも関わらず、安定して立っていた。



「おい」


突然、壁が話しかけてきた…。

声のした方へ頭を動かすと……

…少し…恐い系の…顔が…オレを睨んでる…。



ガラの悪いスーツの男が道を阻んでいた…。



「…………。」


「都会の終電こえーなぁ」


怯むタロウだが、エグチはぼーっとしながらも頭を傾げる。


「…普通、終電って混んでるよな…」



しかし車内はぱっと見、空いている。


鏡のような窓を目を細めて眺めたエグチは声を発する。



「…いや…、これ地方の方に行ってんぞ!」




タロウは焦りの声を上げる。

「おぉっ !? おかしくね !? 」



エグチも焦りの声を上げる。

「どうなってんだよ !? 」



「おい、うるせぇぞガキ共」

スーツの男が威嚇して来た。


タロウは、

「いやいや、おかしいですよ !? お兄さん!」

と、スーツの男に話かける。



しかし男は無視する。



ガタン…ゴトン…!

電車の揺れる音も、こちらの不安を煽ってくる…!

さっきまでは、心地よい音色に聞こえていたのに…!



二人の様子をうかがっていたエグチは、そろりそろりと動き、隙をついて車掌の方へと走り出す!


「タロウさん! あのお姉さんをお助けしろ!」


「はぁ !? ちょちょっ…待っ…!」


そう言いながらもタロウはお姉さん救出を試みる。






「はいっ! 全然ダメだったーーー…!」



ドサッ!!


床に倒れこむタロウ。



最初ハナっから勝てる気がしなかったもの!



天井の蛍光灯を見つめるその眼には若干の哀愁が漂っている。


(ケガしちゃったら、コーチに怒られる…

…ていうか、筋肉痛の上を殴られるとこんな痛ェ-のか…

格闘家の人ら、見てる以上に…アレ…かなり痛いんだな…)


と、関係ない事を考えながら、何やら心配もしていた。




ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…。


ゴー…!


電車が短いトンネルを通過する。




車掌のとこに行っていたエグチだったが、どうやら車掌もグルのようだ。


「もしかして…電車ジャックか! ど、どうすんべ…!」


そういえば車内にいる人々が異様なことに気付く。

年寄りや障害者が多い…?



ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…。




タロウの元に戻って来たエグチ。


「!!」

「タロウさん!」


2・怖すぎる、深夜の列車!!



ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…。




エグチが見たのは、ボロボロのタロウの姿。



「フッ…。 想定内の結果だろ?」


「悪ぃ、タロウさん。 実は足留めに使わせてもらった」


「知ってたけどね!」


「おい、大人しくしてろ」



二人・「はいっ!」



スーツの男に注意され、模範的な良い返事をする二人。




ガタン…ゴトン…ガタン…ゴトン…。


白い吊り革が右…左へと揺れる。



…電車に揺られること数分。



「…………。」



車内は、電車が揺れる音に混じって…知的障害者の奇声や呻き声で、異様な雰囲気を更にキツいものにする。

たびたび聴かれる電車のアナウンスや軽妙なメロディーが聞こえないのも、不自然で…不安になる。

二人は気付いていないが、電車内には宣伝などのポスターが1枚も無かった。

無機質に近い車内。

いつも利用している車両が、いつもと違う様相だと一気に怖くなる…。



「…………。」


「……なぁ、タロウさん…」


「なんだい、えぐっさん…」


「オレら美少女とかじゃなくて良かったな…」


「本当だよ…男でもこえーのに、美少女だったらって思うとゾッとするな…」



その時、いつからいたのか気付かなかったが…


「あら? 可愛い坊や達じゃなぁい?」


と、野太い声が聞こえ、嫌な予感…



恐る恐る顔をギギギと上げると…



化粧をしたおっさんがいた。




ガタン!ガタン!!ゴトン…!!!





タロウ・「ひ、ひィ……!!」


エグチ・「き、きもち悪っ……!!」



「なんだか変なのばっかり乗ってると思ったけど、いいのがいたじゃないの!」


濃い化粧のおっさんは、クネクネ、もじもじ体をくねらせながら、

「アタシが可愛いがってあげるわ❤」

と、ち、近づいてきた……!!



タロウ・「い、いりませんっ !!」


エグチ・「右に同じっ !!」



座席を光の速さで移動する二人だったが、



エグチ・「なっ ! このオレを捉えるだと !?」


タロウ・「光以上のスピードを出したってのかよ! ありえねぇ!」



そもそも音速にすら遠く及ばない彼ら。




青髭に真っ赤な口紅のおっさんから、逃れようとする二人だったが、


エグチ・「うぉっ !? なんだコイツ ! やたら力、強ぇんだけどっ!」


タロウ・「くそっ! なんでこういうお姉様方は馬鹿力が多いんですかね !?」


そしてオカマは器用に二人の服を脱がしていく。



タロウ・「いやあーーっ! やめてーーっ!」


エグチ・「ムリっムリっヤダーーっ!」



二人の本気で暴れる少年を、同時に脱がす神業。

この絶世のブサイクは、筋骨隆々の逞しさを発揮する。


その時、予想外の声が入った。



「おい、バケモンやめろ。 汚ねぇもん見せんじゃねぇよ」

と、スーツの男が止めに入る。



タロウ・「汚ぇって、何気に傷付くんですけど…」


エグチ・「オレはかなり自信なるけどな!」


タロウ・「オレだってこう見えても、けっこーあるぜ!」


タロウ・エグチが脱線していると…、     ←電車だけに!

「…おい、誰がこのバケモン連れて来たんだよ」

と、先程の強面スーツメンが部下と思われる男に訊ねる。


部下と思われる男は心当たりが無いようで、

「さ、さぁ…?」

と、キモいおっさんを汚い物を見るような感じで横目で見ている。



エグチ・「キモおっさん、仲間じゃねーの !?」


既に半泣きの二人。



「………邪魔すんじゃないわよ…」


キモおっさんは、スーツの男に向き直り、拳を握りしめる。


スーツの男は、

「やんのか? おいっ!」

数人の部下達と共に対峙する。



そして、キモおっさんと怪しい集団のバトルが始まった!


半裸のタロウ・エグチは、

「オ、オレらはどっちを応援したらいいんだ………!! 」


究極の選択を迫られ、色んな意味で震えていた。



ガタガタ…ゴトン…ゴトン!!




青髭に真っ赤な口紅のおっさんから、逃れようとする二人だったが、


エグチ・「うぉっ !? なんだコイツ ! やたら力、強ぇんだけどっ!」


タロウ・「くそっ! なんでこういうお姉様方は馬鹿力が多いんですかね !?」


そしてオカマは器用に二人の服を脱がしていく。



タロウ・「いやあーーっ! やめてーーっ!」


エグチ・「ムリっムリっヤダーーっ!」



二人の本気で暴れる少年を、同時に脱がす神業。

この絶世のブサイクは、筋骨隆々の逞しさを発揮する。


その時、予想外の声が入った。



「おい、バケモンやめろ。 汚ねぇもん見せんじゃねぇよ」

と、スーツの男が止めに入る。



タロウ・「汚ぇって、何気に傷付くんですけど…」


エグチ・「オレはかなり自信なるけどな!」


タロウ・「オレだってこう見えても、けっこーあるぜ!」


タロウ・エグチが脱線していると…、     ←電車だけに!

「…おい、誰がこのバケモン連れて来たんだよ」

と、先程の強面スーツメンが部下と思われる男に訊ねる。


部下と思われる男は心当たりが無いようで、

「さ、さぁ…?」

と、キモいおっさんを汚い物を見るような感じで横目で見ている。



エグチ・「キモおっさん、仲間じゃねーの !?」


既に半泣きの二人。



「………邪魔すんじゃないわよ…」


キモおっさんは、スーツの男に向き直り、拳を握りしめる。


スーツの男は、

「やんのか? おいっ!」

数人の部下達と共に対峙する。



そして、キモおっさんと怪しい集団のバトルが始まった!


半裸のタロウ・エグチは、

「オ、オレらはどっちを応援したらいいんだ………!! 」


究極の選択を迫られ、色んな意味で震えていた。



ガタガタ…ゴトン…ゴトン!!


3・ゴツケバおっさんの正体


エグチ・「う、嘘だろ…」

タロウ・「ヤバそうなヤツら全部のしちまったぞ…!すげぇっ!」


なんと、オカマが勝利した。

そして二人に近付いて来るオカマ。


生唾を飲み込む。

身構えていると、脱がした二人の服を拾いあげる。

ゴソゴソした後、差し出してきた。

「ほれ、風邪ひくぞ」


二人・「はえ?」


「クーラーきいてるからな」


何やらオカマの雰囲気が変わったぞ…?

ケバいおっさんは通信機を使い、連絡を取り始めた。

急いで服を着る二人。

着替えている間に、停車せずに突っ走っていた電車が、近くの駅で止まった。

ぽかんとする二人。

外には大勢の人がいた。

警察官だ。


びびっている二人を見て笑うオカマ?みたいな化粧をしたおっさん。

「ハハハ、脅かして悪かったな!

まぁ、少し予定が狂っちまったが、ボウズ達まで巻き込めないからな!」


「…………。」

タロウ・「充分、巻き込まれてる…」

エグチ・「…一体、なんなんスか?」


「そうだな…

いいことを教えてやる。本当にヤバい事件ってのは、規制がかかって民間人には知られない。これに懲りたら、こんな時間まで遊ぶんじゃないぞ

今回だけは見逃してやるが、次、夜中にほっつき歩いてたら補導するからな!」


そしてパトカーに乗せられ、送られる二人。

初めて乗るパトカーに少しドキドキ。

若干、顔がにやけていた。


4・トラブルは継続中→


「ここで大丈夫です」

と、エグチ。


「家まで送る」

「すぐそこなんですよ」

「お前もか?」

ケバ化粧のおっさん刑事はタロウに訊ねる。


「あ、オレもっス。オレらボンボンなんで、いいとこ住んでるんス」

「まぁ、高そうな服着てるよな…。羨ましいかぎりだ。」


運転している部下に顎で指示する。

パトカーが停車し、二人は降りる。


エグチ・「お手数をお掛けしました」

タロウ・「あざーっしたぁ」


・・・


二人は、繁華街を歩く。家まであと少しの所で、お婆さんが怪しげな男達に、連れて行かれそうになっている現場に遭遇してしまった。


「えぐっさん!アイツら…」

「あの婆さん、なんちゅー時間に出歩いてんだ!」

「えぐっさん!えぐっさん!どっちかってーと、未成年のオレらの方が問題ありますけども!」


エグチ・「兎に角警察に電話…はっ!」

タロウ・「何!?」

エグチ・「電車ジャックの時、電話すれば良かったんじゃね!?」

タロウ・「もうどーでもいいわ!」

「っ!やべぇ、間に合わねぇ!」


タロウは勢い良く息を吸い込み、

「っだれかぁー!!おばあさんがっっおそわれてるぅーーっ!!」

人々は足を止めずに振り返ったり、無視したりと様々だが、総じて興味がないようだ。


タロウ・「えぇーーっ!?」

声が裏返る。


「これだから都会の人間は嫌なんだよ!何が日本人は優しいだよっ!!」

エグチ・「外人にだけ優しいんだろ!?」

怪しげな男達が二人の元へ走って来た!

「うぉっ!?ヤッベ!!」

「えぐっさん!今度はえぐっさんが囮になってよ!オレおばあさん助けるから!」

「よし、OK牧場!」

二人は分かれて走る。


しかし、

「なーーぁあぁっ!?んでオレの方に来んだよ!!」

タロウを追いかけて来た。


「くそっ!スロットやったあと、キャバクラに行こうと思ってたのに…!

う゛うー~っくらえっ!必殺、現ナマ・バブル撒き!!」

セレブなマダムからいただいた札束をバッ!と撒き散らす。


しかし、怪しげな男達には効果がなかった。


「はれぇー~!?あんたらおかしいんじゃねぇの!?……あぁ、脇腹痛くなってきた…!」


しかし、さっき無視した人々がお金に群がってきた。

その人達がマキビシ的に役立って、そのままタロウは突っ走る。

効果はバツグンだ!


タロウは勢いを保ったまま、お婆さんをおさえていた男にドロップキックをかます。

エグチは急いでお婆さんをおんぶして、走り出す。

「タロウさん!大丈夫か!」

「な、なんとか!元・陸上部をなめんなよ!」

「フィギュアスケート部だろ、タロウさん!」

「や、やめてよ恥ずかしいんだからっ!」


後ろを見ながらエグチは、

「ところでタロウさんよ!あそこで札束はないだろ!?ゲーセンで思いっきり遊びたかったのに!」

「え、えぐっさん…ゲーセンはねえよ!もったいねぇ!」

そうこうしている間に、お目当ての場所が見えてくる。

「あっ!交番あった!おまわりさーんっ!!」

叫ぶタロウだが、

巡回中…。


「うそだろーー~っ!!」


こうして冒頭の状況になったのだった。


5・トラブル→コンボ→チェイン


パトロールをしながら署へ戻るところの、あのオカマっぽい刑事が走って逃げる二人を見付ける。

「あいつら…」

二人の後ろへ視線を向けると、唸る。

「ヤバいな」


すぐにパトカーのサイレンを鳴らす。

二人を追っていた男達は姿を消した。


「たっ…たすかったぁ…」

「ごほっごほっ」

エグチは片手を太ももにあて、中腰になって汗まみれだ。

タロウは大の字になって苦しそうに、胸を上下している。


エグチはお婆さんを降ろすと、

「おっお婆さん…大丈夫っでっですか?」

息を切らしながらも声をかける。

しかし、予想外の拳がエグチの頬を捉える。

倒れるエグチ。


「もっとゆっくり逃げなさいよ!腰が痛い!」


そして、何事もなかったかのようにいなくなるお婆さん。

エグチは仰向けの状態で呟く。

「レ・ミゼラブル…」


お婆さんを呆然と見送る刑事とタロウ。

刑事は、

「ま、まぁ…お前らよくやったよ。ドンマイ」


タロウ・「はあ~…」

「あの、オレら…その、消されたりとか…大丈夫スよね?」

エグチはまだ倒れたままだ。


「ははは、大丈夫だ。お前らみたいなガキ、眼中にないだろう」

エグチは起き上がり、「じゃあ、なんで追っかけてくんだよ…」

「まあまあ、今度は自宅まで送るからな」

タロウ・「やっぱヤバいんじゃん!」

エグチ・「勘弁してよーー」

「まあまあ、ほら行くぞ!」

3人はパトカーに乗り込む…が、男達に包囲される。


ビビる、タロウ・エグチ。

「へえぇぇえ…!!」

情けない声を出す。


しかし、ヤツらの狙いは違った。

刑事に銃を突きつける黒服。

「USBメモリを寄越せ」

刑事はパトカーから降りながら、鋭い声で、

「鑑識にまわした」

「嘘をつくな。あそこにいたヤツらは全員殺した」

「それこそ嘘だろ。現実味がない」


エグチ・(もう既に現実味なんかねーよ!)

タロウ・(全てがこえー!)

小声で話す二人。


真夜中だけあってムード満てんで、ビビりまくる。

相変わらず刑事は濃い化粧をしたままだ。

それも相まって、変な恐ろしさの空気が漂う。


ガッ!

突然、固いものが固い者に当たる嫌な音がした。


タロウ&エグチ「!!」


黒服に銃で殴られる刑事。

助けに入ろうとした警官の頭から血が噴き出す!

ドパッ!

その体が崩れ落ちる。


銃で頭を撃たれたのだ。

サイレンサー付きの銃だったので、音は響かなかった。

青くなる少年達。


黒服の一人が、

「こちらの青年お二方は…お口を閉じて下さいますでしょうか?」

「言いふらしたとしても、誰も信じないだろう。ほっとけ」

リーダー格と思われる黒服が答える。


刑事を連れて男達は立ち去った。

ぽつんと残された二人。

すぐ横には死体。


「…………。」


エグチ・「ど…どうすん、これ、どうしっ、えぇー~…」

タロウ・「芋高のトラブルメイカーも形無しだゼ」

エグチ・「本当だよ。普段周りからトラブルメイカー言われてっけど、これが本当のトラブルなんだな」

二人・「………。」

不意に死体が目に入る。


タロウ・「キモっ!!」

エグチ・「うわっ!びっくりするー!」

「つーかさ、ヤベーだろコレ…」

タロウ・「……。」

「死体なんて滅多に見られないし、ちょっとじっくり見とこうかな…」

死体を覗き込むタロウ。


エグチ・「バカっ!タロウさんバカっ!人に見られたら犯人に間違われるー…」


「ギャーーーっ!!」


二人・「!!」

女性の野太い声が響き、ビクッとなるタロウ・エグチ。


タロウ・「ヤベッ!逃げろっ!」

マッハで逃げる二人だが…


・・・


エグチ・「…なぁ、思ったんだけどさ…逃げない方が良かったんじゃないかと思うんだ…タロウさん?」

タロウ・「そ、そうかな?なんか反射的に体が動いちゃって…」

エグチ・「よく警察24時とかでさ、“なんで逃げるんだよ。余計勘違いされんじゃん”って思ってたけど、これはいわゆる人間の生存本能だったのか…今、分かったわ…」

タロウ・「どうする?あの派手なお姉さん、絶対かんちがってるよな?」

エグチ・「そーだな。」


エグチは真面目な声から砕けた感じの声で、

「…つーかさ、死体よりもヤバかったなあの姉さん」

お世辞でも、普通とは言い難い外見だった。不細工な外見をメイクの厚塗りで誤魔化そうとして、失敗した…という感じでかなりケバかった。


タロウ・「ハハハ!ホントだよな」

エグチは肩を揉みながら、

エグチ・「はぁ…。もう体中痛ーし、疲れた…。頭もまわんねーし、腹減ったし、眠ーし、コンビニ行ってラブホで休もう」


二人のいる場所は繁華街から少し逸れた場所で、ラブホテルが建ち並ぶ通りだった。


タロウ・「このへんラブホしかねーもんなぁ…。知り合いに会いませんようにっ!」

パンパンと手を打って頭を下げるタロウ。

エグチ・「会ってもさ、大丈夫だべ。俺らの間じゃ別にフツーだし。」

しかし…

同級生カップルとばったり会ってしまった…。


「お…前ら…仲いいとは思ってたけど…」

「だ、駄目だよせーちゃん!…この事は黙っとくから!じゃ、ごゆっくり!」

カップルは去って行った。


タロウ・「…なぁ。否定した方が良かったんじゃ…?」

呆然と立ちすくむ二人。

エグチ・「余計怪しまれんのがオチだ。ずっとフラグたちっぱなしだし、何やったって結局トラブルになるんだから、諦めようぜ」

しかしエグチは振り返りながら、

「…なぁ、…あの二人、口かたかったっけぇ?」

震える声&涙目だ。


タロウ・「知らねーよ。そんな仲いいワケじゃねぇし。」

「はぁ、でも吉岡さん…そうですか…。あの二人は公園で遊ぶ位の清いカップルだと思ってたのに…」

エグチ・「確かに。真面目そうだもんなー。分かんねぇもんだ」


せーちゃん&吉岡さんカップルは芋高きっての爽やかカップルとして有名だった。


因みに、芋高とは彼らの通う高校の略称である。


タロウ・「なぁなぁえぐっさん!この部屋スゴくね?この部屋にしよう!」

いつの間にかタロウは、入る部屋を吟味していた。

エグチ・「……タロウさん……(汗)」

タロウ・「金ならまだほれ。あっからよ。少し残しといたんだー」

エグチ・「いや、そういう問題ではなくて……」

「……いいや、はやく寝たい…」


遠くから伺っていた吉岡さんは、

「おぉっ!はやくヤリたいだって!せーちゃん凄いよ!リアルBL初めて見た!隣りの部屋行ったら覗けるかな?」

「バカ!」

頭をバシッと叩くせーちゃん。

「つーか、勘違いされるとヤベーから、はやく帰るぞ!」

「私はいいんだけどな」

「はぁ…」

ため息を吐きながら、吉岡さんを置いて歩き出すせーちゃん。

慌てて追いかける吉岡さん。


6・ヘンケンさん


エグチとタロウは次の日の昼まで爆睡していた。

ソファに横になっていたエグチは伸びをしながら起床する。

ベッドでタロウはまだ寝息をたてている。

フィギュアスケート部に所属しているタロウを気遣い、エグチは寝床を譲ったのだった。

しかしエグチもまた運動部に所属している為、体を大事にしているのだが、フィギュアスケートは体のバランスや体幹が特に重要なので譲ったのだった。


因みに、この二人は決して不良ではない。夏休みの自由研究で各鉄道の違いについて調べていただけだった。それは、時刻表にまで及び、しかも終電まで調べるという徹底ぶりだ。

夜中に歩く事はいつもの事だったので、あまり悪いとも思っていなかった。

タロウは学校が終わると新幹線に乗り、他県まで行き、有名なコーチの元で毎日のように練習をしていた。帰宅する時刻はいつも深夜をこえている。

エグチはゴルフ部に所属しており、彼もまたプロの選手に指導をあおぐ為、他県まで通っていた。

貴重な休みも、学校の宿題の為に使っていた。夏休み中も練習があり、きちんとした休みが少なかった。

起きたエグチは寝ぼけ眼でテレビのリモコンを手に取る。起きたら、とりあえずテレビを点けてしまう。たいして観はしないのだが、いつもの日課のようなものだ。

すると、昨日の出来事が早速ニュースになっていた。


あのブサ派手姉さんが声を変えて証言し、自分達が犯人にされていた。

テレビを反射的に消し、頭を抱える。


終わった!

そう思った次の瞬間…

はっ!

…と目が覚めた。

夢だったのか…

ベッドの方を見ると、タロウも真っ青な顔をしていた。


7・束の間の平穏、約57秒


「…オレ、当分お利口さんになろうかな」

タロウはボソリと呟く。


再びソファに寝転がっていたエグチは、

「…テレビどうする?見てみる?」


タロウ・「怖いけど、みてみようか…」

ぴっ。

テレビからニュースを読み上げる声が聞こえてくる。

昨日の出来事が早速、ニュースになっていた。

「!!!」


タロウ・「えっ!?ヤバいヤツはニュースとかになんないんじゃないの!?」

エグチ・「んン!?」

「あれ?ちょっと違うみたいだ」

口に手をあて、タロウはショックを受けている。エグチの声に情けない声を出して反応する。

タロウ・「へえぇ!?」


インタビューを受けているのは、あのお婆さんだった。

変な男達に絡まれているところを、男の子二人が助けてくれたと、あの時はお礼も言わずに悪かったと語っていた。

そして、心当たりがある人は名乗り出て欲しいと、お婆さんは言った。


エグチ・「………………。」

「……これは絶対罠だ…」

タロウ・「えっ!そうなの!?あっぶねー!オレ行く気マンマンだったよ!」


二人がテレビから視線を外した時、お婆さんの隣りには札束をくれたマダムが立っていた。お婆さんと親子だったようだ。名乗り出たらお礼が凄かったに違いない。

エグチは疑心暗鬼になっていた。


・・・


二人がホテルから出ると、あの刑事が立っていた。

そしてエグチらに気付き、

「よぉ!オレは何も訊かない方がいいか?」


エグチ・「は!?誰……あっ昨日の!?」

刑事は化粧をすっかり落としていたので、すぐに彼だと分からなかった。


タロウ・「あの状況で、い、生きてたんスか?」

「まぁ、な。それで、あんちゃんの方に用があって来たんだよ」

タロウを見て話す刑事。

「オ、オレっスか!?」

「あぁ、上の服、脱いでもらえるか?」


タロウ・「やっぱそっち系のひとー!?」

体を守るように身構えるタロウだが、

「黙って脱げ」

刑事に威圧され、すぐに返事をする。

「はい」


急いで服を脱ぐ。

脱いだ服を奪う刑事。

タロウの夏用ジャケットをゴソゴソしだした。

そしてUSBメモリを取り出す。


身に覚えのないUSBメモリを見たタロウは驚き、大きな声を出した。

タロウ・「えぇっ!?オ、オレ違いますよ!白です白!年少は嫌だぁ~!!」

上半身裸でアセるタロウ。


「…つくづく思うが、お前ら見た目と中身違うよな…。これはオレが入れたんだよ」


電車の中での出来事を思い出してみよう。

化粧の刑事は、のした男の懐からUSBを奪って、二人に服を渡す前に仕込んでいた。

危険な集団を相手にしていた為に自分にもしもの事があった時の保険だったが、

そのせいで高校生を危ない目に合わせてしまった。

ありったけの謝罪の気持ちを込めて、


「巻き込んで悪かったな。」

と言い、

刑事は二人に背を向け歩き出しながら、ひらひらと手を振る。

ジャケットを羽織ったタロウが、刑事に声をかける。


「あ!刑事さん!」

「?」

刑事は顔だけ振り向く。


タロウ・「化粧似合ってましたよ!」

「バカヤロウ!好きでやってたんじゃねぇよ!!」

刑事は、余程触れられたくないのか、走って行ってしまった…。


エグチ・「…でも、すっげーハマってたよな…」

タロウ・「つーか、なんで化粧してたんだろうな?」

エグチは無言で首を傾げた。


・・・


ホテル街を抜け、歩きながら…

エグチ・「さすがに当分トラブルはいらねぇな…」

タロウはジャケットをきちんと閉めながら、

「ホントっスよ、えぐっさん。やっぱ平穏が一番なんですねぇ」

しかし、束の間の平和が、元気な少女の声でいとも簡単に崩される。


「あっ!いた、いたーーーっ!二人共~~~!」


二人・「?」


8・ロックオン→エグチ・タロウ


二人が振り返ると、吉岡さんが走り寄って来た。

他にも数人、女子が一緒だ。メモ帳とペンを手に、瞳を輝かせている。


エグチ・(なんだ?コイツら…)


若干、不審に思うエグチを余所に、タロウは、

「はっ!もしかしてオレのファンの子かな?いや~まいったなあ~、サインが欲しいのかい?どれどれ」

勝手にサインをするタロウ。


エグチ・「いやいや…」

タロウを止めようと手を挙げるエグチだが、女子たちは喜びの声を発する。

「きゃ~~~~~~!」

手を挙げたまま驚くエグチ。


「ま、まじかよ」(つーか、コイツらなんで分かったんだ?)

タイミングばっちりの登場に疑問を感じるが、吉岡さんを筆頭に二人を探して、うろついていたのだった。

タロウの思わぬ人気にも驚くエグチ。

(今フィギュア人気凄いもんな)と、思っていると…


「すごいよ!これがリアルのやおい文字!」

「やだーーーーーー」


ん?

なんか変だぞ?


「えぐっさん…やおいって何?」

「知らねえ…けど、なんか…」

「あの~…」吉岡さんが話しかけて来た。

二人は吉岡さんに注目する。


「あっ、えっと…今後の作品づくりの参考にしたいので、色々話をきかせてもらいたいんだけど、いいかな~?」


エグチ・「…作品って…何?」


「え~~!まぁ、それは置いといて…

まずは二人の恋愛についてから!」


タロウ・「?」

「オレの恋愛論を聞きたいの?」


吉岡・「うん。色々ききたいの」


エグチ・「………」


タロウは自身の恋愛論をカッコつけて語りだした。そんな中、エグチは様子をうかがっている。

タロウの周りにいる女子達をマジマジと見る。

吉岡さん以外は何やらもっさいぞ。

エグチはタロウの肩をポンポン叩き、

タロウ・「ん?何、えぐっさん」

エグチ・「タロウさん…おそらくこの方々は、いわゆる婦女子といわれる人種ではなかろうか…」

※正しい表記は腐女子だが、エグチは間違って覚えている。


ボソボソ小声で話す二人。

タロウ・「えっ!あのくさってるやつ?……なら、女好きをアピールしたらいんじゃね?」

エグチ・「どうやって?女は好きだけど…」

タロウ・「ここにいる女の子達を口説くとか…」

エグチ・「このもっさいやつらをか!?変に好かれんのも嫌だぞオレ!」

「どうしたの?」

と、吉岡さん。


ビクッ!となる二人。


エグチ・「っ!三十六計だ!タロウさん!」

タロウ・「了解してラジャーっ!逃げるに如かず!」

ビシッと敬礼する。

ダッシュで逃げる二人。


タロウ・「元・陸上部のオレのスピードについて来られるか!!」

エグチ・「いや、だからお前フィギュアスケート部だろ!」

タロウ・「やめてって!ハズいんだから…って、ついてきてるぅ!!はやっ!!」


女子達の顔が真顔で怖い。


吉岡・「愛の逃避行だね!そこのところも詳しく…!」

エグチ・「吉岡さん、足の回転率、パねぇ!!」

タロウ・「もうヤダ~ー~~っ!!」


9・トラブルコンティニュー!


夏休みが明け、エグチとタロウは職員室に呼び出された。

「あれ?二人も呼ばれたの?」

エグチ・「あ」「ど、どうも」

タロウ・「えぐっさん!オレあれ以来、この子苦手なんだけど!」

小声でエグチも、

「オレもだよ!」

声を掛けた主は、吉岡さんだった。


吉岡さんは気にせず話す。

「なんだろね~?アタシ達の宿題が凄すぎて、全国大会進出とかかな~?」

彼らの高校では、夏休みの宿題がある。絵日記、自由研究、工作の3つから好きなものを選ぶ。


タロウ・「!!」

「それだ!絶対それだって!オレらのハリウッド映画並みにすげかったもんな!」

タロウは興奮気味にエグチに言うが、正直、2時間ドラマにも及ばない。

エグチ・「マジか~。え、全国大会ってキンチョーすんな~」

エグチは嬉しそうにしている。

タロウ・「ゴルフ大会、上位入賞者常連がよく言うよ」

エグチ・「さり気に褒めてくれるな」

ますます、嬉しそうだ。


因みにタロウ・エグチは、各鉄道の違いについて、自由研究を発表する予定だったが、絵日記に切り替えていた。


廊下で話し込む3人。


「……おい、何やってんだよ。3人共入りなさい」

先生に声を掛けられる。

先生・「……君たちの作品だけどね、これは…展示出来ないよ。特に吉岡さん」

吉岡・「えぇ!?先生、予想外なんですけど!!」

先生・「先生も予想外だったよ?!学生の宿題でまさかBL研究くるとは思わなかったよ!」

「しっかも内容エグくて先生、若干、気持ち悪くなったよ!あとねー、研究対象の名前はふせないと…」

先生は、複雑な表情でエグチ・タロウを見る。


吉岡・「えっ?」

吉岡さんは二人を見る。

タロウはエグチを見る。

白々しく、

「えっ?」と言った瞬間、エグチに頭をバシッ!と叩かれた。

エグチ・「オレだけになすりつけんなよ!」

先生・「それでぇ二人の方だけど…」

「あのねぇ、絵日記というのは、夏休みをどう過ごしたかを書くんであって、話を捏造しちゃいけないんだよ…」

二人・「え?」

エグチはつっかえるようにフッと息を出すと、

エグチ・「いえいえ先生。きちんと書きましたよ。むしろこれはノンフィクション大賞ですよ」

先生・「嘘はいけないなー。これは有り得ないでしょ」

全く信じてもらえず、呆然とする二人。

二人・「…………」

タロウ・「一生懸命かいたのに…」


ガクッ


エグチ・「先生ぇ…本当なんですよ…」

先生・「まぁ…絵は良く描けてるけど…」

「取り敢えず…う~ん、提出し直せとは言わないけど…今度からは内容を良く考えて、こういう提出物はやろうね。」

「3人のは返却ということで……はい!」

返却される。


自分の作品を手に取る。

ため息をつく3人。


3人・「……納得出来ない……」

職員室から出る3人。


先生は…「1クラスに数人はふざけてるのいるからなあ~。でもアレは特に酷いわ…。」

と後ろ頭を掻いて苦笑いしていた。


タロウ・「あ~の…、吉岡さんソレ…」

タロウは吉岡さんの作品を指差す。

慌てて宿題を隠す吉岡さん。


エグチ・「吉岡さん?」

吉岡・「ダメっ!これはダメなの!」

吉岡さんの態度にイラッとした二人は、お構いなしに声を荒げる。

タロウ・「つーかさ!人に見せらんねーもん書くなよ!」

エグチ・「しかも、先生気持ち悪くなったってさー!中身どんなだよ!」

タロウは吉岡さんの作品をこっそり奪おうとするも、それに気付いた吉岡さんに悲鳴をあげられる。


「キャーーーッ!!」


なんだ!?

驚いた先生方は職員室から飛び出して来た。

先生方が目にしたものは…

吉岡さんに襲いかかっている男二人。


先生・「江口!!荒若!!お前ら何をしているんだ!!」

タロウ・「えぐっさん!」

エグチ・「応!!」

二人は動じず、アイコンタクトを交わし、エグチが教師達へタックルをかまし、

それに驚いた吉岡さんから、タロウは素早くブツを奪う!!


吉岡・「あぁっ!ダメーーっ!!!」

奪い返そうとする彼女の腕を、ひらりとかわし、

タロウ・「よっしゃあーーっ!えぐっさーん!」

エグチは、タロウに続いて走る!

エグチ・「ハハハハハ!やっぱこうでないとな!!」

走りながらハイタッチをする二人。


先生・「こらーーっ!待ちなさい!」

吉岡さんは二人を見送りながら、呟く。

「フフフ、トラブルメイカーだなぁ…」

走って逃げるタロウの腕の中にある、吉岡さんの作品の表紙、

“トラブルメイカー”


しかし…

吉岡さんという人物をなんとかしない限り、問題は解決しない。その事に二人が気付くのは、あと数日後のことだった。


吉岡・「まぁ、このUSBメモリに全て入ってるし…」

吉岡さんはスカートのポケットに手を入れて、ゴソゴソする。

「あれ?」

「ない!」

USBメモリを無くしてしまった…。

実は…、

以前からエグチ・タロウは腐女子の餌食になっており、あの作品は彼らにインタビューする前から存在していた。

吉岡さんのUSBメモリは、タロウが前に学校で拾っていた。タロウは夏用ジャケットにしまい込む。

しかしタロウは、学校で拾ったUSBの存在を忘れてしまう。だから、刑事がタロウのジャケットからUSBを出した時に身に覚えが無いと思ったのだった。


・・・


そして…、

遡る事、数日前…

警察署の自分の机に腰掛ける、大柄の刑事。


刑事はパソコンにUSBメモリを差し、中を改める。

真剣に確認していると、内容が…ちょっと…

「な、なんだコレは………」

「気持ち悪っ!」


パソコンからUSBを外しながら、

「まずいな…間違えた…」

刑事は考え込む。


「下手に接触すると危ねぇし…参ったな…」刑事は大きくため息を吐く。


刑事・「はあ~ー…」

(あいつら…やっぱそういう関係だったのか?あの時も二人でレジャーホテルにいたもんなあ…。近頃、ああいうの増えてるみたいだし。せっかく男前なのに勿体ない事だ。)

彼の手の中にあるUSBは、吉岡さんのだった。


そして、彼の欲しかったUSBは、まだ、タロウの夏用ジャケットの中にある。

USBを入れたのはジャケットの右ポケットで、物が入っていなかったので入れたのだが、この時、反対側のポケットに吉岡さんのUSBとマダムから頂いた札束が入っていた。

札束がなくなったタロウのポケットは、偶然にも同じ形のUSBが両方のポケットに入っている状態で、刑事は間違えて吉岡さんのを取ってしまったのだ。

(USBは安い良品で、人気のモデルだった。)


肝心のタロウのジャケットだが…、

今、クリーニングに出されて、タロウの元にはない。

おそらく、クリーニングに出したジャケットを受け取る時に、忘れ物として持ち主に返されることだろう。

…何事もなく行けばの話だが…。


・・・


…二人のトラブルはまだまだ続きそうだ。

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