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三の噺 「能ある鷹の爪は、無理矢理引きずり出せ。」

 魔王とその家来が彼等の戦いをのんびり観戦しているとは露知らず、命の瀬戸際に立たされている六人。


 「私…疲れて、きました……」

 「俺…もー駄目だ…」

 小柄な見た目通り、真っ先に電池が切れかかってくる木下と山中。


 「へたばると……死ぬぞ。」

 「そーいう、お前こそ……!」

 よろめく小川の腕を掴んで支える梅本。


 「こりゃ、ちょっとマズイわ……う!?」

 「マンボウ!?」

 足を滑らせ、バランスを崩した北が転びかける。

 その拍子に、北の着ていたジャンパーから飛び出る何か。

 「ああぁぁ~!?あたしの携帯っ!?」

 途端、北の絶叫が響き渡る。


 「バッカ、んなもんほっとけ!!」

 「アホ!みすみすあたしのドラ○エデータ捨てられるかぁ!?」

 小川の叫びに同じく絶叫で答え、北は落ちた携帯に手を伸ばす。

 寸でのところで携帯を掴み捕り、いそいそと服の裾で拭い取った。

 

 そのとき、指先が当たったのか携帯がパカッと開く。

 画面を覗きこんだ北は、思わず目が点になる。

 「何やコレ…!?」

 そこには、正に棚からぼた餅と言える情報が映っていた。


 『プレイヤー:北 修子

 使用可能技:水流弾、雨喚び


 友軍

 1:谷中 若菜

  使用可能技:電磁砲、雷撃


 2:木下 千尋

  使用可能技:影爪、影盾


 3:梅本 祐樹

  使用可能技:地壁、岩石落


 4:山中 美奈

  使用可能技:旋風、風喚び


 5:小川 健

  使用可能技:発火弾、火炎之鞭 』


 なんと、自分達の情報である。何故こんなことが携帯に映っているのだろう。

 「皆!携帯持ってるかぁ!?」

 これは伝えなければ、と北は竜巻から逃げまくる仲間達に呼び掛けた。

 

 「何なんだよお前こんな時に!?」

 「マンボウのクセにホイミとか唱えろボケ!!」

 「後でテメーの携帯逆パカするぞコラァ!!」


 ……完全に逆ギレしている。


 「いや、あたしケアルの方が好きやから。」

 「うっせぇ黙れマンボウ!!!」

 非常時にもボケとツッコミを忘れない、それが考研。


 「って、ちゃうわ。お前ら携帯持ってるか?」

 いきなりの質問に、荒れ狂う風をかいくぐる彼等は困惑する。


 「そんなもん、見てる暇なんかねぇだろ!?」

 風の音に負けじと、木下は怒鳴った。

 「ええから見てみ!!使えるで、これは。」

 珍しく強い調子で言う北に、皆は渋々とポケットに手を伸ばし、携帯を掴み出す。

 それを開き、ハッと顔付きを変える。


 「使用可能な技って……え、ポ○モン?」

 「あのな、わかったところで」

 「水流弾ッ!!!」


 梅本と谷中の文句を遮り、北の叫びが響いて、バスケットボール程の水球が爆音をたてて竜巻に突っ込んだ。

 水球が炸裂すると、その威力絶大、竜巻が弾けるようにして消える。


 「マジで……?」

 圧倒的な威力で竜巻を捩じ伏せた北に、愕然とする今川と仲間達。

 

 「…気付きよったわ。」

 「スゲェ……何スか、アレ。」

 北の放った水球の威力に、にんまりと笑う信長。

 利家は今までの冷めた目から一変、食い入るような視線になる。


 「何か、名前呼んだらやっとまともに出たわ。」

 あはは~、と北は暢気に笑ってみせる。

 「名前……名前、か!」

 

 何かを思い付いたように、木下の目がキラッと光る。そして深く息を吸い込むと気合い一発、腹の底から声を出した。

 「かぁげづめええぇっ!!!」

 その呼び声に呼応して木下の足元が波打ち、グウッと黒い影が身を起こした。

 そして影は木下の両手にまとわりつき、龍の手のように姿を形作る。

 

 「伸ばしてっ!」

 威勢のいい指示通り、両手の影が竜巻に向かって飴のように伸びる。

 「ズバッと!引き裂く!」

 言葉通り、竜巻は鋭く変化した影の刃に引き裂かれて消えていく。


 「やった!やっぱり、名前が鍵だぜこれ!」

 木下は飛び上がって喜ぶ。

 「説明しろよ、意味がわからん!」

 苛々と小川は説明を求めた。

 

 「名前ってのはさ、存在を固定するための呪なんだ。今までのオレ達だと、感情の高ぶりだけで攻撃が出ただろ?それだと本当の威力は発揮されなかったよな。」


 木下はキッ、と義元を睨み付けた。

 

 「ふさわしい名前を与えて初めて、オレ達の力は固定されるんだ。名前は凄く大事なモンだって、陰陽師でいってた気がする!!」


 「結局情報源そっちかよ!?」

 しかしその話は否定できない。現に木下の言う通り、実証されたのだから。


 「ま、とりあえず反撃出来るってことだよね?」

 逃げ回る足を止めて、六人は呼吸を整える。

 

 ガラッと雰囲気の変わった彼等を、義元は青ざめた顔で見詰めた。

 試合開始のゴングは、これから初めて鳴るのだ。

 今までよくも好き勝手やってくれたな、とでも言いたげに、邪悪な笑みを浮かべてにじりよっていく。


 「ひぃ……か、風切り羽根ッ!!」

 豪奢な弓から放たれた矢が、六つに分かれて目標に唸りをあげて飛ぶ。


 「地壁、×6!!」

 梅本がダン、と片足で地面を踏み鳴らすと、六人それぞれの前に大地から壁が立ち上がる。

 まともに喰らえば切り傷だけではすまない攻撃だが、その壁は見事に矢を防ぎ、尚且ビクともしていない。

 「おぉ、脆くなくなった…!」

 そして感心する梅本。

 

 「せーのっ、雷撃ッ!!」

 続く第二波、地壁を貫き、バリバリと雷が今川に向かって牙を剥く。

 

 「このようなもの…!消し飛ばすおじゃ!」

 今までの非力な攻撃とは違う、とやっとわかったのだろう、義元の顔付きが変わる。

 ギュルギュルと風が圧縮され、襲いくる雷へ砲弾の如く発射した。

 雷と風の塊がぶち当たり、互いに弾けて強風が吹き荒れる。


 「集まって…旋風です!」

 あまりの強さに飛ばされそうになりながらも、山中の言葉に反応して強風が集まっていく。

 総勢十個のつむじ風が彼女の回りを飛び交い、更に小川が加勢する。

 

 「発火弾…。」

 炎の玉が風と混ざりあい、紅のつむじ風と変化する。高速で回る紅い風、一声放てば、全てのつむじ風は一気に義元を攻撃するだろう。

 

 しかし公家だろうと何だろうと、総大将を名乗るからにはみすみす敗北するわけにはいかない。

 「させぬおじゃ!!」

 つがえた矢に、竜巻が蛇のように絡み付いた。


 「撃たせるか今川おじゃ元!!」

 「はよ終わらせたいねん、邪魔すんなや!!!」

 させるかとばかりに木下の影が弓を押さえ付け、北の水流が義元の顔めがけてバシャバシャとかけられる。苦し紛れに放たれた竜巻が暴れるが。


 「ダメだよ、危ないでしょ?」

 笑顔で谷中が次々に雷撃で撃ち落とした。


 「「発破ーっ!!!」」

 動きと視界を封じられ、ジタバタする義元をばっちりロックオンして、山中と小川が声を揃えて真っ赤なつむじ風を解き放った。


 「「たーまやーッ!!!!」」

 炎と爆風がモロに直撃し、妙にか細い悲鳴をあげて、義元の姿はかき消された。

 勝負あり。考研・初陣……見事な勝利である。


桶狭間は一応一段落です。

やっぱり戦闘というものは、文章で書くと物凄く難しいですね。

誤字とか多くてすみません。

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