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四十三の噺「口舌の刃で、人を斬らなきゃいけない時もある。前編だったりする。」

 四人のピンチに、颯爽登場した妻女山チーム。

 しかしまた、とんでもない出方である。


「何でロケッ○団なんだ!もうちょっとまともに出てこい!」


つっこみ役変更、小川が梅本に変わってお送りします。


「そーだぞ!それ、初期の口上じゃねーか!」

「根本的なところが違う!何でそんなに詳しいんだファンか!?毎週見てたクチか!?」


偉そうに言う木下に、小川はチョップをおみまいする。


「なんや、お前えらいつっこみに熱心やな。さてはアレか、梅の座を狙っとったんか?」

「そうなんですか!?でも、なんでしょう……イマイチ梅さんに比べてキレがないですね。」

「誰が狙うか!誰か一人つっこまないとカオスになるだろうが!こんなの俺のキャラじゃないのにッ!!!」


北と山中でラスト、一通りつっこみ終えて、ハーハー息を切らせながら小川はがっくしと項垂れた。

とりあえず仕切り直してください、マジで。








~仕切り直してワンモアタイム~


「……ゴホン、梅本殿、これは一体どういうことだ?」

「昌幸よ、何故お前だけここにいる?他の者はどうした?」


謙信と信玄は、咳払いして、厳しい声で新たに登場した四人に問いかけた。


「どうもこうもないですよ。俺は仲間とやり合う程、あんたに忠誠を誓ってるわけじゃない。」


そう梅本が答えた瞬間、彼の身体が真横に飛んだ。

否、何者かに抱えられて飛んだ、という言い方が正しいだろう。

 その瞬間、唸りをあげた風の一撃が、さっきまで梅本が立っていた場所を深々と抉っていた。


「あぁ、危ない危ない。気をつけて下さいよ、土竜様。」


いきなりすぎてポカンとしている梅本の目に、少しばかり呆れたような顔をした青年が映る。

狐色の髪に、深緑のノースリーブ状の上衣を纏い、額には同色の鉢金をしている。

え、誰こいつ?と首を傾げる暇もなく、青年は梅本をサッと地面に降ろす。


「俺は真田忍隊隊長、猿飛 佐助と申します。お噂は予々、昌幸様から聞いてますよ。」


早口に青年、猿飛 佐助は言い、大地を抉った一撃を放った方向を見る。

そこには、怒りに頬を染めた兼続が、忌々しげに舌打ちして立っていた。


「邪魔立てするな、忍風情がッ!!!」

「いきなり外から叩っ斬ってくるような輩に言われたくないっての。」


どうやら先程の攻撃は、怒れる彼女の仕業らしい。


「許さない……!恩義ある身にも関わらず、謙信様を裏切るなど!」


佐助はやれやれと肩をすくめ、チラリと昌幸の方に視線を寄越した。

昌幸は小さく頷くと、殊更ヘラヘラとした笑みを浮かべ、兼続の前に悠々と歩み出てきた。


「お怒りのトコ悪いけどよ、お前の相手はおれなんだわ。あいつらは先約があるんでなァ!!」


しゅっ、と昌幸の手が振るわれ、白い糸が兼続の神器に絡み付いた。


「貴様ッ!」

「おー怖ェ怖ェ。ちったぁおしとやかさってモンを身に付けたらどうだ?狛犬みてェな顔しやがって。」


昌幸の小馬鹿にしたような挑発に、ビキッと兼続の額に青筋が浮いた。


「こ、狛犬だとおおぉ!!?」


以前北に吐かれた暴言、あれ実は地味にショックだったんですね兼続さん。

とりあえず、兼続の相手は昌幸に任せておいてよさそうだ。


「相変わらず、昌幸様は他人を怒らせるのが上手いですねー。」


佐助の苦笑いに、同感だと梅本は頷いた。

さてさて、それでは長い前置き終了。

六武衆vs龍虎、ここから真の始まりと相成る。














「……わからんのう。」


ぼそりとした信玄の呟きを、謙信は拾い上げた。


「確かに、理解に苦しむ。」


姫鶴一文字を握り直し、謙信は自分達の目の前に立ち塞がる六人を眺めた。

ちなみに、佐助と六郎は他にこなさなければならない仕事があるらしく、後ろ楯は全くゼロの状況だ。


「何故我々と刃を交えようとする?」

「そうすることで、お主等に何の得がある?」


龍虎の問い掛けを、六人は鼻で笑い飛ばす。


「……あるからこんな馬鹿げたことをしてるんだ。」


小川は頬の傷から伝う血を拭い。


「得がなきゃ、誰もやらねぇよな……にしても無謀だ。」


梅本は苦笑して、肩に引っかけていた地国天を下ろし。


「ホンマやで。あたしだけなら絶対やらへんわ。」


北は溜め息と共に肩をすくめて。


「でも仕方ないじゃないか、こっちも後には退けないしね。」


谷中は組んだ腕をほどいて。


「このまま放置というのも、いい気分で旅ができません。」


山中は、ぽんぽんと装束の汚れを払って。


「オレ、嫌いなものはどーやっても認めらんねぇや。」


木下は、気合いを入れるように地面を踏み鳴らし。

 彼等は一斉に、龍虎目掛けて飛びかかっていった。









信玄を相手にするのは、小川、北、梅本の三人。

謙信を相手にするのは、谷中、山中、木下の三人。


「行っくよー!せーのっ!!!」


未だハイが残り気味の谷中が、電王を謙信に向けた。

すると、数個の小さな鉄球がふわりと浮かび上がってきた。


「電磁砲!」


彼女の掛け声がするや否や、その鉄球は雷を纏い、凄まじい勢いで次々に発射されていく。


「無駄なことをッ!!」


謙信は不敵に笑うと、迫りくる雷の弾丸を弾き返そうとしたが。


「んー、やっぱそうくる?」


谷中は軽く電王を振ると、弾丸の幾つかは急激に角度を変えて、謙信の足元に直撃した。

土台を吹っ飛ばされ、よろめきながらも残りを弾いた謙信の頭上から、銀色の輝きが振り下ろされる。山中の舞風だ。

姫鶴一文字が防ぐには間に合わない。


「飛氷牙ッ!」


掲げた片手から、鋭い氷柱が飛ぶが、岩を砕いたような音と共に、氷柱が粉砕される。

きらきらと氷の破片が、昇りきった太陽の光を反射して煌めく。


「風神の!盾ッ!」


山中が叫ぶと、風が急激に彼女の前に渦を巻く。

氷の破片を巻き込み、竜巻の塊が迫りくる。

そして、舞風が再び広がったとき、それは一気に爆発、いや、弾けたといったほうが正しいだろうか。

氷の破片は、爆発的な風の力を借りて、空を斬って飛ぶ飛針となった。


「速い……!!」


打ち返すのは無理と感じた謙信は、姫鶴一文字を地面に突き立て、氷の壁を作り出す。ドガガッ、と壁に刺さる針。

だが、三人は謙信に一息つく暇も与えない。


「いっくぞ謙信!!!」


山中の背後から、黒い影が伸びる。木下の右手に纏った影爪が、氷の壁を貫通していく。

山中と木下が防壁を突破して、道を作り出す。

それを確認して、いつの間に移動したのか、遥か後方で谷中は弓に矢をつがえた。太く、銀色に輝く矢だ。

最後の一発の為に、電王を作り出した妖怪、雷獣の裂空に急遽こしらえてもらった特製の矢。

ところが、肘ががくがくと震え、目が霞んできたではないか。


「あー……やっときたんだ。副作用ってヤツ?」


舌打ちして、彼女はギリッと下唇を噛み締めた。

たった一本しか出来なかった矢だ、外してたまるか。

バリッと雷が腕を伝い、矢の先端に集まっていく。

それは次第に大きくなり、先端だけに止まらず、矢全体にまで行き渡る。

彼女の現段階で、渾身の一発だ。


「届いてよ、絶対に。」


雷の弦を、谷中は離した。

耳をつんざくような爆音と爆風が轟き吹き荒れ、眩しく美しい黄金の矢が、目前で暴れる龍に真っ直ぐ飛んでいく。

それを見届けることなく、谷中の膝は力なく地についた。

両手を突き出して、無様に倒れることは回避したが、最早意識を保つだけでやっとだ。


「今は……これが精一杯……!」


当たれ、死んでも当たれ。

残りの二人に後を託して、彼女の身体は動かなくなってしまった。

















越後の龍目掛けて放たれた雷の矢。

その存在を、山中と木下はしっかり認識していた。


「あれを外したらもう無理ですよ、チロさん!」

「わぁってるよ!」


叫び声に怒鳴り声で返して、数秒間のアイコンタクトを交わす。

こくりと頷き合い、やるべきことを確認する。


「これは…あの距離から射ったのか!?」


またまだひよっ子の神憑きなのに、まさかの長距離射撃。

しかも、今までの攻撃と比べて格段にバカでかい。


「墜としてやる……!」


瞬時に冷気が渦巻き、周囲の温度が下がり、小さな氷の礫が現れる。

信玄と戦ったときに使用した技だ。

姫鶴一文字を黄金の矢に向け、氷点下の一発を打ち出そうとするのを見て、二人はマズイと顔をしかめた。

あの攻撃の威力はわかっている。

 あんなものが射たれれば、雷の矢は悪くて押し出し、良くて相殺。

そうなれば今までの苦労が水の泡だ。


「ちょ、ミナちゃん!?」


いきなり身を翻して、謙信の元に向かう山中に、木下は慌てて声をかけた。


「アレを止めます!チロさんは、謙信さんを押さえてください!」

「はああぁ!?」


ちょっと待て、と木下が手を伸ばすが、山中はするりとそれを掻い潜っていく。

そして、謙信の攻撃が放たれた瞬間、その前に山中が立ち塞がった。


「な………!?」


無謀の一言に尽きる行動に、謙信の目が驚愕に見開かれた。

山中は舞風を開くと、風神の盾を使い、風の盾を作り出す。

高速で回転する風と、荒れ狂う氷の塊がぶち当たり、互いを喰い潰そうとする。

防いでいても、骨まで凍るような冷たさが、切り裂く氷の礫が身体を襲う。


「……少しでも……威力を下げられたら……!」


ビキビキと手から凍り付いていく恐怖に堪えて、山中は盾を支える。

しかし、それも長く続かない。


「もう……もたない…!!」


腕の力がなくなり、礫でいくつも切り傷を負い、山中は悔しげに呟いた。

風の盾が勢いをなくし、あわや直撃かと誰もが思ったが。


「そうはさせるかあああぁぁ!!!」


しゅっと木下が黒い影を伸ばして、山中の身体に巻き付かせ、横に引っ張る。

ちょうどすれすれで、雷の矢と氷の塊が衝突した。

飛んできた山中を、両手で受け止めた木下は、横倒しになった視界で二つの技の勝敗を見守る。

ギギギ、と押し合う雷と氷、一見、氷が優勢に見えるが、ビシビシとヒビが入る音がした。


「まさか!?」

「余所見してんな、コノヤロがっ!!!」


耳を打つ木下の怒声に、ハッと謙信が顔を向けると、間近にまで迫る黒い影。

直ぐ様回避の体制に移ろうとする謙信だが。


「逃がさねぇぞ!大人しく喰らえこのヘタレ蛇!」


必死で木下は謙信の神器を影蜈蛸で押さえ付け、縛影で縛り付ける。

すると、後ろから聞こえるバーンという音。氷を打ち砕いたのだろう、もうすぐそこまで迫る雷の矢が見えた。


「貴様!私とアレを喰らう気か!」

「当たり前だチクショー!覚悟は出来てんだバカ!」


しかし、あと一メートル程、と言うところで、急にニタリと木下の顔が歪んだ。


「………なーんちゃって?」

「………は?」


するり、と木下の身体が沈んだ。正確には、謙信の足下の影に。

散々揉み合った今の体制は、謙信が木下の前に立つもの。

つまり、雷の光を謙信が背負っているということだ。当然、その下には濃い影が出来る。そこを木下が影抜けで抜け出したのだ。しかも、縛り付ける影は残したまま。

直後、雷の矢は謙信に命中し、轟音と共に黄金の柱が立ち昇った。



いやー・・・・・・お久しぶりです(汗)

二ヶ月ぶりですかね、やっと、やっと更新できました。

描写の良し悪しは見逃してください、速さを重視したんです(泣)

思ってたより進まなくて、タイトルに前編とつけなくちゃならなかった・・・・・・。

いい加減終われよ川中島。

いきなりめんどくさいストーリー設定にしちゃって自分でも後悔してます。

でも何とか龍を撃破できました。仕事がなければもっと早くうpできるんでしょうが、ないとダメですもんね~。

合間を縫って書いてはいますが、それも微々たるもので進みません。

やっぱり時間のあるときにガーッと書くのが一番ですね。皆様、長らくお待たせ致しました。

次回もこんな感じですが、よろしくお願いします。


タイトル→「口舌の刃で、人を斬らなきゃいけない時もある。後編だったりする。」


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