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十四の噺 「最優先事項は欲しいもの、疑問は二の次三の次。」

桶狭間での戦で、偶然開いた携帯に何故か自分達の能力データが映っていたことを、六人はすっかり忘れていた。


「それよりも、もっととんでもないことが一杯おきましたからね……携帯の不思議にまで、気をとめられませんでした。」


山中はそう言いながら立ち上がり、携帯がしまわれている箱を持ってきた。


「何か久し振りに見るな。」


梅本は箱を開けると、自分の携帯を取り出してパカッと開いた。


「……何コレ。」


同じように携帯を眺めていた谷中が、驚いたように目を見開いた。


「どうした?」


北の問い掛けに、谷中は黙ったまま携帯の画面上部を指差す。


「コレ、電波立ってるぞっ!?」

「マジかよ!?」


真っ先にそこを覗き込んだ木下が叫ぶと、他の仲間達も一斉に谷中の周りに集まる。見れば、確かに電波が立っていた。しかもちゃんと三本。


 「普通、圏外の筈ですよね?」


 眉を寄せて言う山中に、彼等は頷く。

 この世界に、携帯が存在していることなどあり得ない。

 

 「試しに、電話してみよっか。」

 「……そうだな。」


 北の出した提案に小川が頷き、早速梅本の携帯に電話をかけてみた。すると、彼の携帯から聞き慣れた着メロが流れ出したではないか。画面には、「王子」としっかり表示されている。


 「じゃ、メールは?」

 「オレ、やってみる!」


 木下が山中にメールを送ると、やはりメールの着信音が山中の携帯から流れ出す。


 「…携帯、使えるで。」

 「何でだろ?どーいうこと?」


 出された結果に、首を捻る六人。

 ちなみに、六人以外の友人に電話をかけてみたところ、「電波の届かないところにいます。」という音声が聞こえただけだった。


 「僕達だけに通じる携帯か…何で繋がるのかはわかんないけど、これは凄く便利かもよ?」


 面白そうに笑うと、谷中は携帯を軽く握り締めた。


 「便利も便利、とんでもない代物やでこれは。」


 ニヤリ、と北は悪どい表情をつくる。

 携帯の存在しない時代、これさえあれば連絡もとりたい放題、密書だって送りたい放題だ。もし奪われても、使い方などまず解らないだろう。


 「つまりは俺達の強みになるわけだ。バラバラになる事があったとしても、連絡はとれる。」


 小川の言葉に皆は頷き、サッと携帯を懐にしまいこんだ。


 「でもさ、充電とかどーすんだ?」

 「「「………。」」」


 木下の素朴な疑問に、一斉に沈黙が降りる。


 「今は電池満タンだけどさ、多分絶対減るぞ?」

 「チロ、それは気にしない方向でいくぞ。」


 梅本は低く言うと、木下の肩をポンポンと叩いた。


 「……ま、そーだな。」


 考研よ、いいのかそれで。

 携帯の謎をあっさり放棄して、六人はおやつを切り上げて訓練場へと向かったのであった。




 武器製作の注文を出して、暫く経過した。

 相変わらず訓練は度を超したハードさだったが、六人は徐々に体力や反射能力が「平凡」から外れていくのを感じていた。


 「背後から殴りかかられたのを避けることが出来る学生なんて、私達くらいでしょうね。」


 攻撃をかわしながら、山中は苦笑する。


 「ホンマやわ。体育の評価なんか、いっつも1やったのに。」


 北も俊敏に動き回る。

 最初の頃は喋る余裕なぞ皆無だったが、今ではちらほらと会話が出来るようになった。

 随分飛躍的な進化である。気性の荒い木下や梅本なんかは、たまに隙を突いて反撃を仕掛けることもしばしばあった。


 「まぁ、皆本当によく頑張っていますのね。」


 むさ苦しい空間におしとやかな声がして、訓練中の兵士達はぴたっと動きを止めた。谷中が首を傾げて、声の主に問い掛ける。


 「お濃ちゃんだ。どしたの、こんな男臭いとこに。」


 艶やかな菖蒲色の着物を纏った濃姫は柔らかに微笑むと、足早に六人に近寄ってきた。


 「あら、わたくしだっていつもお部屋に籠りきりじゃありませんわ。今日は素敵なお知らせを持ってきましたのよ。」

 「素敵なお知らせ?」


 六人は顔を見合せ、あっと勘づく。


 「「「神器!!」」」


 彼等の嬉しそうな顔に、濃姫も笑って頷いてみせた。



 「殿、皆様方をお連れしました。」

 

 濃姫に連れられ、六人は見覚えのある部屋に案内された。重臣達に紹介されたときに入った、あの広い部屋だ。

 信長の前に、それぞれ緋色、金茶色、群青、若草色、山吹色、漆黒と六色の絹がかけられた物が六つ、白木の台に乗せられていた。

 その隣には、神器を拵えた妖怪達が各自きちんと座している。少し様子が違う点と言えば、鬼と鴉天狗以外の妖怪達が人間の姿に化けていることぐらいだ。


 「来たか。」


 信長は六人の顔を一人ずつ確認すると、彼等に神器と向かい合う位置に座るよう指示した。


 「貴様等の神器が出来上がった。早速名付の儀を行うぞ。」


 何やら大層な言葉に、六人は眉を寄せる。それを見て、信長の隣に座った濃姫が説明を付け足した。


 「名付の儀と言っても、そんなに構えなくてよろしいのよ。神器に名をつけることで、皆様方の大切な仲間としてお迎えするだけですわ。」


 すると、今まで黙っていた妖怪の一人、紅蓮の髪をした鬼女・紅葉がおもむろに口を開いた。


 「あの化け猫の言う通り、随分と風変わりな子達だ。名付の儀すら知らぬとは。」


 深紅の瞳がジロリと六人に向けられた。


 「斯様な幼子等がこの神器、扱いきれるのかえ?」


 薄笑いを浮かべて言うのは、濃紺の着物を纏った女。袖から覗く手の甲には鱗が見えた。蛇体の妖怪、磯姫だ。


 見下しきった態度に、六人はむっと顔をしかめた。


 「確かに俺達は普通とは違うかもしれないけど、あんた等に馬鹿にされる必要なんか何処にもないな。」


 負けじと梅本は妖怪達を睨み返した。


 「あんまり余計なこと言っとったら、評判悪なるんとちゃう?どうでもエエから、はよ始めてや。」


 北は目を細くして、どうでも良さそうな態度で言った。


 「全くだ。紅葉、磯姫……余り遊ぶな。この方々に失礼ぞ。」


 一つ翼を羽ばたかせて、、鴉天狗の東風之が二人に釘を刺す。


 「名を与えることで存在を固定し、己の魂の片割れとして共に戦う……。」

 「名をつけた神器は大切なものじゃ。大事に扱われよ。」


 目付きの鋭い、黒い長髪の男に化けた大百足の新月、ずんぐりした体型の老人に化けた野槌の鎖岩が次々に言う。


 「さぁ、どうぞ。君達の分身の御披露目だ。」


 幼い少年の姿の裂空が手を伸ばし、六つの神器を指し示した。六人は期待に高鳴る胸を押さえ、それぞれの絹に手を伸ばしたのであった。


うぉぉ、なかなか終わらん・・・・・。

次ももう少しこの話が続きそうです、すみません。

早く進めたいんでけどなぁ・・・・そううまいこといきませんね。


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