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99・二人の教師が交代しました

薬師学校、朝の職員会議が始まった。


「始めまして、今日から教師として薬師学校に来ました。カスミです」

「同じく、キョウカです。よろしくお願いします」


バーバラとフラワが辞めて一週間後、新しい教師がやってきた。

ヤヨさんと一緒に教員試験を受け、不採用になった二人だ。


「突然だったが、来てくれて助かった。よろしく頼むぞ」

二人が、姉貴に頼まれて試験を受けた二人だけに、校長の機嫌は良くない。

良くはないが、助かったことも事実だ。


これで教師四人中三人は姉貴の仲間となった。

メリッサさんは姉貴の仲間ではないが、特に校長や学校経営のダンブロア家の使者として俺の邪魔はしてこない。


俺が来た頃いた倉庫番は在庫の薬草を横流ししたので早い時期に辞めている。

今いる校長派は校長と受付、それと一応のメリッサさんだけだ。


カエデ製薬派は俺とギャ、ヤヨさんとカスミとキョウカで五人となった。

そして、バーバラさんとフラワさんが辞めて一週間、俺が一年と二年を掛け持ちで教えてため、用務仕事がギャ一人では回らなくなっていた。


取りあえず好調の許可を取り用務員の募集を出す。

校長は俺のことは気に入らないだろうが、今俺が辞めると学校が成り立たなくなる。

教師が二人居ない今が俺が校長に頼みごとをするいいチャンスだった。


朝礼が終わると、俺はヤヨさんと一緒に一年の教室に向かう。


「マサルさん、今日も一年に行っちゃのですか」

「ああ、新人二人が慣れるまで、そうだな一週間は一年に行くことになると思う」


「絶対一週間で帰って来てくださいよ。私ではまともな授業できないんですから」

「出来ないと思わず、まずはやってくれ。とにかく一週間頑張ってくれ」

既に二週間近くメリッサは一人で二年の教壇に立っている。

そろそろ慣れてくれないかな。


一年の教室に着くと、まずは新人教師二人の紹介をする。

今までの二人が何もしてこなかったので、新しく二人が来ても生徒の反応は薄い。


「カスミです」

「キョウカです」

二人が挨拶をすると。


「すいません、カスミ先生って、あのルーダ薬店の薬師のカスミさんですか」

「ええ、そうですけど」


「薬師のルーダさんに教わったのですか」

「ルーダは私の師匠になりますけど」


「カスミ先生、よろしくお願いします」

「ええ」

カスミに声をかけた生徒は薬師の子供だな。

薬師の間ではカスミさん有名なのかな。


「マサルさん」

「・・・」

「ルーダ薬店って王都でも有名な大型店ですよ。ルーダさんのお弟子さんには優秀な薬師が多くて、特にカスミさんは貴族から指名でオーダーの薬を作っているんです」

「いいのか、そんな人が教師になって」


「どうなんですかね、ルーダさんはカエデさんの師匠と仲がいいそうですから、配慮してくれたんだと思います」

「・・・なるほど」

ヤヨさんが小声で教えてくれた。


それから一週間、俺は二人の前で授業をする。

生徒の教えるより、二人に教え方を教えるように授業をするのだから、疲れに疲れてしまう。


パカパカパカ パカパカパカ パカパカパカ


一年での最後の授業を終え、俺はギャとヤヨ三との三人で帰路についていた。


「マサル、痩せたな」

「ああ、二十二人の生徒と二人の新人教師の前で授業をするんだぞ、毎日が緊張の連続だった」


「そうだな、此処で失敗すると、薬師学校が成り立たなくなるからな」

「そうですマサルさん、おかげで二人とも授業のやり方がわかったと喜んでいました」


「もともと薬師の能力の高い二人ですからね、特にカスミさんは薬師の間では若くしてカリスマ的存在になった人だそうじゃないですか、俺なんかよりよっぽど教師に向いています」

「そんなことないぞ、挫折を味わった人の方が人の心がわかる。そんなマサルは教師が上手だ」


「ぎゃ、俺は挫折を味わったことは無いぞ」

「魔力属性:無で魔力操作力:極小と判定されたのだろ、普通の人はそこで挫折するだろ」

まああの日は色々あって操作力を使い果たして判定に行ったからな。

自分の実力はわかっていたから判定で挫折することは無い。


「あのマサルさん、カエデさんから聞いてはいたのですが、無で極小は本当だったんですね」

「ああ、判定の日がちょっと調子が悪かったからな」


「それで色々と勉強したと聞いています。マサルさんって、努力の人だったんですね」

「・・・そうだな」

何か、褒めらえると照れ臭いな。


ヤヨさんの話ではカスミさんだけでなくキョウカさんも有名な薬師の師匠から教わっていた。

姉貴の師匠が仲間に声をかけて教員試験受験者を集めたのは本当だったんだな。


そして。

「久しぶりだな、戻って来たぞ」

俺は二年生の教壇に立つ。


「えー、帰ってきたの。メリッサ先生の授業の方が面白いのに」

「面白いって」

俺は、教壇の横に座るメリッサを見る。


「だって、何を教えるかわからないから、私の師匠の失敗の話をしたの」

「・・・マサル先生。メリッサ先生、人の話のふりをしていますが、あれって全部自分の失敗なんですよ」


「ジュリさん、決してそんなことは有りません」

うん、自分の失敗話だな。


それからは、俺とメリッサさんで交互に授業をしていく。

何回も言うが、五人しかいないから出来ることだ。

手探りでやっている俺とメリッサさんの経験を一年生の授業にフィードバックしていく。

そうして二十二人いる一年の授業も何とかなっていく。


そして用務員も二人来ることになった。


「ローバトです。よろしくお願いします」

「ジャックだ」

一人で良いのに二人来た。


「マサル、ジャックはジャック:マクレーンだ。貴族だな」

「ギャ、何でわかる。」


「家名が有るだろ」

「そうだったな」

校長から名前を聞いていたんだ。


「二人とも、用務員の仕事は雑用や汚いこともあるが大丈夫か」

「はい、大丈夫です」

平民のローバトが元気に返事をする。

平民にとっては薬師学校の用務員の給料は高額だ。頑張るだろう。


「俺は、お前らの監視をしてやる。言うことを聞くんだぞ」

「・・・マサル、殴っていいか」

駄目だと目で合図する。


ジャックはダンブロア家が送り込んだ用務員だ。

初めからあてにはしていない。

それに多分だが、マクレーン家では使い物にならずダンブロア家に泣きついて学校に就職したのだろう。

使い物にならない雰囲気をまき散らしている。


「マサル、マクレーン家はカッパー爵だぞ。マサルがシルバー爵だとばらせば言うことを聞く」

「いや、ジャックも俺も家はついでない、貴族の子供と言うだけだ」

子供に爵位は無い、本来は平民の子供と同じなのだが、忖度はされている。


「最後に一番大事な注意をしておく。此処にいるギャはとても危険だ、逆らわないように」

「けっ、何だこんなチビ。それにそれ。奴隷の首輪だろ」


ピシッ


「痛っ」

ジャックのおでこに何か当たる。


「大事なことだからもう一度言うぞ、ギャはとても危険だ」

俺はちゃんと言ったぞ。


それにジャックって世間を知らない。

奴隷は必ず主人がいる。

主人がどんな相手がわからないのに、喧嘩を売ってはいけないのは、この世の常識だぞ。


こんなあんなで、季節はもうすぐ冬を迎えるのだった。

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