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98・十八歳

「マサル。誕生日だな」

「ああ、良く覚えていたな」


「とっとの日だ」

「とっとって何だ」


「十月十日だから、とっとだ」

「そう言うことか」

十月十日が俺の誕生日だ。

薬師学校に来て二年目、俺は十八歳になった。


だからら何だと言えば、何でもない。

誕生日だからと言ってプレゼントもパーティーも無いからな。


パカパカパカ パカパカパカ

ロバで俺とギャは薬師学校へ向かう。


教師になったヤヨさんとは、出勤は別々だ。

帰りは俺の屋敷の近くまで一緒に帰っている。


「マサル、新しい教師は慣れたか」

「いや、二年に配属されたメリッサさんは、俺と一緒だから何とかなっているが、一年のバーバラさんとフラワさんが落ち込んでいるそうだ」


「ヤヨさんが言っているのだな」

「そうだ」


「一年生の授業だろ、まだひと月半だ、基本的な事しか教えていないのではないか」

「そうだ、ほとんど座学で、薬草の下処理さえまだ始まっていない」


「それでも駄目か」

「ああ、人に教えたことが無いそうだ」


などと言っていると、第四区に有るバルノタイザン商事に着いた。


「マサル様、おはようございます」

「おはよう、今日もロバを頼んだぞ」

「はい」

通勤に使うロバは学校に停めておけないので、近くに有るバルノタイザン商事に預けている。


バルノタイザン商事から学校までは歩いていく。


「マサル、今日も学校の前には馬車が多いな」

「貴族の生徒の送り迎えだろ」

二年生五人はすべて貴族の子供だ、一年生も貴族は十人いる。

これだけで、毎朝十五台の馬車が学校前に来ている。


「おはようございます」

「マサル先生、おはよう」


「おっ、マサル。生徒が挨拶してくれるぞ」

「ああ、あれは歩いてきた生徒だな」

要するに平民の生徒だ。

肩書は用務員の俺を貴族の息子だと知っているのはヤヨさんだけだ。

貴族の生徒が挨拶してくれるはずも無かった。


「マサル、平民の生徒は第八区から来るのだろ、歩いて一時間だ」

「そうだ、健康に良いな」


「のんきなことを言うな、大変だろ」

「大変だが、生徒手帳が有れば第四区迄は入れるんだぞ。俺が平民だったら毎日が楽しくてしょうがないな」

第八区に住んでいる平民は第八区迄、第七区は第七区迄しか入れない。

そして平民で第六区より内側に住んでいるのはお金持ちだ。


ちなみに第一区はお城で王様と王族が住んでいる。

第二区は各省庁の建物や騎士団の設備が有り住宅街は無い。

第三区はプラチナ爵とゴールド爵の貴族が住んでおり、第四区はゴールド爵の一部とシルバー爵が住んでいる。

第五区は大手会社の本社と高級商店街が建っている。


シルバー爵の俺の家は普通なら第四区に住めるのだが、経費節約のためにブロンズ爵やスチール爵が多く住む第六区に屋敷が有った。


「ギャ、俺は職員会議に出るから、薬草倉庫の方を頼む」

「オー」

用務員の仕事はギャに任せ、俺は職員室に向かう。

ひと月半たっても俺の机は無く後ろで立っている。出来の悪い生徒のようだ。


「おはよう」

校長が挨拶すると。


「「「「「おはようございます」」」」」

みんなで答える。


「以上だ、後は君たちで話し合ってくれ」

そう言って校長は校長室に帰っていく。

薬師のことは何も知らない校長らしかった。


「それでは打ち合わせをします」

仕切るのはヤヨさんだ。


朝の職員会議が終わると各々の教室に向かい授業を始める。


俺はメリッサさんと二年生の教室だ。

教室に入ると黒板に。


『マサル先生 誕生日 おめでとう』

と、書かれている。


「「「「「先生、おめでとう」」」」」

「・・・ ありがとう」

いやー、目に涙が浮かぶぞ。

なんか、やっと、生徒に認められた感じだ。


「マサルさん、良かったですね」

メリッサさんも俺の隣で笑顔になっている。


「それでは授業を始めるぞ」

「「「「「「はい」」」」」」

六人の返事が返る、今日もメリッサさんは生徒側の机に座っていた。


「えー来週は、実際に薬師をやっている人のところへ見学へ行くからな」

「「「「「はい」」」」」」

何と言っても生徒が五人だから色々できる。

メリッサさんも薬師の資格持ちだが俺の授業が新鮮らしく学校に来るのが楽しと言っている。

しかし、一年担当のバーバラさんとフラワさんはヤヨさんに泣きついていた。


「ヤヨさん、もう無理、生徒は私の授業きいてくれません」

「どうしたらいいんですか」

「・・・どうしましょ」

何故聞いてくれないのか。

多分、薬師や薬屋の子供は教書の内容がわかるが、残りの生徒は薬や薬草の知識が全く無いからだろう。

教え方も教わっていないバーバラとフラワではどうにもならない。


そして学園の帰り。


パカパカパカ パカパカパカ パカパカパパ

俺とギャ、そしてヤヨさんの三人で帰路についている。


「マサルさん、どうしましょ」

「ヤヨさん、俺が作った薄い教科書もあるだろ」


「ええ、薬師の子供たちやバーバラとフラワは良くできていると言ってました」

「なあマサル、二年生もあの本の授業で覚えたのだろ、何故一年生は出来ない」


「教え方だな」

「やはりそうですね、そうすると、マサルさん、一度一年に来て教えてもらえませんか」


「そうするしかないか」

「マサル、メリッサが困るだろ」

「六人で自習すればいいだろ」

もうメリッサは生徒扱いだ。


こうして次の日から一年生の教壇に立つことになった。


「おはよう、マサルだ。今日の授業は俺がやる」

「・・・ ・・・・」

生徒はきょとんとしている。

が、俺は構わず授業を始める。


「みんな、この教科書は持っているな」

全員が机の上に置く、よし捨てられてはいないぞ、よかった。


そして俺は持ってきた薬草で薬草を作り始める。

教科書の最後にかかれている薬だ。

これが付くれれば一番簡単な基礎が出来ることになら。


俺は二時間かけ薬を完成させる。

手際のよい俺の作業に生徒たちの目は釘付けになり遊んでいる者はいなかった。


出来上がった薬を見せ。

「これがこの教科書の最終目標になる。出来れば今年中に覚えるぞ」

あと二か月半、俺一人ではなくヤヨやバーバラとフラワがいる。

目標が有れば生徒も集中する、何とかなるはずだ。


はずだった、はずだったが十月の終わりにバーバラとフラワは辞めて行った。

バーバラとフラワは平民の薬師だった。

貴族の子供の相手に疲れてしまったのだ。


メリッサも平民だが貴族の子供に対応している。

それは、良い意味で天然だったからだ。

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