95・サメル村でも講師です
「マサル、あわただしいな」
「ああ、これからサメル村に行って、カエデ製薬の社員になった四人が薬師試験に合格するようにしないといけないからな」
「そうだったな、夏休みのひと月も教員試験で十日経ってしまったな」
「あと二十日で行って教えて帰って来るぞ」
「オー」
時間が無いので、馬に乗っていくことにする。
ギャ二人乗りだが、俺も小柄だし、ギャも軽いんので馬の負担は無いはずだ。
そして二日でサメル村に着く。
「マサルのバフかけより早いな」
「当たり前だ、馬は馬だぞ」
「そうだった、足が四本あるからな」
それは違う気がする。
馬とは言っても村に着いたのは二日目の夜だった。
「オー、掃除がしてある」
「そりゃ、社長の家だからな」
俺の家はきれいに掃除されていた。
「何も無いと掃除は楽だな」
「確かに」
全ての荷物は異次元鞄に入れて持っている。
有るのは食堂テーブルセットとベットと布団だけだ。
テーブルの異次元鞄から食事を取りだし遅い夕食を食べる。
旅で疲れたので後は風呂に入って寝ることにした。
翌朝。
「マサル、敵に囲まれているぞ」
「ああ」
俺の家の周りを誰かが囲んでいる。
「武器を捨てて出て来い」
外でなんか行っているぞ、あれはガーネの声だ。
「わかった出ていく」
俺とギャは両手を上げて玄関の扉を開けて外に出る。
「・・・マサルさんでしたか」
「そうだよ」
どうやら仕事の為に丘の上の屋敷から俺の屋敷の倉庫に来ると、家の中に人の気配が有るので泥棒と思ったとのこと。
「マサルさん、来るなら来ると連絡をよこしてください」
「・・・しているが」
「えっ、ねえフェリン聞いてる」
「いいえ、シャクヤもノラバも聞いて無いです」
「マサルあれだな。馬を飛ばしてきたから連絡より先に着いたのだな」
「そうか、カエデ製薬の馬車を追い抜いていたか」
まあ、朝のドタバタは有ったが、俺は無事にカルたちの試験勉強を始めることができた。
試験勉強と言っても通常の仕事の合間にすることになる。
問題集を作ってきたのでやってもらう、そしてわからないことを質問してもらった。
ギャも一緒に解いているが。
「マサル、この問題には引っ掻けが無いぞ、簡単すぎて面白くないな」
他の受験者がきいたら怒るぞ。
「ギャ、この問題は難しい方だ、それに引っ掻けは落とすための試験であり、この薬師の資格は国家資格でそんな卑怯なことはしない」
「そうか、国家試験だったな。それにしては良く問題集が作れたな」
「ああ、薬師は厚生省の管轄なんだが、タカシ兄さんの知り合いがいるんだ」
「タカシお兄様は、大蔵省ではなかったか」
「まあ省は違うが知り合いはいる。その人から試験問題の傾向を聞いているんだ」
「それはまずくないか」
「いいだろ、試験問題そのものじゃないのだから、それに試験問題は姉貴の師匠達に協力している。そこからも色々聞いている」
「何かずるく感じるぞ」
「まあ筆記試験は有利になるが、実技は薬師の実力がそのまま試される」
「なら、カル達は大丈夫だな、マサルにしっかりしごかれたからな」
「サメル村だったからな、王都では薬草が貴重だから練習に使えない、此処なら多少失敗しても良いから、とにかく作ることができた」
「そうだったな。ギャもだいぶ薬草を駄目にしたぞ」
「それも上級をだぞ、少しは反省してくれ」
「それはマサルのせいだ、あたいは無理だと言ったのに無理やりポーシャンを作らすからだ」
そうだった。薬に属性:光が魔力を流せばポーションになると言うものでもない。
薬としての効きは格段に良くはなるが、どう言う風に体に効かせたいか意識して魔力を流さないとポーションにならない。
その為に医学書を使って勉強する。
俺がサメル村にいる間は、カル達四人にはひたすら問題集をやらせる。
試験とは知識よりテクニックがものを言う。
その為にもひたすら問題集を解かすのだ。
「マサル様、まだやるの」
「あきたよー」
始めにジュンとネネが根を上げる。
「ジュン、ネネ。これくらいで根を上げない。私なんか、マサルさんが教えるのが下手のころに覚えたのよ」
えっと、俺教えるの下手だっけ。
「そうだったわ、カイとマイさんが教わったころのマサルさんはひどかったのよね」
「そんなにひどかったか」
「マサルさん、マサルさんって本を読めば覚えてしまい、教わればだいたいすぐに出来たでしょ。普通の人はそうじゃないの。だんだんそれがわかってきて、教え方が上手くなったのよ」
さすが三十過ぎのマイさん、よく見てたのね」
サメル村に来るまで一人で冒険者をやっていたので、初めて薬作りを教えたのはカルとマイだった。
なかなかカイとマイが覚えないと感じたが、すぐに俺の教え方が悪いのに気が付いた。
まあギャが指摘したからだが。
教え方が悪いのに気が付いた俺はすぐに教え方の勉強をした。
そうしたら、みんなから『マサルは教えるのが上手いな』と、褒められるようになった、
もしかしなくても、それが薬師学校に送り込まれた原因だな。
実技には問題ないカル達四人は俺がサメル村を出るころには筆記試験も問題無くなっていた。
「それじゃあ俺とギャは王都に帰るが、試験の時にまた会おう」
試験は九月の半ばだ。二週間後には王都で会うことになる。
そして俺とギャは馬にまたがり王都に帰るのだった。
「マサルさんとギャちゃん、帰っちゃいましたね」
「ああ、一緒に薬草採取にも、それこそズンダダ森も行きませんでしたね」
「ズンダダ森の牧場、見せたかったです」
「見たらきっと驚いたでしょうね」
ガーネ達四人だ。
ノラバが頑張ったのか、牛達が気を利かせたのか、ズンダダ森の草原に作った牧場には多くの牛が集まっていた。
集まった後の管理はボイルさんの役目であり、ラバル商事の人達がやっている。
「でもよかったね、あれだけ集まると寿命だった牛からも魔獣牛が見つかって」
「そうね、ラバルさんも、これなら国からの要望に十分こたえられるって言ってたわね」
ただ、ボイルさんのスターマイラル家で管理する牧場の魔獣牛がいなくなった訳ではない。
ボイルさんは、国に内緒の魔獣牛と異次元鞄の材料になる革を確保しておきたい。
その為のラバル商事であり、サメル村とズンダダ森だった。
「マサル、せっかくサメル村に行ったのだからズンダダ森に行かなくて良かったのか」
「・・・あっ」
王都に帰る途中に気が付いたが、後の祭りだった。




