91・貴族の子供に教えるのは大変です
俺が用務員なのに薬師学校で教鞭をとるようになって二か月、青空の元を生徒を連れて冒険者ギルドに向かっている。
第四区にある学校から第八区に有るギルドまで歩けば一時間かかってしまう。
しょうがないのでトーム交通の乗合馬車を借りて来きた。
「何だこの馬車は、乗り心地が悪いぞ」
「お尻が痛くなってしまいます」
「俺の家の馬車から見たら荷車だな」
生徒は貴族の子供たちだ。言いたいことを言っている。
「あたいがいつも乗っている荷車より、ずっと乗り心地は良いぞ」
「だろうな」
「マサル、この乗合馬車に庶民は文句を言わずに乗っているのだろ」
「そうだ」
ギャも一緒に乗っているが、ギャにとっては問題ない。
馬車ならギルドまで三十分だ。
人ごみの中を行くので郊外を行くほど馬車は速くなかった。
「良し着いたぞ」
「先生、ここって冒険者ギルドですよね」
「そうだ、学校を出るとき教えただろ」
「薬草採取に行くのですか」
「いや、ギルドの隣に大きな建物が有るだろ」
「「「「「・・・・・・」」」」
五人の生徒は建物を見て、黙っている。
「マサル、この建物は獣の解体所じゃないのか」
「そうだ、一応王都でも獣の解体所は有るんだ」
「そうすると、今日の授業は解体だな」
「ギャ、生徒が解体できると思うか」
「無理だな」
「だが、臓器の説明は出来る」
「そう言うことか」
「先生、ギャがそう言うことかって行ってますが、どう言うことですか」
「そのままだ、解体現場を見ながら、臓器の説明をする」
「「「「「「えー」」」」」
と叫ぶ生徒を建物の中に無理やり連れ込み。
「すいませーん、お願いしていた猪の解体。始めてもらえますか」
「おーマサルか、すぐに始められるぞ」
当然である。今朝学校に行く前に俺の異次元鞄から猪を出して渡しておいたからな。
解体した猪はギルドに提供すると言ったら、喜んで解体現場の見学を許可してくれた。
「じゃあ、猪の解体が始まるからよく見るように」
「「「「「・・・・・・」」」」」
「まずは、こうやって猪を釣り上げてっと」
「次に此処をこうやって太い血管を切るんだ。するとほらドバドバと血が流れ出るだろ」
ギルドの解体担当のおっちゃんが手際よく血抜きをしていく。
「おーえっ ・・・」
生徒の一人が脱落したようだが、解体は進んでいく。
血抜きの終わった猪を台の上に乗のせると。
「おっちゃん、内臓の説明をするから代わるよ」
「そうか」
俺は腹から胸にかけて切り裂き、内臓を出していく。
「これが心臓だな。リン、どんな役目をする」
「はい、心臓はポンプです。体中に血液を巡回させます」
「正解だ」
「つぎミネバ。これは」
「はい。肺です。吸い込んだ空気の酸素を血液に取り入れ、二酸化炭素を取り出します」
「肺にハイ。いい親父ギャグだったな。肺の役割も正解だ、良く勉強したな」
「ではジュリ、これは」
「えっと、肝臓です。栄養を溜めておきます」
「そうだ、そのほかに解毒やしょうかに必要な胆汁を作る、良く覚えておけ」
「つぎは、カイ」
「・・・・・・・」
「返事は」
「・・・・・・」
「先生カイ君、気を失っています」
リンが教えてくれる。
「しょうがないな。代わりにウルキダ、これは何だ」
「オエー オエー、む、無理です」
「何だ気持ち悪いのか」
今にも履きそうなウルキダだ。
血に対しては女性の方が耐性が有るのか、男子生徒二人は伸びている。
「ギャ、二人を頼むぞ」
「オー」
ギャに介護させる。俺の特性ドリンクを飲めば復活するだろう。
「では、授業を続ける。これは胃でつながっていくのが小腸や大腸だ。こっちは腎臓でこれが膀胱だな」
「「「・・・・・・」」」
内臓の名前と役割を説明していくのだが、女性陣も顔色が悪くなってきた。
「マサル、血の匂いにやられているな、限界みたいだぞ」
「わかった。それじゃあこれで終わりにする」
内臓を取り出した猪はギルドのおっちゃんに返す。
おっちゃんは、内臓の無くなった猪から肉をはぎ取って行った。
「「「「「はあ、はあ はあ」」」」」
解体作業場の建物から出ても、生徒たちの息は乱れている。
「マサル、サメル村で子供たちに内臓を見せたが、普通にしていたな。都会の子供は軟弱だ」
「まあ、村の子供は獣の解体は見慣れているし、それこそ鶏の首ちょんぱや羽むしりは日常だからな」
人のことは言えない、俺も都会育ちだから獣の解体を覚えるとき何回も吐きそうになった。
生徒たちの息も整い、顔色もよくなったので。
「よし、昼は俺が大衆食堂サクラで奢るぞ」
お袋の経営する食堂は、ここから割と近い、ちょうど昼時なので奢ってやろう。
「マサル、油のたっぷり乗ったステーキと、レバーとニラを炒めたのが食べたいぞ」
ギャの一言で。
「「「「「うっ ぷっ」」」」」
生徒顔色がまた悪くなってしまった。
だが俺は腹が減っている。ギャもだ。
乗合馬車も借りてあるが、近いので歩いていく。
きっと乗せたら吐いてしまうだろうな。
大衆食堂サクラについても、まだ顔色が悪いので、まずは野菜スープを飲んでもらう。
お袋のスープを飲ぬと。
「ふあー、落ち着く、それに美味しい」
「そうね,質素だけど風味が有って落ち着く味ね」
「うん、これダイエットにも良さそう」
女性陣は復活したが、
「おえー おえー おえー」
「・・・ふっ ・・・ふっ」
男性陣はまだまだだった。
それでも落ち着くと、しっかり肉も食べた。
やはり育ち盛りの食欲はたいしたものだな。
こうして解体による、内臓の授業は無事に終了した。




