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90・ジルは頑張っていた

「かあちゃん、お姉ちゃん行ってきます」

「ああ、気をつけてね」

「行ってらっしゃい」

第八区に住むジルは朝早く家を出る。


縁あってカエデ製薬に努めて半年になる。

既に必要な読み書き計算は覚えており、勉強に当てていた一時間も仕事時間に戻っていた。

これで一日八時間労働だ。


ただし、読み書き計算の勉強は終わったが、カエデ製薬の商品である、薬草や薬の勉強が始まっていた。


ジルは少しでも早くカエデ製薬に着きたいので、毎朝小走りで出勤していた。


「はあ はあ はあ。おはようございます」

「おはよう。毎朝ジルちゃんは早いのね」


「うん・・・はい でもサキさんの方が速いです」

「まあね、店の鍵持ってますから。それに私の家って此処から三軒目だから。じゃあいつもの通り店の掃除をお願いね」

「うっ・・・ はい」

ジルが一番下っ端だから掃除をするわけではない、ちゃんとみんなで手分けしている。

それでもサキの次に早く来るので掃除する場所が一番多かった。


姉貴に弟子入りし薬師になったサキは薬草の在庫を確認する。

サキ一人でやらないと、在庫の管理がおかしくなる、その為の早出だ。

サキが在庫の確認を終える頃には従業員全てが出勤しいた。


「サキ、朝来るの早すぎ」

「そうそう、まるで私たちが遅刻しているみたいじゃない」

サキ同様、姉貴に弟子入りして薬師になったキラとヤヨだ。


「おはよう、みんな揃っていますね」

掃除が終わる頃に姉貴が出勤してくる。

別に気取って重役出勤しているのではなく、掃除のじゃになるから終わるころ来てくれと、従業員に頼まれたからだ。


カエデ製薬として会社を作ったが、もともと王都に有った薬屋カエデはそのまま薬屋カエデであり、会社の組織的にはカエデ製薬王都支店となっている。

あくまで、カエデ製薬の本社はサメル村であり、社長は俺だ。


他にも支店が五店舗ある。

姉貴の弟子で、独立したフミ シス ミナ ムツ キヅの五人がカエデ製薬の社員となり、それぞれの店が支店となっていた。


フミ ミナの二人は王都で店を出していたが、残りの三人は生まれた町や村に戻って店を出している。


支店ではサメル村の薬草が多く使われている。

サメル村で採取した薬草は一度王都の薬屋カエデに届けられ、そこから各支店に送られていた。


「ジルちゃん、これが今日の各支店に送る薬草の一覧表」

「ううううぅ・・・ はい」

一覧表を受け取ったジルは倉庫に有る薬草を各支店別に分けて、異次元小袋に入れていく。


「あのー、こんなにある薬草を、こんなちっちゃな袋に入れるんですか」

始めて異次元小袋を渡された時のジルだ。


「ええ、小袋に魔力を流して入れれば入りますよ」

「へーそうなんだ 『お金持ちの店って便利な魔具が有るのね』」

ジルは異次元小袋のことを便利な魔具くらいにしか思わなかった。


異次元小袋は姉貴の弟子が社員になった時に配っているが、薬草の配達にも使っている。

サメル村とズンダダ森で魔獣兎が思った以上に取れたからだ。


薬屋カエデには姉貴と薬師三人の他に店員が二名と帳簿などの事務担当が二名いる。

ジルを入れて九人と庶民向けの薬屋としては大きな方だ。


村にある支店の『薬屋シス』は全てを薬師のシスが一人で切りまわしている。

王都の『薬屋フミ』でさえ店番を一人やっとているだけだった。


ジルは読み書き計算を覚えたが、さすがに帳簿は無理なので店番の手伝いとお使いをやっている。


「ジルちゃん、この薬を届けてくれる」

「うん…じゃなかった はい」


「あっ、ちょっと遠いからロバに乗って行って良いわよ」

「うっ・・・ はい」

返事を『うん』と言っていたジルは、『はい』と答えるよう言われてたが、なかなか出来なかった。


それとお使いの為に、ジルはロバの乗り方も覚えた。


馬に押されロバの活躍するところが少なくなる中、子供でも乗れることをアピールするために、ジルには出来るだけロバに乗ってお客さんを回ってもらっている。


パカパカパカ パカパカパカ


ジルはロバに乗って薬を配っていく。


「ジルちゃん、おはよー」

「うん、おはよう」


「ジルちゃん、今日はどこ行くのー」

街を行くジルに声をかける人が沢山いる。


「うーん、あっちの方」

とぼけたジルの受け答えが可愛いからだ。


「いらっしゃいませ」

薬を配り終わり、店に帰れば今度は店番だ。


「のどが痛い、風邪を引いたみたいだ」

「うっ・・・ はい、ちょっとお待ちください」

ジルは奥を見て、手の空いてそうな薬師を探して呼びに行く。


「はいはーい、のどが痛いのですか」

手が空いていたのはキラだったようだ。


「えっとー、どう痛いのですか」

「ガラガラして、あーうー痛いんだ」


「では、こちらの風邪のお薬と、のど飴です。合わせて三千二百円になります」

「た、高くないか」


「えっと、三日分ありますから、高くないと思います」

「ちっ、二日分でいい」


「そうなんですか、じゃあ二千八十円です」

「わかった」

二日分の薬とのど飴を持ってお客は帰っていく。


「キラさん、二日分で足りるの」

「どうかな、でも少しは楽になるから、我慢強い人なら二日で何とかなるでしょ」

ジルはさっきの客が治らなくて怒鳴り込んでこないか心配だったが。


「あー、あの薬よく効くな。前に高そうな店構えの薬屋で買った薬は効かなくってな。疑って悪かった。そこで、あーこんなことに効く薬は無いかな」

「えっと、有りますよ」

子供のジルには良くわからないことに効く薬だった。


「ねえ、ねえったら、子供が死にそうなんだ、この店の薬って何でも治すんだろ」

こういう客も来る。


そう言う時は姉貴が直々に見に行って薬を渡している。

まあ余程酷く無ければ、俺の魔力をちょちょっと流し込んだ薬で命を助けてしまう。


「カエデ様、あの子治ったんですよね」

「ええ治りました」


「死にそうでしたよね」

ジルも一緒に行って、死にそうな子供を見ている。


「そうでしたか、そんなこと無かったですよね」

「・・・・・・」


ジルにとって、薬屋カエデの薬は魔法のようだった。

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