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89・今さらですが薬草採取のことです

「マサル、薬草採取は難しくないだろ」

「そうでもないぞ、ギャは今まで薬草が豊富なところでしか採取していないらな」


「サメル村やズンダダ森のようなところは他に無いのだな」

「あそこ迄良い所は無いが、それなりの所ならある、俺が冒険者の時に採取していたからな」


「だが、あたいもそうだがマサルは属性:光の力を使い、薬草のある場所が雰囲気でわかる。あたい達はちょっとずるいぞ」

「うーん、本当なら属性:光がいる教会が薬草の場所だけでも調べてくれると良いんだがな」


「やっていないのか」

「あのやり方は俺もサメル村に行ってから気づいたんだ、機会が有れば教えるか」


「だが、チャンスは来ないぞ。あたいを教会から隠しているんだからな」

「そうだった、それに俺が光なのがバレるのも困る。教えるのはやめだ」


「それにしても、マサルが薬草採取を始める前、薬師はどうやって薬草を手に入れていたのだ」

「それは、薬草を売っている店が有る。その店や薬師が冒険者ギルドに薬草採取の依頼を出している。後は薬師自ら薬草を取りにも行っている。姉貴の弟子の人達も一通り薬草採取の知識と技術は教え込まれているな」


「それではカエデお姉さまも採取の技術は有るのだな」

「ああ、姉貴も師匠の薬師に教そわっている。それに地方の薬師は薬草採取や薬草栽培は当たり前だな」

王都の薬師が特殊なのかもしれないが、王都から薬草の生えている所はそれなりに遠く、自分で行くのが難しい事もある。


確かに俺が冒険者を始めたとき、薬草採取がとても喜ばれた。

これは俺の取って来る薬草が新鮮だった為と思ったが、品不足だったんだな。


あまりに新鮮で珍しい薬草を大量に取って来ると変に思われるので、大半を姉貴に売っていた。

姉貴もおかしいとは思っただろうが、大量の薬草は必要だったので何も言われなかった。


姉貴の所も三人の弟子がおり、独立した五人にも薬草を回していたからな。


王都から離れれば薬草は取れるが、王都に運ぶまでにしなびてしまう。

下地処理が出来る薬草なら良いが、薬を作る時に手を入れる薬草はしなびていては薬の効きも弱くなる。

だからカエデ製薬の薬草が新鮮なのが不思議なんだろう。


「マサル、他の薬師や薬草販売店は異次元鞄を持っていないのか」

「持っていないだろうな。王国が規制する前に作られた鞄が手に入らない限りは持てないな」


俺の鞄は規制前に作られている、その上に属性:光のでないと使うことのできない欠陥品だ。

後は、サメル村のロマンヌさんが持っている鞄も古くて規制前のものだ。


魔獣ロバの革で作った三つの異次元鞄はナイショにしている。


そして。

「なあマサル。異次元小袋なら普及しても大丈夫じゃないのか。魔獣兎なら割と取れていたぞ」

「そうなんだが、姉貴とも相談して、今以上は作らないと言うか、王都には持ってこないことになった」

サメル村では、だいぶ普及してしまい、全部にバルノタイザン家の紋を焼き入れて村からの持ち出しは禁止にした。

小袋では間口が狭くて大きなものが入れられないが、細い剣は入れることが出来る。

武器を隠せる以上、秘密にしておきたかった。


それでも、新鮮な薬草を王都に届けるには魔獣小袋や魔獣鞄が必要になる。

どうしたものか。


「マサル。さっき薬草を扱う店が有ると言ったな」

「ああ、小さな薬草問屋だ。問屋だから自分では採取していないぞ」


「その問屋をカエデ製薬で吸収したらどうだ」

「吸収じゃ駄目だな。サメル村の秘密がばれる。やるなら乗っ取って今の経営者を追い出す必要がある」


「ならば『サメル村の会』に入っている問屋は無いのか。それなら秘密を広げないだろ」

「そうだな」

本当にギャは、いいアイデアを出してくれる。


さっそく。

「なあ姉貴、『サメル村の会』の薬草問屋って無いのか」

「・・・有るわよ」

有るのか。


「そこって薬草採取者を雇っているのかな」

「雇っているけど、サメル村とは関係ない人達だったはずね」


「うーん、じゃあ無理か」

「そうかそう言うことね、薬草採取者は雇わないといけないし、サメル村の会で探してみるわ」

考えてみれば、名前は製薬だがカエデ製薬の主たる業務は薬草採取だ。

薬草採取者の採用は本業だった。

そして勘のいい姉貴はサメル村の会の人なら異次元小袋を持たせても大丈夫だと気付いたのだ。


この件は姉貴が始めれば俺が手を出すことはない。まかせてしまおう。

後で『薬草分布を書いた地図を作りなさい』と言われてしまったけどね。


「マサル、今日も学校だな」

取りあえず教師を全力でやることにする。


パカパカパカ パカパカパカ

ロバに乗って通勤だ。


「おはようございます」

「おはよう」

「オッハー」

学校の門の脇には受付の建物が有り受付がいる。


最近挨拶が丁寧になっている。


「マサル、不気味だな」

「ああ、受付も貴族のせがれだろ、普通平民に挨拶しない」

ましてや授業を教えるとはいえ俺は用務員だ。

以前に薬草を治めに来た時も横柄に扱われている。


「一通り片づけたが不審者がいたな」

「ああ」


「手引きしていたんじゃないのか」

「受付がか」


「可能性はあるだろ」

「そうだな」


「不審者はカエデ姉さんに引き渡し醜い目に会っているだろ」

「・・・そうだな」


「きっと、あいつはあたいが怖いのだ」

「・・・そうだな」


丁寧なあいさつは俺に向かってではなくギャに対してだった。

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