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88・薬師学校に来てひと月です

「ギャ、出かけるぞ」

「オー」

今日も俺はギャを連れて王都の薬師学校へ行く。


姉貴に頼まれてからすでにひと月だ。

最初のい週間はまともな授業が出来なかったが、俺の作った薬を見せてからはまともな授業が行われている。


ポカポカポカ ポカポカポカ

学校へはロバに乗って通っている。


「マサル、良かったな授業が出来て」

ロバに乗ったギャが話しかけてくる。


「ああ、だがこれまでの遅れを取り窓すのだから大変だ」

「そうだな、一年の前期は何も教わっていないのと同じだったな」


「後期だけで一年分を教えないといけな」

「あれだな、来年度もマサルが教えれば卒業までには一人前の薬師に育てられるだろ」


「そうだな」

今はもう四月の半ばで、夏休みまで三か月半しかない。

まあギャや、サメル村で薬屋カエデに雇った人たちも三か月から半年で最低限の薬を作ることができた。何とかなるだろう。


「マサル、薬作りだけなら覚えられるが後が大変だな」

「確かに店に並べる常備薬までは覚えられるが、病人や怪我人に合わせたオーダーメイドの薬は経験がものを言うからな。これが二年生の課題になっている」


王都薬師学校のカリキュラムとして、一年生は薬草の知識と採取場所、薬草の下地処理、道具や器具の使い方、基本になる薬の作り方を覚え、二年生の前期で上級の薬やオーダーの薬を覚え、後期では薬師としての経営を教える。


薬が作れるだけでは食べていけない。

帳簿の付け方から薬草の仕入れ方、薬の値段の付け方や販売の仕方を教える。

薬屋に努めるならばすぐに必要が無いが、一人親方ともいえる薬師は何でも自分で出来ないといけないからだ。


学校に着くと、まずは荷物を用務員室に置く。

職員室より落ち着くからだ。

当然盗まれたくないものは異次元鞄に入れ、鞄はいつも肩に掛けている。


「おはよう」

「「「「「おはようございます」」」」」

五人の生徒は、あれから休まずみんな来ている。


「今日は、新しい薬草が入ったから、下地処理をするぞ」

「「「「「はい」」」」」


「ジュリさん、この薬草から作る薬が何だかわかるか」

一応、俺は平民として学校に来ている、生徒は貴族の子供なので呼び捨てになどできない。


「はい、傷につける薬です」

「効能は」


「血止めと化膿止めです。場合によっては痛み止めの成分を入れることもあります」

「正解だ」

これくらいは俺の作った薄い教科書にも書いてある。

要点を絞れるだけ絞って書いたので覚えやすいはずだ。


「先生、質問が有ります」

リンが質問してくる。用務員のおじさんから呼び方が先生に変わって俺は嬉しい。


「なんだ」

「この薬草ってカエデ製薬が持ってきますよね」


「そうだが」

「何処で採取しているのですか、私の家が取引している薬屋では質の良い薬草が手に入らないと困っています」


「それは、カエデ製薬に聞かないとわからないな」

「では先生は、薬草採取をやらないのですか」


うーん、ここで嘘をついてもあとでバレる。

「やったことは有る、俺は八歳で冒険者登録をして薬草採取をやってきたからな」

「じゃあ先生も、これくらい質の良い薬草が採取できるのですね」


『出来るよ、出来るけど、出来るって言いずらいよね』

と思いながら。


「これほどではないが出来ると思う」

濁しておいた。

「わかりました」

リンの質問はこれで終わった。


その日の授業は傷薬用の薬草の下地処理で終わった。


「なあマサル。薬草倉庫に不審者が現れるがどうしたらよいのだ」

「どうしたらッて、今までどうしたんだ」


「シャクヤから教わった石礫を使って追い払っているぞ」

「何だ石礫って」


「石は石だな、この場合は小石だ。礫とは石を投げることだが、あたいは指ではじいて飛ばしているぞ、軽くバフかけして飛ばすと不審者は驚いて帰って行った」

「そうか、もし余裕が有れば俺を呼んでくれ、捕まえて姉貴に所に連れて行くから」


「そうはかわいそうだな、ひどい目に会わなければ良いが」

「そうだな」

やはり、カエデ製薬が納める薬草が興味を持たれたか。

不審者は俺の作った薬を見た薬師や薬屋の誰かの指示で来ていることくらいはわかる。


ギャがいる限り薬草倉庫が荒らされることは無いだろう

夜間や学校が休み時は倉庫の薬草はすべて俺の鞄に入れてある。

出し入れが面倒だが、必要なことだ。


今日の授業も終わり。

「ギャ、帰るぞ」

「オー」


ロバに乗って俺の屋敷に帰る。

「マサル、机に宿題が乗っているぞ」

「そうだな」


屋敷には、いつの間にか俺の仕事部屋が作られ机が置かれていた。

そこの机には書類が毎日届けられる。

カエデ製薬の社長がサインする書類だ。


「マサル、薬屋カエデにマサルの事務机は無いのか」

「それが、これだ。姉貴が持ってこさせたんだな」


王都のカエデ製薬は薬屋カエデの建物をそのまま使い、薬屋は薬屋カエデのまま経営し看板は薬屋カエデのままだ。

看板の隅に小さくカエデ製薬と書き加えられている。


薬屋カエデは第八区に有り、俺の住む屋敷は第六区だ。

学校は第四区に有り、屋敷からロバで二十分かかる。


屋敷から薬屋カエデまではロバや馬車で三十分だ。

ちなみに姉貴と薬屋カエデの隣に有る大衆食堂サクラの経営者のお袋は馬車で通っている。

一応貴族だからな。


それで学校が終わってから薬屋カエデまで行って事務処理をするのが大変なので、姉貴が屋敷の俺の事務机を持ってきたという訳だ。


「マサル、学校と会社、二足のわらじは大変だな」

「ああ」


そう答え、俺はしょお類の目を通しサインをする。

何とか今日の分は夕食までに間に合った。


夕食後に姉貴との簡単な会議が有る。

会議と言っても俺と姉貴の二人だ。

たまに親父やお袋が聞いている。


「マサル、学校は順調ですか」

「はい、ただ薬草倉庫に不審者が現れています」


「そうですか、私の方にも来てますから、そんなもんでしょ」

「来ているのですか」


「当然です。まさかサメル村やズンダダ森の薬草があれほど良質だとは思ってもいませんでしたからね」

これは俺もそう思った。


「それに、王都周辺では優秀な薬草採取者がいないみたいですね」

「でしょうね。冒険者ギルドでも適当に教えているし、って、姉貴、薬草採取者なんて職業ありましたか」


「ええ、学校が作られたとき同時にダンブロア家が作りました。それが上手くいかないのでカエデ製薬に薬草を寄付するようにいてきたんです」

「なるほど」


何となく納得しておいた。

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