87・サメル村のガーネ達は
俺が薬師学校で苦戦している頃、サメル村にいるガーネ達は薬草採取を頑張っている。
「じゃあ、頼んだぞ」
「「はい」」
毎朝、ガーネ達はカエデ商会のザエルから採取する薬草の一覧表をもらう。
「ガーネ、今日にザエルさんからもらった薬草の依頼書って大変そうなの」
「フェリン、そうでもないよ」
「そうなの、だって昨日からノラバとシャクヤはズンダダの森に行っているでしょ、ガーネと私の二人なのよ」
「それでも大丈夫でしょ。フェリンがいればすぐに薬草を見つけてくれるものね」
「・・・そうね」
ノラバとシャクヤがズンダダ森に行っているので薬草採取はガーネとフェリンの二人だ。
ノラバとシャクヤはズンダダ森の草原の小屋の近くにラバル商会が牛の牧場を作るのを手伝っている。
表向きはカエデ製薬に依頼され薬草を採取する会社、だが実体はボイルさんの下で魔獣牛をズンダダ森で手に入れるのがラルバ商事だ。
ラルバ商事の社長のラルバさんに、ズンダダの森で牛狩りをしないで欲しい、代わりに草原の小屋の近くに牧場を作り、そこで寿命なりで死んだ牛から魔獣牛を探し革を手に入れるのを手伝うからと、ボイルさんに伝えてもらった。
ボイルさんもズンダダ森に魔獣牛がいることはわかってもどうやって手に入れるか悩んでいるところだったので、とりあえず俺の案を採用してくれた。
ボイルさんが手あたり次第ズンダダ森の牛を狩らないよう、出来るだけ早くズンダダ森に牛の牧場を作りたい。
その為にノラバがズンダダ森の草原を駆け回っていた。
「シャクヤ、今日はもう少し先まで行ってみよう」
ノラバの護衛としてついてきているシャクヤにノラバが声をかける。
「ええ、私も馬を手に入れましたからね」
ノラバが乗るハナコ以外に手に入れていた。
ズンダダ森の入り口から北に行った山のふもとに馬の集団がいたことは確認している。
ノラバとシャクヤは馬のハナコを連れて行ってみたところ、ハナコの『ヒヒーン』のひと鳴きで馬が集まって来たのだ。
「ねえノラバ、この馬達ってハナコの仲間みたい」
「うーん、ハナコが怪我して倒れていたのは、そうねあの山の向こうくらいでしょ。魔獣馬のハナコなら一人で超えちゃったのかな」
そして怪我をして、俺が治し、ノラバに懐いたのだ。
「ねえノラバ、ハナコに私が乗る馬がいないか聞いてもらえる」
「えー、ハナコは懐いているけど、お話はできないよ」
ノラバとシャクヤが話していると、集団の中から一頭の馬がハナコに使づいてきた。
「ねえ、あの馬、ハナコと一緒にいたいんじゃないのかな」
「そうみたい」
こうしてシャクヤの乗る馬を手に入れていた。
ちなみに魔獣馬では無かった。
ノラバとシャクヤは馬に乗り草原を駆け巡り牛の集団を探す。
ズンダダ森で生まれ育ったハナコとその仲間の馬に乗っていると牛たちが逃げることは無かった。
ノラバとシャクヤに慣れてきた牛たちは、ボイルさんによって派遣された、野生の牛を家畜化する技術も持った人達によって、牧場に集められていく。
「ノラバさん、助かります。おかげで魔獣牛が手に入っていきます」
「ええ、でもラルバさん、魔獣牛がいるからって革の為に殺しては駄目ですよ。そんなことをしたらすぐに手を引くようマサルさんから言われていますから」
「ええ、わかっています。今のところ魔獣牛の革の納品は何とかなっていますから。それにサメル村に連れて来た牛も魔獣牛の子供を産みましたから、ボイルさんの機嫌は良いんですよ」
「そうなのね」
一応順調のようだ。
サメル村に残っているガーネとフェリンはロバに乗り森で薬草を採取していた。
「えっとこれで依頼の薬草は集め終わったわね」
「ええ、でも、いつもより少なくないですか」
「それは、この手紙に理由が書いてある」
「何ですか手紙って」
「一覧表と一緒に渡されたんだが、何でも王都に薬師の学校が出来てそこに寄付として薬草を治めていたんだ」
「それで、増えたのはわかりましたが今回減ったのはどうしてですか」
「それは、学校には教師がいなかったそうだ」
「えっ」
「マサルさんが教えることになった」
「はっ い」
「で、今まで教える人がいなかったので寄付した薬草はほとんど使われることが無かった、そこに目を付けた薬草倉庫の番人が薬草を横流ししていたんだ。足りなくなればカエデ製薬に要求する、するとすぐに寄付として納品になる。結果私たちの採取が忙しくなっていたという訳だ」
「そうだったんですか、でも横流し良くわかりましたね」
「ああ、何でもマサルさんは薬作りを教えるが採用は用務員だそうだ。薬作りを教えながら用務員の仕事が出来ないので、ギャちゃんを連れて行ったと書いてある」
「ギャちゃんですか」
「ギャちゃんが薬草倉庫の掃除をするために倉庫に行くと、カエデ製薬から収めた量と在庫が違うのがわかってしまった。そこで倉庫番が口封じのためギャを痛めつけようとした」
「まさか、ギャちゃんを襲ったのですか。・・・可愛そうに」
「ああ、無限新陰流をみっちりシャクヤから教わっているギャちゃんを襲ったんだ。本当に可愛そうにだな」
「まさか剣までは使わなかったんですよね」
「ああ、無手で倒したそうだ」
「薬草の横流しもそうですが、十歳の少女を襲っのですから大変なことになったのではありませんか」
「いや、ギャちゃんは奴隷だから襲ったのは罪にならないそうだ。それに倉庫番は貴族の倅なので、学園も罪に問わないそうだ」
「良いんですか」
「良いみたいだな。手紙の最後にカエデさんが最後に決着を付けるから心配するなと書いてある」
「カエデさんですか。・・・何をするのでしょうね」
この時はまだ、サメル村にいるガーネ達は姉貴が王都の薬師学校を乗っ取ろうとしていることは知らなかった。
ガーネとフェリンが薬草採取、ノラバとシャクヤはズンダダ森で牛の群れ探しに活躍しているころ、サメル村のカエデ製薬にいるザエルとレダンは暇をしていた。
ザエルの奥さんのムンは学習塾で子供たちに読み書き計算を教えている。
レダンの奥さんのリルは薬草畑の手入れに忙しかった。
「なあレダン、俺たちも何かやることを見つけないと駄目なのか」
「そうだな、薬草畑の手伝いでもするか」
「ああ」
ザエルとレダン、若くしてバルノタイザン商会に入社し、順調に定年間際まで勤め上げ、今はカエデ製薬に務めている。
経理や事務処理は出来ても、森に入って薬草採取などできる訳がない。
薬草畑も得意ではない、そんな時。
「ザエルさん、レダンさん、手が空いているならこっちの仕事手伝ってくれませんか」
ムサイさんだ。
サメル村にいるバルノタイザン商会の社員はムサイさん一人だけ。
こっちは一人でてんてこ舞いだ。
「ああ、わかった」
「手伝うぞ」
元バルノタイザン商会の社員である二人にとって、ムサイの手伝いの方が手馴れていた。
こんな具合だが、サメル村での仕事は順調だった。




