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86・生徒に試されます

薬師学校二日目、昼飯を終えた俺は教室に向かう。

ギャには薬草倉庫の整理を頼んだ。


「では引き続き俺は教科書を読むからな」

読みながら、要点を黒板に書くのだが、俺の教科書には要点しか書いていない。

結局読むだけだ。


「用務員のおじさん」

「うんっ、ジュリさん何か」

おじさんと呼ばれて反応する俺が嫌いだ。


「私達の前で薬を作ってください。それを王都で有名な薬師に判断してもらいます」

「わかった。材料を用意するから作るのは明日だな」


「今から出来ませんか、薬草なら倉庫に有るはずです」

「有ることは有るが、あれで作れるとお前たちは考えているのか」


「「「「「・・・・・・」」」」」

返事がない。


「倉庫の薬草を見たものは」

「「「「「・・・・・・」」」」」

いないな。


「それでは見学に行く。ついてきなさい」

しぶしぶだが五人は俺の後をついて倉庫に来た。


「マサル、なにしに来た。まだ整理中だぞ」

「いや、生徒が倉庫を見たことが無いと言ったから店に来た」


「見ても無駄だぞ、ほとんどの薬草が使い物にならなくなっている。下地処理したのがわずかに使えるだけだ」

「・・・そうか」

俺もこれほどひどいとは思わなかった。


「おじさん、納品の業者がさぼっているんでしょ」

ついに用務員が外され、ただのおじさんだ。一つしか違わないのだから、せめてお兄さんと呼んでくれ。

「そんなことは無いぞ、週に一度は新鮮な薬草を納品しているぞ、ほれこれが納品の証だ」

ギャは学校に薬草を治めた時にもらったサイン入りの納品書を持っていた。

何でも、姉貴から持っていた方が良いと渡されていたらしい。


納品書には倉庫係のサインがあり、間違いなく納品それていることが証明できる。


「ちょっと、カイ。倉庫番の人呼んできて」

「ああ」

倉庫番も貴族のはずだが、カイより下のランクの貴族なんだな。


呼ばれてきた倉庫番に。

「何だこの薬草は、きちんと管理しているのか」

せいとリーダーのウルキダに言われ。


「ちっ、使いもせずに何文句言ってんだ。だいたい俺は薬草の管理の仕方なんか知らないからな」

おっ、ランクしたの貴族が子供だと思って強気の発言をしたな。


「だまれ、ブロンズのくせして、子供だと思って舐めるなよ」

ウルキダが怒っている。当たり前だ。


「なっ、此処の薬草じゃあ薬作りは無理だろ、明日俺が薬草を持って来てからだな」

さすがにしなびた薬草を見て生徒たちは納得してくれた。


そして次の日。

「マサル、薬草をわざわざ別の鞄に移し替えるのは何故だ」

「異次元鞄を生徒に見せられないだろ」

異次元鞄に入っている取りたて新鮮な薬草をただの鞄に移し替え学校に向かう。


パカパカ パカパカ


「マサル、ロバは快適だな」

「ああ」

今日の出勤もロバだ。


学校に着き教室に入る。

「全員、作業室へ行くぞ」

全員と言っても五人だが。

ちなみに教室には二十の机が並んでいる。ガラガラだ。


作業室に行くと。

「まず、この薬草の名前は」

ただの鞄彼取り出した薬草を作業テーブルの上に並べる。

当然だが返事は無かった。


仕方ないので下地処理をする。

束ねて逆さに窓際に干したり、アルコールに付けて成分の抽出をやったり、木の実は砕いてさらに『やけん』で磨り潰していく。


「おじさん、下地は良いから薬を作って」

ジュリから要望が出るが。

「薬作りには下地処理も含まれるんだぞ」

と、答えてはみたが。


「良いから早く作りなさい」

上から目線で言われてしまった。


まあ、こんなことあろうかと処理済みの薬草を取り出す。


「持っているじゃな、もったいぶっていたんだ」

うんリンちゃん、下地処理って大切なんだけどな、とは言えず。


処理済みが有り材料がそろったが、一日で出来る薬は限られている。

「それでは、腹痛を止める薬を作るからな」

これなら一日で出来るな。


「何だよ、腹痛の薬って。死にそうなやつに飲ませると助かる薬は作れないのかよ」

ウルキダ君、それってポーションだよ。作れるよ。大聖女より効きの良いのが作れるよ。何なら異次元鞄にしまって有るのを出そうか。などとは思っていないし口にも出さない。


「まあまあウルキダ。取りあえずお手並み拝見と行こうじゃないか」

「そうそうカイの言う通り」

ジュリもカイと同じ意見だ。


俺は持ってきた材料で腹痛を和らげる薬を作り出す。


「マサル、そんないい薬草を使っても良いのか、もったいないぞ」

さすがにギャは、俺が使っている薬草の種類がわかる。


「良いんだ、どうせ俺が取ってきた薬草だからな」

「それはそうだが、その薬草は上級薬草で、売ればひと月は食べられるぞ」


「ああ、だが今回はよほど効き良い薬にしないと判定の薬師がわからないだろ」

「そうだな」

ギャのとの会話を生徒も聞いているが、どの薬草が上級なのかわからず、単なるはったりだと思ったみたいだ。


午前中でだいたい作業を終えるが、昼休みに一旦薬が落ち着かせ、午後から最後の仕上げをして薬が完成する。


「出来たぞ、お前たちの知っている薬師に持って行って判定してもらえ」

こうして生徒に薬を渡し結果を待つことにした。


そして次の日、教室に入ると生徒の他にもう一人いた。


「あのー、関係者以外立ち入り禁止なんですけど」

恐る恐る声をかける、一応受付を通ってきたのだから無関係者じゃないはずだ。


「校長の許可をもらった。それでこの薬を作ったのはお前だな」

「そうですけど」

こいつも見下してくるな。


「儂の前でもう一度作って見せろ」

「すみません、あなたは誰ですか」


「儂を知らんのか、伝説になろうとしている薬師、バイデスだ」

「・・・はい」

うん、知らない。


「マサル、材料は有るのだろ、とりあえず作れ」

ギャに言われなくても作るしかないな。


まずは材料を昨日と同じく作業テーブルに並べる。


「おい、この薬草は何だ、何処で盗んできた」

「言いがかりは辞めてください、俺が自分で取ってきました」


「何処でだ」

「教えません、薬師のルールじゃないですか」

薬師や薬草採取にかかわるものは、薬草の生育している場所を教えることはしない、ましてや聞くことはご法度だ。

俺が薬草分布の地図を冒険者ギルドの渡したのは特例中の特例だ


「・・・そうだったな」

さすがに引いてくれる。

俺が並べた薬草は上級も上級、滅多に取れないものだ。

俺も採取したのは三年前かな、異次元鞄のおかげで新鮮なままだ。


俺はバイデスを無視して薬を作り続ける。


「うーむ」

俺の手際の良さに感心しているな。


「マサル違うぞ、隙あらば薬草を持って帰ろうとしているんだ」

「そうか、ギャ。しっかり見張ってくれ」

これはギャの勘違いだ、マジで感心してくれている。


その日の夕方、出来上がった薬を見つめ少し舐めたバイデスは。


「マサルと言ったな。どこで覚えた」

バイデスに聞かれる。


「ほぼ独学ですが」

姉貴の名前を出せば俺がバルノタイザン家だとバレるから言えない。


バイデスは納得しない顔をしているが、出来上がった薬は最上級の腹痛の薬だ。

胃潰瘍でも治すぞ。


「合格だ、十分教師の実力が有る」

おっ、バイデス、悔しそうだが合格を出してくれた。


今日来たバイデスはウルキダの家が利用する薬師で、他の四人の生徒もそれぞれ付き合いのある薬師に判定を頼んだそうだ。


そして。

「この薬師を紹介してくれ」

と、みんな言ったそうだ。


これで明日から俺のまともな授業が始まった。

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