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85・学校二日目です

「頑張ってね」

「ああ」


俺は王都に有る薬師学校に用務員として雇われ、何故か生徒の授業を受け持つことになった。


「気楽にやりなさい、どうせ学校からお金をもらっていないのだから」

学校からカエデ製薬に要求される寄付(お金)の代わりだからな。


学校初日のことを姉貴に話すと帰ってきた言葉が「頑張ってね」だった。


「マサル、あんな目に会っても学校に行くのか」

朝食の前にギャに言われた。


「そうだ行く。姉貴に頑張れと言われた」

「そうか」


第六区に有るバルノタイザン家の屋敷から、第四区にある学校までは歩くと一時間はかかる。

バフかけして走れば二十分もかからないが、人混みの中を走ると危ないし目立つ。


「ギャ、ロバで行くぞ」

「オー」

ロバなら売るほどある。


ロバに二人乗りは厳しいので二頭のロバで学校に向かった。

第四区にバルノタイザン商会の事務所が有るので、ロバはそこに預けた。


「学校までロバで行かないのか」

「面倒見切れないだろ」

「そうだな」

と言うことで、バルノタイザン商会からは歩いていく。


学校に着くとまずは職員室に行くが誰もいない。

教師がいないからだ。

校長は校長室にいるはずだ。


「マサル、職員室ではなく用務員室を使おう」

「ああ」

俺の荷物はすべて異次元鞄に入れてあるので、どっちでも良いのだが、用務員室の方が狭くて落ち着く。


王都の薬師学校には、教室が二部屋あり、今は一部屋しか使っていないが二年制の学校なので来年からは二部屋使うことになっている。

教室の他に薬作りに使う実習室があり、その隣に道具や器具を仕舞う倉庫が有る。

後は、校長室と職員室、薬草を置く倉庫と受付の建物と、これから俺が使う用務員室だ。

当然トイレも有る。


一度用務員室に寄るが、上着も部屋でなく鞄にしまうので何も置かない。

悪戯されたくないからだ。

ギャの上着も預かり俺の鞄に入れる。

ギャは異次元小袋は持っているが、小袋では上着が入らない。


「ギャ、俺は教室に行くが掃除を頼めるか」

「オー」

此処でギャと別れるが、まあ一人でもギャなら自分の身くらい自分で守れる。


ちなみにシャクヤから無限新陰流を教わっている。

ギャに何を覚えたと効いたら『ローキック』『ジャブ』『正面突き』『いあい』と答える。

『いあい』とは、相手の力を使って投げる技らしい、他にも締め技と裏関節を取る技を覚えたと言っている。

俺も剣を教えているし、一人でも大丈夫だろ。


一応念のため。

「襲われても殺すなよ」

「オー」

注意しておいた。


教室に入ると五人の生徒がすでに席についていた。


「おはよう」

「「「「「おはようございます、用務員のおじさん」」」」」

どうやら先生と呼ぶ気は無いらしい。

せめてお兄さんと呼ばれたかった。


「それでは出席を取る」

これくらいでへこたれる俺ではない。


「ウルキダ」

「・・・」


「カイ」

「・・・」

返事がない。


残りのジュリもリンもミネバも返事をしなかった。

まあ見てわかるので出席にしておこう。

五人とも貴族の子供で家名が有るが、フルネームを呼ぶと長くなるのでやめた。


生徒名簿によると、ウルキダはゴールド爵で残りの四人はシルバー爵の子供だ。

全員が第四区に住んでおり、送り迎えは馬車を使っている。


生徒から完全に無視されているが、そのまま授業に入る。

授業には俺が作った教科書を使う。


学校から渡された教科書も別に悪いものではなく、姉貴が薬師の勉強の時にも使っていた。

当然俺も読んでいる。

俺が作った教科書『優しい薬の作り方』も、それを基にやさしくわかりやすくしたものだ。


俺を無視しているが、教室から出ていくものはいない。

朝も時間通り来ているところを見ると、親からはしっかり勉強して薬師の資格を取るように言われているのがわかる。


まだ二日目だ、気長に行こう。

そして教科書を俺が読むだけの授業が昼まで続いた。


「よし、昼休みだ、お疲れ」

授業を終え、俺は用務員室にいく。

すでにギャが待っていた。


「マサル待っていたぞ、早くお弁当を出せ」

「ああ」

弁当もギャの異次元小袋には入らなかった。


「なあマサル。生徒がマサルを認めるにはどうしたらいいのだ」

ギャは掃除をしながら教室を覗き、俺が生徒から無視されているのを見たらしい。


「そうだな、物語なら校長なり生徒の親が病気や怪我で死にそうになり俺の薬で助かるとかのイベントが有るんだがな」

「無さそうだな」

だが無い方が良い、俺のヒールやポーシャンが知られる方が困る。


その頃、昼休み中の生徒は。


「ねえジュリ、このままじゃあ二年たっても薬師になれないね」

「うん、もう半年たったけど、何にも覚えていないしね」


「リンもジュリもどうする。親は薬師になれると信じているけど」

「ミネバもなの、私のところも」


「学校に言ってちゃんとした教師が来るように親から頼んでもらおうか」

「無理だと思う、なんたって学校の経営はダンブロラ家よ」

ダンブロア家、リン達の評判は悪いらしい。


「うん無理ね」

「ねえ、一度用務員のおじさんに薬を作らせてみない。それを他の薬師に見せて出来具合を判断してもらうの」


「そうね」

リンの話にジュリとミネバは乗ることにした。


こうして俺の汚名挽回のチャンスが与えられたのだった。

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