81・冬の間
俺の髪の色は濃いブラウンだ。
そして瞳の色も濃いブラウンだ。
この世界の人の多くの髪の色はブラウンである。
濃いブラウン、薄いブラウン、暗いブラウン、明るいブラウン、色々あるがブラウンだ。
それ以外に銀色の髪も有る。ギャがそうだ。
属性:炎の髪が赤ぽかったり(ボルドー)、水だと青、風だと緑、土だと黄色っぽい(ダークオーカー)などと言うことは無い。
闇が黒だったり、光が金な事も無い。
俺の髪が濃いブラウンだから、そんなことは決してないからな。
瞳もブラウンが多いが、黒や青の人もいる。たまに金色もいたかな。
これも属性とは全く関係ない。
無いからな、絶対ないからな。
ちなみに、この前来た聖女は金髪に金の瞳だった。
「マサル、また壁に向かって呟いているな」
「ああ、何となく言っておきたかったんだ」
それはともかく、十二月に入り寒くなった。
「マサル、冬だな」
「ああ」
「寒いな」
「ああ」
「薬草採取、嫌だな。全部ガーネさん達に任すのだ」
「ああ」
俺の家でギャと話していると。
「駄目です。マサルさんも薬草採取に行ってください」
俺の家の倉庫がガーネ達の薬草採取の拠点になっている。
朝になればガーネ達がやってくるのだ。
「べ、別に、いかないとは言ってないだろ」
「なら、一緒に行きましょ」
「わかった。だが近場で済ませような」
「・・・ええ」
ガーネ達も行くのは億劫だった。
ギャをロバに乗せ、ノラバは馬のハナコに乗っている。
残りの四人は歩きで行くことにした。
近場と言っても集落から出るだけで三十分以上かかる。
薬草の有る、山や森や草原までは一時間だ。
「マサルさん、あまり採れませんね」
「まあ、冬だからな」
「これでは、カエデさん達の薬作りに支障が出ませんか」
「多分大丈夫だろ」
俺は手に持つ異次元小袋を軽く持ち上げた。
夏に取った薬草もまだ入っている。
「そうですね、その袋に入れておけば、何年たっても取り立てでしたね」
「そう、冬に来る依頼は、予定外の物だろな。姉貴の事だから『採取できないかもしれませんよ』くらいは言っているはずだ」
「マサルおかしいぞ、カエデ製薬は薬にして売っているのだろ。薬草も売っているか」
「そうだったな、気が付かなかった」
「あの、マサルさん」
声をかけたのはフェリンだ。
「多分、王都での薬草採取が上手くいっていないと思います。冬の薬草採取は難しいですし、薬草採取の得意な冒険者は少ないはずです」
「そうだったな、その上薬草採取専門家もいなかったな」
「それもこれもマサルさんのせいですよ。マサルさんが軒並み薬草を取るから、他の冒険者が薬草採取の仕事無くなったんですから」
ガーネだ。前にも同じようなことを言われた。
「それに、マサルさん、冒険者ギルドに薬草のある場所が乗った地図を渡していたでしょ」
「ああ、俺だけ取っていては悪いからな」
「みんなが同じ地図を見て取りに行けばどうなるかくらいは考えて欲しかったですね」
「そのくらいわかっている。あれは俺の知っている十分の一も書いてない」
「そうなのかマサル。ずるいぞ」
「ギャ、ずるくない、あれは薬草が絶滅しないためだ、それに半年ごとにちゃんと書き換えていた」
「マサルさん、今はやっていないでしょ」
「ああ、サメル村にいるからな。調べなければ更新できない」
「こうやって、冬でも採取に出かけるのは、そのつけが回ってきたからですね」
「なんだ、地図を更新しな俺のせいにするな、王都にいる冒険者が頑張ればいい話だぞ」
「マサル、落ち着け。マサルのレベルが段ちに高いからだ。頑張っても追いつけない」
そうかもしれないが、うーん、納得いかない。
「まあまあ、取りあえず取れるだけ取りましょ」
馬の上のノラバから言われてしまった。
そうはいっても、冬の間の依頼は少なくくなる。
月に数回、村より暖かいズンダダ森に行けば、姉貴の依頼はこなすことが出来た。
なので空いた日が出来る。
「さあ、ギャ。訓練よ」
今日のギャは、一日シャクヤに無限新陰流を教わるようだ。
俺はフェリンに『ヒール』を教える。
医学書を見せて、体の構造や仕組み役割を教える。
何故病気になるのか、どうしたら治るのか。
傷と手当のやり方も教える。
これは薬作りにも必要なことだ。
ノラバはハナコに乗って走っている。
馬は走らないと生きていけないからな。
そしてガーネは。
「マサル、宿の現場に行ってくる」
村人と一緒になって宿作りを手伝うようだ。
ちなみにガーネの髪の色は決して赤っぽくないからな
ノラバは青っぽかったりしないからな。
フェリンが薄くて明るいブラウンで、日の加減できらきら光って金色っぽく見えたりしないからな。
シャクヤの属性は知らないが、緑色っぽく見えるのは気のせいだろ。
こうして冬の間を暮らしていく
そして冬は十二月から二月までであり、二月も終わりになると、春の兆しが見えてくる。
冷え込みが緩くなった朝。
「マサル様、カエデ様から王都に帰ってくるよう手紙が来ています」
ザエルが社内便の手紙を持ってきた。
「わかった。宿のオープンが終わったら帰ると伝えてくれ」
宿はもともと村長の娘のロマンヌさんに頼むつもりだった。
お金はザエルさん達カエデ製薬で見てもらい、いずれはロマンヌさんい引き渡す。
多分秋には、村営の宿になっているだろう。
そして三月。
「ギャ、さあ出発だ」
「いま日が昇る。希望の星両手に掴み」
前にも聞いたな。
こうして俺はロバにギャを乗せ村を出る。
「マサル、なぜ荷馬車で帰らない。まだ寒いぞ」
荷馬車でも幌はついて中は温かい。
「・・・そ、そうだったな」
来る時、歩いてきたから帰りも歩くものだと思い込んでいた。
サメル村を出て六日目。
俺とギャは王都の第八環状塀の門に着いた。




