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80・ラバルさんが来ました

今日の薬草採取はガーネ達なので、俺は丘の上の屋敷にあるカエデ製薬に出勤するところだった。


「おはようございます」

出勤前に俺の家に誰か来た。


「マサル、客だぞ」

「ああ、約束は無いはずだが」

玄関の扉を開けると。


「朝早くすいません」

ラバル商事のラバルさんが立っていた。


ラバル商事とは。

サメル村の山の向こうにはズンダダ森が有る。

森は魔獣率が高い。

そこで、魔獣牛を扱うスターマイラル家のボイルさんがズンダダ森で魔獣牛を狩ることにした。


しかし、バルノタイザン家が管理する森でスターマイラル家が魔獣狩りをすれば『何か有る』と思われてしまう。


それを回避するために、バルノタイザン家でカエデ製薬を作り、カエデ製薬の依頼でラルバ商事がズンダダ森で薬草採取をする契約をしている。


表向きはだ。


実際はラバル商事はボイルさんに雇われ、ズンダダ森で魔獣牛を探し狩るための会社だ。

そして、薬草採取は俺とガーネ達がやっている。


「おはようございます、ラバルさん。寒いので家の中に入ってください」

「ああ、お邪魔するね」


朝食の片付けの終わったテーブルについてもらう。


「マサルさん、ちょっと相談とお願いが有りまして」

「それって、魔獣牛の事ですか」


「ええ、ボイルさんに頼まれた魔獣牛を集めないといけないのですが、属性:闇の人間も来ていません。せっかく森に小屋と地図が出来たのに、これからどうしたらいいのか悩んでいるのです」

まずこれが相談だな。


「それを、俺に言われても、何も返事は出来ない」

「マサルさんも魔獣牛の調査をしていますよね」


「マサル、やはりバレているぞ」

「ギャ、黙っていてくれ。それじゃあやっていると認めたことになってしまう」

まあ、ラバル商会の草原の小屋を借りた段階でバレているとは思っていた。


「ズンダダ森の魔獣牛がいる場所が書いてある地図は見せてもらえませんか」

お願いだな。お願いがこれ一つなら良いのだが。


「見せるだけならいいが、預けることは出来ない、あれには元手がかかっているからな」

コピーされたくないからな。


俺は森の地図をテーブルに広げる。

まずは俺の作った地図が正確なことに驚いてくれた。


そしてラルバは持ってきたノートにメモをしていく。

それくらいは認めてやろう。


「マサルさんは、これだけ調べてどうするつもりなんでしょうか」

「俺たちは、牛を殺したくない。だから狩りもやらない。牛は俺たちが殺すとわかれば森の奥に逃げていく、あれ以上奥に行かれたら、狩りに行くために、またいくつもの拠点となる小屋を作ることになる。だから何もしない予定だ」


「・・・そうですか」

ラルバは俺に頼み、サメル村の狩人かガーネさん達を使い、魔獣牛狩りをやって欲しいみたいだ。


「マサル、あの計画は言っては駄目だぞ」

「っ・・・、だからギャ、黙っていてくれ」


「何ですか計画って」

「・・・しょうがないな。草原に牧場とはいかないが、いくつかの牛の集団を集めようかと思っているんだ。その中で寿命で死んだ牛に魔獣牛がいれば回収しようかと思っていたんだ」


「集まっているのですか」

「少しずつだがな」

ノラバが馬のハナコに乗って草原を回り、牛の集団を見つけてもらっている。


この集団を牛を襲う獣から守り、餌になる草の手入をして、草原の小屋の周りに集まるようにする予定だ。

これはズンダダ森の狩人たちにも協力してもらう。


「わかりました。その計画ボイルさんに話しておきます」

そう言ってラルバさんは家を出て行った。


「大丈夫なのかマサル」

「・・・ああ。ラルバさんにも説明したが、狩りを始めれば牛は森の奥に逃げる。そのくらいボイルさんも気づく、ならば草原の森の近くに牧場を作るはずだ」

野生の牛を家畜化したり、飼育や繁殖はボイルさんのスターマイラル家がノウハウを持っている。

頑張って牧場を作ってもらおう。


そして、ボイルさんがサメル村に移してきた牛が子牛を生んでいる。


「マサルさん、魔獣だな」

ダンさんが確認してくれた。

やはり、サメル村で生まれると魔獣の確率が高いようだ。


サメル村でさえ魔獣率が高い、ズンダダ森の草原に牧場を作れば、多くの魔獣牛が育つはずだ」


ラルバさんが帰ったので、俺とギャは丘の上の屋敷に有るカエデ製薬へ向かった。


「おはようございます」

「遅かったですねマサル様」


「ああ、朝早くお客が来たからな」

「そうですか、ラルバさんですね」


「ああ、わかるか」

「他に心当たりが有りませんから」

なるほど。


カエデ製薬に入りザエルさんとの挨拶が終われば、俺の事務机に着く。

『社長』の札が立った机だ。


「はい社長、サイン必要な書類です。きちんと目を通してサインしてください」

「ああ、わかっている」

最近、荷馬車に書類が乗せられてくる。

ほとんどの書類の処理は姉貴がやっているが、どうしても社長のサインが必要な書類が回ってくるのだ。


「おーいギャ、王都のカエデ製薬でギャの同じくらいの歳の女の子がバイトで入ったぞ」

「オー、そうか。今度会いたいものだな」

バイトの採用くらい俺のサインはいらないが、ちょっと規格外で採用したので報告したようだ。


王都でギャの友達になってくれると嬉しい。

同じくらいの歳の子の友達がいないギャの為に、薬屋にカル、食堂にサイラを雇った。

無事仲良くなってくれた。


その後も屋敷に掃除に来てくれる子供達や、ムンさんが教える学習塾に来た子供たちとも仲良くなった。

仲良くなったのは見てわかるが、親友と呼べる友達が出来たかは、わからなかった。


他の書類と共に、姉貴からの薬草依頼の一覧表を見る。


「ザエルさん、冬も近いのに、依頼の薬草の量、多くないか」

「ええ、冬でも病人や怪我人は減りませんから。かえって風邪をひく人が多くなります」

たしかに。


「それにマサル様」

レダンさんだ。


「なんだ」

「カエデ製薬の薬が人気なんです。特に安く売ってはいないのですが、効きが良いと評判なんです」

新鮮な薬草に上級薬草も惜しみなく使い、腕の良い薬師が作るのだから当たり前だ。


「その上、王都以外からの注文が入るそうです」

「ザエルさん、それは無理だろ」


「ええ、断っているそうです」

「まさか、上級貴族や王族から注文は来ていないよな」


「今のところ、そのあたりのお客は、上級薬屋が対応します」

「マサル、上級とは何だ」

「かっこつける為のものだな。店の建物と薬を入れるビンは立派だぞ」


なるほど、ダンブロラ家が学校と薬師の資格を作り、薬師組合と薬屋組合を作るのは上級薬屋を差別化するためもあるのか。

薬師だけでなく、店にもランクを付けて、高い薬を売るんだろうな。


「マサル、なにか顔がにやけているぞ」

「ああ、ダンブロラ家の計画が姉貴によってボロボロになるのを想ったからな」

多分、姉貴の計画は始まっているはずだ。

誤字報告ありがとうございます。訂正しました。

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