78・ジルちゃんカエデ製薬に雇われる
「ふー、買いましたね」
「ええ」
「お金、足りたね」
「ううん、もっと買いたかった」
ガーネ達四人の王都での買い物は終わった。
「ジルちゃん、五日間ありがとうね、お姉さんたち明日の朝に王都を出るの」
「うん、お世話になりました。お姉さんたちからもらった薬のおかげでお母さんも元気になって、ありがとうございます」
「じゃあ、これ依頼達成の書類」
「うん・・・」
「ねえガーネ。ジルちゃん明日から仕事無いんじゃなのかな」
「そうか、冒険者登録した次の日から私たちの依頼をやっていたわね。ジルちゃんは明日からどうするの」
「ギルドの前で、依頼してくれる人を待ってみます」
「依頼の張ってあるボードを見ないの」
ガーネの問いに。
「ごめんなさい、読めないの」
「・・・まずいな」
これでは依頼を受けることが出来ない。
「どうするのガーネ」
「とは言っても、私たちに出来る事って・・・、無い・・・な」
「フェリン、ガーネ。取りあえずカエデさんに相談してみない」
ノラバが提案する。
「ジルちゃん、初めての日に行ったカエデ製薬って覚えている」
「うん」
「そこにいたお姉さんも覚えているかな」
「とっても奇麗なお姉さんですよね」
「そう、じゃあまず、ギルドに行って依頼達成の書類を出してお金を貰いましょ、そうしたらみんなでカエデ製薬に行ってみようね」
「うん」
ガーネ達とジルはギルドの手続きを終えるとカエデ製薬に向かった。
「こんにちは」
「あらガーネさん、明日帰るのでしょ。何か忘れものでもあったかしら」
「いえ、忘れ物は無いのですが、ジルちゃんが」
「こんにちは、カエデ様、あの・・・」
「なあに」
「お金稼ぐにはどうしたらいいんですか、他の人に聞いたら冒険者ギルドに行けば仕事が有るって言われたんですが、依頼書も読めないし、明日から・・・、困って・・・」
「そうなの」
「カエデさんの所で何とかなりませんか」
ガーネは姉貴の顔を見る。
ガーネの後ろからもフェリン、シャクヤ、ノラバが姉貴を見つめた。
「そんなに真剣に見つめないでよ。ねえガーネ、あなたから見てジルちゃんはどうなの」
「しっかりしています」
「そうよジルちゃんは、まじめに仕事してくれました」
「そうそう、一生懸命だったよね」
「頑張り屋さんだ」
四人がジルをほめる。
「そうね、ねえジルちゃん、何でもやれるかな」
「うん、何でもする」
「わかったわ、でもジルちゃんってまだ八歳だったわよね。社員で雇うのは無理だから当分はバイトね」
「うん」
「それと、読み書きと計算も教えるけど、この時間は時給に入れられないけどいいかな」
「・・・うん」
「それと給料の一割が税金で取られるけど、知ってる」
「そうなんだ」
「そっか、ジルちゃん書類読めないから、冒険者ギルドも冒険者への支払いは税金を引いた金額なんだよ」
ノラバの説明だった。
「じゃあ、明日から来てくれるかな。週六日で八時から十七時まで、昼休みは一時間、これは交代で取るの。そうね、夕方一時間は勉強の時間にするから、時給千三百円で七時間、税を引いて一日八千百九十円ね。昼は隣の大衆食堂サクラで食べればただよ」
「うん」
「なあシャクヤ、バイトだよな」
「ノラバも、そう思うか」
「条件良すぎないか」
「何か裏が有るのでは」
「こら、そこ何こそこそ言っているの。あなた達がしっかりしているって言うから、いい条件にしたんでしょ。まあ、うちももう少し社員が欲しい所だったし、丁度良かったの」
実際、社員を増やしたくても増やすのは難しい状態だった。
製薬会社にしたときに何人か雇ったが、申し込んできた人の中にはおかしな人が沢山紛れていた。
カエデ製薬の情報を盗もうする人の事だ。
一から教えるのは大変だが、ジルならその心配も無かった。
こうしてジルはカエデ製薬のバイトとして雇われた。
次の朝ガーネ達はサメル村に向かう荷馬車に乗り込む。
「ノラバ、寒くないか」
ハナコに乗るノラバにガーネが声をかける。
「大丈夫よ、しっかり着込んだから」
「じゃあ、行きますよ」
御者が手綱をパッシと振ると荷馬車が動き出す。
「いってらっしゃいーー」
カエデ製薬の前でジルが小さな手を振っていた。




