77・王都に帰ったガーネ達
「久しぶりの王都だな」
「ええ」
「ガーネ、フェリン。王都についたのは良いが、まずは宿探しだな」
「そうね、ノラバが言う通り宿を探しましょ」
「以前泊まっていた宿が空いていると良いんだが」
「そうね、ガーネはあの宿、気に行っていたものね」
「みんなもそうだっただろ」
「ええ」
シャクヤだけが答える。
「ねえ、ガーネ。私達って今はカエデ製薬の社員でしょ」
「そうだが」
「これ、貰ったよね」
「ああ」
フェリンはガーネに一枚のカードを見せる。
「フェリン、みんな貰ったけど、このカードは何なんだ」
シャクヤもよくわかっていない。
「これって、バルノタイザン家が私たちの身分を保証しているってカードだよね」
「そう、ノラバの言う通り」
「だから、どうなんだ」
「今までは冒険者カードしか身分証明がなかったでしょ。そうすると泊まれる宿も限られていたのね」
「ああ」
「このカードが有ると、もっといい宿に泊まれるの」
「そう言う事」
ノラバは没落した元貴族の生まれだけあってカードの意味を理解していた。
「有りがたい身分証明書なんだな」
ガーネは改めてカードを眺めた。
カードは社員証明書ではなく、バルノタイザン家が発行したものだ。
バルノタイザン商会やカエデ製薬の社員証では、会社の存在を知らない人にとっては身分証明の証拠にはならない。
しかし、貴族が発行する身分証明カードは、カード所有者を発行した貴族が責任を持つ。
四人のカードはバルノタイザン家が認めた人に与えたカードだった。
カードにはバルノタイザン家の家紋が打ち込まれており、カードを不正に利用すれば、最悪首ちょんぱだ。
「それでは、懐も温かいことだし、いっちょ奮発して良い宿に泊まるとするか」
良い宿を目指して、第五環状塀の門をくぐる。
貴族発行の身分証明カードの威力で、門をくぐることが出来た。
こうしてガーネ達は、冒険者の時に拠点にしていた宿より、贅沢な宿の戸を開けたが。
「何で駄目なんだ」
門前払いを食らった、ガーネ達四人。
「やはり、冒険者の恰好であの宿は無理だと思ったんだ」
「ノラバ、そう言うことは入る前に言ってくれ」
「そうよ、あんなに早く『此処はお前らがと前るような宿じゃないぞ』って言われたら、カードを見せる事も出来ないじゃいない」
「きっと、私たちが着替えていけば、『へっ へへーい』って頭を下げるんでしょうね」
王都は特に見た目に厳しかった。
仕方なく、以前から拠点にしていた宿に向かう。
宿は『喜音家』と言って、長期滞在が出来るので冒険者の間では人気の宿だった。
当然、宿が有るのは第八環状塀と第七環状塀の間だ。
「いらっしゃいませ。あら、久しぶりね」
「ああ。それで四人で六泊したいんだが空いているかな」
「そーね、うん、大丈夫みたい。二階の奥の角部屋、四人一緒で良かったわよね」
「はい」
以前と同じ顔なじみの宿の女将が出て来て、部屋の鍵を貰うことが出来た。
「それじゃあ、荷物を置いて食事にでも出かけるか」
「そうね、って。ねえガーネ、私達ってガーネが肩に掛けている鞄ひとつしか荷物が無いのよね」
「ははははは、そうだったな。村に二つしかないロバの革の鞄を貸してもらっていたんだな」
ロバ革の鞄、当然異次元鞄の事だ。
ロバ革の異次元鞄は現在この世に三つしかない。
一つはカエデ製薬の荷馬車に積まれ、薬草と食材を運んでいる。
残りの二つはサメル村の狩人がズンダダ森に行くときに使っていた。
その一つを借りてきたのだ。
「荷物は無いが、まあ部屋の確認だけするぞ」
ガーネ達は部屋を確認すると、食事に出かける。
喜音家には長く泊まっていたので周辺の食事処もよく知っている。
チャチャっと食事を済ませ、宿で風呂に入りその日は寝ることになった。
翌朝。
「まずは、冒険者ギルドに顔を出して、カエデ製薬の社員になって事の報告だな」
「ねえガーネ。そうすると冒険者登録を返すことになるの」
「そうか、フェリンは知らなかったな。別に返す必要はない。冒険者ギルドはどんな国や貴族や会社より古くからある組織だ。自分が一番だと思っているから、そんなせこいことは言ってこないんだ」
「その割には力が無いですけどね」
それは仕方がないことだった。
国や貴族がいない時代に、冒険者が獣や盗賊などの悪人から守ってくれる存在だった。
しかし今は、国に騎士もいるし警備隊もいる。大手会社なら護衛を社員として雇っている。
冒険者ギルドは、子供と何処にも就職できない人が行きつくところだった。
「「「「おはようございます」」」」
ガーネ達四人は王都の冒険者ギルに入って行った。
「久しぶりね。確か一年契約でカエデ製薬の依頼を受けていたはずでしょ」
カウンターに立っている受付の女性が迎えてくれる。
「はい、でも今はカエデ製薬の社員になりました。そのことの報告もかねて王都に来たんです」
冒険者は依頼を受けたら終了後にギルドに報告する義務がある。
今回、俺の方の都合で依頼が中断されたので、ガーネ達の依頼失敗ではないなど、ガーネは受付の女性に説明した、
「そうなんですか、それで冒険者登録はそのまま続けるのですか」
「はい」
「そうですか、また何かありましたらよろしくお願いします。それで報告もかねてと言うことは、王都で何かやることが有って来たのですね」
「ええ、と言っても買い物ですけどね、サメル村は王都より寒いので冬物の服の買い物です」
ガーネ達はギルドへの報告を終えると買い物の為、商店街に向かうことにする。
「ねえ、お姉さんたち、馬を連れて町の中を行くの」
ハナコの手綱を引くノラバに、小さな女の子が声をかけてきた。
「ええ、そうだけど」
「馬の糞の処理、どうするの」
「・・・えっと」
「じゃあ、私がやってあげる。だからギルドに依頼して」
「お嬢ちゃん、冒険者なの」
「うん、昨日登録したの。でも、何をしたらいいかわからないから、ギルドの前に座っていたの」
「それで、私たちの馬を見つけたのね」
「うん」
「ねーえガーネ。依頼を出して、この子雇いましょ」
「うーん、そうだな、ちょっと待ってくれ」
「何か、問題であるの」
「ちょっと、お金の計算を・・・」
「大丈夫でしょガーネ。一年契約の依頼、途中で終わったけど、前払いの一年分を返さないで良いって言われて持ったままじゃない。それに給料も月二回払い、ズンダダ森に行けば出張手当付き、お金あるでしょ」
「詳しい説明ありがとうフェリン。そうだな、大丈夫だな。お嬢ちゃん、じゃあ私たちが王都にいる五日間一緒に付いてきてくれるかな」
「うん、私の名前はジル、よろしく」
「「「「よろしくね」」」」」
こうしてガーネ達四人とハナコ、そしてハナコの糞担当のジルで街に出ていく。
「まずは、服ね。昨日の宿みたいに門前払いにはなりたくないもの」
「そうね。でも、第六環状塀までにしない、それ以上は貴族やお金持ちが多くて気疲れするわ」
「ガーネ。ノラバの言う通りだ。私も貴族の多くいる地区には行きたくない」
「うん、うん」
シャクヤの言葉にフェリンもうなずく。
やっと話がまとまる頃にはお昼になっている。
「買物の前に、まず食事だな」
ガーネ達は大衆食堂サクラを目指すのだった。
誤字報告ありがとうございます。訂正しました。




