73・薬師と学校
「マサル、薬師の学校では資格を取れるのか」
「取らすだろうな」
「マサルは持っているのか」
「俺は持っていない」
「もぐりだな」
「そうだが、薬師には国家資格なんか無かったぞ、どこかの薬師に教わり認められれば店を出せるんだ、後は実績と評判だな。まあそこら辺はっきりしていなかったから、学校を作り国家資格を作るんじゃないのか」
姉貴は十五歳の時に薬師に弟子入りして薬作りを覚えた。
師匠から薬師と認められ店を持つことを許されたのだ。
俺は姉貴の勉強するのを盗み見し薬作りを覚えたので、誰からも許可されていない。
しいて言えば姉貴が師匠だ。
「ギャ、サメル村に帰るのは次の荷馬車にするぞ」
「一週間、王都にいるのだな」
「ああ、ちょっと調べたいことが出来た」
「学校のことだな」
ギャは勘のいい子だ。
調べると言っても俺が出来ることは少ない。
実際二日も調べれば終わるだろう。
残りの五日はギャと王都観光でもするか。
「まずは、学校を見に行くぞ」
「オー」
学校は王都に有る。それも第四環状塀の内側だ。
ゴールド爵の時の屋敷は第四環状塀の内側に有ったので塀に有る検問所はフリーパスだった。
今はシルバー爵になり、第五環状塀と第六環状塀の間に住んでいる。
「マサル、第五環状塀の内側に入ったことはあるのか」
「ああ、有るぞ。確か三つの時親父に連れられて入っているはずだ」
「覚えているのか」
「・・・ない」
「シルバー爵の証明書で第四環状塀の検問所を通れるのか」
「たぶん、それに学校から注文書を見せれば通れるはずだ」
「そうか、良かったな」
そして検問所、まずは俺の身分証明書を見せる。
「うん、バルノタイザン家・・・『貧乏き・・・』いや、通っていいぞ」
「マサル、シルバー爵でも通れるのだな」
「そうみたいだな。すいません、シルバー爵は何処までは入れますか」
「そんなことも知らないのか、まあ『貧乏き・・・』じゃあな。シルバー爵だと此処までだ」
うーん、門番って貴族に対しても横柄なんだ。
「・・・マサル。何故貴族の服を着ていない。冒険者の恰好だから舐められたぞ」
ギャに指摘された。
第四環状塀の門を通り学校へ着くと受付へ行く。
「すいません、カエデ製薬ですが、頼まれた薬草持ってきました」
「ああ、すまんがいつも通り倉庫へもって言ってくれないか」
「あのー、俺、初めて頼まれて来たので、倉庫の場所を教えてくれますか」
「ちっ、面倒だなやつだな。ほら、あそこの赤い屋根の倉庫だ」
「はい、わかりました」
俺とギャは倉庫に向かう。
「此処の受付も横柄だな。何かマサルは舐められる気配を出しているのではないか」
「否定はしない、だが、門番も此処の受付も多分貴族か騎士の家の者だろうな。長男でないと家を継げないから、次男以下は働きに出るんだ」
貴族と言うだけで威張るやつが多くて困る。
「やはり、貴族の服を着て来るべきだな」
「薬草の配達が、貴族なのも変だろ」
「それもそうだな」
「それにマサル。寄付の薬草なのに何故注文書が有る」
「姉貴が言うにはノルマだそうだ」
「学校は強気だな」
「ああ、今度薬師の国家資格を作るが、今薬師をやっていれば申請だけで資格を与えてやるって、今後は学校を出るか試験を受けないと資格がもらえないそうだ」
「それも、マサルがいつも言う権利でお金を儲けると言うやつか」
「そうだ、申請でお金を取り試験でお金を取る。たぶん、学校の卒業生が出るまでに組合を作り、組合費を集め、払わないと資格を剝奪するんだろうな」
「そんなこと認められるのか」
「資格は有りだ。組合を作り組合費を取るのも有りだが、資格剥奪はやりすぎだな」
「そうか、それより倉庫に着いたが、あの辺りの棚に置いておけばよいのか」
「うーんと、倉庫番はいないのかな、おーい誰かいますか」
「マサル、あっちの奥に誰かいるぞ」
倉庫の日当たりの良い場所の椅子に誰かいる。
うたた寝しているみたいだな。
「すいませーん」
「・・・うーん、なんだ」
「薬草持ってきました」
「ああ、じゃあ受け取るよ、出してくれ」
「わかりました、ギャ、鞄から出して渡してくれ」
「オー」
ギャの鞄は異次元鞄ではなく、普通の鞄だ。
「おー、カエデ製薬の薬草はいつも新鮮だな。それに、こっちは下処理済みだな。助かるよ処理していないとすぐに駄目になってしまうからな」
「はい、でも異次元鞄か冷蔵庫が有れば保存が出来るはずですが」
「馬鹿いえ、異次元鞄なんて手に入るわけ無いだろ。冷蔵庫も高くて学校の予算ではとても買えないんだ」
「そうですか、では出来るだけ早く薬にしないといけませんね」
「・・・そうだな」
なんか歯切れが悪いが、置くものを置いて俺とギャは倉庫を後にする。
「マサル、まっすぐ帰るのか」
「いや、ちょっと教室をのぞいてみる」
「そうか」
倉庫番も受付も部屋の奥に入ってしまった、これなら覗き見出来そうだ。
学校と言う割に教室が一部屋しかなく、先生らしき人が一人と生徒が五人だ。
「マサル、薬草をねちゃねちゃこねくり回しているぞ。あれで薬になるのか」
「無理だな。まあ予想はしていたが、資格で金儲けするために作った、張りぼての学校だ。帰って姉貴に報告だな」
こんな授業の為に、あれだけの薬草を寄付させているのか。
それこそどこかに横流ししていそうだ。
学校を出るとき門を見ると『マルマ王国 薬師学校』の看板の端に『ダンブロラ家』と書かれている。
ゴールド爵の貴族だな。
せっかく第四環状塀の内側に入ったのだ。
「よーしギャ、確か第四環状塀の内側には高級甘味処が有るはずだ、美味いケーキでも食べていくぞ」
「オー」
お店はすぐに見つかったが。
「マサル、やはり服装は大事だな」
「ああ」
高級甘味処へは、入ることすらできなかった。




