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71・ズンダダ森の草原

この世界、空気だろうが水だろうが全てに魔力が含まれている。

当然、息をして水を飲む動物にも魔力は含まれている。


では、魔獣とは。

魔獣は体中の細胞の奥深く迄魔力が染み込んでいるのだ。


魔力とはエネルギーの一つだと思う。

そのエネルギーが細胞の奥深くまでしみ込こみ、生体エネルギーと一緒になっているのが魔獣の特徴だ。

怪我の治りが早く、タフなのはその為だ。


ちなみに薬草は魔植物であり、魔獣と同じく細胞の奥深くまで魔力が染み込んでいる。


人間には細胞の奥深くまで魔力が染み込んでいる者はいない。

いたら魔人とか魔人間とか言われてしまう。


ただし、バフかけやヒールは、光の魔力操作で細胞の奥深くまで魔力を染み込ませ、身体能力を上げたりケガや病気を直すもので、一時的に魔人にしていることになるな。


「マサル。また壁に向かってしゃべっているな」

「ああ、物語の中で説明するのが面倒だから、壁に向かって説明してみた」


「やはり、マサルには壁の向こうに人がいるのがわかるのだな」

「ギャ、俺だって壁の向こうに人がいるとは思っていないぞ」

何故か時たま俺は壁に向かってしゃべりたくなるのだ。


「マサルさん、ギャちゃん、どうでもいいけど朝の食事にしましょ」

「オー、そうだなフェリンさん」


ズンダダの森に来て二日目の朝、森の入り口から南に半日歩いた所に建てられた『草原の小屋』で朝食を取っている。


「マサルさん、今日は何をするんだ」

ガーネ達四人はカエデ製薬の社員になってもらったが、冒険者パーティーの時と同じくガーネがリーダーをしている。


「予定では四~五日この小屋にいる予定だが、周辺を調査して地図を作る」

「マサルあれだな、今回も地図を作りながら薬草の分布図も作るのだな」


「そうだギャ、だが今回は薬草より牛を重視する」

「牛の分布図を作るのだな」


「それでは牛を見つけても狩ることはしないのですね」

「そうだ、狩らずにノラバさんにハナコのように手懐けられ無いか試してみたい」


「どうやってですか」

「ノラバさん、ハナコに乗って走ることは出来るだろ」


「ええ、充分に回復しています。私くらいの体重なら全力で走れると思います」

「ならば、牛を見つけたら、ノラバさんはハナコに乗って牛の近くに行ってもらいたい。そしておとなしくラバさんを受け入れてくれれば良し、襲ってきたらハナコで全力で逃げて欲しい」


「ギャ達は遠くで見ているのだな」

「そうだ、警戒心を解いてくれるのはノラバさんだけだからな」


こうして俺たち六人の草原調査が始まった。


「何だマサル。薬草さえ見つからないぞ」

調査開始一日目のギャの感想である。


「マサルさん、遠くに牛を見つけることは出来るのですが、近寄れませんね」

二日目ガーネが言ってくる


「マサルさん、牛たちは人の気配に気づいていて、離れているのだはありませんか」

三日目フェリンに言われた。

「そうか、そうすると明日は、ノラバさんはハナコに乗って別行動をとってもらえますか。危ないと思ったら、すぐに逃げてくると言うことで」

「わかりました。やってみます」


そして四日目。

ハナコに乗ったノラバさんは牛たちとの接触に成功した。


「マサルさん、牛ってかわいいですね」

牛たちに認められたノラバさんが帰って来ての一言だ。


「なあマサル。ノラバさんだけ牛と仲良くなってが、次はどうするのだ。他の人が行ったら逃げてしまうのでうないか。ましてや、魔獣牛を見つけて鞄にするのがわかったら二度とノラバさんの近くに来なくなるだろ」

「それは次に来る時にまで考える。取りあえずもう一日ノラバさんにはハナコで草原を駆け回ってもらう」


次の日もノラバさんは別の牛の集団と仲良くなって帰ってきた。

これで、今回ズンダダ森に来た目的は果たす事が出来た。


ズンダダ森の草原の小屋での調査を終わらせ俺たちはサメル村に帰ることにした。

まずは森の入り口の森小屋まで帰り、隣に有るラルバ商事ズンダダ森本部に報告する。

当然だが、ノラバさんが牛たちと仲良くなったことは内緒だ。

ギャの測量の力で作った地図も牛の分布図も教えてあげない。

ざっくり牛がこんな感じていましたと伝えただけだ。


それでも。

「そんなにいるのですね。これならボイル様への報告ができます」

ラルバ商事ではまだ地図が出来たところで調査はこれからだ。

そしてその地図もギャの地図より大雑把なはずだ。


「マサル、なぜ牛がいたことを教えたのだ」

「そりゃ、まったくいなかったらボイルさんは引き上げるだろ。その時、今までかかった経費を俺に請求しそうだからだ」


「あれか、作った小屋をそのまま置いといて、作ったから払えと言う。送り付け商法みたいだな」

「そんな悪徳商法とは違うが、とにかく牛がいればボイルさんの計画は終わらないだろ」

「ああそうだな」

此処まで来たらボイルさんに計画を進めてもらわないと困ってしまう。

何といっても、マルマ王国では他国より注文を受けた異次元鞄を作らないと国際問題になってしまう。


俺も貴族だ、異次元鞄作りに協力する義務と責任は十分に理解している。


ズンダダ森からサメル村への帰り道、草原の調査をしながらでも多少の薬草は採取した。

草原の小屋で使った寝具や調理器具、採取した薬草は俺の異次元鞄い納めている。


「マサル、今の状態はまるで朝の散歩だな」

「そうだな」

「そうねギャちゃん、荷物は全部マサルさんが持って、私たちは手ぶらで歩いていますからね」


「いや、私は手綱を持っているけど」

「ノラバ、それは馬と一緒に散歩すればそうなるだろ」

ノラバの意見はシャクヤに返された。


帰りの急坂もハナコは難無く登り切った。

「ハナコ、偉いわね」

ノラバさんに褒められハナコも嬉しそうにしている。


「なあマサル。異次元鞄の為だけに魔獣を殺すのはやめたいな」

「俺もそう考えている」

ボイルさんには悪いが、ズンダダ森の魔獣を異次元鞄の為だけに狩るのは辞めさせたかった。

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