70・牛探しにズンダダ森の森に行きます
俺とギャとノラバさんで北の山に調査に行き、馬を連れて帰って来てから一週間がたった。
「マサル、馬のハナコは元気になったな」
「ああ、毎朝晩に俺がヒールをかけたからな。それよりハナコってなんだ」
「お馬さんの名前だ。名前が無いと不便だろ」
「そうだが、あの馬はギャでなくノラバさんに懐いていただろ。勝手に名前を付けていいのか」
「大丈夫だ、ノラバさんと一緒に考えた」
「そうか」
山から連れてきた馬は、魔獣馬だった。
山で初めて会ったときは大きく感じたが、王都から荷馬車を引いてきた馬に比べると一回り小さい。
「マサル様、この馬は、そうですね生後八か月くらいのメスですね」
荷馬車に乗ってきた御者なら馬に詳しそうなので、聞いたら答えてくれた。
俺は、群れからはぐれパニックになり、岩につまずいて足を折ったと想像している。
折れた足をヒールで治したことは、ギャとノラバ以外は知らない。
他の人には、普通の怪我をして倒れていたと説明してある。
骨折を直すほどのヒールの力は、村長にさえ詳しく教えていないからだ。
俺とギャが朝食を終えた頃、ガーネ達四人が丘の上の屋敷からやってくる。
「「「「おはようございます」」」」」
「ああ、おはよう」
「おはははございます」
相変わらずギャは挨拶は面白い。
ガーネ達四人は今日も馬を連れて来ている。
「なあ、ノラバさん、ギャが勝手にハナコって名前を付けたみたいだが良かったのか」
「ええ、ハナコも喜んでいるみたいですよ」
そうか、馬も気に入ったのか。
ヒヒヒヒーン ヒヒン ヒッヒヒーン
ノラバの脇でハナコは元気そうだ。
もうヒールをする必要も無いな。
「じゃあ、今日もハナコを連れて薬草採取に出かけるか」
「オー、じゃない。マサル、いい加減取りすぎではないか」
「いや、ズンダダ森に牛の調査に一週間行く予定だろ。その分を先に取っておきたいんだ」
「そうか、では出発するぞ」
今日は、村から北西にある山のふもとで薬草採取だ。
ギャをロバの背に乗せ、ノラバさんはハナコの手綱を引いている。
「ノラバさん、ズンダダ森にハナコを連れていけそうかな」
ズンダダ森に行くにあたり、ハナコをどうするか決めかねていた。
「怪我は治ってます。体調も良くなりましたが、森へは人が歩いてしか行ってませんよね」
「ああ、そうなんだが。もしかすると魔獣馬のハナコならあの坂を降りられるかもと思ったんだ」
「マサル、ギャは出来ると思うぞ。あの時ハナコは山から下りてきたはずだからな」
「そうですね、取りあえず連れて行って、ハナコに聞いてみます」
「聞けるのか」
「・・・たぶん」
まあ行って駄目なら、峠の小屋でロバと一緒に預かってもらおう。
薬草採取も順調に進み。
「マサルさん、今日はこれくらいで十分だと思います」
ガーネさんが姉貴が送って来る薬草の依頼書を見ながら言ってきた。
「そうだな、そろそろ帰るか」
「オー」
俺たちは北西の山を後にする。
そして、ついに牛を探しにズンダダ森へ行く日が来た。
ハナコが坂を降りられるかわからないので、余裕を見て日の出前に村を出発する。
ガーネ達もいるのでバフをかけずに歩いていく。
当然ギャはロバの背中だ。
一番歩くのが遅いのはフェリンだが、村に来てから散々薬草採取をしてきたので、力強く歩いている。
峠の小屋には十時過ぎに着いた。
かなり速いペースで来れたのは、道の改良が日々行われてる為だ。
小屋で軽い食事を取り、しばらく行くと、歩いてでしか降りられない坂に着いた。
「ノラバ、この坂なんだがハナコは降りられるか」
「聞いてみます。『ハナコ、坂を下りるんだけど大丈夫』」
ヒ ヒヒーン
首を軽く振ってハナコが答える。
「なんか、自信ありそうな返事ですね。ちょっと手綱を外してみます」
そう言って、ノラバがハナコに付けられていた手綱を外すと。
ヒヒーン
ハナコが駆け出していく。
「おーい、そっちは道じゃないぞ」
「マサル、道とは人が作ったもの、馬は馬なりに走りやすい所を通るのだ」
「マサルさん、そうみたい。ほらハナコは岩と岩の上をぴょんぴょん跳ねながら山を下っています」
確かに、楽しそうに山を下りているが、あれをやりすぎて足を負ったんじゃないのかな。
まあとにかく急な坂の下にハナコは着いたようだ。
「それじゃあ俺たちも降りるか」
「はい」
急な坂道をゆっくりと降りていく。
「マサル、まっすぐ降りるから急なんだぞ、ハナコみたいに斜めに下りれば緩やかではないか」
「そんなことわかっている。出来るなら作っているんだ。駄目だったから急な坂なんだぞ」
この岩坂につづら折りに斜めに道を作るのに、どれだけお金と時間がかかるかギャにはわからないのだろう。
坂の下でハナコと合流するとズンダダ森の入り口に有る小屋を目指す。
俺たちは新しく作られた小屋ではなく、昔からあるサメル村で作った小屋に泊まり、次の日は南に半日行ったところに作られた小屋を目指した。
「マサル、小屋の使用許可を取れてよかったな」
「ああ、小屋を管理しているのはラルバ商事だろ。一応カエデ商会に雇われていることになっているからな」
「それで牛探しだと正直に言ったのか」
「ああ、言ってある。ラルバ商事も何とか牛を手に入れないといけないからな。お互い協力しあうことになっている」
そして半日、俺たちは草原に有る小屋にたどり着いた。
「マサル小屋に看板が有るぞ。『ラバル商事 草原の小屋』だな」
「そうだな、此処は『草原の小屋』か。『峠の小屋』『ズンダダ森本部』に次いで三つ目の小屋だな。それにもうすぐ『水飲み場の小屋』が出来ると言っていたな」
ボイルさんの初めの計画では、さらにもう一つ小屋を作る予定だったが、草原の小屋と水飲み場の小屋で様子を見ることにして、本部の北に予定していた小屋は作るのをやめている。
草原の小屋には誰もいなかった。
「マサル、ボイルさんは何をしているのだ。牛狩りをはじめていないではないか」
「ギャ、やっと小屋が出来たところだぞ。それに測量士が来てズンダダ森の地図を作っていた。地図が出来て初めて作戦が立てられるんだぞ。それに野生の牛を生け捕りにする人も集めなきゃいけないな」
ボイルさん達がこっそりやっている仕事だ、人を集めるのは大変そうだな。
「それでは私たちは小屋の整備ですね」
小屋に入るとガーネ達は荷物を置いて掃除を始める。
「そうだな、今日は小屋の整備で終わりそうだな。牛探しは明日からにするか」
そう言って俺は、異次元鞄から六人分の寝具を取り出した。
小屋の調理場には調理器具が何も無いので、これらも俺の異次元鞄から取り出す。
「マサル、ついでに料理も出してくれ、あたいは腹が減っている」
「・・・わかった。皿も出すからテーブルに並べろ。並べ終わったらガーネさん達を呼んで来い」
「オー」
昼の食事を終えると、小屋の整備と明日からの準備を終わらせる。
そして夕食の時。
「マサルさん、ハナコと一緒に寝てください」
ガーネさん言われる。
小屋には寝泊まりの部屋は一つしかない、そして男性は俺一人。
俺は小屋の脇に作られた物置でハナコと一緒に寝ることになった。




