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7・貧乏貴族は名乗れません

「なあギャ、此処から俺は冒険者だ、貴族は名乗らないからな」

「わかった」


「そこは、『何で』と聞かないのか」

「聞いて欲しいのか」


「一応理由は知ってほしい。俺がシルバー爵なのは教えたよな」

「うん『貧乏貴族」だよね」


「そうだ、『貧乏貴族』と呼ばれるのは便利なんだが、さすがに王都からこれだけ離れると『貧乏貴族』のうわさも流れてこない。残るのはこの貴族証明書だけだ」

「うん」


「そうすると、俺はシルバー爵の御曹司になる」

「見えない」


「否定するな。まあそれでシルバーだといろいろ面倒だ」

「そうなのか」


「そうだ、そこで、今から俺はただの冒険者と名乗る」

「いいけど、冒険者が奴隷を連れていておかしくないか」


「おかしいことは無いぞ、俺は見た目弱そうだから護衛としてギャを連れていることにするんだ」

「ギャは弱い、ご主人様を守れない」


「そうか、それなら俺が方向音痴でギャが道案内ではどうか」

「ギャは地図も読めないし、奴隷商の部屋から出たことが無い、無理な設定」


「設定言うな、あとは料理人とか荷物運びとかだな」

「御主人のほうが料理が上手、荷物は異次元鞄の中、やっぱり無理な設定」


「そうか、じゃあギャならどうする」

「売られたギャを、買い主のところへ届ける冒険者がご主人様、これなら奴隷の首輪に契約していないのもごまかせる」


「おっ、いいな。意外とギャは頭がいいんだ」

「以外じゃない、一緒にいた奴隷からも頭良いって言われていたぞ」


「そうか、賢いことは良いことだがな、それじゃあその設定にしよう」

「ご主人様も設定って言った」


「そうだな、そうすると、まず、ギャは俺のことご主人様とは呼べないな」

「わかった。お前って呼ぶ」


「お前はないだろ、他には何かないか」

「うーん、お前さん、あんた、おじさん 兄さん、マサルかな」


「しょうがない、マサルと呼べ」

「おいマサル、腹減った」


「急に強気でしゃべるな、そうかもうすぐ昼だな、食事にするか」

「おー」

食事と聞くと、ギャは荷車から降りてきた。

食事の用意は異次元鞄から調理済みの料理を出すだけだ。


「もぐもぐ、おいしい」

「いちいち、もぐもぐつけるな」


「わかった、もぐもぐ」

ちっ、わかってないな。


昼の食事を終え、さらにサメル村に向かい進む。

検問所も田舎の街道には無く、ギャの首輪の確認もなくなる。

見せることが無いのだが、用心のため首にはスカーフを巻いておこう。


「マサル、ソロの冒険者なら高ランクじゃないとまずくなのか」

「それは大丈夫だ、冒険者にもプラチナからスチールのランクがあるが、このあたりの冒険者ギルドは気にしていない、スチールが難しい依頼を受けて失敗しようが大けがをしようが全部冒険者の自己責任だ」


「そうか、じゃあスチールのマサルの自己評価はどれくらいのランクだ」

「まあカッパークラスかな、何といっても俺は自分に『ヒール』がかけられるから、死なない限り死ぬことはない」


「当たり前、でも大けがしても治るんだ」

「ああ、それに自分に「バフ」をかけて身体能力を上げられるから属性:炎の冒険者並みに戦える。そして薬草や薬づくりの知識もある、薬に俺の魔力を流せばポーションになる」


「ワー、スゴイネ」

「片言で言うな」


ガタガタ ゴトゴト ガタガタ ゴトゴト


「つっ」

揺れる馬車に乗っているギャは舌をかんだのか静かになった。


俺は荷車を引くロバの手綱を握り歩いていく。

確かにギャの言う通り、俺がソロの冒険者なのは不自然だな。

やはり護衛を雇って一緒に来るべきだったか。


親父は付けろと言ったが、家族には俺の能力を教えていない、バレたくもないので一人で大丈夫だと言った。

「そうか」の一言で一人旅が認められたとところを見ると、多少はバレているかもしれない。

親父もおふくろも姉も二人の兄も優秀だからな、ある程度気づいているはずだ。


『やーい、極小の無が来た』

魔力操作力検査の後は、同じ年くらいの貴族の子に馬鹿にされた。


その時は上の兄が。

「マサル、検査はその時の体調で変わる、あの時マサルは具合が悪そうだったな。検査は何回でも受けられるから体調のいい時に受けてみろ」

と、言って励ましてくれた。


俺は極小の無でも構わないかったので再検査はしていない。今更特大の光だとわかったら大事になってしまう。

操作力は抑えられるが属性はごまかせない。再検査は駄目だ。


「マチャッ うー マサル な何考えてる」

嚙んだ舌が痛いのだな。


「ああ、もうすこし設定をしっかりさせないとな。やはり無理がありそうだ」


「そうか、まあ気にするな、とりあえず今日泊る村が見えてきたぞ、宿を決めろ」

「おい、ギャは命令する立場ではないから」


「そうだった、ご主人様からマサルに呼び方を変えたら、あたいが主人になった気がした」

「気を付けろよ、それでなくても無理な設定なんだから」


「わかった、それじゃマサルあの宿がいい」

「だから命令するなと」

そうギャに言ったが、ギャが指名した宿はなかなかよさそうだ、今日はこの宿に泊まろう。

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