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69・ノラバに懐きました

村の北に有る山を目指して調査に出かけた俺たちは、骨折した馬を助けた。

そして、なぜか村に帰る俺たちの後を馬がついてきたのだ。


「ノラバさんは、この馬どうしたら良いと思います」

「それは、マサルさんが決めることでは」

「そうだぞマサル」


「いや、どうも馬はノラバさんについて来ているような気がする」

「そう言えば、そうだな」


「まあ取りあえず。丘の上の屋敷の厩に入れるか。屋敷にはノラバさんも住んでいるからちょうどいいだろう」

「それは構いません。冒険者の仕事で馬の世話もしたことが有りますから。でもこれって、どうやって手に入れたか聞かれたら、どうします」


「そうだな、黙っているしかないな。ギャ、いい考えは無いか」

「朝起きたら厩にいたでは、どうだ」


「無理だな。帰ったらムサイさんやザエルさんに相談するか」

そんなこんなを考えながら、山から屋敷に着い時は、日も暮れて暗くなっていた。


「やはり、馬の治療にかかった分遅くなったか」

「それも有るが、マサルが乗ったからロバが悲鳴を上げていただろ」


「・・・ああ、すまん」

馬の治療にヒールを使いすぎた俺は、山からの帰りロバに乗ってきた。

その為ギャを歩かせたので、山に行く時より歩みは遅かった。


暗くなってから村に着いたおかげで、馬を厩に入れるところを誰にも見られなかったのは好都合だった。

俺は、ムサイさんに厩に馬がいることを教えると、ギャと共に家に帰る。

そして夕食を食べ風呂に入り寝ることにした。


次の日、俺とギャは早めの食事を取り丘の上の屋敷に向かう。


「なあマサル。食堂と薬屋の仕事をやらなくなったのだから、屋敷に住んだ方が楽ではないか」

「そうだが、今は満室だぞ」

バルノタイザン商会のムサイさん、それとカエデ薬局の八人(ガーネさん達四人を含む)がすんでいる。

俺とギャが住む部屋は無い。


何処に住むかは置いといて、俺とギャは屋敷に着くと、朝食を終えた九人が待っていた。


「マサル様、昨日言われたとおり、全員でお待ちしておりました」

昨日の帰りがけにムサイに言っておいたのだ。


「ああ、わかっていると思うが、昨日山から一緒に来てしまった馬のことだ」

俺とギャを入れて十一人、屋敷の応接室なら余裕で入れる。

そこで緊急会議を行うことになった。


「ノラバさんは、馬のことを何か話していますか」

「いえ、話しはマサルさんから話が有ると、私からは何も言っていません」

ならば、俺がヒールで治したことや魔獣馬であることは、俺とギャとノラバさんしか知らない。


よし、まずはこの馬が普通の馬だということにしよう。


まずは。

「ギャ、今から喋るな」

「オー」

余分な事を喋られては困るからな。


「ムサイさん、次にバルノタイザン商会かカエデ製薬の馬車が来るのは何時ですか」

「今日の夕方、カエデ商会の定期便が来ます」

カエデ製薬は、ロバ革の異次元鞄を積んだ馬車を村と王都を往復させている。


「それ以外にも、魔具の石板を積んだ荷馬車が毎日のように来ていますね」

「石板を積んだ馬車はキャメル家のだろ」

キャメル家はトーム交通、トーム運送の他に、冷蔵庫魔具や馬車用クーラーの販売の新しい会社『トーム冷機』を作った、村に来るのはトーム運送の荷馬車だ。

冷蔵庫魔具などの製造販売をキャメル家に任せてからは石板はトーム運送が担当していた。


「そうかマサル。カエデ商会の馬車の馬の予備を用意したことにするのか」

「そうしたいのだが、考えたら馬の流通販売の権利は、ルンドリガンド家が持っている。どこから手に入れたのか、絶対聞いてくる」


「ルンドリガンド家の知らない馬はいないのか」

「それこそ野生馬だな。野生馬がおとなしくついてきて厩にいたら、これも怪しまれる」


「いえ、マサル様。野生の馬を連れて来て飼っているケースも有りますよ」

「そうなのかムサイさん」


「ええ、マサル様こそ、バルノタイザン家がどうやって貴族になったか知っているではありませんか」

「バルノタイザン家か、ロバの飼育と繁殖に成功したからだろ」


「ええ、元は野生のロバを飼育したんですよ。その時のノウハウで野生の馬や牛の飼育が出来るようになったんじゃありませんか」

「そ、そうだったな」


「マサル、聞いてなかったんだな」

「あのなギャ、そう言う秘密は家を継ぐ者だけに教えられるんだぞ。俺は三男で家を継ぐ予定はない」


「ですが、マサル様がバルノタイザン商会を継ぐらしいではありませんか。いずれ社長より聞かされると思います」

「そうか、それで野生のロバを手懐ける方法だが、今のサメル村でも出来る者がいるんだな」


「はい、多分ロバの面倒を見ている者はほとんどできると思いますよ」

「それはどうやるんだ」


「えっと、餌を与えるんです。特に属性:水の人が与えると懐くらしいですよ」

「餌の与え方に秘伝があるんだな」


「その辺はよくわかりませんが、まあ山に行ったら馬がいて、餌を与えたら懐いたんでしょう」

うーん、山に行ったのは俺とギャのノラバさんで、村でロバの面倒を見ている人じゃないし、餌も与えていない。

まあ、サメル村では野生の馬でも餌さえ食べてくれれば懐かれると、これで通すことにする。


「では、そう言うことで、全員わかったな。今厩にいる馬は餌を与えたらついてきた馬だ。餌をノラバさんが与えたのでノラバさんに懐いている。そこで馬の担当はノラバさんだ」


「「「「・・・はい」」」」

全員が返事をしてくれた。

こうして、山で助けた馬は、屋敷の厩で飼われることになった。


馬の説明に時間を取られガーネさん達の今日の薬草採取は休んでもらい、家の倉庫に来てもらう。

倉庫なら大事な話をしても、ガーネさんたち以外に聞かれることはない。


「なあマサルさん、あの馬、普通の馬じゃないだろ」

まずはガーネさんが聞いてきた。

「ああ、みんな気付いたと思うが魔獣馬だ、決して誰にも言うなよ」


「でも、魔獣馬を私が担当しても良いのですか」

「ああ、少なくともサメル村の人に任せるより安心だ」


「あの、馬の世話をノラバがするのは良いのですが、スターマイラル家のボイル様が来たら魔獣馬だとバレてしまうのではありませんか」

「フェリンの心配はもっともだが、多分ボイルさんはもう来ないと思う。ズンダダ森の魔獣牛探しを隠れてやるのだからボイルさんがサメル村に来たら何かあると思われるからな」


「だが、マサル。ボイルさんの魔獣牛探し、うまく行っているのか。成果が悪いと見に来るぞ」

「そうか、なあギャ、確かズンダダ森で牛がいたよな」


「ああいたぞ。あの草原に小屋を作るのだな」

「ああ、作っている。それより、ギャの見つけた牛たちを手懐ける手伝いをして、ボイルさんが村に来ないようにした方が良いと思うんだ」


「どうするんだ」

「ノラバさんに行ってもらい、牛に餌を与えてもらう」


「・・・何故私なんですか」

「うん、多分ノラバさん、野生動物に懐かれやすい特性だと思うんだ。ノラバさんて属性:水だよね」


「ええ」

「属性:水は動物を飼ったり植物を育てるのが上手なのは知っているよね。あれって属性:水の魔力操作が影響しているんだけど、人によって特徴があるんだ」


「私の特徴って、動物に懐かれることなんですか」

「多分、まあ実際やってみないとわからないけど、早いうちにズンダダ森に行けるようにしたい」


草原に建てた小屋はラバル商会が建てているが、表向きはカエデ商会の薬草採取の小屋だ。

借りたいと言ったら断れないだろう。

草原の小屋を拠点に一週間くらい牛を追いかけることにした。

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