68・今日の護衛はノラバです
「マサル、今日も薬草採取に行くのだな」
「ああ、採取と言うより北の山の調査だ」
「わかった、だがニトルさんがいないぞ、護衛無しで行ってはならぬとロマンヌさんから言われているだろ」
「ああ、言われている。だから今日はノラバさんについてきてもらう。ロマンヌさんは護衛を付けろと言ったがニトルさんを付けろとは言っていないだろ」
既に九月も終わりに近付いている。
北の山は村より寒いので今のうちに調査をやっておきたかった。
「おはようございます。マサルさん」
「ああ、おはよう」
「おっはー」
またギャは変な挨拶を覚えてきたな。
「悪いな、ガーネ達も薬草採取が有るのに、俺の護衛を頼んで」
「それは構いません。薬草採取はフェリンがほとんどやっています。ガーネとシャクヤが守りですから、私の役目はあまり無かったので」
「良いのかマサル。言っては何だが、ノラバさんはガーネさんやシャクヤさんに比べ戦闘力が弱いぞ、マサルの護衛は大丈夫なのか」
「確かに、ガーネも心配していました、大丈夫なのですか」
「大丈夫だ、おいギャ、俺が今まで盗賊や魔獣猪を倒してきたところを見てきただろ」
「あれは、魔・・・じゃなくて、特別な剣のおかげだ。マサルの実力は知らない」
「そんなことは無いぞ、この剣でも十分戦える」
俺は異次元鞄から鉄製の剣を取りだず。
「ぼろいな」
「見た目はぼろでも、心は錦だぞ。どんな剣より強いんだ。じゃなくて、まあ確かにリサイクルショップで買ったからな。籠にまとめて入っている中から選んだ」
「マサルさん、ギャちゃんとの漫談はそのくらいにして、本当に私の護衛で良いんですよね」
「大丈夫だ。俺は八歳から一人で薬草採取をやってきたからな」
俺が良いと言えば、ノラバもそれ以上言えない。
俺は鉄剣を腰に差し、異次元鞄を肩にかかる。
ギャにも剣を渡たし背負わす。
ギャをロバに乗せ北に向かって歩き出す。
「マサルさん、今日は何処まで行くのですか」
「ああ、村の中心からの村の外れまで約二キロある。そこから草原を一キロ行くと坂が急になる」
「そうですね、徐々に険しくなっていきますね」
「まあ、その少し先までだ。それ以上は、この時期でも冬山登山の装備が必要だからな」
「草原と岩肌の堺あたりを調査するのだな」
「ああ、少しずつ調査の場所を広げ、正確な地図も作っていく」
「マサルさん、正確な地図って、測量機を持ってきていないですよね」
「持っては来ていないが、ここにいるんだ。なあギャ」
「そうだ、あたいが測量機だ」
「ノラバさん、ギャの目測は光波距離計並みに正確なんですよ。それに最近は特訓の成果で水平距離と斜距離、高低差から高度角まで計れるんです」
「・・・・・・マサルの特訓は鬼だったな」
「そうか、既に測量済みのところで確認しただけだろ」
「そうだった」
ギャはバフかけで視力と三半規管の強化していた。
とにかくギャのおかげでもともとあった村の地図もより正確になり、こうして村の周辺の調査をしながらの地図作りも出来ていた。
「マサル、薬草の気配は無いのか」
「まだ無いな」
「魔獣はいないのか」
「いな・・・っ」
「いるのか」
「ギャ、わかるわけ無いだろ。属性:闇でも触らないと判別できないんだぞ」
村を出て一時間、まだ草原の中ほどを歩いているところだ。そうそう魔獣に出会う場所ではない。
俺とロバが並び、ロバにギャが乗り、その後ろをノラバが付いてくる。
「ギャ、以前ズンダダ森に行ったとき森小屋から北に進むと高原だったな」
「ああ、峠の小屋から眺めただけだがな」
「あの山の向こうがその高原になる」
「オー、高い山だな」
「高いが越えられないこともない」
「マサル何が言いたい、はっきり言うのだ」
「もしかすると、あの山のふもとまで行けば、馬がいるかもしれない」
「本当か」
「たぶん、だがいずれあの辺りまで行きたいな」
サメル村側にしろズンダダ森側にしろ、高原には高原なりの動物がいる。
馬だっているかもしれな。
今日は調査がメインなので薬草採取をせずに、ひたすら山の坂を登って来た。
「村があんなに下に見えるぞ」
「マサルさん、ちょっと来すぎていませんか」
「そうだな、それでは昼の食事をして引き返すか」
「マサル良いのか、まだ何も見つけていないぞ」
「良いんだ、調査とは何もないことがわかっただけでも成果が有ったことになる」
半日で来れる範囲だ、もう少し先には何かあるかもしれないが、今はやめておく。
異次元鞄から昼の食事を取りだし三人で食べる。
「マサル、せっかくノラバさんがいるのだ。何か狩っていくのだ」
「狩ると言っても、此処までなにもいなかったはずだ。それに帰りはまっすぐ帰らないと遅くなる」
「そうか、だが、あそこに馬がいる。それも何かおかしいぞ」
来る時には居なかったはずだが、走ってきたのかな。
「ええマサルさん、確かにおかしいです。もしかすると足を折ったのかもしれませんね」
「馬が足を骨折。駄目だな死んでしまう」
「そうなのか」
「ああ、馬は走れなくなると生きていけないんだ」
「マサルは助けられないのか」
「は いっ、なんですか」
「ヒールだ」
「・・・・・・」
しょうがないやってみるか。
まずは馬のところへ行く。
馬は自分の命が無くなることを悟っているのかおとなしい。
気休め程度だが神経をマヒさせる塗り薬を足に塗ってやる。
そして添え木を異次元鞄から取り出し、自分にバフをかけて馬の折れた足を真っ直ぐにして添え木を当てる。
そして。
「ヒール」
魔力操作で光の魔力を馬の脚に注ぎ込んでいく。
「マサル、頑張れ」
「マサルさん・・・」
頑張れと言われても、俺は傷を治したことは有るが骨をくっつけたことは無い。
それでも骨と骨がつくよう念じながら魔力を注ぎ込む。
人ならば添え木をしてつくのを待てばいいが、馬は走れるまでにしないと駄目だ。
魔力を注ぐこと一時間、俺の魔力操作力も限界に近づく。
ヒッ ヒヒヒ ヒヒーン
「マサル、治ったようだぞ」
「まさか」
「マサルさん、治っています。ほら立ち上がりました」
「マサル、わかったぞ。こいつは魔獣だ。だからマサルのヒールでも治ったんだ」
ギャに言われ納得する。
俺のヒールはあくまでこの馬の再生と治癒の力を助けただけなんだな。
どちらかと言えばヒールより添え木で足を真っ直ぐにしたのが効いたのかもしれない。
馬も治ったことだし、俺たちは帰ることにする。
「ギャ、ロバには俺が乗る。お前は歩け」
「オー」
魔力操作力を使い果たすと歩くのもきつくなる。ギャに代わり俺がロバに乗り村に向かうと。
「マサルさん、馬がついてきます」
「そうみたいだな」
「マサル、ゲットだな」
「ああ」
俺たち三人とロバは、魔獣馬を連れて村へ帰って行った。




