65・アイスクリームは大衆食堂サクラで売ってます
「ナオト様、また来ております」
ナオトとは俺のおやじだ。
「貴族に約束も無く押しかけているんだ、追い返せ」
「無理です。主人であるナオト様が直々に説明しなければ収まりません」
「しかし、説明することもできない。だいたいマサルはとんでもないものを作る。そえれを使ってアイスクリームだの熟成肉を売るとは何と言うことだ」
「あのー、アイスクリームと熟成肉は奥様がやっております」
「・・・そうだったな。しょうがない会うだけは会ってやる。応接室には通すな、玄関ホールに椅子を並べておけ」
押しかけてくるような人に、バルノタイザン家より上位の貴族は居ないはずだ。
上位貴族なら呼び出して来るからだ。(来てもおやじは断るだろう)
かと言って、今来ている人達を追い返すには、バルノタイザン家のそれなりの人が対応した方がよさそうだった。
そして押しかけてきた人たちが聞きたいこととは。
「何故、夏でもアイスクリーム(氷)を作れるのか」
「最近高級レストランのステーキが驚くほど美味しくなったのは、大衆食堂サクラが絡んでいるのではないのか」
大きく言って、この二つだ、冷蔵庫魔具と冷凍庫魔具のせいだ。
アイスはともかく、熟成肉の情報は何処から漏れたのかな。
多分親父は、集まってきた人たちの情報を集める為に、会うのだろう。
熱交換魔具の作り方が公表されていないのは、家族会議の末、特許に登録しないことにしたからだ。
特許を取って作り方を公開すると、発熱魔具を属性:闇の人の魔力操作で熱交換魔具にする工程がバレてしまい、割と簡単に作れてしまうからだ。
ならば、作り方を秘密にして、アイスクリームや熟成肉で儲けた方が良いとなった。
冷蔵庫と冷凍庫は大量生産せずに、信頼のおける親しい人にしか売っていない。
なぜなら、熱交換魔具はサメル村の爺とダンさんしか作れないからだ。
王都や他の町や村で属性:闇の人を探しても良いのだが、製造方法が漏れる可能性が高い。
それでも爺とダンさんでは大変なので、サメル村に他の属性:闇の人がいないか村長に聞いてみるつもりだ。
俺の予想が間違っていなければ、サメル村には闇の光の人がもっといるはずだ。
何故そう思うのか。
バルノタイザン家にはサメル村の歴史を始め、あらゆる事を書いた本があり、俺はそれを全て読んでいる。
サメル村に関しては世界で一番詳しいかもしれない。
サメル村が出来た時、王国辺境防衛のため貴族や騎士の三男四男や分家の人達が送られたのは以前言ったが、それ以外にも庶民からも村づくりの為に募集が掛けられた。
その時、魔力検査で検査機を曇らせ魔具に魔力充填できず、蔑まされていた魔力属性:闇の人や、教会の束縛から逃げている魔力属性:光の人達がサメル村に移り住んでいたからだ。
魔獣は魔獣率がたければ高いほど魔獣の生まれる確率が上がる。
これって属性:闇や光も同じであり、人口八百人のサメル村にはかなりの属性:闇と光の人がいるはずだ。
話しがそれた。
バルノタイザン家に押しかけた人達はおやじが無事に追い返した。
「ナオト様、やはり『貧乏貴族』と言われ、皆に舐められているではありませんか」
普通貴族の家に人が押しかけることは普通なら無い。
「・・・・・・そうだな、それより門の前に集まった段階で追い返せなかったのは何故だ」
「はい、経費節減のため門番を雇っておりません」
「・・・そうだったな。」
「雇いますか」
「難しいな。マサルのせいでバルノタイザン家には秘密が増えた。人を増やすのはやめておきたい。それより、アイスクリームはともかく熟成肉の情報がどこから漏れたか調べておけ」
「ええ、その為に来た人に名前と住所を書かせたのですね」
「ああ、後で情報公開する時に優先させると言って書かせた」
「嘘ですね」
「当たり前だ教える訳が無いだろ」
おやじも貴族だ、腹芸くらいできる。
こうして、バルノタイザン家に押しかける人は落ち着いていった。
だが。
「何故、アイスクリームを大衆食堂で売っているのですか。あそこでは私が食べに行けないでしょ」
多くの貴族がアイスクリームを食べることが出来なかった。
「ボイル様、バルノタイザン家のアイスクリームの秘密、おわかりになりますか」
従者のブリットに聞かれるが。
「冷凍庫で氷を作りそれを使ってアイスを作っている。その冷凍庫がわからないんだ。いや、サメル村で冷凍庫に使う熱交換魔具を作っているのは知っている。
それも属性:闇が魔方式を付与しているのも知った。
だが俺も属性:闇だが、何がどうなってあんな魔具になるか、皆目見当がつかない」
ボイルのスターマイラル家も庶民が気楽に食べられるアイスクリームを貴族が食べられないことにいら立っている。
「スターマイラル家なら冷凍庫や冷蔵庫を買ってしまえばよろしいのでは」
「バルノタイザン家が売っているが、売ってくれないんだ」
「スターマイラル家の力をもってしても売ってくれないと」
「ああ、以前から言っているだろ、バルノタイザン家は思うようにいかない家だと」
そう、サメル村が出来た時に集まった、貴族や騎士の家で作る『サメル村の会』以外の家をバルノタイザン家は信頼も信用もしていない、たとえプラチナ爵のスターマイラル家でも『サメル村の会』ではないので売っていなかった。




