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60・森から村に帰ります

「よしギャ、行くぞ」

「オー、マサル、行くのでは無いぞ、村に帰るのだ」

ズンダダ森の小屋から出発するのだから『行くぞ』でもいいだろ、と思ったが口には出さない。


そして今は、明るくはなってきたが、まだ夜明け前だ。


「マサル、こんなに早く森を出るのか」

「ああ、帰りの上り坂は険しいからな、昼に峠の小屋に付くために早く出るんだ」


「もしかして、ギャの速さに合わせたのか」

「ああ、さすがに何度もギャを背負っていくのは嫌だからな」

荷物や採取した薬草は異次元鞄に入れてある。

バフかけすればギャを背負って走ることもできるが、一緒に帰るニトルさんにもあわせる必要が有った。


「マサルさん、何か俺のこと気にしているようですが、大丈夫ですよ」

「そうでしたね」

今回は猪狩りをしていない。手ぶらのニトルさんなら問題なかった。


そして峠に向かい坂道を登っていく。


「マサル、さすがにこの道に馬車を通すのは無理だな」

「そうだなギャ、荷車に綱を付けて、引き上げたり引き下げるのが限界だ」

「でもマサルさん。ラバル商会道を良くしてくれたから荷車が通れるのです。マサルさんが前に来た時はかついで運んでいたでしょ」


そうだった。それに比べればだいぶ楽で速く移動できる。

そしてこの山道、何故か獣に襲われることは無い。


「マサル、向こうに鹿が見えるぞ」

たまに見かける獣と言えば鹿くらいだ。


「ギャちゃん、大丈夫だよ。鹿は襲ってこないし、人を見ると逃げていくから」

ニトルさんがギャに大丈夫だよと教える。

どうやら人を襲う獣はいないようだ。


早く出たせいか、荷物が軽い為か、十一時には峠の小屋に着くことが出来た。


「マサル着いたぞ、よし昼飯にするぞ」

「そうだな」

小屋に入る前からギャは飯の催促だ。

まあ、早朝に出発しているから俺も腹が減っていた。


「マサルさん、どうやら村の狩人がいるようですね」

「そうみたいですね。これから森に行って猪狩りですか」

「多分そうだと思います」


どうやら俺たちと入れ違いに村の狩人がズンダダ森に行くらしい。

俺たちは小屋の扉を開けると中には村人が十人いる。


猪狩りに行く時は十人が基本になっているようだ。


「こんにちは、今から狩りですか。俺たちは村へ帰る途中です」

「こんにちはマサルさん、予定通りですね。それとニトル、どうだ、村に帰らず、このまま俺たちと狩りに行かないか」


「いや、俺は森に一週間いた。戻るのは勘弁してもらいたい」

「そうなのか、それで何か変わったことはあったか」


「特に無いが、この地図を渡しておく。猪の巣が有った所を書いておいた」

ニトルさん、さすがリーダーをするだけはある。

俺とギャで地図を作る時、ニトルさんも調べたことを地図に書き込んでいたんだ。


「おお助かる。それと此処はなんだ」

「ああ、獣たちが来る水飲み場だ、狩りをしながらだと森小屋からの日帰りは無理だが、次の拠点にしたいところだ」

そうだね、あそこにボイルさん達の小屋だけでなくサメル村の小屋も欲しいところだ。


「マサル、話していないで飯を出すのだ」

「わかった、ニトルさんも食べるでしょ」

「ああ、頼む」


峠の小屋にも調理場が作ってあり、俺は異次元鞄から出した肉を焼くことにする。

やはり中間地点に小屋が有ると森への行き来が楽だな。


「マサル、村人が持っているあれはあれじゃないのか」

俺は料理をしながらギャが指さすものを見ると。


「確かにあれはあれだな。でもあれはカエデ製薬が村と王都を往復する馬車に積んでいるはずだが」

「いや、あのあれとは似ているが違うぞ、バルノタイザン家の紋章が焼き印していない」

ギャはよく見ているな。


「マサルさん、あれは『シー』です」

村人が人差し指を自分の唇に当てた。ナイショらしい。


「村長が、誰にも言うなと渡してくれました。バレれば村人全員の首が物理的に飛ぶと」

「そんな物騒な物なら、村長も渡さなければいいのに」


「ですが、このロバの革で作った鞄が有れば、森で何頭もの猪を狩っても持って帰れます。実は王国から村長に魔獣猪をもっと狩れないかと言って来ているそうなんです」

「・・・そうか、それじゃあ仕方ないな。でもロバの魔獣がいることは絶対ばらさないでくれよ」

村人は小さくうなずく。


マルマ王国では、魔獣ロバがいることは知られていない。

ロバを飼育しているサメル村でも、最近知ったくらいだ。

まあこれは知りたくないから調べていなかったと言うのが正解だが。


「マサル。王国での異次元鞄不足は深刻だな」

「そうだな、猪の魔獣鞄は人気が無かったのに、それさえ欲しいがっているのだからな」

同時に生まれた兄弟なら、二頭三頭の革でも異次元鞄が作れることがわかり、大きな鞄が作れるようになったこともあるのかもしれない。


「マサル、ロバ革の鞄は量産できないのか」

「無理だな。サメル村のロバを全部調べても何頭もいない。多分今回鞄になったロバも寿命で死んだロバだと思う。鞄の為に殺しすことしないはずだ」

サメル村のロバは荷物運びに使うロバであり、その為に育てているからな。


「そうだな、無用な殺生はしては駄目だ」

異次元鞄の為に育てられている魔獣牛や魔獣馬には申し訳ないが、サメル村のロバをそういう風にはしたくな。


ちなみに猪は良いのかと言えば。


「ギャ、サメル村の猪狩りは食糧を確保するためだ。決して鞄の為じゃないからな。それに猪を適度に駆除しないと、森が荒れてしまうからな。決して無用な殺生じゃないからな」

「マサル、一生懸命言い訳するな。それくらいギャでもわかっている。ただそれも人間の都合だ」


「そうだな」

ギャは時々すごいことを言う。

奴隷商にいるころ、人生経験豊富な多くの奴隷と話をしてきたのだろう。


そして昼めしを終えた俺たちは村に向かう。

峠の小屋にはロバと荷車を預かってもらっていたので。


「やはりあたいは荷車が良いぞ。走るのは苦手だ」

ギャはちゃっかり荷車に乗り込んでいた。

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