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6・ボイルとの夕食

ボーイの案内で食事用の個室にはいる。

すでにボイルさんが椅子に座っていた。


「遅れたみたいですね、失礼しました」

「いや、私も来たばかりだ」

定番の会話だ。


「さあ、座ってくれ」

「はい」

俺とギャは椅子に座る。


「気を使わないでくれ、食事はコースでは無く、普通の夕食だ」

どうりでナイフとホーク、それとスプーンが一本ずつしか置いてないわけだ。


料理は、パンにスープに肉にサラダ。

盛り付けも美しいが、とても旨い。

さすが高級の宿だ。


「食べながらい聞いてくれるか」

「はい」


「まず、私の名前はボイル:スターマイラル。まあ一応貴族だ、君もそうだろ」

「ええ、バルノタイザンです。『貧乏貴族』のほうが有名ですけどね」

隠すことはない、今着ている服にバルノタイザン家の紋章が入っている。


「やはりな、よく似ている」

「誰にですか」


「タカシだ」

「上の兄を知っているのですか」


「ああ、王都学校で同級生だった」

「そうですか」

馬車を修理した時には俺が貴族だって気づいていたんろうな、出なきゃ最高級の宿に招待なんかしない。


「あいつはいつも二人の弟の自慢をしていた、特に三男、マサル君のことだな」

「俺なんか魔力操作力:極小の属性:無ですよ、兄は何を自慢したのです」


「魔力操作力:極小の属性:無なのに、すごく努力していると言うんだ。自分のお古の教科書を読み、次男からは剣を教わり、姉から薬学を学び、母から料理を教わっていると。そのうえ冒険者として薬草採取を頑張っていると、楽しそうに話すんだ」

「薬草採取しかできない冒険者ですけど」


「ああ、だが異次元鞄をあれだけ使えるなら、魔力極小は何かの間違いだな」

「そうなんですか。」


「知らないのか、極小なら豆粒も入らないぞ」

魔力量で容積が変わるのか、それは知らなかった。


「それは困りました、家族は俺のこと極小だと思っています。言わないでくれますか」


「約束しよう、それに馬車の修理ができた、あれもどこかで覚えてきたんだろ」

「えっとそうですね、森に捨てられた壊れた馬車から部品を取ってましたから」


「そうか、その鞄があれば持ち帰れるからな。それに部品は売ることもできる」

「ええ、ちょっとした小遣いにはなりました」


「はははは、しっかりしているな」

「いえ、倹約好きの守銭奴なだけです」

ボイルは話好きだな。おいしい食事だ、ゆっくり食べたい。

俺の隣でギャは、会話に参加しないので、もくもくと料理を平らげていく。

昼の食事を取れなかったせいかな。


「もぐもぐ、おいしい。もぐもぐ、これ初めて食べる。もぐもぐ、もう死んでもいい」

おい死ぬなよ。せっかく俺の薬で元気になったんだから。


「ギャ、誰も取らないからゆっくり食べろよ」

「うん、もぐもぐ」


「そちらの使用人はギャというんだな。珍しい名前だな」

ボイルさん、おかしな人だ。ギャは宿の中なので今はゴーグルを外している。

毛布もかぶっていないから、不ぞろいで短髪の頭も丸見えだ。


名前より目や髪を気にするかと思っていた。


「それに、その首輪、なかなか・・・」

「すいません、その首輪は奴隷の首輪なんです。ギャは奴隷なんです、すぐ部屋に戻します」


「いや、此処には三人しかいないから部屋に返す必要はない、それにまだ食い足りなさそうだしな」

「ありがとございます。ギャ、お礼」


「ありがと、もぐもぐ」

これで食べ方は綺麗なのだから、器用な奴だ。


首輪に気づかれたのはまずかったな、せめてスカーフでも巻いておけばよかった。

でもボイルさん、『その首輪なかなか』って言ったよな。

普通、なかなかの次の言葉は、なかなか綺麗だな、とか、なかなかすてきだな、だよな。

ボイルさんが奴隷の首輪を知らない、訳はない。

じゃあ何の首輪に見えたんだろ、知りたいが、知るのが怖い、やめておこう。


「それではごちそうさまでした」

「ああ、また会うことが有ったら、次もおごるぞ。なんといっても親友の弟だからな」


食事が終わると、ボイルさんと別れ宿の部屋に戻る。


「ご主人様、おいしかった」

「そうだな、次に会った時もおごってくれるそうだ」


「聞いてた。期待している」

「ああ」

多分、もう会うことはないと思うが、兄の友達と知り合えたのは良かった。

何といっても、俺には貴族の知り合いが一人もいなかったからだ。

さあ、おなかいっぱいだから、ぐっすり眠れそうだ。


だが、寝坊はしない、貧乏人の朝は早いのだ。

朝飯もボイルさんのおごりだ、昨日の個室でなく食堂で食べる。

さすがにボイルさんは食堂にいなかった。


支度をして宿の前に出ると、ボイルさんに会う。

宿前に止められた馬車の向きから、俺の行く方向とは違うようだ。

俺は、どんどん田舎に進んで行くからな。


「マサル君は、護衛なしで大丈夫なのか」

田舎に向かえば向かうほど治安は悪い。

まあすでに強盗には襲われているが。


「ええ、それより、ボイルさんはどうなんですか」

「ははは、ちゃんと護衛がいるじゃないか」


「従者と御者のかたでは」

「ああ、この二人がいれば安心なんだ」

どやら、護衛のできる従者と御者みたいだ。


どう見てもお忍びの旅だ。旅の理由は聞けないな。

知らなくいいことは知ってはいけない、長生きの秘訣だ。


「マサル君、何か変な目で見ているが、これは仕事なんだ」

「なるほど、それにしては馬車がおんぼろなんですね」


「ああ、勤め先の会社がケチなんでね」

「ボイルさん、ケチは駄目です。昨日みたいに壊れれば損をします。俺みたいに倹約家の守銭奴になるよう仕事先の社長に行ってください」


「ああ分かった、よく言っておくよ」

笑顔で答えてボイルさんは去っていった。


ボイルさんと別れた俺は、ギャを乗せた荷車を引くロバの手綱を握りサメル村を目指した。

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