59・スンダダ森を進む
サメル村から山を越えるとズンダダ森が有る。
森の入り口に小屋を建て、サメル村の村人は猪を狩っていた。
小屋から見てサメル村は真東の方向にある。
そこから回れ右をして西を見る。
西に向っ森奥に入り、二時間も歩けば猪がいるテリトリーに入る。
サメル村の人は森の入り口に建てた小屋を拠点にすれば、充分猪狩りが出来ていた。
「マサル、だいぶ地図が出来たな」
ギャとズンダダ森に来て五日、明日の朝にはサメル村に帰る為森を出るのだが、取りあえず一日で帰ってこれる周辺の地図が出来た。
「ああ、サメル村との境になる山沿いを南に向かうと岩肌が転々とする草原だな。南東に行けば湿地帯の草原だ。東に向えば森が深くなり、北は山がせり出してきていたな」
「どうだ、薬草は有りそうか」
「ああ、草原から密林、そして高原がある。既に何か所かチェックしたが薬草も見つけた」
「それは高く売れる薬草なのか」
「そうだな、サメル村並に上質だな。種類や量はズンダダ森の方が豊富そうだな」
「もっと調べるのか」
「いや、カエデ製薬で必要な薬草は、これまでに調べた範囲で大丈夫だな。だけどボイルさん、じゃなかった、ラバル商事の魔獣探しにはもう少し広範囲に小屋を作って調べに行かないと駄目じゃないかな」
「そうなのか、だがあたいは南東に半日行ったとき、馬を見ているぞ」
「おいギャ、何でその時言わないんだ」
「聞かれなかったぞ。それにあたい達は地図作りと薬草探しに行っているのだ、関係ないことを言ったら迷惑になるだろ」
「・・・そうだな。そうれで何頭くらいいたんだ」
「マサル、馬は群れで生活するのだな。沢山いた」
「さてラバルさんに教えるか、でもボイルさんの探しているのは魔獣牛だから教える必要はないのか。どうする」
「マサルさん、取りあえず『もしかすると、馬みたいな集団をギャが見たような気がするみたいです』くらいに、あやふやには教えた方が良いですよ」
ニトルさんが教えてくれる。
「そうか、ニトルさんもそう思うか。そうだよな、あとで『お前ら知っていたな』なんて詰め寄られるのは嫌だよな」
「そうだな、ところで馬は草原にいたが、牛は草原にいないのか」
「牛は、草原やサバンナ、それに森にもいるぞ。まあそれぞれ品種は違うけどな」
「そうか、わかった」
「それでマサルさん、明日の朝にはサメル村に出発するですが、今日はどのあたりを回りますか」
「そうだな、予定の地図作成は終わっているから、思いっきり東に行ってみるか」
「ひたすら東に行って戻ってくるのだな」
「そうすると、我々でも行ったことの無いところまで行くことになります」
猪を狩るのでもなく、薬草を探すことも無く、ひたすら東に向えばそう言うことになる。
多分、ボイルさんに頼まれているらある商事の人達もそこまでは行っていないだろう。
「よし、出発」
「オー」
俺は異次元鞄を肩にかけ、鞄から取り出した魔剣を腰に付ける。
ギャは俺が渡した剣を肩から掛けている。
「ギャ、飛ばすぞ、軽くバフかけしろ」
「オー」
ニトルさんに気づかれないようギャは『持久』と『走力』のバフを自分にかける。
ニトルさんも一緒なので、バフかけしても通常人の速さで走っていく。
「マサル、ニトルさんしっかりついてくるぞ」
「当たり前だ。俺達より森の中の走り方が上手いからな」
それでも。
『おかしい。都会育ちのマサルさんと少女のギャに付いて行くのがやっとだぞ。あいつら化け物か』と想いながら、必死でついていくニトルだ。
五十分走ると十分休息、そしてまた五十分走ると十分休息。
そしてもう五十分走り。
「よーし、昼飯にするぞ」
「マサル、まだ十一時だ。昼には早いぞ」
「いや。折り返し地点は三割の力で来れるところだ。飯を食べたら周辺を観察して。戻る為に六割の力を残すのが、生きて帰るためのセオリーだぞ。特に今回みたいに行きが下りで帰るが登りの時はもっと注意するんだ」
「オー、そうだな」
「はあ はあ はあ 何でそんなにマサルさんとギャは余裕が有るんだ」
「大丈夫ですか、ニトルさんは俺たちが周辺の観測が終わるまでは休んでいてください」
「・・・ああ、わかった」
護衛をしなければならないニトルさんだが、疲れたままでは足手まといになると、休んでくれた。
俺たちが飯を食べているところは、サメル村の人達も来て事の無い場所だった。
下ってきた為か森の入口より温かい。
休息地の近くには小川も流れている。
まずは薬草が無いか、周辺の魔力を感じてみる。
「ギャもやってみろ」
「オー」
ギャにもやらせると。
「マサル感じるぞ」
「俺もだ」
小川の辺に珍しい薬草が有る。
『よし、ゲットだぜ』高額で売れそうだ。
「マサル、獣の気配もあるぞ」
「よくわかるな」
「気配を感じるバフをかけてみた」
「そんなバフかけは無いはずだぞ」
「そうか、まあ五感を研ぎ澄ましたんだな」
「なんかギャの方が器用に使うな」
属性:光はほぼ女性に現れる。女性の方が上手く扱えるのかな。
ニトルさんが休んでいるうちに、俺は『加速』で周辺にいる魔獣を見て回る。
『おーいるいる。猿にリス、なんか大きな猫もいたな、もしかしてあれが虎だな。それに牛もいた。小川が有るので水飲みに来ているんだろう。鹿はいないな、きっともう少し山の方にいるのだろう』
見つけた獣はメモしておいた。
ラルドさんには水飲み場の場所を教えてあげるつもりだ。
近くに森小屋を作って調べて行けば、牛が沢山いる場所が見つかるだろう。
「よしギャ、観測と調査は終わりだ。帰るぞ」
「オー、だがニトルさんが回復していない」
「だ、だ、大丈夫だ」
うん、ニトルさんは大丈夫そうだ。
帰りはニトルさんに合わて走った。おかげで。
「マサル、真っ暗だ早く夕食を出せ」
森小屋に着いたのは、日が暮れてからだった。




