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58・ズンダダ森での薬草採取

「さあギャ。昼飯も食べ終わったから薬草採取を始めるぞ」

「オー」


今俺とギャはズンダダ森の入り口にある森小屋にいる。

今朝、村を出て森に着き昼飯を食べ終わった。


「まずは、小屋の周辺からだな。ギャ、森の地図を持ってついてこい」

「地図ってこれか」


「ああそうだが」

「全然詳しくないぞ」


「確かにそうだな。そう言えばこの前来た時、村人たちは敵当に森に入って猪を狩ってきたが、地図らしきものは持って行かなかったな」

「オー、ボイルさんが借りて持って行ってしまったぞ」


「なるほど、だがこの地図じゃ薬草採取には使えないな。しょうがない、地図を修正ながら薬草採取をするか」

「わかった。ギャも手伝うぞ」


「ギャは地図の作り方を知っているのか」

「目測なら自信が有るぞ。ほれ、あの木まで二十三メートルだ。向こうに見える岩のてっぺんは百十メートルだな」


「そうなのか、確かめるぞ」

あまり正確ではないが、貴族のたしなみとして俺も歩幅による測量の訓練は受けてある。

でこぼこや、坂道、岩を避け川を渡っても歩数で性格な距離を計るためには何年もの修業が必要だ。


俺はまずギャの言う木まで歩測する。


「おっ、合ってるぞ。すごいなギャ」

「オー」


次に元の位置に戻って岩まで歩く。

これも正確だ。


「なあギャ、すごい特技を持っているな」

「マサルは出来ないのか。目にバフをかけると何となくわかるぞ」


「そうか、ギャは目を守るため無意識にバフかけしていたからな。バフかけの身体強化で目測が上手くなったんだ。いいぞ、これなら方位磁石だけで地図が作れる」

「マサルの力になれるなら、ギャは嬉しいぞ」


そして俺とギャは薬草採取をしながら、森小屋に有った適当な地図を修正していった。


「ギャ、地図の此処に痛み止めの薬草が有っただろ、チェックしておけ」

「オー」


「此処には下痢止めの薬草、こっちは止血の薬草だな」

「オー」


「それとこの丘の位置はもう少し東にずれている。直しておけ」

「無理だ。大がかりな変更は地図を書き直せねば出来ぬぞ」


「そうだな、作り直すか」

「それからマサル。さっきからやたら薬草を見つけるがどうやるのだ」


「やり方か、ギャなら出来そうだが、絶対やり方を他の人に教えるなよ」

「と、言うことは。属性:光の力を使うのだな」


「ああ、それと薬草を扱ってきた経験だな。やり方は、そうだなまず風の無い時でないと出来ない」

「オー、今日は無風だ」


「そして周辺の魔力に集中する」

「あれだな、バフかけやヒールを使うとき、周辺の魔力を操作する時に使うアレだな」


「そうだ、魔力属性:光だけが、周辺の魔力を感じることが出来るんだ。そして俺やギャは薬草に沢山触れてきた。薬草を持つと手のひらが温かく感じただろ、あれは薬草に含まれる魔力を感じているんだ」

「そうか、薬草の魔力を探せばいいのだな」


「そうだ、俺はこのやり方を後で気づいた。八歳で冒険者になった時に出来るのは薬草採取くらいだからな。始めは姉貴の薬草図鑑を頼りに探したが、一年もすると薬草のある場所が雰囲気でわかるようになった。それが薬草の魔力を感じると言うことだったんだ」

「オー、ギャもその力使えるようになるぞ。だがマサル、その力で魔獣は見つけられないのか」


「魔獣は動き回るかなら。それに体温が邪魔して薬草ほど魔力の雰囲気を掴めないんだ」

「不便だな。死んだ魔獣でないとわからないのは」


「まあその辺は属性:闇の仕事だな。闇なら生きていても触れればわかるそうだ」

「オー」


ギャとの薬草採取と地図の修正を夕方まで続けた。


「おいマサル。おなかがすいたぞ」

「そうだな、かえって夕食にするか」


俺とギャが森小屋に帰ると、なぜかそこには怒ったニトルさんがいた。


「マサルさん、森には入る時は必ず護衛を付けるよう、村長より言われているはずです。勝手に森に行かないでください」

「・・・ソウダッタネ」


最近ガーネ達と薬草採取をしていた。

彼女たちは冒険者なので、俺の護衛に見えていたのだろう。


しかし俺はガーネ達を護衛だとは思っていなかった。

そのせいかズンダダ森に来る時、ニトルさん(護衛)を頼むのを忘れたんだな。


「ニトルだいじょぶだ、あたいがマサルの護衛をする」

「ギャちゃん、無理ゆうな」


「そんなことない、ニトルには勝てるぞ」

「はっ、無理無理」


「なら勝負だ」

「へっ・・・。マサルさんやっていいですか」

ニトルさんは、俺に怒った興奮が残っているのかギャの挑発に乗ってしまった。


「良いぞ、その間に俺は夕食を作っておくからな」

俺はギャとの訓練に使っている木剣を異次元鞄から取り出して二人に渡した。

まあ今のギャの実力なら怪我をすることは無いだろう。


そして夕食のテーブルでは。


「なっマサル。ギャが勝っただろ」

「ああ」

テーブルの向こうでニトルさんはうつむいて落ち込んでいた。


「ギャ、バフかけを使っただろ」

小声でギャに聞くと。


「ああ、マサルが使う『加速』をやってみた」

剣の素振りと足さばきは半年続けている。

兎狩りもやっているので森や山を走り回るのも慣れていた。

模擬戦なら『加速』を使うギャが勝つだろうな。


だが。

「ニトルさん、ギャには経験が有りません。とても護衛として使えないので、明日からの護衛、よろしくお願いします」

大事なのは森での経験だ。

これでニトルさんが自信を取り戻すと思ったが。


「・・・ああ、わかった」

ニトルさんの声は、小さかった。


翌日起きるとまずは朝食の準備だ。

ニトルさんが『俺がやりますよ』と言ってきたが却下する。


「あたいはマサルの料理が良いぞ」

ギャは、暗にニトルさんの料理がまずいと言っているな。


「・・・そうか、ギャちゃんがそう言うなら、マサルさん頼む」

一応ニトルさんも自分の料理下手はわかっているんだな。


食事が終わると、薬草採取の前に隣のラバル商事の小屋に顔を出す。


「ラバルさん、おはようございます。俺たちはこれから薬草採取に向かいますから」

「ああ、おはよう」

返事をするラバルさんの後ろには見慣れない顔の人が三人いる。


「ラバルさん、後ろの三人は小屋作りの職人さんでは無いですよね」

「ああ、測量士の人達だ。マサル君も知っていると思うが、地図が無ければ計画が立てられないからな」

ボイルさん達もそこからと言うことだな。


「それでは」

「ああ」

挨拶だけして、俺とギャ、そしてニトルさんで森に入る。


取りあえず、だいたいの地図をみて。


「ニトルさん、こっちが空白なのですが」

「ああ、そこは草原なんだ。猪が取れないので調べていない」


「じゃあ、今日はそこへ行きましょ。草原でも薬草は取れますから」

「そうか、草原に行くのは初めてなんだが大丈夫かな」


「俺から離れなければ、大丈夫ですよ」

「マサル、それだとどっちが護衛かわからないぞ」


「いや、あくまで護衛の役はニトルさんだからな」

「わかった。その設定だな」


「・・・設定なんだな」

ギャに負けたニトルさんの、小さい声は復活していなかった。

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