53・村に聖女がやってきた
ギャを連れて、お袋たちがサメル村から王都に帰って一週間後、村に教会から通達が来た。
「マサル様、サクラ様が言う通り聖女様がこの村に来るそうです」
「そうか、まさか観光旅行じゃないよな」
村長直々に俺の家に伝えに来てくれた。
「いいえ、次の聖女を探すためだそうです」
「次のって、今の聖女様はもう七十を過ぎているのだろ、まだ決まっていなかったのか」
「この村には教会が有りません、そのため詳しいことはわかりませんが、候補者はいるのですが、今の聖女様の力に遠く及ばないみたいですね」
「うーん、聖女の力って何だ。別に魔獣から町を守るために結界を張っているなんて話聞かないぞ」
「マサル様、そんな話何処から出てくるのですか。聖女様は属性:光で魔力操作力が大だと言われています。候補者には魔力操作力が足りないんでしょうね」
「そうか、確かに操作力が大以上あれば、教会全体を光の魔力できらびやかに輝かせることもできるからな。だがあればデモンストレーションにしかならないぞ」
「マサル様、それが大事なのです。あれに感動して寄付が集まるのです」
「そう言うものか」
まあ、輝きが『ポワッ』じゃあ寄付は集まらないな。
そして聖女が村にやってきた。
「聖女様、ようこそおいでなされました」
出迎えは村長だ。そして俺はその隣に立っている。
村長は深々と頭を下げ、俺は貴族の型で挨拶をする。
「出迎えありがとうございます」
聖女は馬車を降り村長の前で軽く会釈をした。
聖女は聖女と言う身分であり、王族や貴族より偉いとか偉くないとか比べられない。
かと言って平民ではないことも確かだ。
村長なら頭を下げればよいが、仕方ないので俺は身分の高い方に対する型でお辞儀をした。
「改まらなくてもよろしいです。平民なら平民に対するよう、貴族なら同じ位の貴族に対するようにしてください」
ザックバランにして良いらしい。
それでも一応敬語を使うことにする。
「お初にお目にかかります。この村を管理しておりますバルノタイザン家の三男、マサルです。この度は王都よりはるばる村までお越しいただき感謝しております」
ミスるといけないので最低限の挨拶で済ませる。
「マサル様ですね。王都より遠く離れた村に管理者の方がお住まいとは、サメル村は管理者に恵まれていますね」
褒められてしまった。
だが村長とロマンヌさんは『やっと最近来ただけでしょ、それもすぐに出て行く予定だし』と言う、冷めた目で俺を見ている。
聖女がついたのは夕方だった。
それでも予定よりかなり早く着いたとお付きの者たちがいっている。
隣村とその隣村までボイルさんが道を改良したおかげだろう。
聖女様が遠く離れた村と言ったが、今なら馬車で三日も有れば楽に来ることが出来る。
どうも村が出来た当時の歩いて二十日以上かかるイメージが強いのだろう。
そのイメージが消えないくらい、二百年間この村に来る人が少ないとも言える。
聖女様とお付きの人達は村長の家に泊まり、それ以外は丘の上にあるバルノタイザン家の屋敷に泊まってもらう。
本来なら聖女様も屋敷に招待しなければならないのだが、バルノタイザン商会とカエデ製薬の事務所になっており、ボイルさんに雇われた労働者の宿にもしているので、とても聖女様を泊められう状態には無かった。
そして翌朝、村の広場に村人全員が集められた。
「村の民に祝福あれ」
聖女より祝福の言葉が村人はささげられる。
祝福の言葉には光の魔力を込めるのだが。
ここにギャがいれば『あれはなんだ、何も出ていないぞ』と言う所だな。
確かに言葉だけだで、光の魔力は感じられなかった。
まあ、属性:光じゃなければ感じることが出来ないので良いのかと思ったら。
「やはり、いなそうですね」
「ええ、全員疑いなく聖女様の言葉に感激していますね」
俺は村の管理者として村長と一緒に聖女側に立っている。
その為、聖女の御付きの話し声が聞こえたのだ。
なるほど、言葉だけで光の魔力が無いことに、属性:光なら気が付き、不審な気持ちが顔に出る。
こうして属性:光の者がいないか、大まかなチェックをしたのだろう。
やはり、ギャを村から出しておいて正解だった。
その後聖女様のありがたい演説が行われた。
聖女が高齢と言うこともあり、短い時間で済んでしまう。
そして昼の食事は食堂サクラで行われる。
当然料理長は俺だ。
食堂なのでコース料理なんか無理だ。
それに俺もコース料理を作ったことが無い。
村長からも気軽に話しながら食べられる料理にしてくれと言われている。
さすがにサンドウィッチはむりだが、料理は食堂のメニューに有る物にした。
それでも。
「美味しい料理ですね」
聖女以下、御付きの者達にも好評だった。
そして食事をしながら、今回聖女が村に来た目的が語られる。
「村長、この村には属性:光の者はいないのでしょうか」
「ええ、八歳で行われる魔力検査では見つけられておりません」
「この村には教会が有りませんが、どのようにして検査を行っているのですか」
「はい、私の家に測定器があります。定期的にメンテナンスをしておりますので判定は正しいはずです」
「そうですか」
短い会話だが、話しに裏が有るのが俺にはわかる。
まず、属性:光は二百人に一人は現れる。
サメル村の人口なら、ぎりぎり一人いてもおかしくない。
属性:光や闇だと知られることを避けるため、、教会の無い所では検査から逃れている者も多いことを聖女は知っている。
サメル村の村長が誰かを隠したているかもしれない。
実際、属性:闇の爺は闇であることを公表していない。
聖女と食事をしているとわかることが有る。
聖女の魔力操作力が落ちている。
もしかすると、もともと弱いのに聖女にされたのかもしれない。
「聖女様、次の後継者がまだ見つからないようですね」
そう言ったら、御付きの人に睨まれた。
「ええ、既に噂になっていると思いますが、属性:光の者は多く教会におります。しかし良くて中の大の魔力操作力です。操作力:大以上のものが見つからない場合は、教会にいる者の中ら指名する予定です」
聖女の顔はさえない。
「あのー、失礼な質問なのですが、どうしても操作力:大以上が必要なのですか」
「ええ、中の大では治せない怪我や病気が有ります。教会を最後の望みとしてくる者たちに答えたいのです」
「そうですか・・・」
教会って大変なんだと思うが『まずい』とも思ってしまった。
そう、中の大までが使う『ヒール』で直せる怪我や病気は薬でも治せる。
俺が上質の薬草を姉貴に収めるようになって薬の質と効き目が格段に上がったからだ。
「それに、戦が無く良いのですが、ポーションを作るためには強い聖女の力が必要なのです」
「はい・・・」
これもまずいな、姉貴の薬屋に重傷や重病な患者が来た時、俺の作った薬を使っている。
姉貴には俺が属性:光だとは言っていないがうすうす気づいているから、光の魔力入りの薬を頼まれていた。
「・・・最近は、教会のポーションより効きの良い薬が有るのですね」
ちょっと愚痴っぽく、小さな声で聖女がつぶやく。
やってもうた。完全に俺のせいだ。
俺や姉貴が作る薬が出回らなければ、操作力:中でも教会の治療もポーションも充分に威厳を保てたのだ。
原因が俺だとわかったらひどい目にあわされる、気付かれ無いで助かった。
俺が属性:光の魔力操作力:特大だと気付かないのは俺が男だからだ。
光は女性だけと言う先入観があるからな。
「聖女様、いつまでもこの村にいても時間の無駄です。明日の朝には次の街へ向かいましょう」
「ええそうですね」
御付きの言葉に聖女も同意する。
言葉通り、翌朝聖女は村を出ていく。
村に教会が無い話が出なくて良かった。
ボイルさんだけでも面倒なのに、この村に教会を作りたいと言われたらもっと面倒になる。
教会を作ると、管理者であるバルノタイザン家に多額の寄付を頼まれてしまうからね。




