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45・動き出しました

「ボイル、どうだった」

「ええ父上、サメル村の先にあるズンダダ森は魔獣の宝庫でした」


「そうか、それで魔獣牛はいたのか」

「いえ、サメル村の村人が作った森小屋は森の入り口に作られていました。村人たちが猪狩りをするには充分な場所ですが、魔獣牛を探し出すにはもっと奥まで行けるようにする必要が有ります。その為にも拠点になる森小屋をいくつか作るつもりです」


「そんなことをしたら、スターマイラル家がズンダダ森に進出したことが公になるのではないか」

「はい、その点は対策を打ちます。幸いサメル村にバルノタイザン家三男のマサル君が来てまして、彼の薬草採取の為の小屋を作ることでカモフラージュできます」


「一人の薬草採取にいくつかの森小屋を作るのか、怪しまれるぞ」

「ええその点も大丈夫です。マサル君に製薬会社を作ってもらいます。サメル村はバルノタイザン家が管理しています。その奥にあるズンダダ森にバルノタイザン家の製薬会社が薬草採取のための森小屋を建ててもおかしくないはずです」


「そうか、スターマイラル家としても新たな魔獣牛は必須だ。とにかくやれることはやってみろ」

「はい、それで、マサル君から新しい製薬会社の申請が有るのですが」


「わかった、他の貴族や製薬会社、大手の薬師工房から妨害が無いよう手配しておく」

「お願いします」


俺が出した新しい製薬会社の申請がすんなり通ったのは、裏でスターマイラル家の計らいが有ったことなど知る由も無かった。


ボイルさんがズンダダ森に森小屋を作り始めるのは春からだ、まだふた月はあるが。


「森小屋か、いくつも作るから同じものにした方が効率がいいな」

「ええ、こちらで木材を加工して森では組み立てるだけにするのがよろしいかと」


「そうだな、それではさっそく木工所に発注するか」

「ですが、それもバルノタイザンの名前で発注しなければなりません」


「そうだったな。書類はこちらで作るとしてサインをマサルくんにしてもらうか」

「マサル様はサメル村に戻ってますが」


「そうか、それでは新しい製薬会社の役員にカエデさんがなっているな」

「そうでございます。わかりましたカエデ様にサインをもらってきます」

ボイルさんと話しているのは旅の時護衛としてついていた従者だ。

どうやら本職はボイルさんの秘書らしい。


一通りの計画が出来上がると、それからのボイルさんの行動は早かった。


小屋の設計図を作り、木工所に木材の加工を頼み、小屋の材料をサメル村まで運ぶ段取りをつけてしまった。


「ボイル様、ズンダダ森での作業員ですが、募集をかけませんと」

「そうだな、これもバルノタイザンで募集することになるな」


「はい、それでは書類にカエデ様のサインをもらいに行ってきます」

「ああ、頼む」

などと、何か書類が有るたびに姉貴はサインをする。


『まったく、こんなに仕事が増えるなら異次元袋をもっと頼めばよかた』

姉貴は俺からもらった異次元袋を眺めながら愚痴を言っている。

その異次元袋にはバルノタイザン家の家紋の焼き印が押されている。

これは親父から言われて焼き印を押したのだが、何でも貴族の焼き印の有る物を盗むと最悪死刑になるくらい罪が重くなるそうだ。


俺が王都からサメル村に戻どり、しばらくすると小屋作りの準備のために十人近い人がやってくる。

表向きは俺の製薬会社がに頼まれた人たちだ。

バルノタイザン家の使用人小屋に住むのだが、十人の中には料理人も入っており、掃除に行く子供たち以外、彼らの生活を村人が手伝うことは無かった。


それでも。

「マサル様、何か大掛かりになりそうですね」

「そんなことは無いと思うけどな。森小屋を五つか六つ作るだけだ。それとロマンさん『様』付はやめてくれないか」


「いえ、村人にもマサル様がバルノタイザン家の御曹司だと伝えましたから、マサル様とお呼びします」

「それにしては村人達からは『マサル』と今でも呼ばれているな。子供は『マサルおじさん』だぞ」


「マサルには威厳が無い。だから呼び捨にされる」

「お前が言うな、だいたいギャが俺の事マサルって呼び捨てするから村人も呼び捨てになったんだろ」


「まあまあマサル様、村長の父上と爺と私だけでもマサル様とお呼びしますから」

「出来ればマサルさんでな。それより宿の方もそろそろ作りたいのだが、村の準備は大丈夫か」


「ええ、マサル様から資金を送っていただいたので材料は揃えてあります。後は村人で組み立てるだけですね」

「そんなに早く準備できたのか」


「はい、マサル様が取りあえず宿になっていればいいからと言われましたので、薬屋と食堂の隣に作りました。食事は食堂サクラで取ってもらいます。風呂は外風呂を作ります」

なるほど、後は泊まる部屋の建物だけだ。

客室にはトイレも風呂もいらない。明かりは照明魔具を置けば終わりだ。

柱を立てて屋根と壁を張れば終わりだ。


「ロマンヌさん、食堂はこのままなのか。やはりもう少し手を入れた方が良いと思うぞ」

「ギャちゃんもそう思いますか」


「そうだったな、この食堂は二日で作ったんだよな。だいたい床が土間だ」

俺はこの食堂で食事を取ることが無かったので気にしなかったが、よくお客は我慢していたな。


「わかりました。宿を作って余った材料が有れば考えます」

駄目だ、これは改善されそうにないな。


「ロマンヌさん、もう少しお金を集めてくる。それに小屋を作りに来た人たちにも声をかけて手伝ってもらう」

これはボイルさんに宿作りも協力してもらわないと駄目そうだ。


「お願いします。出来れが初めからもっと予算が欲しかったです」

ロマンヌさんなりに俺の集めた資金で精一杯考えたのか。


「そうだぞ、みんなはマサルみたいにケチな生活は出来ないんだぞ、世間の常識を勉強しろ」

「ケチでは無い節約家の守銭奴だ。だが反省はした。使うべきお金は使わなければならないんだな」


こうして表向きはバルノタイザン家、裏ではスターマイラル家による、新しいサメル村が作られていった。

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