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44・本格始動の前の準備です

「マサル、マサルのおかげで余分な仕事が増えましたね、何で製薬会社を作りたいなんて言ったの」

カエデ姉さんに怒られた。


「姉貴、そんなこと言ったって成り行きが強すぎたんだ」

「成り行きって、ちゃんとわかるように説明しなさい」


「はい」

俺はボイルさんの出会いからサメル村での出来事を話しだす。


ボイルさんが旅をしてサメル村まで来た最大の原因は魔獣牛を探すことだ。


「なにそれ、魔獣牛も魔獣馬もいなくなりそうなの」

「一応ボイルさんの所は何とかしているけど、魔獣馬は無理そうだね、それも有ってサメル村に来たんだけど、ズンダダ森がボイルさんの想像以上に魔獣がいたんだ」


「それで製薬会社の何の関係が有るの」

「えっと、ボイルさんがズンダダの森で魔獣調査や狩りをするのは内緒の話なんだ。国にも一部の人にしか報告しないって言ってる。それで隠れ蓑として製薬会社を作ってくれって言われたんだ」


「マサル、前にもあたいが言った。ボイルさんが極秘でやるにはどうしたらいいか悩んでいるから、マサルの薬草採取を利用しろと言ったんだ」

「まあギャちゃんが提案したの。偉いわね。しょうがないわねマサル、ギャちゃんが言い出したことなら協力するわ。それでもう少し計画を説明しなさい」


「ボイルさんはズンダダの森に小屋を、そう最低でも五つは作ると思う。これをボイルさんがやったとなれば絶対に魔獣が絡んでいると思われるだろ、だから表向きはバルノタイザン商会が薬草採取のための小屋を作ったことにするんだ。それにズンダダ森には良質な薬草が有るのだから、ちゃんとした製薬会社を作ろうかなと、おやじにはそう話している」

「そうなの、でも薬と薬草の流通販売の権利はどうするのかな。まさか薬屋カエデだけでその薬草を使いのかしら」


「何だ、薬草や薬にも流通販売の権利があるのか」

「そうだぞギャ、たいていの物には権利が付いてくる。まあそれが貴族の収入なんだがな」


「ギャちゃん、私がやっている薬屋は薬草を取って来て、薬を自分で作って売っているでしょ。買ってくれるのも一般の人だから権利者にお金は払わなくても良いの、でもね問屋さんや他の薬屋さんに売ると、何パーセントかのお金を払うのよ」

「そうか、もしかすると薬草を買うと、代金に権利代がちょっとだが上乗せになっているのか」


「そう言うこと、本当にギャちゃんて賢いのね」

「貴族が権利代を取って、国が税金を取るのだな。庶民の暮らしが楽になる日は遠そうだ」


「ギャ、税金はインフラ整備に使われるだろ、それにバルノタイザン家は仕事のためとはいえ王都からサメル村までの道を良くしている。貴族は権利を守るために目を光らせるから粗悪品が出回らないんだ、税金や権利金を払うことで生活が良くなっていることもあるんだぞ」

「貴族がみんなマサルのような生活をしているなら、そうだ。でも・・・違う・・・貴族もいる」

まあ確かに高すぎる権利金の設定も有るな。


サメル村にはすぐに戻る予定だったが、やることができた。

「マサル、村にはいつ帰る」

「おやじに言われただろ、製薬会社を作るって。書類の提出と受付が終わるまでは王都にいることになった」


「どれくらいかかる」

「そうだな、書類だけだから一週間だな。既に薬屋カエデと言う元になるものが有るから、他の製薬会社から嫌がらせや妨害が無いからな」


「そんなことするやついるのか」

「いるさ、薬屋カエデだって始めは大変だったんだぞ、何といっても安くて効き目の良い薬を売ったからな」


「そうか、マサルが良質の薬草を採集していれば、安くても質の良い薬を売れるからな」

「そうだ、だから俺は、姉貴の知り合いの薬師にしか売らなかった」


「色々大変だな。それで書類はいつ作る」

「書類自体は商会の方で作るから俺はサインだけだ。明日には出来上がるが、役所に提出してから受け付けるのに時間がかけるんだ」


「何だ、わざと言いがかりをつけて受け付けないのか、それって賄賂のためか」

「賄賂なんかやっているわけ無いだろ、忙しいのともったいぶって偉そうにしたいからだ」


「役人の給料は税金だぞ、国民の為に働くのが役人の使命だろ。決して偉くはないぞ」

「そうはいっても、役人は許認可権を持っているからな」


「それは仕事として持っているだけだ、役人個人の物じゃない」

「そうなんだがな、どうも役人になりやつは威張りたいやつが多いんだ。言っておくがタカシ兄さんは違うぞ」

「オー」


賄賂で気づいた。

姉貴に魔獣兎の革で作った異次元鞄を持っていこう。


「姉貴、試作品だが異次元鞄だ。まあ鞄と言うより小袋だな」

「えっ」


「俺はサメル村で魔獣兎を飼っている。一応繁殖に成功しているので試しに一匹だけ革にして作ってみたんだ」

「そう、こんなに小っちゃいけど、役に立つの」

一匹の兎で作る小袋だ、手のひらよりも小さい。


「ああ、薬瓶なら百本は入る。それ以上は使う人の魔力操作力が大きくても、革の強度上無理なんだ」

小さい袋でも間口さえ瓶が通れば、それくらいは入れることが出来る。


「そうね、確かに日持ちしない薬の保管にはちょうど良さそうね。わかったわマサル、製薬商会の役員を引き受ける代わりにこの袋あと十枚用意しなさい」


「いや、既に引き受けているだろ。それに魔獣兎はそんなにいないんだ」

「マサル文句を言うな、村に帰ったら狩りに行くぞ。それにマサル一人ならズンダダ森もあっという間だ、あそこなら魔獣兎はもっといるぞ」


「・・・そうだな」

俺が自分にバフがけ出来ることを家族にも言っていないことは、ギャに話しておいたはずなんだがな。

まあこれもうすうすバレているから姉貴は気にしなかった。

しょうがないもう少し暖かくなったらずんだだ森で魔獣兎狩りをやるか。


姉貴には時間はかかるが異次元小袋を用意すると言っておいた。


そして製薬会社の登録は無事に終わった。

こういう時にシルバー爵とはいえ貴族は信用されているな。


書類の手続き以外に特に買い出しするようなものもなく、余った時間は王都のリサイクルショップ巡りだ。

「マサル、何も買わなかったな」

「掘り出し物は、簡単に見つからないものさ」

今回は欲しいものが無かった。


王都に帰ってきて、はや十日。

「ギャ、明日サメル村に向かった出発するぞ」

「おー」

俺とギャはサメル村の戻ることにした。

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