43・家族にギャを紹介します
バルノタイザン家では、可能な限り夕食を一緒に取っていたが、上の兄のタカシは官僚になり下の兄は騎士になり、二人とも寮に入っている。
お袋と姉貴は屋敷から店に通っているので朝と夕食は毎日屋敷で取っている。
親父はバルノタイザン商会の事務をほとんど屋敷でやっているので朝昼晩と三食屋敷で取っている。
上の兄と下の兄が屋敷で夕食を取るのは月に二回、第二金曜日と第四金曜日だけだ。
そして今日は第二金曜日、偶然ではない、兄たちにも相談に乗ってもらいたいのでこの日を選んだのだ。
そして夕食の時間。
「ギャを紹介する」
食事の前にギャの紹介だけはやっておこう。
「マサル、面倒だから後でいいか」
「サトシ兄さん、簡単に済ますから」
「そうか、じゃあ手短にな」
「わかった、ギャは去年サメル村に出発する朝、奴隷商の前で死にそうになっていたから貰った。歳は九歳だ。ほれギャ、挨拶しろ」
「オー、あたいがギャだ。マサルの奴隷をやっているぞ」
「以上だ」
「マサル、あたいの紹介はそれで終わりか」
「大丈夫だ、俺の家族はこれでわかっている」
「いやよくわからん、奴隷商から貰ったのならギャは奴隷なんだろ」
すぐに終わらせろと言ったサトシ兄さんが聞いてくる。
「ええ、でも魔具の奴隷の首輪が壊れていて奴隷契約はまだです」
「それは誰にもしゃべるな」
奴隷は契約者の所有物として扱われる。
人では無く物であり、所有者がはっきりしている、これって意外と大事なことだ。
ギャに通行所が無くても俺と一緒なら検問所や関所を通れことが出来るからな。
「わかってる。それから瞳は生まれつき白いそうだ」
「みんな気にするな、ちゃんと見えるぞ、それにマサルからゴーグルをもらったから眩しくも無いぞ」
これで紹介を終わったが、食事をしながら色々聞かれた。
まずは何故タダでもらえたのか聞かれる。
その時ギャはガリガリで店の前で倒れたので、死んだと思われたんだと答える。
今の元気なギャを見て、姉貴はポーションを使ったなと突っこんできた。
奴隷の首輪は奴隷が死ねば外れるのに、奴隷商が首輪を回収しなかったのは何故かとも聞かれる。
ギャは十軒の奴隷商をたらいまわしにされ、首輪を着けたまま来たので、自分がつけた首輪では無いから回収しなかったと答えた。
奴隷契約していないが大丈夫かの問いには、ギャがきちんと奴隷をしているので契約は必要ないと答えておいた。
「もぐ もぐ もぐ」
「もぐ もぐ もぐ マサルこの料理、マサルが作ったのより美味いぞ」
「おい、俺が質問に答えてまだろくに食べたいないのに、お前は良く黙って食べていられるな」
「当たり前だ、質問はマサルにされている、あたいが答えることは出来ないだろ」
「まあいい、それでこの料理が美味いのはお袋が作ったからだ」
「そうか、これはマサルが良く言っていた店の余りものか」
「ギャ、そんな言い方は無いだろ。食材の有効利用だ」
などと言っているうちに夕食は終わる。
食べ終わった食器を使用人が片づけていると。
「マサル、片付けは自分でやらないのか」
「ああ、貴族は使用人を雇う義務が有るからな」
「そうか、もしかするとサメル村では、あたいが片付けをしなければいけなかったのか」
「いまさら気づくな」
片付けは俺がやって、ギャは軽く手伝っているくらいだったな。
俺とギャが喋ってばかりなので他の家族は黙って見ている。
「それじゃあ、夕食も終わったので、みんなに相談が有る」
「あれか、サメル村に作る宿の資金をどうするかだろ」
「タカシ兄さん聞いているのか」
「まあな、ボイルからも企みを聞いている、宿は親父がマサルに一任したことも聞いた」
ボイルさんとタカシ兄さんは同級生で仲が良かったと聞いた。
俺より先に王都に帰っていたから、サメル村の計画を話したのだろう。
「俺も聞いているぞ」
「わたしも」
どうやら、タカシ兄さんから家族には話が言っていたようだ。
「何だマサルみんな知っているぞ」
「ギャ、これからが問題なんだ。それで姉貴、タカシ兄さん、サトル兄さん、宿を作る資金を融資して欲しい」
「マサル、融資したいのはやまやまなんだが、私もサトルも姉さんも貧乏貴族の家族だぞ、そんなお金あると思ったのか」
「タカシ兄さんと姉貴は有ると思っている。サトル兄さんは騎士団に入って日も浅いから無理だな」
「おいマサル、失礼な言い方をするな、俺だって」
「俺だって・・・」
「持ってない」
やはりサトル兄さんは無理だな。
「まあ姉さんと私には多少のお金はあるが、保証人になるから借りたらどうか」
「そうね保証人ね、でもマサル、返せる当ては有るんでしょうね」
「ああ、宿以外はすべてボイルさんがお金を出すんだ、サメル村にある使用人小屋をボイルさんが借りてくれるので家賃が入る。多分それだけで返済できるはずだ」
「そう言うことか、なら俺も保証人になろう」
ちゃっかり者のマサル兄さんだ。
「親父、良いのか」
「良いだろう。それとマサル、宿の登録の手続きは知っているか」
「それは大丈夫だ、シャやシュが着く高級宿ではなく、職人や旅商人が泊まる簡易宿にだからな、登録は必要ないと調べてある。村にある食堂サクラはお袋の店の、薬屋カエデで姉貴の店の支店で登録した」
「聞いてないわよ」
「いや姉貴は俺に『暖簾分けできるわね』と、言っただろ」
「だったら、ちゃんと暖簾代貰うわよ」
「今はまだ無理だな」
「マサル、支店なら薬屋と食堂も新しくしたいな」
「そうだな、まあそれは村に人が多く来てから考えよう」
うーん、村の発展のためとはいえ、これから俺がやることが多くなりそうだな。
「マサル、ムサイから聞いたが、サメル村ではバルノタイザン家だと名乗っていないそうだな」
「村民には話していない、村長と娘のロマンヌさんと爺は知っている」
そろそろ話を終えたいと思った頃おやじが話しかけてくる。
「そうか、次からはバルノタイザン家だと村民にも伝えた方が良いな」
「まあ、うすうす気づかれているからかまわないが、何か理由があるのか」
「近いうちにバルノタイザン商会で製薬会社を作る。それにあたってマサルをバルノタイザン商会の役員、そして製薬会社の社長に登録する。それとカエデ、お前も製薬会社の役員で登録するからな、春にでもなったら一度サメル村とズンダダ森を見てこい」
「「えー」」
俺と姉貴の悲鳴で夕食後の家族会議は終わった。




